1月21日、インテックス大阪にて、男性向けオールジャンルイベント「こみっく☆トレジャー」(以下「トレ」と表記)が開催された。
5年前大阪で産声を上げた時は500sp程度のサークル数だったが、年々規模が拡大。昨年夏に1000spの大台を初めて突破、そして今回は募集1200spを突破。快調に伸びを示している。
同人世界の市場が全般的に低調、青息吐息でサークル数減少に悩む主催が多いのが現状。そんな中、トレのように右肩上がりで規模を拡大させるケースは稀であり、大いに注目に値する。
では、何故トレはこれ程までに規模拡大を果たしたのか。
トレについては過去にも何度か触れたが、今回改めてトレ躍進の理由を分析して参りたい。他の主催が、トレに学ぶべき点は多いにあると思う。トレの良き点を吸収し、自イベントの血肉として頂ければ幸いである。

(過去のトレレポは、2006年1月10日付「コミックトレジャー参加レポその1」・13日付「コミックトレジャー参加レポその2」及び9月11日付「こみっく☆トレジャーに宣戦布告するw」参照)

以下、トレ躍進の理由を、箇条書きにて申し上げたい。
1.告知にかける飽くなき執念
 実は私も、様々なイベントでチラシの配布作業を行っている身だが、自分がチラシ撒きに行くと、必ずと言って良い程トレのチラシも撒かれている。男性向けのオンリーでトレジャーのチラシを見ないイベントは殆ど無い、と言っても過言では無いぐらいに。
 実施は多少の抜け落ちはあるかもしれないが、有力と目される男性向け即売会は、殆ど押さえていると考えて良い。その網羅性の高さには目を見張る。多分、関西はコミティア・コミコミと男性向けオンリー全て、関東もサンクリ等の大規模即売会と、コスカだのぷにけだの筆頭に、有力・定番オンリーは全て押さえている事であろう。
 専門店舗についても、設置店舗一覧表を見ると秋葉原・日本橋・大須の有力店舗は殆ど全て網羅している。
 店舗・イベント共に、これほど高い網羅性にて、トレの右に出る即売会は無かろう。以前も何処かで申し上げたが、トレで「告知不足」なら全国全てのイベントが告知不足になると思う。…とここまで書いて油断されても困るのでw、告知についてはより高みを目指して、より高い網羅性を発揮すべく、告知先研究に精を出して頂きたいと思う。
(個人的には、告知リストに入っていない京都河原町の店舗と、伝統的に男性向け店舗の多い金沢当たりがお勧め)


2.コミコミとの相乗効果
 何処とは敢えて言わないが、一部地域では、自分達以外が自分と同じ地域で開催する「ライバル即売会」を、全て敵視するような輩が居る。自分達の即売会以外は人にあらず、とでも言いたいのだろうか。敵視するだけならまだしも、「ライバル即売会」に日程を被せて潰しにかかる、という下手すると共倒れになるんじゃねえか、と首を傾げるような不思議な事をする連中すら居る。
 昔はそれで良かったかもしれないが、今は何処の即売会も、軒並み低調である。
 そんな中、各即売会が潰し合い・叩き合いを行って生き残る事が出来るのか。そもそも需要が縮小しているのだから、両方共倒れになるのがオチである。
 私見だが、今は、主催同士が潰し合いをする時代ではない。寧ろ、同人世界が縮小している厳しい時だからこそ、各イベント同士が連携を取って「相互扶助」の精神で臨むべき、と考える。その方がお互いの為である。

 コミコミとトレの関係は、この相互扶助の良き見本となっている。
 基本的にライバル関係なのだが、開催時期がコミコミは春・秋、トレは夏・冬、と見事に分かれ、バッティングも無い。それどころか、コミコミはトレを最大告知先として重宝し、トレはコミコミを最大告知先として重宝している。両者は、密接な相互扶助関係を築いている。
 ライバル関係と言えばライバル関係だが、それは互いに潰しあうようなドロドロの展開ではなく、sp拡張を争うような、良い意味での健全なライバル関係であろう。


3.継続は力なり
 そもそも、このトレジャーという即売会は、諸般の事情により逆境から始まった即売会である。初回は僅か500sp超。申し訳無いが、インテックス1ホール借りるにしては寂しい所である。何処をどう考えても赤字です。本当にありがとうございました、の世界である。
 営利企業という観点からすると、ここで撤退する、という選択肢もあった。だが、それでも我慢して開催を続けた。告知も相変わらず徹底的だった。それを、2002年の立ち上げ以来足掛け4年半も継続した。特に大きな失敗も無かったので、回数を重ねるごとに信頼も上積みされていった。
 新規サークルへのフォローイング、ドリンクサービス、落書きコーナー設置(今回のトレ9では中止)、打ち上げ宴会等、他の即売会では中々お目にかかれないユニークな企画も打ち立てた。赤ブーブーの方で運用しているオンライン申込・決済のシステムを利用し、青ブー=トレの方でもオンライン申込・決済を始め、サークル申込に関する利便性を向上させた
 たゆまぬ工夫と取組を継続し、信頼を積み重ねた事が、トレジャーの躍進に繋がったと言えよう。


