【お断り】
今回の記事の中で、為替に関する表現が「為替」「小為替」「無記名小為替」等統一性の取れない表現になっております。誠に申し訳ございませんが、今回これらの表現は、全て「無記名小為替」とご解釈下さい。つまり、普段サークル申込書の時に使ってる為替の事、という事でご理解願います。

サークル活動を始めて、ある意味当然だが、様々なイベントにサークル申込をするようになった。
参加申込書を書いたり、サークル参加費用を払い込んだり、と色々申込の手続きを行う中で、面白いのはサークル参加費用の決済方法。
昔からの流れなのだろうが、殆どのイベントにおいて、申込書に為替を同封して郵送、というパターンが主流である。無論、夏・冬のコミックマーケットもそのパターンである。コミックシティもコミックライブも、同様のパターンである。

余りにも多くのイベントがこのパターンであるがゆえ、この方法に疑問を感じない方も多いことだろう。この方法が同人世界ではスタンダード、至極常識的な方法とも言えるだろう。
しかし、よくよく考えてみると、この方法、非常に危なっかしい側面を持っているような気がする。
そもそも郵便配達の考え方は、best effort(最善の努力)である。宅配便・配達記録を伴う郵便はassurance(保証)である事と併せ考えると、その考え方の違いが鮮明である。
つまり、郵便配達は「最善の努力」は果たすものの、配達を保証するものではない、という事である。また、「保証」でない為、仮に未配ないし遅着が起こったとしても、それに付随して蒙る損害に対し、郵便事業者は一切の補償を行わない。
尤も日本の郵便事業は非常に優秀であり、ほぼ100%に近い確率で正確な配達を果たしているが、決して100%ではない。非常に少ない確率ではあるものの、郵便事故も起こっている。
宅配便は安くても300円〜400円、物によってはそれ以上の費用がかかる。一方郵便は封書80円、葉書50円と廉価である。僅かな可能性とは言え郵便事故が起こるリスクを抱える、これが廉価であるがゆえの代償なのだろう。

私が一つ抱える疑問は、いくら為替に換えているとはいえ、お金に相当するものを郵便のような若干でもリスクを抱える方法で送ってしまって良いのだろうか?という事。
為替に換えた時に郵便局で貰える控片は何かあった時に重要な役割を果たす。
当然持っていなければいけないものではあるが、それは領収書にはならない
お金を為替と引き換えた事を証明するだけのものであり、厳密に考えるとイベント主催にサークル参加費用を払った事の証明にはなっていない。
為替の証書は、サークル参加の払い込みの証明にあらず、である。

一方、この為替送付は、イベント主催者側にも事務処理の負担が大きい
今、無記名定額小為替は、1枚当たりの最高価額が1,000円までとなっている。
(3,000円の小為替は廃止された)
仮に、500サークルから参加費3,000円を徴収するとしよう。そうなると為替の枚数は、3枚×500円=1,500枚…。
為替を換金するためには、1枚1枚、振出人の住所氏名を記入せねばならない。


・・・・・・・やってられっかヴォケ!!!!(ちゃぶ台ひっくり返す)

為替と申込書の同封方式は、申込書の受領と参加費用の受領とが同時に行える点、主催の事務処理面で非常に楽である。
過去のイベントでこれが取り入れられ・・・しかもコミケやシティのような大規模名イベントになれば成る程この方式が取り入れられてきたのも、ある意味自然な話かもしれない。

しかし、それは3,000円為替が健在だった時の話である。
1,000円為替しか無い現状においては、主催側は膨大に余計な手間が掛かる。サークルも郵便事故の恐怖が怖い。
両者共にデメリットの強まる従来の方法のみでは、限界に来ているように思う。

サークル的な立場で言えば、振込が一番安心できる。
振込みならば、サークル→主催という払い込みのお金の流れが、振込お客様控で証明される。郵便事故のリスクは変わらないが、もし通知が来ず郵便事故となった場合でも、控片を根拠に振り込んだ金返せと迫れる。為替よりもお金が戻るまでのタイムラグが無く、安心感が高い。(ちなみに為替は半年以上を要する)

コミックコミュニケーションは、従来の方法(申込書に為替を同封)だけでなく、振込での決済が可能である。振込の場合は、事前振込みが原則振り込んだ日のを申込書に記入して申込書を投函する。
とは言え、同人やってる人間なんていい加減な香具師が多い。自分もその一人なのは言うまでも無いが、申込書投函後かなりのタイムラグの後にやっと振り込んでくれる連中は結構多い。
為替同封に比べ、サークル費用の徴収に確実性を欠くのが欠点となろう。

