5月27日も、全国各地で様々な同人誌即売会が開催される。
しかしながら、参加に値する魅力的な即売会が大変多い。私事で恐縮だが、どの即売会に参加すべきか大変迷った。
この日開催の即売会で、自分が注目した即売会は、以下の通り。

・同人誌中心即売会「Elysian」(札幌)
・男性向けオールジャンル「杜の奇跡」(仙台)
・オールジャンル「COMIC FACTORY」(長野県松本市)
・文章系オンリー「かわさき文芸ジャンボリー ぶんぶん」(川崎)
・創作オンリー「関西コミティア」(大阪)
・オールジャンル「ぶちすげぇコミックバトル」(岡山)
・オールジャンル「ComicCity in 福岡」(福岡)

どれも一度は(orまた)参加したい即売会だが、自分の身は一つ。幾つもの即売会を掛け持ちする事は出来ない。一つに絞らねばならない。
色々絞った上、最終候補はコミックファクトリー・福岡コミックシティの2つとなったが、熟慮の上、そして諸々の事情により、福岡コミックシティへの参加を決めた。
(福岡シティ前日から福岡入りしておりますので、当日九州にいらっしゃる皆様、飲み等誘ってくださいw 当日はサークル参加致しますので、九州の皆様是非お立ち寄り下さいw)

今回は福岡行きを決めた為止む無く断念したものの、長野県松本市の「コミックファクトリー」も捨てがたく、本来であれば是非参加したい即売会であった。
今日は、この「コミックファクトリー」についてお話したい。
実は、この「コミックファクトリー」、地方都市開催の即売会の中では非常に光る物を持つ即売会として、随分前から注目していた。
サークル参加も本気で検討しており、主催氏に申込用紙の請求も行っていた。
レスポンスも早く、数日中に申込用紙も届いた。(…まあ、何故か分りませんが「コスプレの長物持ち込みはOKですが青竜刀の持参はご遠慮下さい」という念押しのメッセージを頂きましたがw)
結局、今回は回避させて頂いたので、申込用紙を送って頂いて心苦しくは思うが、次の機会には是非参加させて頂きたいと考えている。

(本音を言えば、申込用紙のダウンロードサービスがあれば尚良かったと思う。主催氏にわざわざ郵送頂く手間隙考えると心苦しいし、サークルの立場からするとダウンロードできる方が便利で、かつサークル申込への門戸も広まるオンライン申込の導入も検討頂きたい)

という訳で、今回は「コミックファクトリー」の特色や注目点について語りたい。
面白い試みも多いので、即売会主催の皆様にとっても(地方・都心問わず)役立つ事があるかもしれない。


1.「コミックファクトリー」とは
 長野県松本市で定期的に開催されるオールジャンルの同人誌即売会。
 年1回、例年5月頃の開催。会場は、松本駅からバス約20分の「浅間温泉文化センター」。松本市郊外・浅間温泉の温泉街にある会場であり、温泉街での同人誌即売会というユニークな取り合わせ。イベントで疲れたら温泉で疲れを癒して…という楽しみ方もある。規模は150sp前後で推移し、人口・市場規模を考えると大健闘している即売会であろう(比較:長野市内の即売会は100sp弱)。



2.主催氏のイベント観と思想に共鳴する
 当ブログ「STRIKE HOLE」では、その理念として「(イベントを論ずるに当っては)否定的な事は極力抑えて前向きな提言を目指す」としている。
 これは、参加者による不当な主催叩きが有れば、それを徹底擁護する、という事でもある。今は即売会同士、共存共栄を図るべき時代。不当な叩きに対する擁護というのは、たまに起こりがちな、【主催同士の足の引っ張り合い】に対するアンチテーゼの意味も込められている。

 また、当ブログでは、地方イベントに目を向け、応援して参りたいと考えている。
 そもそも地方在住の諸氏が同人を始まる「入り口」「とっかかり」は何処になるか。それは、地元開催・地場の即売会である。将来的には都心に進出するかもしれないが、同人世界に入る契機を作り入門的役割を果たすのは、地元の即売会。地元の即売会には、同人人口の裾野を広げる働きがある。
 ゆえに、地方即売会の活性化は、同人世界全体の活性化にも繋がる。現在、地方イベントの衰退が言われるが、これは同人世界全体の衰退にも繋がる事であり、極めて憂慮すべき事である。同人世界の健全な発展の為には、地方同人の活性化は欠かせないファクターである。


