それでは、前回記事の続き。今回は、tenjin.beという即売会開催事業の、NPO法人としての意義。そして、「Project Arbalest」がNPO法人である事の意義について、以下検証させていただきたい。

即売会そのもの評価については、6月17日付の記事にてある程度触れたので、今回は採算性にから論じたい。
まず、「法人」という事で、売り上げに関わらず、固定分だけでも約7万の法人税が賦課される事を押さえておきたい。

一方、tenjin.be…というかNPO法人としての財政規模について、確認したい。
同法人の売上額は、以下の通り推計される。

1.NPO法人会員からの会費収入
 12,000円/人×約20人=240,000円
2.サークル参加者からの参加費収入
 3000円×130サークル=390,000円
3.即売会からのカタログ売上
 500円×670人=335,000円

*2・3は、2007年4月・7月の2回分を算出。決算月が9月のため、10月のbooks.tenjin.beは計上対象から除外

収入的には、年間総売上100万と推定。ここから支出として、会場費やカタログ印刷費等が出て行くが、同時に最低7万の法人税も支払わねばならない。
さてここで思う事が一つ。売上100万に対し、最低7万(売上が上がればプラスアルファされますが)の法人税…税負担が重すぎやしないか。


確かに、NPOという「入れ物」があるからこそ、20人もの協力者がお金を出してくれる、という見方もできる。(個人主催の立場だったら、周りはお金を出してくれるのか?)
協力者からの会費収入で24万、法人税で7万、差し引き17万。現状ならば、収入的にNPOたるメリットはある。
だが、会費負担は一人12000円、結構大きい。二年三年と継続して負担できる数字ではない。負担に耐えられず、会員を辞める方も出てくれば、会員減。そして会費収入減となる。今の会費収入は、決して磐石な固定収入とは言えないのではなかろうか。

会費収入が減った時こそ、NPOとしてのメリットが失われる。
会員が去った後に残るは、財政規模に不相応な法人税の負担のみである。
現時点で財政面のメリットはあっても、会費収入が減った後の事を考えると、NPOのメリットを気楽に喜べない。

では、財政面以外で何かNPOとしてのメリットは無いのか?となると、それも見い出せない。
そもそも即売会の開催だって、この規模なら個人主催でも充分対応できる範囲だ。NPOたる必然性は無く、個人主催でも十分対応可能だ。
そしてこの財政規模で最低7万の税負担…余りにも重過ぎる。私なら、馬鹿らしくてやっていられない。法人格なんて取らず、個人主催でこじんまりやった方が気が楽じゃないかとすら思う。

会場取得面で楽になるか?とも思ったが、会場のモルティ天神や都久志会館は、個人主催でも普通に借りれる会場。法人名義じゃないと借りれないサンシャイン・ビッグサイト・インテックスを借りるのならともかく、個人レベルで借りれる会場使ってる内は、NPOとしてのメリットを見い出せない。

加古川で即売会を営むNPO法人「創作交流ネットワーク」は、土日のみの営業だが同人ショップを構え売上を上げている。
毎日お店を開いて店員を食わせるほどの売り上げは上げられないが、土日だけの営業なら、仲間達で休みの日にボランティアで店番やって貰って、お店を続けられる。ついでにそこで即売会の準備作業もやっちゃえ。ってな感じか(あくまで想像だが)。
彼らのように、即売会以外にも収入になる事業を営みたい(但し収入は人一人食わすレベルに達していない)というのなら、NPOである価値はあろう。

だが、NPO法人「Project Arbalest」は、即売会以外に収入を上げられる事業が無い
「創作交流ネットワーク」のように、(即売会以外で)採算の取り辛い事業を行い得る、というNPOとしてのメリットを、充分活かせていない

結局、会費収入という財政面でのメリット以外に、メリットらしいメリットが感じられない。それが今のNPO法人 Project Arbalestの現状だ。
そして、そのメリットさえも、会費収入が落ち込めばメリットで無くなる。決して楽観出来ない。

これを打破するためにはどうすれば良いか。
答えは決まり切っている。不安定な会費収入に頼らず済むよう、他で収入を挙げる事だ。

「創作交流ネットワーク」のように、何かしら即売会以外の、収入を挙げられるだけの事業を立ち上げられれば、NPOたる意義は強まろう。
ただ、それが難しいようであれば、収入増の方法はただ一つ。即売会で収入を増やすしかない。

回数を増やして増収、という方法もあろうが、事前準備なり当日スタッフなり、負担が大きい。一回当たりのイベントの「質」が下がる事も、(過去のハイペースな開催、それにに伴う即売会の粗製乱造を為したプラステの例から)容易に想像できる。
回数の増加は、余りお勧めできない。

となるともう一つの方法は、即売会の大規模化による収入増、である。具体的には1回開催に付200-300spクラスへの拡大を目標にしてはどうか。
これこそがNPO法人 Project Arbalestの取るべき道、と考える。

会場は、都久志会館を複数フロア押さえるか、マリンメッセないし国際センターを想定しているが、思い切って新しい会場を開拓する、という手もある。法人でないと契約出来ない会場を手配できるのが、NPO法人のアドバンテージである。このアドバンテージを思う存分活かしてはいかがか。

「tenjin.be」の大規模化には、幾つかの意義がある。

一つは、財政規模と納税額とのバランスの是正。現在、100万弱の年間収入も、300spに拡大出来れば、年間400〜500万規模の収入が見込める。100万の収入に対する7万の税負担、300万の収入に対する7万(+α)の税負担、どちらがバランス良いかは一目瞭然だ。

