10月25日、長野県岡谷市開催の東方風神録オンリー「御射宮司祭(みしゃぐじさい)」に参加させて頂いた。
「東方風神録」のモデルとなった舞台が【諏訪大社】という事もあり、開催箇所を諏訪大社にも近い諏訪湖畔の岡谷市に設定。JR岡谷駅前の商業施設「ララ岡谷」での開催とした、異色の即売会である。
この即売会は、私がこれまでに参加した即売会の中でも、極めて個性的な「光る部分」を多く含んだ即売会であった。また、当地信州の同人世界活性化にも寄与する所多く、極めて意義深い即売会であった。
地方開催即売会の成功例として、また「聖地巡礼」型即売会の成功例として、後世に長く伝えるべき即売会である、と私は確信している。
以下、「御射宮司祭」の光る点について、掘り下げて論じて参りたい。
【遠征組だけではない!地元同人者の掘り起こしにも成功】

地方開催オンリーの成功例としては、一昨年鳥取市で開催されしアイドルマスターオンリー「亜美にπタッチ!」が有名だろう。
地元鳥取での告知を事実上放棄。東京・大阪の男性向けオールジャンルやアイマスオンリーに告知を傾斜という大胆な戦略だったが、結果的にそれが奏功した。
サークルも一般参加者も遠征組ばかりだが、参加サークル数30、一般参加者も相当数。地方開催のオンリーイベントとしては異例の大盛況を修めた。

今回の「御射宮司祭」も、「聖地巡礼」と言う要素も加味し、アイマス同様、サークルも参加者も遠征組ばかりと予測していた。
アイマス同様に告知は都内中心たる事、主催側が「聖地巡礼バスツアー」を設定し遠征組の需要を喚起していた事、参加sp数が280と信州の即売会としては異例の多さ(注:信州最大規模の即売会は松本市「コミックファクトリー」の約180)であり、地元サークルだけでこの数字は有り得ない事。この辺りも、参加者が遠征組中心と予測した事の根拠となろう。

だが、蓋を空けてみると意外な展開。
アイマスは東京からの遠征組が多く、言わばサークルや一般が鳥取に「民族大移動」したようなもの。成功した事は評価したいが、地元不在のきらいがある。当地同人の活性化に繋がったかとなると、少し微妙だ。
これに対し「御射宮司祭」は、案外地元参加者が多かった。サークルも一般も、甲信出身者が半分近く居たのではないか?
地元人の参加も少なく無い。地元同人者の掘り起こしにも成功し、信州に秘められし潜在的なパワーを呼び起こした。信州同人の活性化にも貢献しており、その点でも意義深さはより強いと言える。

私は、前日夕方まで大阪で所用のあった関係で、また翌朝には岡谷に着いていないとならず、大阪から夜行バスで信州に移動する事となった。
とは言え、大阪から諏訪・松本方面への夜行バスは存在しない(昼行便はあるが)。
検討の結果、長野行きの夜行バスに乗車。途中の麻績インターでバスを降り、徒歩10分の聖高原駅から電車で約一時間をかけ、岡谷に8時半に到着というルートが最速と判断し、実行に移した。

朝8時半、私が着いた時点で岡谷駅周辺を拝見するに、東方厨なそれっぽい方は4〜5人拝見した程度。徹夜組が居る感じも無かった。
平和な雰囲気で良き事とは思うが、他東方オンリーの阿鼻叫喚とはかけ離れ、いささか拍子抜けな気がw

9時20分、東京方面からの始発となる「特急スーパーあずさ1号が」が岡谷に到着する。遠征組が朝一で着きたいなら、この列車が最速だ。
大量にわんさか人が来るか…?と思ったが、降りた方は20人程度。意外に少ない。
寧ろ松本や飯田方面からの上り普通列車から降りてくる参加者…すなわち地元人の方が多いぐらいであった。

9時半頃の段階で100人程度が岡谷駅周辺をうろうろし始めてきた所で、肩たたきが始まり列形成。五階の屋外駐車場に誘導される。スタッフの方も入り口でスタンバイ、ララ岡谷入口で誘導案内を始める。

