5月3日開催「博多東方祭」は、九州の同人誌即売会の歴史の1頁に名を残し、九州即売会界隈に有意義な足跡を遺した即売会であった、と私は考える。
何故そう考えるか。数多くの来場者を呼び、九州同人界に秘められし活気を見せた事も大きいが、それだけではない。
という訳で、以下「博多東方祭」がもたらした意義深い点を申し上げる事としたい。
【九州にこれ程の熱気が!九州同人史上稀に見る脅威の来場者数】

数字面で見れば、サークル申込数160に対し、会場・都久志会館の許容限度ギリギリの100サークル配置
総来場者数も主催者曰く約2000人九州の同人誌即売会においては未曾有の来場者数であり、これを越えるレベルは福岡ヤフードームのコミックシティ(推計10000人弱?)位しか見当たらない。


2009年3月に福岡・モルティ天神で開催されたヘタリアオンリー「博多ばんぱく」の時も総来場者数1200〜1400人、九州のオンリーでは「有り得ない」数、未曾有の来訪者数であった。
それでも、「博多ばんぱく」は整理券方式による段階的な入場制限をかけるものの、何とか来場者を捌き切る事に成功し得た。
多少の瑕疵はあろうが、来訪者数の多さを考えるとこれを責めるのは酷な話だろう。

…では、「博多東方祭」はどうだったのか?
「博多東方祭」は、サークル数こそ100と「博多ばんぱく」には劣るものの(但し抽選による落選を約60出している)、総来場者数は約2000。「博多ばんぱく」以上に未曾有の来場者数であった。
前売りカタログ(推定600〜1000)が完売、当日売りが殆んど残されていない状況。かの「ハートフルコミュニケーション」を彷彿させる展開で、開催前時点ですでに異様な盛り上がりを見せた。
更に、参加者側の盛り上がりも尋常ではなかった。有志による勝手連的な応援ムービーや応援サイトも雨後の筍の如く現れた。
明らかにヘタリアオンリーすらも軽く超えている。念のため申し上げておくが、ヘタリアオンリーだって尋常ならざる人の多さだった。九州未曾有の殺伐即売会であった。
…それすらも軽く凌駕する「博多東方祭」は、九州の東方ファンの期待を一身に背負った即売会と言えようが、その人気と瞬発力や、いかばかりか。

ヘタリアオンリーを超える2000人が押し寄せ、そして会場はヘタリアの「モルティ天神」よりも狭い「都久志会館」での開催。
結局、「博多東方祭」は、整理券と入れ替え制を併用。45分毎に5回の入れ替えと言う荒業をもって、辛うじて参加者を捌くに至った。
この事はやむを得ぬ措置、決して運営を責める事は出来ない(敢えて責めるとすれば後述「会場選定」の問題のみ)。寧ろ、主催者の主催経験の薄さを考慮すると、よくぞここまで健闘したと思う。主催以下スタッフ関係者の奮闘に敬意を表したい。

とはいえ、一般参加者にしてみれば、一時間も会場に居られず、買い手としては満足度も今一つ。消化不良に終わったのは否めまい。
今回の来場者数を考えると、この結果も致し方無いかもしれないが…次は大勢の来訪者を見越し、敢えて会場を北九州・小倉に移す。今回消化不良だった皆さんも、次回小倉でリベンジする、という流れになろう。

しかし、幾ら爆発的人気の東方ジャンルとは言え、これだけの来場者数を呼ぶとは、誰が予想したのか。
九州は、コミックネットワークの惨状のイメージが強いせいだろうか。同人不毛の地と私はイメージしていた。ヘタリアオンリー「博多ばんぱく」、そしてこの「博多東方祭」。九州の潜在的に眠るパワーを見事なまでに引き出した即売会として、私は意義付けたい。



【夢の対決!護憲派vs右翼街宣車vs東方厨】

以前ブログでもちらっと触れたが、「博多東方祭」の最中、運営とは全く関係ない外野で珍妙な戦いが勃発したので申し上げたい。
会場の「都久志会館」。余り知られていないが、その運営母体は、【(財)福岡県教職員互助会】。先生達の組織だ。勿論、都久志会館の下の階には、教職員組織の事務局がテナントとして入っている。
そして教職員と言えば、日教組の例を挙げるまでも無く左寄りの傾向が強い。護憲派が多い、とも言い換えられよう。
そしてこの「博多東方祭」、開催日は5月3日…憲法記念日である。

