5月19日「同人誌と表現を考えるシンポジウム」について。

【参考リンク/当ブログの過去エントリ】
3月19日付「同人世界 猥褻・18禁対応の新たな動き
3月24日付「同人誌と表現を考えるシンポジウム
4月2日付「同人誌と表現を考えるシンポジウム(続報)
5月15日付「5月19日「同人誌と表現を考えるシンポジウム」

【参考リンク/当日の討議内容に関して】
・2chのCOMIC1スレ
・実物日記様「同人誌と表現を考えるシンポジウム at 豊島公会堂
・@++様「5/19 同人誌と表現を考えるシンポジウム レポート
・marya_hi様「「同人誌と表現を考えるシンポジウム」レポートリンク集

ITmediaニュース 同人誌と表現を考えるシンポジウム:アピール不足だったかもしれない──自主規制の現場
同人誌の“性表現”めぐるシンポ開催、自主規制策の対外アピール積極化へ



当日お聞きにならなかった皆様は、この当たりのリンク先で詳細内容がレポされておりますのでそちらをご覧下さい。
私は、あくまでこのシンポジウムを聞いての、自らの雑感を記したいと考えております。

【注意】記事著述に当たり、極力実名は出さない事を基本方針としている当ブログですが、今回の出演パネラー諸氏に関しては例外とさせて頂きます。名前が色んな所で出るのを覚悟してシンポジウムに臨んでる筈ですので、名を出して嫌がられる事は無いだろう、と判断しての事です(当人ないし関係者から要望があれば臨機応変に対処しますが)。それに、真剣に発言されている彼らの名前を伏せるのも逆に失礼かと言う気もするので。
【前回取り上げた懸念点・主張について】
5月15日付「5月19日「同人誌と表現を考えるシンポジウム」」にて、私は、このシンポジウムに関し幾つかの懸念点を取り上げた。
大別すると、以下3つである。

1.スタッフ・一般・サークルで意識の広がりが出ているのでは?
2.表現の自由を守る為には、警察と戦うのではなく何らかの努力を示すべきでは?
3.シンポジウムを通じての方向性は?


今回のシンポジウムに関しては、この3点に、一定の答えが提示されたように思う。


「1.スタッフ・一般・サークルで意識の広がりが出ているのでは?」

自分は、スタッフの関心のみが強く、一般・サークルの関心は弱いように思えた。その点気がかりであったが、蓋を開けてみると「サークル:4〜5割、スタッフ:2割、一般:3割」(@++様より引用)との事。
 表現に関するシンポジウムである以上、サークルさんにこそ興味を持って頂きたい。かねてよりそう訴えていた身としては、嬉しい誤算である。私が思った以上に、サークルの関心は高かったようだ。
ただ、コミケットの市川代表も気にされていたが、女性の参加が少なかった(見た感じ8割が男性)。これは私の懸念(予想)に沿った形となった。女性陣への浸透が今後の課題になろうか。


「2.表現の自由を守る為には、警察と戦うのではなく何らかの努力を示すべきでは?」
「3.シンポジウムを通じての方向性は?」

これは第2部の有識者討議の中で、答えが提示された。
マンガ評論家の永山薫氏は、「規制側と対決姿勢を強めても良いことは無い」との旨の主張をされた。私も前回、「警察と戦っても態度を硬化させるだけで、表現の自由は守れない」と主張しており、この永山氏の主張には激しく賛同したい。

では如何にすべきか。私は、「主催者による自主規制努力を取るべき」と主張した。これに対し今回のシンポジウムの論調は、第1部で論じられた即売会主催者・印刷業者・書店側の規制努力を踏まえ、「一定の規制努力を行っているが、それがを外にアピールしなかった事が問題」(永山氏)という部分。

「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」でも、11000サークルが無審査で野放図に頒布されている、として話題に上っている。世間へのアピールがしっかりしておれば、こういう取り上げ方をされずに済んだかもしれない。
私は、今以上に業界での自主規制努力が必要と考える。その主張は、今も変わらない(具体的内容については後述別項にて述べたい)。
だが、同時に、その努力を警察等にアピールし、説得する事も大切な試みと言える。正直、今回のシンポジウムまで気付かなかったが、アピールする事も大切な事だ。幾ら努力しても、それが世間に伝わらなければ何も意味が無い。今回のシンポジウムは、アピールの重要性に気付かせてくれた、とも言えようか。

同人総研・三崎尚人氏は、米国ジャーナリスト・ダニエル=ピンク氏のエピソードも交えつつ、紙媒体での表現に相当多くの人が参加している。同人は、世界的にも稀有な文化である旨主張された。
コミケットがイタリア・ベネチアに出展したのも、同人を文化としてアピールする目的あっての事と思われる。
同人は、今までアングラ的なものとして捉えられ、当事者自身も隠したがる傾向にあったと思う。だが、「文化」としての部分をもっと世間に強調しても良いかもしれない。「アピール」について言えば、同人は文化である、というプラス方向でのアピールも考えて行きたいとも感じた。