この欠点を補う方法として、申込書に決済を証明する書類を貼付する、という方法がある。旧レヴォがこの方法を取っていた。レヴォは申込の際、振込控(かならず原本を貼付させ、コピーは不可)を申込書に貼らせていた。
この方法なら決済の確実性は高まる。

赤ブーブー通信社はこの方法を更に進化させている。
ネット上での決済を可能とし(ATM振込も可)、決済が完了したらシリアルナンバーの打ってある専用の申込用紙をPDFで自動作成。後はその申込書に記入、投函するのみである。シリアルナンバーで決済状況等の確認が可能なのだろう。決済と申込書とが連動している点が面白い
無論、ここは従来の申込書に為替同封の方式も受けてはいるが、オンライン決済も併用して導入している。申込の間口を広めると共に、オンライン奨励で為替換金の手間を省く効果もあり、一石二鳥の効果である。

【12月13日補記】赤豚に関しては、為替の最高価額が1,000円になった(3,000円の為替が廃止された)事による換金作業の事務負担の増加が、オンライン決済導入に踏み切らせたのだろうか?
単純計算で3,000円の為替が1,000円3枚になれば、労力は3倍だし。


そしてあのコミックマーケットでも、次回夏コミ(コミックマーケット70)以降、電子申込を受け付ける事が、コミケット69カタログ内にて発表された。(カタログp58参照)
決済はクレジット決済。システム使用料として1,000円を別途支払うが、申し込み期限が延長される、サークルカットの差替えが出来る等、サークルにとってのメリットも大きい。
申込締切直前のアクセス殺到が予想され、サーバー落ちが懸念される為、充分かつ入念な対策が必要となるが、便利さが増した事だけは間違いない。
無論、従来の申込方法でも受付を行っているので、選択の幅が増え申込の間口が広まっている。

これも時代の流れなのかもしれないが、それ以上に為替の最高価額が1,000円になった(3,000円の為替が廃止された)事による換金作業の事務負担の増加が、大規模イベントになれば成る程深刻化している事の表れてあるように思う。
単純計算で3,000円の為替が1,000円3枚になれば、労力は3倍である。
超のつく大規模イベントたるこの両者が、相次いでオンライン決済を導入している点、相通ずるものがあると思う。



【12月13日補記】
コミックマーケットは郵便振替で決済の上、証明書を申込書に添付して郵送との事。為替を同封する形式では無い。レヴォに近い形式か。
確認もせずに勘違いの文面を載せてしまった事は反省させて頂きたい…。
また、今後このような誤解があれば、遠慮なくご指摘頂ければ幸いである。


私が思うに、主催の事務軽減の為にも、またサークルが安心してサークル参加費用を払い込めるようになるためにも、各主催者は従来の決済方法の見直しを図っても良いのではないかと思う。
個人主催のイベントであっても、こ〜みっくはコンビニでの決済を可能としており、ケットコム主催各イベントではクレジット決済代行業者「ルミーズ」と提携し、クレジット決済を可能としている。
個人主催であっても創意と工夫で、新しい取り組みができる事をこの両者は立証している。

正直、そこまでサービスを増強しなくても良いとは思うが、せめて振込くらいは認めても良さげな気がする。
私が某オンリーの主催をやった時は、郵便事故のリスクを考慮し、申込はネットのみ(12月13日補記:これはオンリーの特殊事情にも因る)・決済は振込のみとしていたが、サークルさんもしっかりしていた方が多く、すぐに振り込んでくれた。
無論、いつまでも振り込んで頂けないサークルさんもいらっしゃったが、何回か催促すれば払って頂いたし、そもそもそういうサークルさんは1〜2サークル程度であった。

少ない経験ではあるが、振込を導入しても左程困りはしないと思う。
寧ろ、為替同封で郵便事故が起こるよりは余程マシに思うのだが、如何であろうか。



【蛇足】
某イベントは、大手サークルが郵便事故で申込が受理されず、サークルを排除したと断言され非難を受けた事がある。
真相は藪の中だが(断言し非難する方も正直決め付け口調で宜しくないが)、もし郵便事故が本当であるならば、郵便に頼った申込システムを一考すべきである。
ネットでの決済や申込を可能とする等、郵便以外の申込方法も導入してみては。
大手が参加出来なかった事はイベント主催側にも大きな損失であるから、申込形態再考の絶好の契機とも言える

郵便事故に遭う不幸なサークルを減らす事は、今回の残念な出来事を次のイベントへの改善に繋げる事にもなる。郵便事故と称してサークルを排除する気は無い、とも世間にアピールできるかも。
次のイベントでの運営改善に期待を寄せたい。