五階屋外駐車場には、痛車が20台以上駐車、即興の痛車展示場と化していたw
信州は「コミックファクトリー」等既存の地元即売会にも痛車の集うケース多く、この展開は決して理解できない話でも無いが、東方だけでよくぞここまで集まっものだ。
一般参加者は、この「痛車」を眺めながらの待機、という構図だ。待ってる身でも退屈せずに済んだw

東京からの遠征組買い手に話を伺った所、今回は名の通ったサークルが少なかった、寧ろ「新規開拓」がメインになりそうとの事。
名が通ったサークルが少ないという事は、東京での活躍を通じ名を売る機会の無いサークル…すなわち地元サークルが多い、という事を意味する。

一方、東京の買い手からすれば、有名サークルが居なければ、参加のモチベーションも下がる。
サークルの遠征組が少ないから、一般の遠征組も少ない。
そこが、東京からの遠征組が思った以上に少ない構図となる。
遠征組を当て込み聖地巡礼も絡めたバスツアーが設定されたが、最小催行人員に満たず催行中止となった事も、遠征組の少なさを物語っていよう。

だが、それでも来場者は、現場スタッフさんのお話によると目算1000人近くとの事。(正確な数字は公式発表を待ちたいが)
地元の学生さんら、若い方の来訪が非常に目立つ。遠征組が予想より少ない反面、地元組が予想以上に多く来場しその穴を埋めた、と言えよう。

「御射宮司祭」は、「聖地巡礼」がその趣旨たるにも関わらず、遠征参加者を呼び集めるだけに終わらなかった。地元の東方ファンの掘り起こしを通じ、当地同人の活性化にも、結果的に成功した即売会として位置付けられよう。


【地域に密着した運営】

即売会の実務面、告知面では「ぷろじぇくとD」「ケットコム」「ぷにケット」と言った有力即売会関係者の支援を受けているが、主催氏本人は、地元諏訪の方のようだ。
地元の方なだけに、地域に密着。地元の方との連携を密にして、運営に臨んでいるようにお見受けした。

例えば、今回は集客不足に終わったが、聖地巡礼バスツアー。これは「オムニネット」という旅行業も事業とする地元ベンチャー企業の協力を受けている。
また、当日は「公式グッズ」として純米酒やお饅頭の販売も行われたが、これも、地元の業者さんが出店協力して販売に臨んでいる。
サークルを見ても、味噌等地元特産の素材をふんだんに用いた東方煎餅を地元企業が販売する等、ここでも地元の業者が活躍している。
地場業者の積極的な参加が場の盛り上げに貢献しているが、それも主催側が地元を意識、地元と共存を図ろうとする意欲の賜物だろう。
「聖地」における、地元人とファンとの幸福な関係は、「らき☆すた」における埼玉県鷲宮町が有名だが、それにも比する良好な関係を築きつつあるように思う。
…水戸のコミケットスペシャルも、こんな感じで町と即売会とが良き関係となるのだろうか?

ララ岡谷の1階は、数は少ないものの幾つかのテナントが入っている。(尤も1階も半分位しか埋まらず、2階は「御射宮司祭」会場…普段は空きテナントだ。3階も空きテナントで、不況の厳しさを感じる次第だ)
その中に、地元ケーブルテレビの展示スペースがあり、諏訪大社の誇る神事「御柱祭」のプロモーション映像が上映されている。
椅子もあるので、即売会に疲れたらそこで「御柱祭」の映像でも眺めて休憩すれば良いのだが、上映画面の下の方に「祝御射宮司祭」などとPOPが貼ってある。
町が即売会を歓迎しており、余り見られない雰囲気だが、参加者としては嬉しい気持ちだ。

カタログを見ると、これは当然だが、既存都内オンリーの宣伝広告が多い。
それに加え、地元企業・団体の広告も掲載されている所が珍しい。地域に密接し地元と仲良くやって行こうとする雰囲気を感じる。