ヌルオタの貧乏ゆすり様も仰っているが、今の流れは、

「「アピールが足りない=理解がない=よくわかんないから規制してしまえ」といった流れ」

である。その流れを食い止める為には、業界でも自制努力を行っている事。そして同人は「文化」である事。ここをきっちりアピールする事が大切な事と思う。
誰かに任せるのではなく、自分自身も表現者の端くれ、という事で、機あるごとにアピールして参りたい。一人一人の影響力は少なけれども、同様に考える人間が何百人何千人と出てくれば、その影響力も違ってこよう。


【気になった事】
そもそも、今回のシンポジウムの契機は、「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」で以下の答申が発表された事を受けての話である。

同人誌等の即売会等についても、イベントの主催者に対し、子どもを性行為等の対象とするコミック等を18歳未満の者に売らないための対策の強化を求めていくべきである

平たく言えば、18歳未満のガキにエロを売るな見せるな、すなわち18禁自主規制の取組を強化してくれ、という事である。

これに対し、今回のシンポジウムの狙いは、「業界が自主規制をしっかりと行っている事」のアピールである。
しかし、各社の答弁を聞くと、とらのあな・鮎澤氏、メロンブックス・川島氏、同人誌印刷業組合・武川氏。皆、【ワイセツ】に関する自主規制の話を重点にアピールされていた。コミケット/COMIC1の市川代表も、ご本人がワイセツ規制に強い意識を燃やしている事もあろうが、ワイセツの自主規制に関する話が中心であった。
無論、ワイセツの自主規制は、大変立派な取組である。同人業界の為にも、今後も続けて頂きたいと願う。

しかし、ちょっと待って欲しい。
今回はあくまで18禁への自主規制の取組を問われている。18禁何とかせい、との警察の問いかけに、「ワイセツの自主規制しっかりやってます」では、厳密に言うと話がズレているような気がする。
18禁についての取組を語るべきなのに、ワイセツに話が摩り替わっている
本題たる筈の【18禁】に対する議論が、ワイセツに話題が反れ、消化不良になってしまったところは残念である。

ちなみに、(シンポジウムをお聞きになった皆様はご理解頂けると思うが)18禁とワイセツは根本的に違う

18禁→エロいから18歳未満に見せるな頒布するな
ワイセツ→エロ杉だから18歳以上だろうと誰だろうと頒布不可


両者が混同されているフシも見受けられ、その点はいささか残念であった。
ワイセツ自主規制への取組も大切だが、18禁自主規制の取組も忘れないで欲しい。


【その他雑感】
・今回の件については、同人誌即売会連絡協議会やコミケットアピール等で報告される模様。このシンポジウムに参加されない方へのフィードバックを図る動きとして評価したい。

・豊島公会堂が2階まで満席、大盛況で終わった事は、この問題に多くの方が関心を持った証。関心を持つ方が増える事は良き事であり、素直に喜びたい。

・ワイセツ規制に関する”コミケット基準”は面白い。単にワイセツ・修正の度合いでチェックするのではなく、18禁表示の有無・奥付記載の有無を含めて複合的に判断する、という方式。サークルには、表現に伴う責任も求められている。サークル諸氏は、こういう基準がある事を知っておいて損は無いと思う。

・正直、とらのあな・鮎澤氏の評判が悪くて驚いた。冷静な語り口で好感を持ち、同人世界においてビジネスとして携わる社会人の一つの姿を見た思いだったのだが…発言数も少なく、パネラーとしては向かなかった、という事なのか?だが、限られた時間、複数のパネラー。一人一人が語る時間が短い事に原因があるとも思うので、氏を責めるのは正直酷に思える。

・てか、時間短すぎ。1時間じゃ消化不良です。もう2時間ぐらい時間割きましょうよ。また、シンポジウムのようなお行儀の良い討論も良いが、朝生みたいなガツガツした討論会があっても良いかも。何処かの主催さんがやってくれないかなあ?

・精神科医・斎藤氏の語るバーチャル世界自足論(バーチャル世界でエロを見れば、その世界の中で自足している、二次元で足るという状況になり、現実での行動はむしろ抑止される傾向になる)は興味深く、納得が行く論である。バーチャルで得たエロが現実世界で犯罪に向かう、という既存論へのカウンターとしても説得力を持てると思う。

・今回は何故か【ワイセツの自主規制】が話題の中心となった。だが、バーチャル研の最終報告にもあったように、【18禁自主規制】を忘れてはなるまい。ワイセツに関心を持つのも大切な事だが、その裏に隠れる、話題に取り残された形となった【18禁の自主規制】を私は強調し、こだわって参りたい。


 今後も、ワイセツと18禁に関する各即売会の取組を注視し、良き取組は積極的に取り上げて参りたい(特に18禁)。
 それが今回のシンポジウムで強く訴えている、「自主規制取組のアピール」の一環にもなるであろうから。

最後に、このシンポジウムという場を提供して下さった関係者の皆様、そして含蓄に富むお話をされた出演者の皆様に感謝申し上げ、本稿の結びとさせて頂きたい。