高橋留美子系同人は、非常に特殊で面白いジャンルである。
そもそも「うる星やつら」や「めぞん一刻」などが連載されていた頃は完全に男性向けジャンルであった。サークル参加も一般参加も、男性に偏重していた。

しかし、今世紀に入り「犬夜叉」が連載・アニメ化されるや、高橋留美子同人の様相は劇的に変化した。
(らんま1/2の頃からその兆候はあったかも、ですが顕著なのは犬夜叉でしょうか)
犬夜叉同人は完全に女性向け、カップリングの世界である。
「高橋留美子作品オンリー」は、犬夜叉以前ではほぼ100%男性だったが、犬夜叉で腐女子が大量に流入。今、高橋留美子作品オンリーが開催されれば男女比は4:6ぐらい、女性の方が若干優位であろうか。
もっとも、犬夜叉もアニメが終了し、ジャンルのピークは過ぎた。今後緩やかな下降線を辿るであろうから、もう少し女性が減って男女比変わってきそうな気はするが。

普通ジャンルオンリーと言えば、「男性向け」「女性向け」の語が示すように、参加者はどちらかの性別に偏重している。
うる星・めぞん時代からのファンの方なら「男性向け」になるが、犬夜叉からのファンの方は「女性向け」となる。同じ作家であっても、作品によって二次創作を担う層が全く異なるのが面白い。
その結果、高橋留美子作品総合のオンリー(「豪華犬乱」「るみけっと」等)となると、両者が上手く融合して男女比半々のイベントになる。中年男性から中学生女子まで、多種多様の参加者が集う、非常に稀有なジャンルオンリーとなる。

高橋留美子作品のオンリーは、そういう点で非常に面白いオンリーだが、今回は特に犬夜叉オンリーについて取り上げたい。
犬夜叉オンリーイベントは年に4〜5回開催(他にも高橋留美子作品総合オンリーが年に2回開催)と結構多く、いささか乱立気味ではあるが、その中でも犬夜叉オンリーの主催たちによる、ジャンル振興目的の取り組みについて、以下掘り下げて語りたい。
犬夜叉オンリーの主催たちが結成した団体に、「犬夜叉オンリーイベント主催者連絡協議会」(通称「犬組」)というものがある。
手元に、10月8日開催・犬夜叉オンリー「犬夜叉といっしょ」(川崎市産業振興会館)のイベントパンフがある。パンフ内に、同協議会のCMアピールが掲載されているので、以下抜粋。


>「犬夜叉オンリーイベント主催者連絡協議会(通称:犬組)」は、ジャンルとしての【犬夜叉】の布教、活性化、主催者同士の情報・意見交換、イベントの向上、ファン同士の交流の場となる事を目標に作られた団体です。賛同している犬夜叉オンリーの主催が企画、運営しています。


この団体は、犬夜叉オンリーを開催する5人の主催が参加。
横のつながりを持って情報交換したり共同企画したりしようじゃないか、という趣旨である。
男性向けでは「協議会」形式での明確な組織は存在しないが、各主催間の交友関係が発達しているし、「都産祭」のような形式で各主催協調してのオンリーを開催する事もある。
だが、女性向けでのこの種の取り組みは、(自分の視野が偏狭なだけかもしれないが)余り見かけないような。いずれにしても、意欲的な取り組みとして注目して参りたい。

同協議会の具体的な取り組みとしては、各イベント間の【スタンプラリー】を実施した事が挙げられる。
「犬夜叉」という事で、「犬」にちなみ、「戌年」開催5つのイベントによるスタンプラリーを実施した。

02/12「花よりわんこ!」(都産台東館)
06/25「わんわん王国出張所2」(東京文具共和会館)
09/17「戦国恋和〜君の念珠に首ったけ〜」(綿商会館/犬夜叉×かごめ)
10/08「犬夜叉といっしょ」(川崎市産業振興会館)
11/05「犬夜叉も歩けば○○に当る?」(長野・もんぜんぷら座)

