九州…というより福岡という場所は、(同人的に見ての)ポテンシャルを持っている町である、と思う。
所謂「東・名・大」…三大都市圏に比べれば人口規模は劣るものの、それに次ぐ人口規模を持った町であり、決して馬鹿には出来ない。
同人系のお店、という切り口から捉えて見ても、アニメイト、メロンブックス、とらのあな、まんだらけ…一通り揃っている。「福家書店」にも同人誌コーナーが存在していたし(三年前の話なので今残っているかは不明)、最近では男子禁制・BL特化の「ROSE HOUSE」というお店も登場しており、他地域に比べ店舗は豊富だ。
そして、店舗の多さこそが、同人的な需要の高さも裏付けていよう

前回は、ヘタリアオンリー「博多ばんぱく」の異例とも言える来場者数、そしてそれを捌き切った九州主催達の力量について触れ、九州に息づく「活気」について語った。
今回は、外からの新しい息吹…という事で、5月3日に開催を控える「博多東方祭」について語りたい。
【コミックネットワーク的厨運営思考の蔓延から脱する九州】

関東(というより日本ほぼ全て)と九州とでは、即売会運営に関して、意識の乖離が時折目に付く
当時の九州で覇権を握っていた「コミックネットワーク」が、開催1週間前までサークル受付→3日前にサークル案内発送などという、他地域ならサークルにフルボッコされるの間違いなしなお話が、九州では当たり前の事として通っていた事例が、最も顕著で分かりやすいお話だろうか。

夢彗星が、東京でサークルを集められず閑散即売会を繰り返したのも、九州的な意識が東京で受け入れられなかった事が一因かも、と私は考えている。
(ぶっちゃけ言えば、彼らの「手本」であった「ネットワーク」が手本らしからぬ厨運営だった事に起因するとは思うのだが…)

私は、昨年1月の「夢彗星川崎ドタキャン事件」が起きて以来、背景を分析し続けた。ここでは書けない話も含め、幾つかの結論に達した。
結論の一つとして至ったのが、「ネットワーク的な、他地域では有り得ない運営方式が、九州では当然の事として罷り通っている事」である。より分かり易い言葉で申せば、「ネットワーク的厨運営思考の九州蔓延」と言うべきか。
この「ネットワーク的厨運営思考」を九州から払拭しない限り、第二第三の夢彗星が生まれる、と直感した。

流石に「博多ばんぱく」にしても「サンホラオンリー」「tenjin.be」にしても、今世間に受け入れられている即売会は、主催の意識も変化しており、「ネットワーク的厨運営思考」は余り感じ取れない。
ネットワークを見本とせず、他の即売会の良い点を学び取る事で、良即売会として成功を収めている。これらの即売会は、「ネットワーク的思考」を脱する事に成功した、とも言えよう。
コミックネットワーク自体も、福岡では2回も「サークルが集まらない事」を理由に即売会を中止し、福岡での威信は地に堕ちた。ここまで来ればもう、ネットワークを手本とする主催は、流石に居ないと思うのだが…



【「外様」の主催として「博多東方祭」に期待する】

「博多東方祭」は、単に旬ジャンルの地方開催オンリーイベント、と言うだけではない。九州がネットワーク的思考を脱しようとしているさなかに登場した即売会、という文脈でも捉えている。

「博多東方祭」の大きな特徴の一つとして、主催が関東在住者という点が挙げられる。九州の即売会の大半は、九州人の手によって手がけられ、関東在住の人間は所詮は「外様」に過ぎない。
だが、「外様」ゆえに、九州人とは違った発想で即売会の運営に臨める。東京の洗練された即売会の運営から学び取った事を、九州の地にて生かし、九州に新たな息吹を呼び込む事が出来るのではないか。そして、ネットワーク的思考から離脱しようとする流れの「トドメ」になるのではないか。そういう観点からも、「博多東方祭」には期待を寄せている。

その一方で、既存の主催者達の反感を買いやすい所が、「外様」の弱点となる。
地元主催の視点に立てば、会場との信頼も構築し、即売会の継続開催に勤しんでいたにも関わらず、外からよく分からないのがやってきて荒らし回って自分達が今まで築き上げたものが崩れてしまうのでは?そういう不安を抱く気持ちは理解出来る。
その気持ちが過ぎて、過度に縄張り意識を持って排他的になるのもどうかとは思うが。

「博多東方祭」に限らず外様主催全般に言える事だが、あくまで自分は余所者、皆さんのお住まいのこの地でイベントを開催させて頂いている。外様主催は、そういう謙虚な姿勢を忘れてはならないだろう。
地元の既存有力主催に頭を下げ、協力を仰ぐのも良い。それが、既存主催との軋轢を防ぐ事にも繋がるからだ。
地元の即売会「tenjin.be」とは比較的良好な関係を保っているだろうが、「tenjin.be」だけが九州主催ではない。可能な限り、他有力主催との関係構築にも勤しむと良いだろう。


【博多東方祭から学び得る 落選サークルへのフォロー】

博多東方祭は、即売会としては募集80サークルに対し160サークルの参加申し込みを受けた。
昨秋の京都開催「東方紅楼夢」以降多くの東方オンリーで地道に告知を図り、ゴールデンウイーク最中の5月3日という遠征組の参加が容易な日取りである事も作用した結果であろう。
…しかしそれにしても、九州のオンリーで160サークルは異例中の異例、旬ジャンルとは言え、九州の秘めたるパワーを実感した次第である。

