5月19日・豊島公会堂開催「同人誌と表現を考えるシンポジウム」に関する論考です。
最近の状況を見ると、様々なブログで取り上げられたり、サンクリやコミティアやCOMIC1等でチラシが撒かれたり等、以前に比べ少しずつ話題になりつつあると思う。
当日シンポジウムに参加を決める方も増えてきたようで、大変に喜ばしい事である。特に、コミケットでスタッフを務める方々や、オンリー即売会(主に男性向け)のスタッフ諸氏の、この問題に対しての意識が高まっているように思える。
今日はこの件について、別の角度から自分なりに取り上げて参りたい。


【当ブログ内参考リンク】
「同人誌と表現を考えるシンポジウム」と言ってピンと来ない皆様は、当ブログの以下文面をご一読下さい。

3月19日付「同人世界 猥褻・18禁対応の新たな動き
3月24日付「同人誌と表現を考えるシンポジウム
4月2日付「同人誌と表現を考えるシンポジウム(続報)

今回のエントリーは、上記3記事の続編的位置付け。今回のこの記事をご覧になる前に、上記3記事をご覧いただけるようお願いしたい。
【スタッフ・一般・サークル間の意識差の広がり?】

即売会スタッフの意識は、少しずつ高まりを見せている。運営側の人間である以上、この問題に敏感になるのは当然と言えば当然だが、良き傾向であろう。
特にコミックマーケットのスタッフ諸氏の意識は高く、東京在住の幹部クラスはほぼ全員参加するような気がするのだが、果たしてそれは気のせいであろうか。

一方で、一般・サークル側の関心となると、スタッフに比べまだまだ薄いような気がする。

以前私は「表現の担い手であるサークルにこそシンポジウムに来て、表現の事を考えて欲しい」と主張した。その点は各即売会主催とも分っていらっしゃるようで、サンクリCOMIC1では、サークル机上にシンポジウムのチラシが撒かれた。コミックシティでもサークル案内やカタログ上にてシンポジウム開催に関するアピールを繰り返した。コミティアでも宣伝が盛んだった。

コミケ・シティ・サンクリ・COMIC1・ティア…主要な即売会が皆共闘し、この問題のアピールに努めており、それは高く評価したい。

だがその一方、この問題が何処までサークルや一般に浸透しているのか?となると激しく疑問である(特に女性向けジャンルへの浸透が気になる)。

とある掲示板で拝見した意見として「パネラーに同人作家が一人もいない」という意見があった。
私は、基本的にサークル・一般・主催は共に対等の関係、3者が互いに互いの活動を支え合う関係である、と考えている。例えば、主催はサークル・一般に参加して貰わなければ即売会主催活動が出来ず、サークルも一般が本を買ってくれるからこそサークル活動を継続できる、という具合に。
3者鼎立・3者対等を訴える自分の立場からすると、確かに「パネラーに同人作家が一人もいない」という点は気になる。即売会主催は何人も居ようが、サークルや一般の立場からの意見が何処まで出るのか、非常に気になる所である。

だが、一方でサークル/一般参加の人間で、今回出席のパネラー諸氏のように、大勢の観衆の中で自らを晒す胆力を持ち、そして自分の意見を論理的に語り、かつ意見を発信できる人材がどれだけいるのか
探せば居るとは思うのだが、短い準備期間、人材発掘の余裕も無かったと思う。その点で、サークル・一般の立場からのパネラーが居なかったのは、残念ではあるが致し方無い側面もある。

もし次回開催の折は、そういう人材を発掘し、パネラーに据える事が出来れば、一般・サークルの関心もより高まるように思う。特に、他サークルや一般参加者への影響も大きい大手同人作家で、自分の意見を理知的・冷静に語れる方がいらっしゃれば、その方を経由して一般・サークルへの浸透が進むのではないかと思う。
…そういう素敵な人材たる同人作家の登場を渇望したい。

まあそれに、今回のシンポジウムだって、パネラーの中にサークル活動をされている方もいらっしゃる。決して、サークル側の視点が抜け落ちる事も無いと思うのだが…。



【表現の自由を守る、という事】

「表現の自由を守る」と言えば聞こえは良いが、それを声高に訴えるだけでは何も代わらないと私は考える。

今、警察は同人誌即売会に自主規制を求める方向で方針を纏めたばかりである。
(参照:「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」最終報告書より)
という事は、裏を返すと、当面、警察は直接的に即売会に手を出さない、という事でもある。
現在の警察のスタンスは、「主催・サークルが自主規制をやってくれれば、俺ら手を出さないよ」って部分。比較的甘い…というか様子見のスタンスだと考える。

