財政再建団体に転落した自治体…北海道夕張市。
とある理由により、この町とのご縁が極めて強くなり、夕張評論本「コーマニズム宣言 夕張論」まで刊行するほどに、思い入れも深くなってしまった。
「コーマニズム宣言 夕張論」では、ネタ半分ながらも、夕張市内における同人誌即売会の開催の可能性について言及した。
その中で、「アディーレ会館ゆうばり(旧夕張市民会館)」や、「ホテルマウントレースイ」での即売会開催が可能。後は、夕張に行こうなどと奇特な事考える、頭にお花畑の咲いた主催が居て、それに乗る、頭にお花畑の咲いたサークルが居ればOKだ。
そんな感じの事を、「夕張論」の中で申し上げたと記憶している。

とは言え、現実問題、夕張で即売会が開催される事など、「有り得ない」と考えていた。

夕張市は、周辺自治体とも地理的・交通的に隔絶され、商圏は夕張市の僅か人口1万ちょいに過ぎない。隣町の栗山と由仁を含めても、2万に過ぎないし、栗山・由仁ならば札幌から見れば手前。札幌の商圏に誘引されよう。
人口構成を見ても、20〜30年前の炭鉱マンがそのまま定住しているケースが多く、すなわち老齢者こそ多いが、同人誌即売会の主力たる若年層は極めて少ない。
そしてその中で「同人」を知っている若者は果たして何人居るのやら…?(夕張市民だけで見ると同人人口は一桁かもしれない)
何処をどう考えても、夕張で即売会の需要なんぞ、有り得ない。未来永劫夕張で即売会が開かれる事など、当然有り得ない。そう考えていた。
…もっとも、心の片隅で「夕張で即売会誰かやんねえかなあ、俺絶対行くのに」ぐらいは思っていたがw

しかし、世の中分からないものである。現実味の薄い私の妄想が、まさかここまで短期間の間に現実と化してしまうとはw
我が妄想が現実と化した即売会こそ、2010年5月8日(土)開催「夕張まんがまつり」である。
公式サイトを拝見するに、未だ作成中のコンテンツも少なくないが、少なくとも、北海道で同人誌即売会を営む「カオスフェスティバル」と、東京で男の娘オンリー「男の娘」等で実績を上げているイベント主催団体「モノリス」。この両者の共催であるという事は分かる。
「夕張まんがまつり」のトップページに、「カオスフェスティバル」のマスコットキャラ、そして「モノリス」のロゴが貼ってある所からも読み取れる。
(他、カオスフェスティバル主催ブログで夕張で即売会を実施する旨の告知が成されている事、10月初旬開催のモノリス主催即売会のパンフレットに広告が掲載された事、「男の娘」チラシに「夕張で開催決定!」と載っていた事からも、両者共催の事実が読み解ける)

実は今年6月末の時点で、私は担当者から内々に相談を受け、交通アクセスや即売会開催に足る場所についてアドバイスをさせて頂いた記憶がある。
また、何故か夕張界隈の情報は現地からちょろちょろと当方に流れ、彼らが現地で打ち合わせしたり…なんて話も流れて来る。表には出来なかったが、少しずつ、話が進んでいくのを感じ取っていた。
私の妄想が少しずつ現実と化していく。なかなか面白い展開だが、公にされていない内は流石にブログにも書けず、ストレスもたまったw
公式サイトが公開され、またカオスフェスティバル・モノリス両者が告知を始めるに至り、ようやく今日この場で話が出来る次第となった。

もっとも、カオスフェスティバルが、東方オンリーを後出しでユウメディアにぶつけてきた件もあり、正直申して心おきなく応援出来る気分では無いのだが…。
このバッティング問題が解決に至れば、私も「夕張まんがまつり」を心行く迄応援出来よう。

