前回、長野県の同人誌即売会の世界が元気になってきた、との記事を書かせて頂いた。

地域一番手の「コミックファクトリー」はサークル規模を維持。二番手「Mega Maniac」も、新興の即売会ながら、ファクトリーに迫るサークル数を集めている。
長野県の中でも、特に松本市の活況が顕著である。そしてその中心的役割を担う即売会こそが、松本…いや長野県内最大規模の即売会「コミックファクトリー」である。
本日は、この「コミックファクトリー」に参加しての感想を記したい。
「コミックファクトリー」は、自らを「悪の組織」と称する変わった即売会であるw(URLがanalstrikeな当ブログがんな事言えた義理ではないがw)

しかし、運営は大変良心的。自分の即売会の隆盛に留まらず、長野全体の同人の盛り上がりを考え、参加者の事も思いやる良即売会である。
この即売会が、長野を代表する即売会である事は、県内の他主催にとっても幸運であろう。ファクトリーを「手本」に学べるからだ
(不幸の最たる例は、厨房即売会「コミックネットワーク」が地域代表であった九州。九州から輩出される即売会に、夢彗星以下酷いのが目立つのも、ネットワークが手本であるが故)

サークル案内が届いたのは一週間前。
正直、早いとは言えず、自分的には「青龍刀の素振り始める寸前」の「ギリギリ許容出来るライン」である。
この辺りは後述するが、もう少し早く発送をお願いしたい所である。

しかしながら、真に注目すべきはその後の対応。
発送後、一件同封すべきものを封入しそびれていた、という事実が発覚した。
しかし、この封入物はサークルチケットや宅配案内程、重要度は高くない。当日にサークル受付で手渡しでも十分事足りる
だが、ファクトリーは敢えてそうせず、再度郵便にて発送した。それも、丁寧なお詫び文付で。
再郵送も、手間とお金がかかる。当日対応でも責められる程のレベルじゃない。だが、そこを敢えて再郵送でフォローする所が、ファクトリーらしいマメさであり、誠意を感じる。

人間やってれば、ミスする事も当然あろう。問題は、その後のフォローをどうするかだ。
ファクトリーのフォローは、温かみに満ち、主催氏の誠実さを感じた
ミステイクをプラス方向に転じさせた好例であり、参加者本位の運営スタンスを感じ取れた。

…まあ、自分自身の売上は過去最悪でしたがw
何か手にとってくれる人は多かったが、購入に至らずに終わるケースが多かった。もうひと押しの「何か」が足りなのだろう。その「何か」が見えてきたらリベンジしたいものもあるが。まあ、そこは本題から外れるのでこの辺で。

今回のファクトリー、【サークルとコスプレイヤーの一体感の確保】を運営テーマに掲げている。

ファクトリーは原則コスプレを受け入れていたが、コスプレイヤーとサークルとの間に交流が無く、別世界の状況となっていた。
もっとも、これは何処の地方即売会でも見られる話。…正直、レイヤーとサークルの意識のかい離は想像以上に厳しく…サークルの本を買うレイヤーは殆んど居ないし、「レイヤーは邪魔」と断ずるサークルも多数見知っている
レイヤーが即売会始めて上手く行ったケースも殆んど無い。レイヤーとサークルに意識のかい離が大きく、レイヤー主催がサークル目線に立てないからだ。

そんな感じでレイヤーとサークル間に溝が深いのは、松本に限らず全国各地共通の悩み。
正直、両者の融合は相当の難題だ。「自分自身を見せたい」表現者と「自分の本を売りたい」表現者の表現スタンスの違いでもあり、すり合わせは限りなく不可能に近いと思う。
だが、ファクトリーは「悪あがきするのが我が組織の流儀」と諦めない。
過去にも、レイヤー対象のサークル内スタンプラリーを実施。レイヤーへのサークル頒布物購入を促し、レイヤーにサークルへの関心感心を持たせるよう仕向けた。一方、コスプレコンテストの投票権をサークルにのみ与え、サークルにレイヤーへの関心を与えるよう仕向けた。
ただ、思うような成果は上がっていないようで、試行錯誤が続いている。
前回開催はコス禁止。今回は、コススペースは用意するものの、コスプレはサークルのみに制限。…まだまだ試行錯誤は続く。