この5つのイベントに参加した方には、主催より記念グッズをプレゼントする、という企画である。
但し、最後の一つは【長野】開催という事で、地理的条件から参加の難しい方が多いだろう、という事で、長野までコンプリートしなくとも都内4オンリーに参加すればOK、という事にしてある。
正直、参加意欲を掻き立てるほどの記念品かとなると微妙だが、スタンプラリーを通じて犬夜叉オンリーを盛り上げていこう、とする意欲・熱意は感じ取れる。効果の大小はともかく、何もしないのに比べたら相乗効果はあるはずだ。

(ちなみに、長野はオールジャンルのコミックフェアリーが終了、コミックライブも定期的に開催できず撤退と再進攻を繰り返す不安定さ。松本のコミックファクトリーや上田・小諸・佐久あたりの個人イベントが頑張る程度で、同人誌即売会の土壌自体が育っているとは言い難い地域。そんな中、オンリーの開催自体が無謀な試みに思えるが、10数サークル集まったので健闘した、と言えよう)

犬夜叉オンリーを盛り上げる意欲、熱意と申し上げたが、彼女らが「犬組」を結成した目的をもう一度振り返りたい。

>ジャンルとしての【犬夜叉】の布教、活性化、主催者同士の情報・意見交換、イベントの向上、ファン同士の交流の場となる事を目標に作られた団体です。

目的の一つに、「犬夜叉の布教、活性化」とある。
彼女らは、ジャンルをより活性化させ栄えさせたい。それを目標として掲げている。
ジャンルが好きでなければ、そんな発言は出来ないし、オンリー同士で連携を組み「助け合い精神」的な相乗効果の出る取り組みを行おうとも思わない。
同人誌即売会、特にオンリーイベントは、同じ対象を好きな「同好の士」である。同じ物を好きな人間同士「仲間」なんだから、お互い助け合うべき、というのが理想である(現実は随分乖離してそうだが…)。
その理想に近い点は評価に値するし、応援して参りたい。

さて、今年はとある男性向けジャンルのオンリーが、半年で2桁の数に上るほど開催され、オンリーの数としては、明らかに乱立・過剰であった。
男性向けジャンルは、元々、主催同士横の繋がりが大変強い傾向にある。しかし、主催同士で連携を組んだオンリーがどれほどあったか。「ジャンルを盛り上げたい」と意欲を持って取り組んだ主催がどれだけ居たか。
私が見た限りにおいて、「旬な内に開催しちまえ」的、使い捨てなニュアンスで開催する主催は多かったが、正直、「ジャンルを盛り上げたい」というニュアンスの見えた主催は、極めて少なかった。

来年、上記ジャンルとは別のアニメのオンリーが、日程が集中して乱立するきらいがある。
別々の主催がそれぞれ独自に動き、結果として1週違いでの開催となったケースもある。運悪い方向での偶然で、誰が悪い訳でもないとは思うが(同日に被らなかっただけマシと見るべきか)。
それならそれで、日程が近い両イベント間での提携を図ってみては如何であろうか。互いのイベントで潰し合うのではなく、両イベント間に相乗効果をもたらすような取り組みが出来ないものであろうか。各オンリーで協力してのスタンプラリーも一つの方向性だし、両方に申し込んだサークルには何らかの特典を付けるとかしても良い。
少なくとも、両オンリーが潰し合いになる事態だけは避けて欲しい。
出来れば、そのジャンルを「盛り上げる」という観点からお考えいただきたい。その為に、両者間で相乗効果をもたらすような施策を考えて頂きたい。そう心より願う次第である。

今回、犬夜叉ジャンルの取り組みを取り上げた。
オンリー乱立気味な他ジャンルの主催者に参考になるかもしれない、と考え取り上げさせていただいた。
他のオンリー主催の皆様、特に乱立傾向にあるオンリーの主催者にとって、「犬組」の取り組みが、少しでも参考になれば幸いである。