即売会の開催は、土曜の午後から。
夕張へのアクセスは、札幌からバスが基本だが(所要約1時間)、バスの運行ダイヤも考慮し午後開始としているのだろう。
但し、遠方からの遠征組を当て込むなら、千歳空港からの臨時バス運行を提案したい。冬季スキーシーズンならば、空港発夕張行きのバスも運行されていようが、夏期にはそれが無い。とは言え、千歳から札幌回りでバスに乗るのも遠回りで時間がかかる。
空港からの臨時バスの運行で、夕張へのアクセスの「弱点」が補完されよう。
(注:「夕張まんがまつり」の「来場案内」には、新千歳からもバス直行の旨が記されているが、これは冬季限定運行の為「誤り」である。恐らくリンク先の冬季ダイヤを見ての事だろうが、5月の夕張は「夏季」に当たるので、訂正が必要である。)

10月のモノリス主催オンリーで配られたチラシを拝見すると、「送迎バス計画中!」との事で、その辺りも考えていらっしゃる模様だ。
出来れば、途中で新夕張駅を経由させれば、道東からのアクセスも改善しよう。新夕張〜夕張間のJR線も路線バスも、即売会開催の昼間は圧倒的に劣悪なダイヤなので、両地点を繋ぐピストンバスがあっても良い。
場所が場所で、アクセスにも恵まれているとは言えない。既存の交通インフラでは明らかに不充分、主催側でそれを補完し得るような交通手段を用意せねばならないだろう。

土曜日開催なのは、遠方からの遠征組が帰りやすいようとの狙いからだろう。
合宿で土曜の夜に夕張に泊まっても、翌日は日曜日。他の場所で観光してからでも、帰途に就ける。
日曜日は「Elysian」が札幌で開催されるので、朝飯食って7時50分頃のバスに乗れば、9時には新札幌や大谷地のバスターミナルに到着だ。そして、この日の「Elysian」は札幌コンベンションセンターでの開催。夕張からのバスの札幌側の玄関口となる、新札幌や大谷地からの連絡も容易。という事で、「Elysian」との即売会ハシゴも容易に可能だw
翌週に十勝で開催されるアイマスオンリー「兄ちゃん!×2 とかちつくちて〜 in十勝」もそうだが、遠征組を意識すれば、どうしても土曜の午後という選択となる。ある意味、極めて妥当な日程組みである。

但し、一つだけ気になる点がある。
それは、誰が夕張に来るのか?という部分だ。誰をターゲットとするのか?と言い換えても良い。

私は夕張への思い入れが強く、今時点で既に参加を決めている。チラシ配布等、可能な限りの協力を惜しまない。
だが、私のような奇特な人は稀だ。普通の人に、そこまでのモチベーションがあるかといえば、否である。
仮に、コミケなりコミックシティなりCOMIC1なり、名の通った所が夕張に来るなら、そのネームバリューで参加者は見込めよう。
だが、失礼ながら、カオスフェスティバルにせよモノリスにせよ、そこまでの知名度は無い。

先日、岡山・鷲羽山「瓢箪からロバロバ」に参加した時も感じた事だが、場所が場所だけに、その即売会に参加したくなるような【特定のモチベーション】が無ければ来場者は見込めない。
「瓢箪からロバロバ」は、「星矢同人者の同窓会」…すなわち【旧友との再会】という機能を持つからこそ、またそれがかつて隆盛を誇った「いっしょにエリシアンへ行こう」の流れを引いているからこそ、参加が促され、そこそこの来場者数に繋がった。
では、この「夕張まんがまつり」は、何が参加のモチベーションとたり襟のか?主催側には、一度その点を突き詰め、深く考えて頂きたいと願う。

夕張の窮状を鑑み、「夕張支援」を呼びかけるのは一つの案だろう。
道内のバスツアー等には、夕張応援ツアーと称し、雪かきボランティア体験等夕張に貢献する事を組み込んだツアーも売り出されている。
確かに「夕張支援」の大義名分は、観光資源としての活用も可能だ。
ただ、それのみを旗印に人は集まるのか?それこそ、私のように、夕張に過度に強い思い入れを持つ向きが少々集まって終わりではないか。