コスプレ制限は、サークルの居心地が良くなり、サークルには好評だろう。ただ、コスプレを排除して一体化を演出しただけ、と見る事も出来る。
真の意味での、コスプレとサークルの一体感となると…中々難しいものがある。
正直申し上げて、実現は非常に厳しい。私も妙案が思い付かない。実現出来れば、他地域の悩める主催にも参考になる。同人界の歴史の一頁を刻む偉業となろうが…。難しい挑戦だと思うが、取り組む価値もあろう。


この他、「ゴールドラッシュ作戦」と称し、一般参加者に(先着順)金券を配布。本を買わない一般参加者に「本に興味を持って貰う」為の施策であるが、これも相変わらず健在だ。

思えば、ファクトリーは毎回様々な企画を行っているが、漠然と企画を行うでもなく「何故企画をするのか」、その目的が、非常に明確である

金券作戦は、サークル【同人誌の】頒布支援であり、サークルに対し、ラミカ便箋→同人誌への頒布物転換を促す目的も込めていよう。
ラミカや便箋を否定はしないものの、あくまで「同人誌の頒布」が即売会の本義だ。
近年の、若人のラミカ・便箋偏重傾向を牽制し、原点回帰を狙っている。

ディスプレー作戦(希望者のみ島札に宣伝バナーを貼り付け可能)も、サークルの宣伝機会の提供・頒布支援が目的だ。
先述の(過去に実施した)コスプレコンテストやレイヤー対象のコスプレラリーも、コスプレとサークルの交流を促す目的。
企画のベクトルが、全て「同人誌の頒布を通じた交流空間の維持」という方向を向いている。
ここまで明確な即売会は、他は「杜の奇跡」ぐらいだろうか。(杜は「サークルに飽きさせず楽しんで頂く」という一点を向いた企画方針)

主催氏が明確な思想、理想を抱いて居るが故の「企画」と言えよう。

しかし、自分の理想を決して押し付ける事もしない。
今回のコスプレ制限にしてもそうだが、参加者アンケートを取る等、常に参加者の声に耳を傾け、試行錯誤を繰り返している。
参加者あっての即売会である、という主催がつい忘れがちな事実を、実感として認識しているのだろう。
皆の意見を聞き、イベントを創り上げようとする姿勢が素晴らしい。どこぞの参加者目線を忘れた主催に爪の垢でも煎じて(ry

結局ファクトリーの良い所は、こんな感じなのかと。

・理想が相当高い
・しかしそれを実現させるために試行錯誤している
・でも参加者の意見に耳を傾け、理想を参加者に押し付ける事が決してない(→参加者あっての即売会、という事実の認識)


という部分か。

しかも10年の実績を持ち、地域一番手の即売会の座を維持。それでいて慢心や驕りも無い。
そりゃサークルも安心して参加するし、遠方からも遠征サークルが出るのも頷けよう。
即売会としては極めてマトモな良即売会、という結論に達する。


【追記】
地方は、コミックネットワーク(九州)やぶちすげぇコミックバトル(岡山)、一昔前のコミックライブ等、自分以外の即売会に冷たい地域も少なくない。
しかし、このファクトリーは、他即売会に極めて優しい。
頒布時間中でもサークルへのチラシ配布を可としている(無論、サークルの頒布を邪魔しないよう配慮すべきだが)のは、開場時間までに会場に辿り着けない主催への配慮だろう。
12時からの「イベントアピール」は、関西/名古屋の男性向け即売会でも見られる光景だが、「地域の即売会を互い助け合いつつ、地域全体を盛り上げよう」とする意図を感じる。

ファクトリーの目標は、(自分所の)「即売会の成功」というよりは「信州即売会全体のの活性化」なのだろう。
互いに助け合い、盛り上げて行こうとする「相互扶助」の精神は、サークルが集まらず苦境に悩む、全ての主催が見習うべきであろう。