コミックマーケット準備会が、いよいよ「同人誌図書館」の設立に向けて動き始めた。
2〜3年前の「拡大集会」質疑応答の席上にて、見本誌の回収後の用途について問われ、故米澤前代表が、倉庫に保管しており、将来は同人誌図書館を作りたい、と回答されたのを記憶している。

尤も、長年の蓄積で、既に百万種類(冊)以上になっている。
これをデータベース化し管理するには、大変な労力を要する。
正直、簡単には実現し得ないだろう、と見ている。
同人誌の世界は、一般社会からも注目を集めつつある。
「萌え産業」に参入する企業も増えている。コミケ開催の度ごとに、マスコミがニュースでコミケを報道する光景も日常化しているが、これも注目の現れの一つである。
全般的な流れとして、同人誌の世界は、アングラなものから陽の当たる物になりつつある。隠たるべきとの向きも有ろうが、時代の流れがそれを許すまい。(てかあんなデカイ規模のイベント、今まで世の中に注目されずにいた事の方が不思議なぐらいだし)
自分が、同人誌の世界も一般社会との調和を持たねばならぬ、とする立場に立つのもそれが理由である。

そして、「図書館」の設立は、同人誌の世界と一般社会との調和の一環ともなり得る。
「学問」としての冠を付ける事により、「同人誌」という存在のステータスアップ(→同人に学問的価値・文化的価値を付与)の効果、同人誌の規制を考える連中への牽制効果も期待出来る。

という訳で、当方、コミケットの「同人誌図書館」構想には、基本的に大賛成だ。
但し、以前COMIC1による明治大学への見本誌寄贈問題の時にも触れたが、あくまで同意を得たサークルのみ蔵書とするべきである。(参考:2008年04月27日付「本当は賛成したい、しかし賛成できないcomic1の見本誌寄贈」)

確かにコミケットは、相当昔より「見本誌は将来の図書館用に…」と謳っているようだ
謳っている以上、申し込んだ連中はその事を承知して申し込んだと言える訳であり、コミケット側が如何に強引に推進した所で、コミケットに理がある、と【理論上では】言えるかもしれない。

しかし現実はどうか。図書館構想を承知して申し込んだサークルは、過去どれ程居たのだろう?

@++さんによると、微妙な表現ながら申込書内にその旨が書いてある模様だ。
しかしながら、書いてある場所が「申し込み書本文には記述がなく、中央の資料集みたいなとこに書いてある」との事。そこまで目を通す人が、現実どこまでいるのか微妙な所。
@++さんも仰っているが「読んでる人はほとんどいないんじゃないかなぁ」というのは全くもって頷ける(参考:@++さん2008年11月17日付「11/17 ミニ情報」より)

過去の同人誌に関しては、「実質的には」殆んど誰の同意も得ていないのでは。
そんな状況下で、強引に図書館設立・蔵書化を進めれば、コミケットへの反発は大きいと思う。


【蛇足】
今後のサークル申込書は、見本誌の同人誌図書館寄贈に同意する旨の署名欄(オンラインならチェックボックス)があっても良いのでは?
サークルに「見本誌は図書館に寄贈されるもの」という認識を植え付けるためにも。
蔵書化が嫌ならコミケに参加しない、という選択肢も取れるだろうし(でもあれだけ売れる場は無い以上、現実的にはその選択肢は取りづらいか?)


COMIC1の騒動が教訓となったのだろうか。コミックマーケット側も、サークルのコンセンサスを取らないと不味い、という事は認識している模様で、参加申込みサークルにアンケートを実施した。
そしてその結果が、今回の「コミケットアピール」に掲載されている。

> 今回の申込において、コミケットが長期目標としている 同人誌図書館 の公開形態について、サークルの皆さんにアンケートを実施しました。
> その結果ですが、 誰でも利用可能:25% 前提知識を持つ人に公開:61% 研究目的のみ公開:10% 反対:5% となりました。
> 今後については、このアンケート結果や自由記述いただいた反対理由にも留意しつつ、さらに検討を深めていきたいと思います。
> ただ、反対理由の中には、 奥付の住所 氏名は『個人情報』である 、 限られた個人の趣味だから 、 サークルの売り上げが落ちる という意見もありました。
> 前回の繰り返しにはなりますが、社会から注目を受けるようになった同人誌の世界を、内部の論理だけで社会に納得させていくことは難しいことです。
> 不特定多数に頒布を行う同人誌活動は決して責任から放たれた 美味しいところ取り ではありません。
> また、図書館というのは、新しい出会い 発見の場であり、文化の蓄積の場でもあります。

…う〜む。個々の文章一つ一つは同意、賛同出来る
図書館構想は基本賛成だし、サークルが表現に伴う責任を負うのも同意する。
表現に責任を持てず逃げるサークル、責任の所在に自覚の無いサークルも居ない訳じゃないので、寧ろ主催側から、サークルに責任意識を持たせる啓蒙活動が必要とすら思っているぐらいだ

特にここの下りは、極めて強い共感を抱く。

> 不特定多数に頒布を行う同人誌活動は決して責任から放たれた 美味しいところ取り ではありません。

でも、何なのだろう?
全体を通読してのこの違和感は。

その違和感の正体は、今日の言わせれ様「やはりコミケの図書館に反対意見が」を読んでハッキリした。
自分の違和感、自分の意見、全てをこの方が代弁して頂いた思いだ。
正直、これ以上自分が書く事無いぐらいにw

確かに、反対者の理由の中には、余りにも自分本位な、首を傾げる理由が含まれており、そこに物言いしたくなる気持ちも頷けよう。
たが、それを図書館構想の文脈の中で語るから違和感がある。【図書館構想】と【表現責任】、この間に、一般人には理解し辛い論理の飛躍がある。それが違和感の正体なのだろう。
表現責任の話は、別のコラムなり別の文脈なりで語ってくれれば、納得し受け入れられたと思う。

私が思う事としては、見本誌の図書館行きに同意しないサークルへのケアをどうするか。ここが最大の課題と心得る。
ぶっちゃけ、同意しない方の反対理由なんてどーでもいい。

ケアを怠り、拙速に事を進めても、反発は必至だ。
サークル者の同意を如何に効率的に取り付けるか蔵書数が膨大ゆえ効率化は必須。運営側になるべく負担のかからぬ方法も考えたい)、そこが最大の課題であり、最大の難題と言えよう。