会場の「都久志会館」は、「tenjin.be」でもよく利用されている会場だが、おおよそ80サークル前後が標準だ。
出来る限り落選者を出したくないとの事で、限界までサークルを詰め込んだが、それでも約60サークルに落選通知を出さざるを得なかった。

しかしながら、これがこの即売会の特筆すべき長所なのだが、落選者に対するフォローが大変に優れている。
他の主催諸氏も、博多東方祭の落選者フォローに学ぶ所は大きいのでは無かろうか。
先ず、「大(9)州東方祭」(※(9)は実際には○の中に9を入れた表記)と銘打って次回開催を決めているが、落選サークルには、次回「大(9)州東方祭」の開催優待券(優先的に参加可能)を付与している。

#次回会場も今回の博多を取りやめ、広々と運用の出来る北九州市(小倉)の西日本国際展示場としているが(それゆえに「博多東方祭」の看板を下ろし「大(9)州東方祭」名義での開催としている)、これも「次回は絶対落選者を出さない」という決意の表れか。

過半数を落とさざるを得なかった「ケットコム」主催「東方崇敬祭」も似たような取り組みを行っているが(7月に急遽「第二回 東方崇敬祭」の開催を決め、落選サークル優先でサークル参加申し込みを受け付けた)、崇敬祭にせよ博多東方祭にせよ、落選サークルへの配慮が行き届いている。主催者のサークル目線に立った思いやりの表れであり、大いに好感が持てる。

「博多東方祭」の場合は、これに加え、落選者に対しカタログも同封している
サークル参加はお断りせざるを得なかったが、もし良かったら一般参加者としてでも足を運んでいただき、東方オンリーを楽しんで欲しい。そういう主催者からのメッセージであろう。

確かに、サークルの立場から見れば、貴重なサークル活動の場を奪われており余り面白くない。サークル参加費を返して貰って済む問題ではなく、気の済まない方もいよう。サークル参加の可否は、お金の問題ではない。
だが、ここまで配慮し誠意を見せてくれれば、渋々かもしれないが納得せざるを得まい。
サークルを落選させるのは簡単だが、ただ金を返して貰うだけでは誠意は伝わらない。「博多東方祭」は、落選サークルへのフォローを見せ、誠意を伝えた即売会である。
そして、何故そこまで誠意を出せたか…となると主催氏自身がサークルを営んでおり、サークルの目線で物を見る事ができるからではないか、と分析する。



【九州では珍しい カタログ前売りの導入】

今回、「博多東方祭」では、九州では珍しいカタログ前売り販売を実施した。
九州には、そもそもカタログ前売りの習慣が存在しない。せいぜい、「コミックシティ」が地元店舗で前売りを行う程度だが、それもローソンチケットにて【カタログ引換券】を前売りするという特殊な形態。他地域で行われているように、店舗に委託しての事前販売は行われていない。
(5/2追記:今回はローソンだけだが、過去には店舗での委託も行っていた模様)

…まあ、コミックネットワークが開催1週間前までサークル受付…なんてのが当たり前の地域じゃ、そりゃ開催2〜3週間前から前売りなんて習慣は根付かないだろう。

ただ、2008年10月31日付「ようやく「始まった」tenjin.be」でも論述したが、カタログ前売りには、主催者にもメリットが幾つかある。
サークルリストやサークル参加案内を早めに出せるのなら、前売りは主催者に勧めたい部分であり、上記記事においても、私は「tenjin.be」に対しても前売りを強く推奨した。
残念ながら、「tenjin.be」もカタログ前売りには消極的だったが、今回、「博多東方祭」が前売り実施に至った。

カタログの前売りなんて当たり前の世界だが、九州においてのそれは、新たな取り組み、意欲的な取り組みと位置付けられる
カタログは当日売りが基本だが、前売りという選択肢だってあってもおかしくない。
「博多東方祭」のカタログ前売り戦略の成功に刺激を受け、真似る主催が出てくれば、福岡の即売会が外の刺激を受け変わっていく事にもなる。結果、博多東方祭の取り組みが、周辺主催に新風を吹き込む…そういう構図になる事を、私は期待している。


【やはり僅かに不安の残る当日対応】

会場の都久志会館は、tenjin.beだと80サークルが標準だ。
…100サークルは詰め込みすぎではないか。前回取り上げた「博多ばんぱく」同様、死亡フラグが立とう。

前段にて「カタログ前売り戦略の成功」と申し上げた。
確かにカタログは売れた。そういう意味においては成功だ。
…だが、成功し過ぎた。売れ過ぎた。刷った1000部ほぼ完売らしい。

参加しないものの記念で購入…という東京人も居ようから、買った全てが参加という訳でも無かろうが、仮にそれを全体の2割としても、参加者800以上は堅い。
勿論、これにカタログ未購入の一般参加者も加わる。…果たして当日の来場者数、どれ程の物となろうか?
…配置が死亡フラグなら、来場者見込みも死亡フラグだw

流石に当日が心配にはなる。
当日には、コミケ・コミコミ等で経験豊富な熟練のスタッフを、関西方面から何人か呼び寄せるとの事なので、彼らの技量もあり、多分何とか問題無く終わるとは思うのだが…やっぱり、少し不安は残る。
ネットを見ると、勝手連的な応援サイトや応援ムービーも目立ち、参加者の盛り上がり方が、明らかに半端じゃない。
「博多ばんぱく」の時同様に、九州にこれ程までのパワーがあったのか、との驚きを隠せないが、一方で「御し切れるのか?」との不安は拭えない。
全ては当日明らかになろうが、無事に終わる事を心より願いたい。