こんな感じでトレジャーは、回を重ねるごとに、右肩上がりの躍進を続けた。
そして今回、前回1000spだったサークル参加が更に急増、1200spにまで躍進した。
何故ここまで急激に躍進したか。私は、こう分析する。

4.秋のコミコミが消え、サークルのエネルギーの放出先がトレに集中
 例年コミコミは、6月・10月の年2回開催である。しかし、今回はコミコミ内での諸事情により、残念ながら10月開催を打ち立て無かった。トレジャー的には、コミコミが中止となって重要な告知先が消えた点、非常に痛かったろうとお察しする。
 だが、サークルの立場からすると、表現の場が消えれば、他の表現の場を求めようとするのは自然な事。コミコミに参加するサークルは、地元在阪のサークルである。10月のコミコミが無ければ何処にその場を求めるか。その後にインテックスで開催する、1月のトレに向かうのは自明の理である。
 トレのサークル参加数が急増したのは、コミコミの中止による所が大きかろう


5.良好な日程の確保
 昨年は1月第1週。コミケからそんな離れていない日取りで、サークル的には新刊を出しづらかったと思う。
 だが、今回は1月第3週。コミケからある程度離れた為、トレ合わせの新刊も出しやすい環境となった。例年ならこの時期に「サンシャインクリエイション」が開催されるが、サンクリが何故か2月に移行、例年2月開催のオンリーもサンクリを避けて3月に移行(殆どのオンリーが1月に移行しなかった点も大きい)した為、サンクリとの間隔も充分開いた日程となった。
 サンクリとコミケの間、ほぼ中間の時期、両イベントとも充分な間隔を置けた好日程を確保できた点が、プラスに働いている。


なお、今回は一般参加者も非常に多かった。
初動列は、インテックス大阪の中庭全体を埋めるほどであり、過去のインテックス開催・男性向けイベントに比べて、明らかに多い。コミコミでもここまで膨れ上がった初動列はお目にかからない。
同人情報ブログ@++さん、1月20日付記事「1/20,21のイベント」を見れば、有力サークルの多さがお分かり頂けるだろうか。「トレジャーの面子もまた凄い。関西でこれだけ揃ったのはコミコミ2以来じゃないだろうか。」とも評されており、大手サークルも相当集まっている。これが、一般参加者の来場を促し、初動列の膨張に繋がったと見て良かろう。


【今後の展望…というか個人的期待】

今回1,200超、募集spを満了できた要因は、上記で述べたような好日程の確保、コミコミの中止。この2つの要素がトレのサークル参加数を引き上げたと考える。
だが、今年の夏はどうだろうか。夏コミが8月17〜19日。その僅か1週間後、8月26日がトレジャー開催となる。夏コミのフォローイングとしては最適だろうが、新刊は期待しづらいかも。更に言えば、コミコミも6月開催は決定している。
そういう点を考慮すると、今回の1,200sp超を更に上回る事は、相当難易度が高そうだ。

だが、トレジャーは、コミコミと並び西日本同人世界のけん引役である。関西、いや西日本の同人世界を引っ張る存在である。地域一番手のイベントが盛り上がれば、そこに多くの人が集まる。そこを告知場所にしてオンリーイベントも開催できる。同人世界の活性化は、その地域の一番手イベントの浮沈にかかっている
(参考:2006年4月22日付「大規模同人誌即売会の存在意義について」)

今の右肩上がり路線を維持するのは中々難しいかもしれないが、この流れを何とかして維持して頂きたいと思う。
ここ1年の状況は、「コミコミ1000spで推移→トレ1000sp目前、コミコミの背中が見えてきた!→コミコミ1200spと突き放す→トレ1200sp突破、コミコミに追いついた!」という流れである。コミコミとトレで激しいデッドヒートを繰り広げている。
そこで理想の展開を申し上げると、今年6月のコミコミは1500spぐらいに規模膨張→8月のトレジャーは1400〜1500spぐらいでコミコミに食らいつく、って所でしょうか。
私見では、コミコミは秋に開催しなかった分サークルの期待・飢餓感が高まっているので、それがバネとなり、昨年夏以上のサークル参加を呼ぶと思う。それを、トレジャーが追う形になれば面白い。

で、ここまで書いて一つ思った事としては、1500spになった(と仮定した)時に、1ホールでそこまで入るのか?という問題。
今回のトレジャーは、無理に無理を重ねて1274sp押し込んだ感がある。仮に1500spになれば物理的に、1ホールでの開催は相当厳しそうだ。1ホール開催にこだわるのなら、抽選でサークルを落とさねばならない
かと言って2ホールで行うと、1ホール750sp…採算的に厳しい部分もありそう。

私は金を出す身で無いので、ここは口を出すべき立場でない。コミコミにせよトレにせよ、最終的にそこは主催が判断するべき事である。
だが、敢えて個人的な「お願い」を申し上げるとするならば、1ホールで収容しきれない時は、何とか2ホールで開催できる方向で頑張って頂きたいなあ…という部分だろうか。単純に、2ホール開催って打ち出した方が、規模の拡大や盛況ぶりをアピールできて、より盛り上がれそうな気がするってのもありますが。
1ホール開催での物理的限界も迫っている中、判断が難しい部分もあろうが、目指せ2ホール!などと煽っている馬鹿がここに居る事は、心の片隅に留めて頂ければ幸いである。