岡谷の駅を降りれば、駅員が「御射宮司祭参加の方は帰り混雑するから切符は先に購入を」と呼び掛けてくれる。
当日は会場近くの通りで、「御柱綱打ち」なる神事が開かれるが、良かったら「御射宮司祭」参加の皆さんもお越しを…と主催に声が掛かる。主催もそれに呼応し、サイト上で「御柱綱打ち」の案内を掲載する。そして私のように、ちょっと抜け出して見に行く連中も出てくるw

こうして見ると、「御射宮司祭」は地元との関わり、連携が極めて強い。
単なる「即売会」の枠を越え、同人者以外も上手く巻き込んだ。地元に溶け込んだ「お祭り」とも言えよう。
「聖地巡礼」は、参加者の一方的な片思い、現地不在のムーブメントになりがちだ。だが、この「御射宮司祭」は、地元の企業・団体との関係を上手く構築し、「片思い」から脱しているとも言えよう。


【東京人・地元双方の「強み」がバランス良くブレンド】

今回の「御射宮司祭」は、主催は地元の方だが、後援には、「ぷろじぇくとD」や「ぷにけっと準備会」が名を連ねている。また、正式に「後援」とまでは行かないが、「ケットコム」も事実上協力している。
これらの後援・協力者達は、東方オンリー含め、数多くの即売会を開催。豊富な経験に裏打ちされ、極めて豊富なノウハウを有している。
即売会の運営・告知は、彼ら協力団体の力に資する所が大きい。スタッフ陣も東京からの参集だし、カタログ編集もぷにけっとの方が協力している。
故に、運営に関しては危なげな所はほぼ皆無。彼ら協力イベンターの特長が発揮され、信州開催ながらも東京の男性向け即売会の雰囲気で進み、非常に安定感が高かった。

一方、前述した地元との良好な関係の構築。これは、地元人主催の手による。というか東京主催だとそこまで地元に入り込めない。

私が思うに、運営は東京人、地域との関係構築は地元主催…互いが互いの長所を補完し、「御射宮司祭」の成功に繋がった、と分析する。
互いの長所を生かした、「理想的協力関係」とも言えよう。

運営面だけではなく、参加者を見ても、地元と東京が上手くブレンドされている。
東京の買い手達は、即売会での買い手経験が豊富。よく訓練された「戦闘兵」だ。列を作るにも並ぶにも、マナーを守り即売会に参加する「優等生」達。

一方、地元人…特に若い子は即売会慣れしておらず、即売会の流儀に理解が薄い。
しかし、そんな彼らも、目の前に東京のよく訓練された「戦闘兵」が入れば、見よう見まねで「戦闘兵」の動きに従う。無意識の内に、同人の流儀を「戦闘兵」より教わっているのである。
東京人と地元人とが上手くブレンドされた一例を、ここにも見い出せよう。


【まとめ】
今回の即売会は、聖地巡礼型の即売会ながらも、地元の参加者の掘り起こしに成功。
背景として、東方の地方波及傾向、近隣・松本で即売会が栄え同人的な下地が出来上がっている事もあろうが、地方同人の活性化に貢献した。
今後も全国各地で東方オンリーが企画されるが、同様に、地場同人活性化に繋がる事を期待したい。

また、地元企業・団体との提携を深める等、地域密着の姿勢は他の即売会には見られない極めて独特のもの
この姿勢は、公式グッズの販売、地元企業のサークル参加…場の盛り上げに貢献している。
コミケットスペシャルに通ずるものも大きいかもしれない。

そして最後に、地元と東京が上手く融合・ブレンド出来た所がポイントだ。
運営に関しては完璧に相互補完の関係。サークルや一般は参加比率がほぼ半々。両者バランスよく混じった。
東京の買い手は、普段見ない地元の実力サークルに触れる機会が出来た。地元の買い手は、東京の戦闘兵からマナーを学べた。
両者のブレンドは、各所に良き効果をもたらしている。

次回開催は未定だが、来年は諏訪で「御柱祭」が開かれる。数年に一度の奇祭であり、これに因んで何か出来れば面白そうだ。
地元同人活性化の観点からも、次回の開催に期待を寄せたい。