ここまで言えば見当付こうか、さあ、左寄りな教職員の皆さんの出番です!
この日、この都久志会館を根城に、「憲法9条の会」の皆さんが出動!
しかし、左翼を目の仇にする「国士」(2ch的には酷使様ともいふ)の諸君も負けてはいられません!右翼黒塗りの街宣車が何台も編隊を組み、彼らに襲いかからんと都久志会館を目指す!
だが世の中、そう簡単に酷使様の思い通りには動かない。そこに立ち塞がるのは意外な伏兵、東方厨の皆様!
東方祭参加の東方厨諸君その数2000名が都久志会館前に列を成し、護憲派vs右翼の散らす火花の前に立ち塞がる!

5月3日憲法記念日。ここに護憲派vs右翼vs東方厨。夢のスーパーバトルが勃発したw


…いや、実際にバトルしてないですから、念のため。護憲派が徘徊し、右翼が押し寄せたのは事実ですが。

でもここに東方と街宣車、二つの顔を併せ持つ世紀の痛バス【アキバエクスプレスあたりが乗り込んで来れば楽しかったろうなあ。
緊迫した雰囲気、護憲派&右翼の対峙の中、東方音楽を奏でながら能天気に現れたら「空気読めない子」間違いなしですが、見方を変えれば神域に達する空気の読みっぷりとも取れますしw

…そういう妄想はともかく、我々は一つの教訓を得た。

5月3日に都久志会館使うのは自重しる!

無駄に騒がしいし、参加者も不安がるからだ。
流石にこんな展開読めないから、今回この日で開催した「博多東方祭」をこの事で責め立てる意志は無いが、まあ、今後都久志を使うときは日程に注意しよう、という事で。



【九州でのスタッフ人材を発掘した「博多東方祭」】

博多東方祭を語る上で、決して忘れてはならない事。
九州での「スタッフ」たる人材を多く発掘した事である。
「スタッフ」を目指す人間は、はっきり言って少数派だ。何処の地方に行っても「スタッフ不足」「人材不足」との悩みを聞く。九州とて例外ではない。
人材発掘は急務だが、妙案は見当たらない。せいぜいスタッフを公募する程度だが、そんな効果がある訳でも無い。

博多東方祭は、このスタッフ不足の問題の突破口を開き、スタッフ発掘に成功した即売会である。

博多東方祭は、事前に過度の来場者を予想。
こういう時、主催同士のネットワークを通じ、知り合いのスタッフの応援を得るのが通例だ。「博麗神社例大祭」も「東方紅楼夢」も、そうやってスタッフを確保している。
ただ、「博多東方祭」は、人を呼ぶにも地理的に限度がある。関東はもとより、関西からだって人を呼ぶには距離が遠すぎる。
そこで「博多東方祭」は、(少数だが)関西や岡山より熟練のコミケスタッフ含む経験者を呼び寄せ、また地元のスタッフ経験者も呼び寄せた。

更に、スタッフを広く募り、来るもの拒まず、スタッフ初心者も登用した。
東方オンリーは圧倒的な人口密度。ある程度の経験を有する人材でないと、スタッフは務まらないだろう。博多東方祭だって、本当なら皆経験者で揃えたい。
だが九州もスタッフ人材が豊富じゃないし、岡山や関西から人を集めても尚、押し寄せる参加者に抗し切れない、と判断したのだろう。一人でも多くの人手を集める、という観点から、来る者拒まずでスタッフを採用した。

と言っても、初スタッフがいきなり殺伐即売会の東方…流石に赤ん坊にウォッカを飲ませるかの如き無謀だ
そこで「博多東方祭」は、初心者研修として一工夫を図った。
博多東方祭の約3週間前、同じ都久志会館で開催されしオールジャンル「tenjin.be」にて、研修生的な意味合いでスタッフ修行をさせた。「tenjin.be」は、九州同人活性化の一環として、主催/スタッフの「後進」を育てたいと模索していた事もあり、若手の育成になるならばと快諾。東方祭新人スタッフを受け入れた。
勿論、「tenjin.be」一回の研修だけでは不十分だが、それでも、ぶっつけ本番で当日に臨むよりは遥かにマシだろう。