幸いにも、今回求められる自主規制は「18歳未満に18禁見せないように配慮せよ」の一点である。別に猥褻表現を改めよとかそこまでの話には至っていない。
ガキにエロ見せるな、というだけの話であり、決して実現の難しい事ではない。

そこで「警察が表現の自由を規制している」とか叫び反発した所で、何も変わらない。寧ろ、警察側が反発して、態度を硬化させる危険性すらある。

態度が硬化すれば、今までのような様子見にはならない。本格的に取締を始める危険性もある。今回は18禁の見せ方が問題だが、刑法175条の猥褻の話だとか、チャイルドポルノの話だとか、そっちの取り締まりに話が拡がる可能性もある。
そのような事態を、私は大いに恐れる。

警察の態度硬化、と申し上げたが、それは、今回の答申を受けて尚、主催・サークルが無策であった場合にこそ言えようか。
主催・サークルが無策であれば、警察も業を煮やしより深く介入してくるのではなかろうか。そこも心配である。

やはり、主催・サークルが何らかの自主規制策を取る事。これが警察を封じるより適切な策であろう。何らかの努力の跡が見られれば、警察も動きにくい
声高に「表現の自由を」だとか「官憲横暴」だとか騒いだ所で意味は無い。
ある程度の自主規制を行う事が、警察の介入を防ぎ、そしてそれが結果的に表現の自由も守る事に繋がると考えたい。



【シンポジウムを通じ見えてくるものとは?】

シンポジウムを行い、皆にこの問題を考えて貰う。その事自体は決して悪くない。
しかし、シンポジウムは2部構成。約3時間の時間配分の中、専門家による議論、即売会主催者達による議論、に分かれる。
私が特に興味があるのは、主催者達による議論である。即売会側は今後どう動いていくべきか。具体的実践がテーマになると思われる。
しかし、3時間の2部構成、休憩時間も考えると、恐らく賞味70〜80分ぐらいの時間配分ではないかと思う。

ここで思った事としては、4月30日開催「COMIC1」における40分1本勝負のトークイベント。詳細は後述するが、このトークイベントは、まだまだ充分話し足りない中、時間が足りず強制終了となってしまった
今回は、COMIC1の2倍の時間配分なので若干の余裕はあるが、果たして時間は足りるのか?
何も方向性が纏まらず、グダグダに終わってしまう事を、私は懸念する。「方向性」が纏まらず終わってしまった所で、聴衆には、今後いかに動いていくべきなのか見えて来ない。結果、「何も変わらない」という状況になる。
警察が自主規制を求めている以上、それは余り宜しくない。何も変わらなければ、警察の態度の硬化を呼ぼう。
という訳で、短い時間の中かもしれないが、今後業界として如何に当るべきか、何らかの方向性を指し示される事を願いたい



WEB上でもこの話題が少しずつ取り上げられるようにはなってはきたが、同人世界皆の興味対象になったのか、となるとまだまだである。
今回のシンポジウムは、この問題を考える「終着点」ではなく、寧ろ「始発点」である。シンポジウム後も、この問題について皆で考える必要があろう。私も、皆さんに興味・関心を持っていただけるよう、今後も発信を続けて参る所存である。




【その他参考リンク】
黙然日記様 - 同人誌関連トークショー&シンポジウム
同人誌即売会検索システム/七々見 ななな様 「[同人]同人誌と表現を考えるシンポジウムへの応援活動
三毛猫が出かけた こみけの話様 「さてさて、業界のトップが雁首揃えて何を語るのか
→正直言い草には疑問を感じるものの、「全国同人誌即売会連絡会」の設立経緯や問題点にも言及。氏が言うほど排他的な団体ではないと思うけど、一般主催への告知が弱すぎるような気がする。
ITmedianews様「同人誌と表現を考えるシンポ、19日に池袋で
@++様「2007/05/19 同人誌と表現を考えるシンポジウム 開催