同人界でも安定した人気を誇る"ToHerat2"等、Leafブランドで美少女ゲームを数多く輩出した「(株)アクアプラス」が、自社版権の二次創作物に関するガイドラインを改訂、規制が厳しくなるとの懸念が、個人ニュース他WEB上に上がっている。
「ライブドアニュース」では、市民記者からのニュースとして、「9月1日以降規約が改訂された」との旨報じられている。(※9月10日20:30現在、このライブドアニュースは削除されている)

改訂内容については、よつばの。様「アクアプラスの二次創作ガイドライン」内の解説が非常に詳しい。
アクアプラスは同人活動としての二次創作を原則容認している。
但し、「業者等を介し営利目的で」の流通は、容認しない例外的事由として規定している。よつばの。様調べによると、これは2000年頃からの規定らしい。
本年9月の規約改正で、「業者等第三者を介して」の流通が容認しない事として変更されている。

では、これで果たしてLeaf同人への規制は、本当に厳しくなるのだろうか?
その前に、同人頒布物への著作権侵害の問題について簡単に申し述べたい。
私も勉強中であり、自信を持って申し上げられるレベルに達したとは言えたものではないが、勉強途上、現時点ではこう考えている。

同人頒布物は、著作権侵害の危険性を大いに含んでいる。
但し、著作権侵害はあくまで「親告罪」であり、当事者(著作権を侵害された側=版権元)からの訴えが無い限りは、立件に至らない
これは、版権元の匙加減一つで幾らでも著作権侵害を訴え、規制する事が出来るという事でもある。実際、その気になった規制に動いた事のあるゲームソフト制作会社や芸能事務所もある。
但し、殆どの版権元は、「ファン活動の一環としての同人活動」「ファンの裾野の開拓に役立つ」等のメリットや、現実との折り合いを考慮し、同人活動を「容認」はしないものの「黙認」している。それゆえ、これまで同人活動においては、一部ジャンルを除き特段大きな規制は起きていないように見受けられる。

言わば、我々の同人活動は、【版権元に見逃して頂いている】ことによってはじめて成立しているもの、とも言えよう。
個人的な考えだが、同人に携わる人間は「版権元に見逃して貰っている」という感謝の念と謙虚な気持ちを持って活動するべきと考える。
(尚、これは日本国内のみで通用する独特の論理であり、海外の版権元には、この論理が通用しない恐れが高い。ディズニーが同人に煩いのは周知の事だし、他の海外版権も国内のそれに比べリスクは高い)


でもアクアプラスは条文変えたじゃないか。これは規制への布石だ。そう心配される向きもあろう。
これについて、私は、条文の変更は即規制に繋がらない、という考え方を提起したい。条文の内容云々ではなく、その法律が如何に解釈され、実質的に運用されるかこそがむしろ重要である。

2002年頃、「児童ポルノ法」の改訂が審議され、同人関係者からも多くの懸念の声が寄せられた事があった。
「ドラえもんでしずかちゃんの入浴シーンが発禁になる!」などセンセーショナルなアジテーションが印象に残っている。これに敏感に反応した同人者からも、反対運動が沸き起こった。
自分達同人者が規制されるかも、という不安があったようだが、現行法でも拡大解釈すれば幾らでも規制される危険がある。同人の表現規制に反対するのは自分も一緒であるが、同人者を明確に規制する条文が無い以上、同法が改訂されても何ら変わりは無かろう。
寧ろ、法の条文はそのまま、法解釈(法の運用範囲)が変わってしまい、今まで見逃されていた同人が見逃されなくなる可能性こそ心配すべきであろう。条文云々よりもそっちを心配して監視すべきである。

また、「しずかちゃんの入浴シーン」が発禁とのアジテーションについても、警察だってしずかちゃんを規制するほど暇な組織じゃない。例えば幼女レイプの実写ビデオとか、もっと悪質なものを優先的に規制する筈だ。しずかちゃんは優先順位相当後ろの方だろうw

長々と述べたが、自分が訴えたい点は2点である。


・法律の条文よりも、運用の方法こそが重要。
・規制するとしても、悪質な物から優先される。



これをアクアプラスに置き換えて考えよう。
アクアプラスの条文変更云々よりも、むしろアクアプラスが定めた条文の運用方法・適用範囲こそが重要な事である。そして、アクアプラスが仮に規制するとすれば、それは目に余る悪質なものから規制し始める。そういう事になる。

以下は私の私見・予測であるが、アクアプラスだって暇じゃないし、規制などという儲けにならないものに労力を集中させる気も無かろう
規制するとしても、業者を通じて万単位で捌いているサークル(いるのかどうかは分らないが…)の作品を2,3見せしめ的に規制して終わりじゃないかと思う。業者委託も、数百部数程度なら問われないだろう。そんなの取り締まるほどアクアプラスは暇じゃないし、数百程度でこじんまりとやっている趣味サークルを規制するのも現実的とは思えない

私見だが、書店販売の有無ではなく、目に余る程度の部数を書店販売しているかこそがボーダーラインではないか、と考える。(数字が一人歩きするのもアレなので、具体的数値の明言は敢えて遠慮するが、その点はご了承願いたい)
昨年の冬コミの前後、版権元からのクレームにより、AQUASTYLEさんの通称「マリグナ」が販売停止となり、テンタイ→カンソクさんの「アンパンサーガ」は原作者からの要望により販売停止には至らないものの現在のシリーズで打ち止めとなった。両作品とも、人気を博し有名になり、万単位の「見過ごせない規模」になった事が版権元からクレームが入った最大要因ではなかろうか。(参考/よつばの。様「C69 REPORT」「「アンパンサーガ」未完のまま終了に」)

現時点では特に変わった動きは無さそうだし、今後も、扱い部数の多い超大手でもない限り動きは無い、と考えるのが妥当であろう。超大手にしても、アクアプラスの匙加減一つで全てが決まる。アクアプラスが規制不要と判断すれば、特に何も起こらない。
ただ、結局(一部オリジナルを除く)全ての同人活動は、版権元のお目こぼしをいただくことで初めて成り立っている活動に過ぎない。これを機会に、買い手も売り手も業者も、その点を認識するのは決して悪い事では無いだろう。