そして最終的に集まったスタッフは約40人スタッフ未経験者はその内の半数との話。
だが、別の見方をすれば、「博多東方祭」により、スタッフ業務に興味関心を示した人材が20人近くに上った。スタッフの有望株を20人近く発掘した。そう捉える事も出来る。

人材の希少な九州にとっては、大変明るいニュースである。

無論、ここで志願した推計20人全員が今後もスタッフ業務を続けるとは限らない。
溢れんばかりの参加者を前に、スタッフ業務はこりごり、という向きが居ても不思議はない。

だが、その内半分でもスタッフの面白さに目覚めてくれれば、それで十分だ。
彼らがスタッフとしての回数を重ね、経験を積めば、九州の有力なスタッフ人材が10人増える事になる。九州の人材不足解決に、大いに寄与しよう。
その中で一人でも二人でも「自分でも即売会やってみよう!」と思い立つ人が出れば面白い。若い感性で即売会を開き成功すれば、九州同人の活性化にも繋がる。

今回の「博多東方祭」における新人スタッフ登用は、九州同人の将来にも寄与する若手発掘・育成という観点からも、非常に意義の深い試みであったと思う。

無論、40人の大所帯。互いに面識の無い人達同士の急造チームだ。流石に、組織としての統制が取れていなかった、との声が漏れ聞こえるのも必然か。
主催氏には、リーダーシップの一層の発揮と組織化推進が、今後の課題として求められよう。


【会場選定の問題】

ここまで「博多東方祭」を高く評価しているが、反省点や課題も、決して少なくはない。
その中でも最たる点は、やはり会場選定の是非であろう。

これは結果論となってしまうが、来場者2000人に対し「都久志会館」は無理筋だった。
流石にこの来場者数を読める人もそう滅多にはいないし、蓋を開けて見ないと分からないから、この会場を選んだ事そのものは責めるつもりはない。

私は昨年秋の「tenjin.be」にサークル参加の際、主催氏に都久志会館はキャパシティに不安があるから、せめて「モルティ天神」に変えるべきでは?と進言した。モルティの方が若干広く、まだマシとの判断からだ。
しかし、モルティにした所で2000人を捌くのは厳しい。五十歩百歩の世界だろう。

となると、それより広い会場‐スターレーンや国際センターが思い浮かぶが、会場費100万近く、第一回目立ち上げの即売会がそれは、余りに冒険が過ぎる。
といった事情を考慮すると、都久志の選択も已む無し、という結論になり、この選択を成した主催の責を問うのは気の毒だ。

次回は会場に余裕のある小倉の西日本国際展示場なので、会場キャパ的にも心配は無いが、やはり九州でオンリーするなら、博多でやりたいもの。
博多で何処か適切な会場がないものか。適切な会場が見当たらないのが辛い所だが、新規の会場開拓を頑張るしかないのだろうか?



課題は多々残すものの、全般的に見て、博多東方祭の取り組みは特筆すべき点が多く、敢えてページを割いて取り上げさせていただいた。
男性向けでは珍しい、サークル出身の主催という事もあり、率直言って経験豊富な熟練の主催に比べ、ソツ無くこなせたとは言えないし、詰めの甘さもあったかもしれない。
しかしながらその一方で、(前回ブログでも述べた)落選者へのフォローの秀逸さ、また(今回初めて触れるが)来場者の膨れを想定し、サークルに「人が異常に来るので頒布物は多めに持って来て」と推奨の呼び掛けを行ったり、他の即売会には無い独特の、サークル目線に立った取り組みは注目に値する。
また、初心者を積極的に登用し、スタッフ人材の育成に務める取り組みも興味深い。九州では珍しいカタログ前売りも行った。
意欲的かつ独特の取り組みが多く目を引き、他の即売会が見習える要素も多く、今回ページを割いて取り上げた次第である。