6月24日、金沢市・ITビジネスプラザ武蔵開催「北陸本専2」にサークル参加させて頂いたので、その時の様子及び感想を記させて頂きたい。

地方即売会は、何処の地方でもそうだが、中高生中心の客層。頒布物はラミカ・便箋中心。コスプレイヤーは大量に跋扈。
年長の、普通に同人誌を頒布するサークルは肩身が狭く、地元のイベントから離れ都心の即売会に流れていく。これは、全国何処でも同じような状況である。(注1)
北陸も同様の状況であり、この状況に対し「都心に流れた同人誌サークルを地元に呼び戻したい」「北陸同人の活性化を」との想いから、有志が立ち上がり「同人誌オンリー」として「北陸本専」が立ち上がった。

(注1)但し、これらの地方即売会は、若い世代の同人世界への取っ掛かり・入口、そして若手成長・研鑽の場としての役割を持つ事は見逃せない。同人の裾野を広げる役割は意義深く、一概に否定対象とはならない点も申し添えておきたい。


STRIKE HOLEの花羅は、立ち上げ当初から「地方発の新しい取組」という事で「北陸本専」に注目し、かつ応援していた。
(参考:2005年11月19日「地方イベントの挑戦 〜北陸・同人誌オンリーイベント〜」、2006年3月12日「北陸本専が案外好調らしい 」及び同5月14日「同人誌オンリーイベント 北陸本専」)

一昨年10月から告知活動を始め、昨年5月に第1回を開催。この時は直接108sp、委託29spを集め成功に終わった。
地域一番手の即売会「金コミ」「こみたい」(KAC主催)が200〜300sp前後で推移している事を考えると、その半分の規模に達する事は充分な健闘、成功に思う。

そして今年、満を持して「北陸本専2」を開催。
今回は直接115sp、委託26sp。前回に比べサークル数は微増に終わるも、「本専2」の取組や工夫は前回以上、パワーアップを見せた。前回「北陸本専1」も、非常にクオリティの高い、安定した即売会運営を見せたが、今回は明らかに「それ以上」であった。
【前回の問題点(課題点)の解消】

昨年の「北陸本専1」では、熱心な告知・サークル目線に立った即売会運営(←主催者がサークル出身ゆえの賜物?)等、全般的に高い評価を下したが、同時に幾つかの問題点(課題点)を指摘させて頂いた。
(2006年5月15日付「もし北陸本専2が開催されるとしたら・・」参照)

今回の本専2では、前回本専1にて指摘した幾つかの問題点、殆ど全てが綺麗に解決した。
私が幾ら指摘した所で、諸々の事情から中々改善し辛い部分もあると思うのだが(言うは易し、行なうは難し、という奴で)…、そんな中、当たり前の事を当たり前にこなすのは、案外難しい。課題を確実に潰していった点、大いに評価に値する。
具体的には、以下の取組で課題点を改善された。

A.委託販売の遅れ
→委託準備のスタートを早め、11時の即売会開場に間に合わせた委託販売時間も前回12時→今回11時30分と早める事に成功した
 会場のITプラザ武蔵は、一般の即売会に比べホールの利用開始時間が遅く、これが前回の委託準備の遅れの一因となった。今回、委託スペースを会場内ではなくホール外通路とした事で、委託の準備のスタートを早める事に成功した。
 
B.地元イベントとの提携
→前回、地元最大規模KAC主催の即売会との連携不足を主張した。KACと敵対しても北陸同人の活性化には繋がらない。寧ろ協力・提携する事こそ重要、と説いた。
今回は、KAC主催即売会のサイトに本専の広告バナーを貼って頂くなど、一定の友好関係を構築した模様だ。KAC即売会での告知も行った

C.手薄な男性向け層の開拓
→前回の「本専1」でも相当マメな告知を図り、自分も高く評価したが、唯一手薄だったのが男性向け層への告知。金沢には伝統的に地場の男性向け系店舗が多いが、前回は、ホワイトキャンパス以外の男性向け店舗での告知が成されなかった。今回、男性向け店舗での告知を強化。男性向け層の開拓にも取り組み、より完璧な告知体制を構築した。


特に、B・Cにおいて改善を図った事は、「本専2」当日の雰囲気作りに大きく寄与した。
昨年「本専1」では、サークル数は100超と健闘したが、一方で一般参加者も少なく、12時過ぎには閑古鳥。買い手側の開拓が大きな課題として残った。
買い手が居ないから参加サークルが離れるんじゃ?とも心配したぐらいだ。また、買い手も女性中心、男女比も1:9か2:8ぐらいだったと記憶している。

今回、B/Cの改善により、地元の一般参加者層、及び男性向け即売会参加者層を開拓、一般参加者は倍増した。
即売会終了の15:00まで、常に会場内は買い手に満ち、盛況を見せた。
目算で恐縮だが、一般来場者数は前回比2〜3倍と推測する。男女比も3:7か4:6ぐらい。男性陣の掘り起しが、そのまま動員数に直結したと分析する。
地道に課題を潰した事で、前回以上の盛況、そして成功を呼んだ点は、高く評価せねばなるまい。