二つ目は、財政の安定化。サークル参加費や一般参加費の増収により、相対的に会費収入の比率は減る。会員数が減っても、財政的なダメージが小さく済む。勿論、規模が大きくなればなるほど黒字になり易いor黒字額が増えるので、そういう意味でも財政安定に繋がろう。

三つ目、これはお金の話以上に重要な意義なのだが、このNPO法人の設立趣旨でもある九州における「同人活動の支援」に繋がる事

今の九州の同人事情をもう一度おさらいしておく。老舗即売会「コミックネットワーク」は、1・9月に福岡ドームで1000sp規模を集め定期開催を図るも、運営が雑を極め、サークルの離反を呼んだ。疎かな告知も災いし、マリンメッセ開催の後継即売会「コミックネットワーク ノア」は100spを割る惨状。事実上崩壊し、地域随一の即売会だった頃の面影は微塵も無い。
もう一つの「コミックシティ」、順当な運営でサークルからの不満も無く、普通に開催されている。ネットワークがsp数を減らすのとは対照的にシティは微増。1500spを超え安定人気を誇る。…しかし、肝心の会場を手配できず、以前のような安定開催が難しくなりつつある

今の九州は、その地域で「核」となる、それなりに規模の大きい即売会が不足している。
ネットワークは、サークルの離反を受けて壊滅同然だ。
コミックシティでさえも、会場の都合で安定開催は出来ない。今年は5・9月に開催が決まるも、その後はどうなる事か。
今ほど、九州で即売会という「場」が渇望されているときは無い。

地域のニーズに即した即売会の開催は、このNPOの設立趣旨でもある「同人活動の支援」に見事に合致する。
200-300sp規模への拡大は、壊滅同然のネットワークや、定期開催が難しくなりつつあるシティの穴を埋めるには至らないが、補完的な役割ぐらいは果たせるはずだ。
九州での発表の場を求めさまよう、サークルの受け皿となる事を期待したい。ぶっちゃけ、ポスト・コミックネットワークを狙ってくれ、という事で。
規模の大きい即売会の開催を通じて、九州の同人誌即売会に「元気」を取り戻して欲しい、とも願う。


勿論、規模拡大を成就させる為には、主催側も並々ならぬ努力を図らねばならない。

規模拡大に、事務作業が追いつかないといけない。事務作業の効率化や段取りの改善が必要だ。事務スタッフのスカウトや公募等で、新しい人材を発掘する。人手を要する作業は作業日を前もって決めて手伝いを呼びかけ、作業日は人海戦術で頑張る。そういったマメな取り組みが欠かせない。

大規模化後の規模維持、という観点から、サークルのリピーター化を図るべく努力する必要がある。
前々回「内輪は自重すべし」と申し上げたが、サークルが新規参入しリピーター化する上で、内輪な雰囲気は好ましくない。将来の規模拡大を想定し、内輪の自重を呼びかけている部分もある。

しつこいようだが、「サークル目線」を養う努力も忘れてはならない。サークルに不満を与えれば、リピーター化どころか離反するだけだ。それを防ぐ意味での「サークル目線」である。
どうすればサークルは不満を持たずに済むだろうか、どうすれば喜んでくれるだろうか、常日頃から考える癖を付けるだけで全然違う。一番良いのは、主催自身がサークル活動を始める事(即売会主催としてのサークル参加ではなく、自ら作品を作りそれを頒布するという本来の意味でのサークル参加)なのだろうが。
サークルの大半は女性参加者だから、女性にも取っ付きやすい雰囲気づくりを研究するべき。女性スタッフの意見を特に重んじたい
アンケートを通じ、参加者の生の声を聞く努力も必要だろう。

女性向け・男性向けジャンル問わず、大手サークルの誘致も必要だ。
大手が来れば、大手目当て・一般参加者の来場が見込める。弱小サークルもそれに釣られ芋づる式で参加を決める。大手サークルへの「営業」が必要不可欠だ。
端的に言えば、「有葉と愉快な仲間達」を呼ぼう、という事で。(当該サークルは、地元を大切にしており、地元即売会への参加も積極的。福岡シティには毎回参加、ネットワークは杜撰な運営ゆえ見切ったものの、以前はネットワークにも欠かさず参加していた)

人材の確保も大切な問題だ。先ずは当日スタッフを増やす事
スタッフの確保も中々大変な話だが、スタッフ募集をWEBやチラシ等でアピールする。ドーム時代に手伝っていた(+今の「ネットワーク ノア」で手伝っていない)ネットワークスタッフに声をかける。大学サークルの学生さんに声をかける等、出来るアプローチはまだまだ色々あると思う。

昨年5月、東京で「コミティア」が1ホール→2ホールに拡大を図り、見事に拡大に成功した。
しかし、その裏では、サークル獲得に向け関係者の並々ならぬ努力があった事を、見逃してはならない。

規模拡大のためには、死に物狂いの努力が必要である。
だが、私に言わせればたかが60sp程度じゃ、NPO法人である必要性は無い
会員が減少し、会費収入が減れば早晩崩壊する、その程度の不安定な代物に過ぎない。
規模を拡大する事こそが、彼らがNPO法人として生き残る唯一の方法であり、かつNPO法人として設立したその目的を実現させる事にもなる、と考えている。