 翻るに、コミックファクトリー主催氏のスタンスは、私の考え方と非常に似通っており、大いに共鳴出来る。
 例えば、コミックファクトリー公式WEB内には、主催氏自らが県内の同人誌即売会を見歩いてのレポート「信州同人誌イベントレポート」が掲載されている。
 全般的に同意、共鳴出来る考え方でレポートされているが、特に共鳴した点を抜粋させて頂く。

>■レポで気を付けている事は今後のイベント活動に繋がる様にするにはどうしたら良いのか前向きな提言をしていく姿勢で認める事
(中略)
>■当たり前の事ですが、此のレポートはバッシングのために制作したものではありません。現在の長野県内のイベント団体の減少と云う状況は心無いバッシングが一因である事は間違いの無い事実です
>イベントは雑草の様に次々出て来る事はありません。イベントをはじめたばかりの頃は未熟な所や課題は大いにあるものです。先を考えぬ叩きは個々のイベントだけではなく、その地域全てにマイナスに働き、その地域をイベントが全く無い不毛の地にすることでしょう。
(中略)
>■レポートは飽くまで過去の記録が題材です。故に、御覧下さる皆様には是から先のイベントや地域のイベントか集う全体の成長を期待し、育てていく視点で読んで戴けると有難い限りです。

ほぼ、STRIKE HOLEの評論スタンスと共通したスタンスである。
ファクトリー主催氏のお言葉は正論であり、当ブログ読者の皆様にも、是非このイベントレポートは一通りお目通し頂きたいものである。
コラムも、主催氏の見識の深さを感じさせる論であり、これもご一読頂きたい。

一通りお読み頂ければ、ファクトリーの主催氏が、地元即売会を活性化させるには如何にすべきか、常に真剣に模索されている事が伺えよう。
そう言えば、当日企画の1つとして、【インフォメーション】と称し、マイクを利用して他即売会の開催をサークルにアピールできる企画があるが、これも地元を活性化させたい主催氏の意向から来ている企画であろう。
主催氏のこの姿勢には、共鳴しかつ支持の意を申し上げたい。



3.コスプレイヤーとサークルの垣根を取り払おうと努力
 地方即売会の特色として、コスプレ・ラミカ祭りという状況が挙げられる。特に、サークル参加数の減少もあり、コスプレイヤーの相対的比率は上昇している。
 また、コスプレイヤーは、コスプレに集中する余り、同人誌は素通りしてしまう傾向にある。「コスプレイヤーは邪魔」とまで公言するサークルも居る。
 この状況についてはファクトリー主催氏も激しく憂慮している模様である。昨年2006年5月開催ファクトリーのカタログが手元にあるが、この中で主催氏は

「(同人誌とコスプレは)「絵や文章による表現」「キャラになりきることで作品をリスペクトする表現という違いだけで根底にあるものは同じと私は考えます。優劣はありません。
 この問題の解決には、双方視野を広げ、歩み寄る必要があると思うのです。」

と述べられ、コスプレと同人誌が対等の立場である事を主張すると共に、両者間の相互理解を訴えている
その上で、「サークル活動の方とコスプレイヤーとの間の垣根を取り払う努力を行う」と明言し、以下の企画を打ち立てている。

【コスプレコンテスト】
→ コスプレをしない人間(サークル・一般参加者)にのみ投票権を与える事により、談合・組織票の余地を少なくすると共に、サークルスペースを回るレイヤーに有利に働く仕組みを構築。(但し、自分としては一般参加に投票権を与えると、やはり組織票の余地が残るだろうしから、出来ればサークルにのみ投票権を与えるシステムの方が良さげに思うが)

【コスプレイヤーズリンク】
→ コスプレイヤーがサークルで作品を購入すれば、サークルよりシールを貰える。シールを5枚集めればコスプレ登録料金を全額キャッシュバックするという、コスプレイヤーへのサークル頒布物購入促進施策。コスプレイヤー向けのスタンプラリーと言った所か。



4.作品を通じた「交流」の重視
 同人誌即売会の良き所は、その「場」を通じて多くの方とお会いし、交流する所にある。その為には、より多くの方に来ていただけるよう告知を深めるのも一つの方法だろうが、来場者の「交流の密度」を高める事も一つの方法だ。
 「交流の密度を高める」というが、難しく考える必要は無い。あくまで「同人誌即売会」である以上、同人誌の売買を活発化させる事が、交流の密度を高める事となる。同人誌の売り買いが成立できる環境作りを模索する事も、大切な主催の役割であろう。
 前述したコスプレイヤー向けの企画も、結局はコスプレイヤーに同人誌購入を促す為の企画であるが、これ以外にも同人誌売買を奨励する企画を、ファクトリーは用意している。