【サークル参加者対応の改善/サークル目線の充実】

北陸本専は、地元の有志が集って立ち上がった即売会である。
構成メンバーは、男性向けの中小即売会、コミケ・サンクリ・シティ等大規模即売会に見られるようなイベンター専業的、プロフェッショナルな人材でも、単なる買い手(買い専)でもない。皆、サークルさんである。
いや、その割には、問題点を確実にクリアしてる辺り、プロフェッショナルな方々に匹敵するノウハウをお持ちっぽいのだが…それはそれとして。

私は、主催たるものは常に「サークル目線」に立って物を考えるべき、と主張している。

折角即売会を開くのなら、できる限り盛り上がってほしい。
では、盛り上がりの為に、何が大切か。それはサークルさんに参加して頂けるか、重要なのはこの一点である。
勿論、一般参加者の来訪も盛り上がりには重要な要素だが、ぶっちゃけ一般参加者は、サークルが集まればそれに引き寄せられるかの如く、サークル数に比例して集まる。
やはり、即売会において一番大切な要素は、【サークル】以外に有り得ない。
サークルを集めるために何が必要か。告知を怠る主催はそれだけで試合終了、と言っても過言ではないほどに、告知も大切な要素だ。
(ちなみに、私が青竜刀を振りかざす即売会の大半は、告知を怠った即売会である)

その一方、2回3回と即売会を続けるのならば、サークルにリピーター化して頂く事も大切な要素である。
リピーター化して頂くには、様々なアプローチが必要だろうが、大本の基本は、サークルの目線で物を考えた運営であるか否か、だと思う。


北陸本専は、その点において、主催が皆サークル出身である事がプラスになっている。
スタッフご自身がサークル出身ゆえ、サークルの立場に沿って物を考える事が容易である。
イベント主催専門の人間の方がノウハウ・要領に関しては一目の長があるも、こと「サークル目線」に関しては、サークル出身の方が長けている。


これが「本イベント」と言う事もあろうが、主催側の施策からも、「本を売ってほしい」という思いを、特に今回強く受け止める事が出来た。
今回は、サークルが自作品をアピールできる機会を、前回以上に多く頂戴した。

一つは「立ち読みスペース」の設置。平たく言えば「見本誌閲覧コーナー」だが、本専のこのコーナー、見本誌提出は任意であり、このスペースを活用するか否かは、サークルに任されている点が一般の即売会とは異なる。
立ち読みコーナーで気に入った本があれば、サークルの所に買いに行けば良い、という寸法だ。

もう一つは、「サークルアピールボード」の設置。サークル案内に同封されていた付箋を使い、拡大したサークル配置図にペタペタ貼り付けていく寸法だ。
お手軽にサークル頒布物のアピールが出来るということで、私も活用させて頂いた。


この他、「サークル目線」で言うならば、サークル申込方法が多様化し、サークル参加の垣根・ハードルが著しく低まった点も忘れてはならない。
申込方法は、従来からの申込書送付に加え、オンラインでの申し込みも導入した。申込書も、前回同様、サイトからのダウンロードも可能だ。オンラインと申込書ダウンロードの2本柱で、本専チラシを入手できなくとも、サークル申込が容易となった。
サイトを整備していない即売会は、こういう所で参加サークルを取り込めず、損していると思う
決済方法も、従来からの無記名定額小為替送付に加え、振込も導入した。
申込にせよ決済にせよ、サークル各自のスタイルに合った方法を取る事が出来る。サークル的には便利さが格段にアップした。そして、同時にこれは、サークル参加のハードルが低まった事を意味する。

サークル発送も、約3週間前。極めて常識的な発送時期である。
遠征組のサークル、オフラインで本を印刷して搬入するサークルも多い為、早めの案内は大変ありがたいものである。
comic1の取り組みよろしく、blogを活用し、作業状況を随時報告されている点も、参加者に安心感や信頼を与える、良き取り組みに思う。


以上、北陸本専に参加しての雑感を申し上げた。

他にも、配置図をパンフ裏表紙に置く工夫は、買い手側にも見やすく(配置確認するごとにページを開く必要が無い)使いやすい設定だったり、と細かい所で配慮が行き届いている。
私も、全国各地様々な即売会を見聞したが、私が見た即売会の中でも、その完成度は一、二を争うほどであろう。個人主催即売会としては、仙台開催オールジャンル杜の奇跡同様、最高峰の完成度に至っていると思う。

地方即売会は、サークル参加数が伸び悩んでいる即売会が多い。
それを市場のせい、少子化のせいにするのは簡単だ。

だが、東北、しかも男性向けというミニマムな市場で150sp以上を集めた「杜の奇跡」、北陸という市場で100spを集める「北陸本専」のような即売会がある事も、また事実である。
これらの即売会に共通する事は、告知宣伝に甚大な労力を費やしている事、サークル目線に立っての運営が出来ている事、そして遊び心豊かな企画…。参加者を楽しませようと、常に主催が深く考え努力しており、その結果が、今日の成功に結びついている

前回も申し上げたが、即売会にサークルが集まらず苦労している主催は、一度「北陸本専」(「杜の奇跡」でも可))に足を運び、自らの目で視察するべきである。
本専や杜にあって、自分の即売会に欠けているものに気がつけば、それは今後自らの開催する即売会の血肉となろう。