前回の「tenjin.be#01雑感」の続きです。

前回は、tenjin.beの良き点を取り上げたが、今回は、NPO法人ProjectArbalest及びtenjin.beの課題について触れ、今後の方向性について論じてみたい。
【tenjin.beの課題・反省点】
先に今回の課題、反省点について軽く触れる事にしたい。

1.オンライン申し込みの充実に対する、オフラインのフォロー不足

今回tenjin.beが用意した告知チラシは、申込記入欄が無く、各自WEBにアクセス。オンラインで申し込むなり申込用紙をダウンロードするなりして申し込む、という方式。(主催氏もオンライン申込を推奨されている)
オンライン申込が完備され、申込用紙のダウンロードも出来る点は高く評価したいが、その一方でアナログな手法のサークルさんにとってはハードルが高い。
幾らデータ入稿・オンライン申し込みが普及して来たとは言え、まだまだ紙の申込書で申し込むサークルさんも少なくない。
昨日も取り上げた「D-stand」様「tenjin.be #01レポート」でも、「絵描きという人種が必ずしもデジタルデータやネットを信用しているわけではない」と指摘されている。

やはり、tenjin.be#02以降は、紙の申込書(申し込み欄)も用意するべきだろう。それがサークル参加のハードルを低め、サークル参加数の増加につながる。
巡り巡って主催の得になる事を、押さえておきたい。


2.サークル申込 受付体制の整備の遅れ

2007年1月3日付「2007年に注目する地方発同人誌即売会」において、コミケ全スペ配布の荒行を達成した即売会として、「北陸本専」と「tenjin.be」を取り上げた。
両即売会共、都心に流れたサークルさんを地元に呼び戻す事を主眼に置いた即売会であり、(地方在住者の遠征率も高い)コミケでの配布は、理に叶った告知活動である。その努力は高く評価したい。

「北陸本専」は、冬コミでのチラシ配布時点において、紙の申込書を用意。WEB上でもオンライン申し込みを受け付け、受付体制を完備していた。本専は、万全の体制でコミケでの配布に臨んだ
一方、「tenjin.be」は撒いたチラシに紙の申込書がなく、オンライン申し込み推奨をチラシ上で訴えるものの、ちらしを撒いた冬コミ時点ではオンライン受付が始まっていないというまさに青竜刀を振りかざしたくなる展開。
…オンライン受付は2月上旬まで待たねばならなかった。
チラシを受け取ってから1ヵ月半後にようやく申し込みOKというのでは、折角の告知も効果は著しく薄まる。折角あれだけの人的労力をかけてコミケ全sp配布を敢行したのに、余りにも勿体無い。

北陸本専は今回、【直参114sp/委託・26】と前回以上の実績を収め、堅実にサークルを集めた。一方、tenjin.beは【直参54sp/委託5】と本専の半分以下の実績に終わった。九州という地理的条件が参加障壁となった事もあろうが、同時に、受付体制の不備が本専との差に繋がったものと思う。

*申し込み体制を完備させていれば、tenjin.beは80spは行ったと思う。大変勿体無い状況に思う。


3.サークルの案内通知発送の遅れ 段取りの悪さ
 さて、開催前は余り触れてこなかったが、実はサークルへの案内通知の発送が開催1週間前、というこれまた青竜刀で主催を打ち首に処したくなる展開であった。私の家への到着は、開催3日前という「それ何のコミックネットワークですか?」と突っ込み入れたくなる展開

*福岡ヤフードームで夏・冬に開催される即売会「コミックネットワーク」は、かつて参加案内到着が開催日の前日・前々日(人によっては開催日当日、開催後の到着)という、最早青竜刀を持ち上げる気力すら沸いて来なくなる素敵な伝説を成し遂げ、しかもそれを繰り返した。
…そりゃ、福岡No.1の地位をコミックシティに奪われるのは当然の展開でしょう。

 いや、俺は別にサークル案内が無くても、適当に会場お邪魔して手搬入すりゃいいんで実害は無いよ。でも、他のサークルさんはどうよ? 荷物抱えて搬入の準備に追われるサークルさんには迷惑極まりない話かと。

 普通の即売会は、開催の3週間前、遅くとも2週間前には案内を出す(今度27日に参加する福岡コミックシティは、ゴールデンウイーク中のサークル案内到着)。
 サークル側も搬入の手配等、諸々の段取りがあるので、その日取りは主催者として断固死守せねばならない。それがセオリーだと思うし、仮にそのセオリーを知らない初心者主催だったとしても、サークル目線に立てば2週間切っての発送が宜しくない事くらい、自然に見えてくるはずである
 会場前の主催者挨拶で「力不足で申し訳ない」と謝罪されていたが、これは事前の段取りの遅れを指しての謝罪、と私は見ている。今回は過ぎた事だし仕方ないが、コミックネットワークみたいに同じ失敗を繰り返さないよう頑張って欲しい。