【ゴールド(カード)ラッシュ!!】
 サークル参加者の作品を購入する場合のみに有効な金券を、参加者に配布。サークル作品の購買意欲を高める方法として有効であろう。但し、今年5月のファクトリーは、先着100名のみの金券配布となっているので注意。

#余談だが、この方法は他の即売会にも応用できる。例えば福本和行作品オンリー「ざわけっと」では、【ペリカ】がカタログに付いており、会場内開催のチンチロや鷲巣麻雀で利用できるが、これを同人誌購入にも利用できるようにしても良い。てか、ギャンブルには興味ない、純粋に福本作品に触れたい人にとっては、ペリカは無用の長物でしょ?


他にも、様々な企画をファクトリーでは用意している。
全てを紹介するとキリが無いので割愛するが、詳しくはこちらをご参照の事。
他即売会の主催にとっても、色々応用できそうな企画が盛り沢山であり、一度目を通して頂きたいものである。そして、その企画の大半が、一般・レイヤー・サークル間の相互交流を深める為の企画、という印象がある。「交流」を促す為の、主催氏の創意工夫と試行錯誤が伺える。
相互交流を深める為に、主催に何が出来るのか。他即売会主催が、コミックファクトリーに学ぶ点は大きいと考える。


上記の点から見るに、「コミックファクトリー」は、長野県内の同人世界「全体」を考えたイベントであると共に、地方イベントの現状・問題点を正確に認識し、その改善に工夫を図る即売会、と考えられる。
そして自分は、同即売会の理念に共鳴し、様々に工夫を図る前向きな姿勢に深い敬意と示したい。他即売会主催も、ファクトリーの良き点を是非見習って頂きたいものである。


【最後に/ファクトリーの課題】
ファクトリーに対しては全体的に好印象・高評価ではあるが、課題も幾つか残っている。これをクリア出来れば、ファクトリーはより素晴らしい即売会になり得るであろう。

1.開催ペースの増強
 松本市で150spは、人口規模を考えると、正直申して「異例の参加率の高さ」であるが、裏を返せば、それはサークルの支持と信頼の厚い事の証である。堅実な運営で信頼を高めた、とも言える。
 ただ、そこまでしっかりした即売会が僅か年1回開催なのは勿体無い。ある意味、大変残念な事である。主催氏のご都合もあろうから無理には申し上げられないが、出来れば年2回(春・秋)開催にペースを上げて欲しいもの。
 ファクトリーのようにしっかりした即売会の開催件数が増えれば、地元即売会世界の活性化に大きく貢献する。色々ご事情はおありかもしれないが、是非年2回開催される事を希望したい。

2.WEBでの告知により工夫を
 冒頭でも触れたが、申込用紙ダウンロード・オンライン申込の導入により、より便利にサークル参加が出来るよう考慮頂きたい。サークル参加のハードルを低くする事で、より多くのサークル参加を促せるので、主催側にとってもメリットが大きい。
 また、現状では何処にチラシ(申込書)が置いてあるのか判り辛い。松本市の画材屋「福槌屋」・書店「交新堂書店」、岡谷市「Flowing Colors」、長野市「アニメイト長野店」や、長野県内開催の各即売会を通じて積極的に告知を行っているようだが、何処でチラシを置いているのかの説明が判り辛く、チラシの入手に難儀する。【チラシ配布サークル/イベント/店舗】を紹介するページを作っても良いのではないか。


以上の各点が現状の課題と考えるが、これをクリア出来れば、ファクトリーはより素晴らしい即売会になるであろう。
残念ながら今年は参加出来ないが、出来れば次回開催時(来年?)には、何とかお邪魔したいと考えている。今年のファクトリーの成功を祈念しつつ、次回ファクトリーに参加出来る事を心より願っている。


【5月7日追記】
告知に関してだが、東京・大阪開催、都心部の大規模イベントでの告知も是非行って頂きたい。
例えが例えで恐縮だが、当地在住の同人作家さんは、地元の即売会には顔を出さないが、都心部の大規模オールジャンルには顔を出す。この人だけではなく、他にも地元には出ないが都心の即売会には出る、というケースは多々ある
こういった方々を地元即売会に呼び込む方策として、シティ等大規模即売会での告知も是非行って頂きたい。事実、「北陸本専」は、この方法で、都心で活動する地元サークルを呼び込む事に成功している。
「コミックシティ」の「アマチュアイベント応援企画」などは活用に値するだろう。