私は、寧ろ夕張に縁の深い方々を掘り起こすという路線に、活路を求める事を提言したい。
夕張は元々炭鉱の町。炭鉱時代の夕張に居住するも、今は離れてしまった…という方も決して少なくない。
炭鉱時代を過ごした方々へのアピールを…と申し上げたい所だが、リアルで過ごした方々は若くとも40代以降。世代的に、流石に同人に縁のある方は少ないだろう。
ターゲットはその子供達だ。世代としては中高生より上の世代に当たる。親から夕張の話を聞かされて育ったから、一般人よりは思い入れが深い。
そう言った方々へのアピールを…と申し上げたい所だが、元夕張市民を父母に持つ同人者なんてピンポイントな条件で告知を掛けるのは、流石に困難だ。

ただ、夕張から移住した先は、たぶん道外よりも道内の方が多いように思う。特に、人口規模の大きい札幌市にそれは言えよう。
即ち、効率悪くとも道内の即売会・ショップ全てを網羅するつもりで告知を図るべきである。北海道全土でどぶ板営業を敢行するぐらいの意気込みで臨んでいただきたい。
そしてその中から、「夕張」という餌にサークルが釣れるのを待つ…効率は決して良くないが、それに勝る道が思い浮かばない以上、どぶ板を地道にこなすしか無かろう。

また、夕張は小さい町。小さい町ならではこそ、地元に根差した告知が必要だ。
福井県敦賀市「BUTTERFLY」が取り組んだように、地域に根差した告知にも取り組んで欲しい。
特にターゲットは、夕張及び近隣自治体(栗山・由仁・長沼等)の中高生だ。地域のコミュニティセンターやコンビニ、ゲームセンター、本屋、文具店(画材屋)…ライトなレベルでも構わない。そっち系に興味を抱く層の集うスポットにポスターやチラシを置き、地域の同人者の掘り起こしに努めたい。「夕張まんがまつり」という分かりやすい名前も、ライト層への誘引に役立ちそうな気がする。
また、NPOゆうばりファンタ(現在の映画祭の主催)・ゆうばり商工会議所等の地元団体とも連携を組む…とまでは行かずとも、彼らが(名前だけでも)後援として名を連ねてくれれば、夕張近辺で告知するに箔付けとなるだろう。

遠方からの参加者が大半…いや殆んど。観光も兼ねての参加する方も少なくないだろう。観光目的の参加者を増やし参加者を上積みする観点から、夕張の「魅力」を情報提供し、夕張に行きたくなるようなアプローチも必要だ。
夕張は、ここ最近は「花畑牧場」直売所、そしてJR夕張駅前のゆうばり新名所・ゆうばり屋台村「バリー屋台」と、新しく話題性のある観光名所も登場した。
また、昭和40年代の炭鉱住宅が現存し立ち並ぶ【清水沢清陵町】の町並みは、往時の夕張を今に伝える生きた遺構。車窓風景だけでも一見の価値有り。
廃墟マニア向けだが、かつて人口2万を擁すも、間もなくダムが完成し(民主党政権・ダム見直しで先行きは不透明だが)湖底に沈む町【大夕張】(鹿島地区ともいう)がある。もう既に住民は退去して、廃墟となっている。即売会の前後で、そこを探訪するオプションツアーがあっても、面白いかもしれない。
夕張は、探せば探す程にユニークな観光資源が発掘できる町である。そういう知られざる観光資源を主催自ら発信し、誘客を図る。そういうアプローチがあっても良かろう。


率直申し上げて、地方で開催される即売会…それも滅多に即売会が開催されない、過疎の地方都市で開催される即売会ともなると、漫然と開催するのならば、即売会としての体すら成し得ない、閑散極まりない即売会となろう。

これが【聖地巡礼】という、当地との縁を感じる大義名分があればサークルも集まろう。また、「瓢箪からロバロバ」のような【同窓会】としての大義名分があっても同様だ。

しかし、夕張にそこまでの大義名分があるとも思えない。正直、上記提言を実行しても、厳しい戦いとなろう。
夕張での即売会を成功させるには、1サークル集める為に、一般参加者一人を集める為に死にもの狂いの努力が必要だろう。厳しい環境だ。主催には、相応の「覚悟」が求められると考える。