私からはこんな所であるが、他の反省点については、度々ご紹介申し上げている「D-stand」様「tenjin.be #01レポート」が的確で明快だ。
関係者諸氏には、是非こちらのご一読をお勧めしたい。



【tenjin.be 今後の方向性】

色々反省点や課題はあったとは言え、参加してみての感想は、「tenjin.be#01」は間違いなく「成功」と言える。他のサークルさんや一般参加者がどう思うかはまた別問題だが、少なくとも私は、今回に関しては「成功」と断言したい。

しかし、今後のtenjin.beの方向性については、少し考えねばならない。
今後のtenjin.beの方向性については、2つの考え方がある。

(1)男性向けに特化した同人誌即売会を目指す
(2)女性向けも男性向けも包含したオールジャンルを目指す


私STRIKE HOLEの花羅は、(1)の立場に立脚している。
(詳細は06年1月17日付「あるばれすと 今後の活動展望」の前半で論じており、その立場は今も不変である)
また、「九州男性向同人を応援するサイト」様も「男性向けに力を注がれている」と期待を寄せている。幾つかのサークルさん、ブロガーさんともお話したが、「男性向けに特化した方が良いよね」という話になる。

これに対し、サークル関係者ではD-stand様が、レポートの中で、「(コスプレイヤーの受入も含めた)規模の大型化」「女性向けジャンルへの何らかの手当を」と主張されている。
(2)の立場に近いお考えであろう。

また、主催者ProjectArbalestの代表氏もこの(2)の立場である。
ぶっちゃけ自分は、サークル・一般への「分りやすさ」を強調する意味でも、男性向けの特化を進言したが、それには反対との意を示されている。
代表氏は「コミケそっくりそのまま350分の1」の即売会を目指したいと仰られており、それは、男性向け女性向けの別を問わず−双方包含して−の即売会である。それを理想とするならば、私の論に反対するのは当然だろう。

しかし、私は主催氏の論は、実現困難な「理想論」と考える。

その理由は幾つもある。結構多いので箇条書きで申し上げたい。

即売会自体、男女間の「住み分け」が進んでおり、現存する男女包含のオールジャンル即売会は「コミックマーケット」ぐらい。
→大阪のケイコーポレーション主催即売会だって「コミックシティ」「コミックトレジャー」で住み分けられているし、Fateのような男女両方が楽しめるジャンルオンリーでさえも男女住み分けが進んでいる。

・その地域(福岡市)のオールジャンル即売会で、1000sp規模の「コミックネットワーク」「コミックシティ」が存在する中、100sp規模の即売会の存在意義は?
→東京で100sp前後規模のオールジャンル「CO-MIC」の苦戦を見ているので、尚更それを感じる。オールジャンルの良さは、様々なジャンル様々なサークルを見て回る事にあり、規模が大きければその良さはより一層引き立つ。 中途半端な規模では魅力も半減するのでは?
 大規模オールジャンルか、或いは中小規模、ジャンル又は属性で特化のオンリーか、そのどちらかで無いと魅力を感じ辛いように思える。

・主催側の素養は男性向けジャンルでこそ生きる
→主催連中はみんな男性向けジャンルに詳しい方ばかりじゃないっすか。ラグナロクオンリーを九州福岡で成功させた事、東京にも視線が伸びている事、詳しいジャンルが男性向けな事…これらの要素を総合的に考えると、彼らは「男性向け」に特化した即売会を開催する事で、彼らの持てる力が最大限に発揮される、と判断できる。(逆に、女性向けジャンルに長けてるスタッフさん、いらっしゃいます?)


・九州では、女性向け即売会の新規ニーズは薄く、男性向け即売会のニーズが大きい
→女性向けは、シティやネットワークが既に確立しており、新規の即売会のニーズは無い。ぶっちゃけ、シティやネットワークがあれば充分、の世界である。
 その一方、男性向けは定着した即売会が一つも無い(新規開催、プラステ主催「博多プリンセスフェスタ」にも注目したいが、何処まで定着し得るかが未知数)。過去、博多スターレーン等で散発的に行われた事あるも定着には至らず、しかし、実施すれば40sp以上の参加を呼んでおり、潜在的なニーズは大変高いものと推察する。
 今、福岡で定期的に男性向けを開催できれば、男性向けジャンルの人間は、皆諸手を上げて支持するだろう。
 女性向けが参加できる即売会にニーズは無いが、男性向けの参加できる即売会のニーズは、非常に高い。

本当ならば、理想は理想として尊重して参りたい。
しかし、現実を見れば見るほどに、彼らの力量は「男性向け」でこそ十二分に発揮できるもの、との思いを新たにする。
もし、彼らがそれでも「男女包含のオールジャンル」を訴えるならば、労力はかかるが、今以上に「女性向け」への配慮や告知展開を図らねば厳しくなろう。女性向けジャンルの猛勉強も必要だ。
今後の「tenjin.be」がどのような道を歩むのか。今後の「tenjin.be」の有り方にも注目して参りたいものである。