九州の同人即売会と言えば、福岡ドーム開催の「コミックシティ」「コミックネットワーク」が有名だが、個人的には「ProjectArbalest」(以下「あるばれすと」と表記)を面白い存在として取り上げたい。

主催氏は長崎県の佐世保市出身。1990年代後半より主催活動を開始。
主催氏の地元でもある長崎県佐世保市にて、地域に根ざしたオールジャンル同人誌即売会「あるばれすと」を開催されていた。
開催時期にバラつきはあるものの、平均40〜70サークルを集め、佐世保地区の同人文化の発展に一定の寄与を果たされた。

参考文献:
 ・あるばれすと概要
 ・即売会系イベント開催実績

また、ラグナロクオンラインのオンリーイベント「らぐけっと」も立ち上げられている。(名目上、運営はあるばれすととは別の組織=「らぐけっと実行委員会」=だが中の人は一緒)
2003年3月に長崎県佐世保市、2003年11月に福岡市で開催。

男性向けジャンルはご存知の通り一極集中が進み、東京・大阪以外で男性向けオンリーは殆ど存在しない。
ましてや九州・福岡は男性向けオンリーどころか男性向けオールジャンルすらも無い。

そんな状況下、特に第二回福岡開催の「らぐけっと」は直参38・委託8を集め大成功を収めた。これは九州の男性向け市場の現状を考えると、奇跡にも等しい快挙と言っても過言では無い。
残念ながららぐけっとはこの2回で終了したようで、現時点では次回開催は予定されていない。

本体のあるばれすとも、ムービー上映・前日合宿等面白い試みは多く意欲的なイベントであった。
常にスキルアップを図り、東京の良い点を取り入れていこうとする進取気鋭の姿勢等、評価したい点は他のイベント主催団体に比べても数多い。

しかしながら、地方イベントはどこもそうだが同人活動の主力を担うのは地元の女子中高生である。
次第に主催側と女子中高生との間の世代間ギャップが大きくなり、残念ではあるがイベントは地元に支持されなくなっていった。

(あるばれすとだけの問題ではなく、これは全ての地方イベントに同様に課せられる課題であろう。何処もどうだが、長年継続開催の所ほど主催が高齢化、今の女子中高生との世代間ギャップが広がってきている)

また、「ベステンダンク」も定期的に佐世保で開催されるようになり、今の女子中高生とのギャップが少ない事、年2回定期的に開催されている事とあり、次第に地元同人者はベステンダンクに流れるようになった。
(諸々の理由であるばれすとは定期開催が出来なかった事も一因だろう)

これらの現実を冷静に踏まえ、2005年5月の開催を以て「あるばれすと」は終了を宣言した。傷口が深くならない内の撤退という事で、断腸の思いとお察しするが、潔い判断であったとも思う。
以後は年2回のコミケに参加して過去発行のパンフレットを販売する等、個人レベルのマターリとした活動に落ち着いていた「あるばれすと」だが、水面下では色々と動いていた模様で、2005年12月にNPO法人としての認可を受け、新たな活動を始める事ととなった。


イベント主催と言えば、普通は個人主催である。
主催名は「●●実行委員会」「●●準備会」「●●社務所」等それっぽい名前が付いてはいるが、これらは全て「任意団体」としての扱いであり、法人格は持っていない。殆どの場合において、実質的には個人運営のイベントである。

例えば会場との契約は、準備会や実行委員会名義での契約ではなく、主催本人(個人)名義での契約。ガタケットやコミケ等、有限会社が契約者となっているケースもあるが、そんなのは稀である。(尚、ライブやシティ等企業主催のイベントは当然企業名義での契約である)


「ProjectArbalest」のNPO法人としての主な事業目的は‘運融鐶売会の開催同人活動の支援 といったところである。
今まで個人主催として「あるばれすと」「らぐけっと」でやってきた同人誌即売会を、今度はNPO法人の主催という事で開催するよ、という事である。NPO法人による同人誌即売会の開催は、無論同人世界では初めての試みである。

では、即売会主催がNPO法人として認可される事には、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。

メリットとしては以下の各点が上げられる。


ー入基盤の確定、主催個人の経済的負担の軽減

→ NPO法人としての活動理念に賛同する人に会員になって貰う。会員は年会費を支払い、それはイベント運営等の資金に充てられる。また、これにより主催本人の経済的負担も軽減されよう。


只の趣味団体→公共性のある法人へのステータスアップ

→(世間的に見て)任意団体にはステータスは全く無いが、NPOはそれなりのステータスがある。
 同人誌即売会が文化活動として認知されれば、法人である事により活動補助が出る可能性もある。但しそれは将来的な話であり、公的機関に認められる迄には(先の冬コミの著作権の問題、同人表現規制の問題など)課題も大きいのだが。


2饐貅萋世陵動彑

→ 普段我々が利用している即売会会場は、あくまで「個人で借りられる」箇所を会場として利用しているに過ぎない。
日本は箱モノ行政、あれだけ公共施設ガンガンおったててるのに、即売会として利用できない会場が多いのは、個人レベルでは貸して貰えない会場も多いのが一因だ。
(他にも色々要因があるのは承知しております)

 法人格の取得により、今まで個人レベルでの利用が難しかった会場も、法人名義で利用する事が可能となり、会場選択の幅が広がる。


一方デメリットとしては、やはり業務の煩雑化、これに尽きよう。

法人格を持っている以上、「非営利」か「営利」かの違いに過ぎない。
貸借対照表等決算書類の提出、総会の開催、等等一般企業同様の手続きを取らないといけないわけであり、個人主催に比べ圧倒的に労力がかかる。

但し、収支決算報告それ自体は、主催にとってはデメリットだが、今まで余り公開されなかったイベントの収支(せいぜい@すのすけ様の「オンリーイベントって儲かるの?」ぐらいでしたね)が透明性を以て公開される事は同人世界全体ではプラスなのかもしれない。


と、ここまで書いたところで思ったのだが、NPO法人化はメリットよりデメリットの方が大きい。会費収入等メリットもあるが、事務の煩雑化のデメリットを考えると、正直「割りに合わないよな」という気もする。
とは言え、アルバレスト主催氏もこれらの点を踏まえた上でNPO法人化の道を選択した事と思われる。
先にも申し上げたが、NPO法人による即売会は同人界初の試みである。果たしてこの試みは成功するのか。そして、NPO法人として具体的にどのような活動(イベント開催)を起こすのか?

実は自分、先日所用で九州に飛んだが、仕事後あるばれすと主催氏にお会いする機会を頂いた。色々とお話をお聞きしたので、次回は、「あるばれすと」の今後の活動計画について、項を設けてお話させて頂きたい。