たまに、2ch同人イベントの福岡スレを拝見するが、こんなコメントが出てくる。

「大(9)州東方祭は東京流のイベントだ」

確かに、大(9)州東方祭の申し込み先は、関東圏内。主催氏の生活拠点もまた関東。
主催氏は九州島外の人間。九州の皆さんから見れば、氏は「外様」の人間だ。
関東の人間が、九州にお邪魔してイベントを開いている、という事実に間違いはない。
ただ、だからといって、この「大(9)州東方祭」を「東京流」と見なすべきなのか。何回かこのイベントを見た身としては、このイベントを「東京流」と見なす事には、どうにもこうにも違和感を覚えずには居られない。

最近2chの福岡イベントスレにこんな書き込みがあったが、この書き込みが、私の違和感の正体を示すヒントになっていようか。
以下、当該の書き込みを抜粋する。(一部主催氏の名前のみ【個人的な趣味嗜好】により伏せ字にしてます)

>チ●ンコは「東京流」というよりは「新潟流」といえばいいかな
>ステージイベントやコスプレへの力の入れ具合なんかはガタケに影響されているような気がする

このご意見の全てに賛同するわけではないが(個人的な見解としては影響受けた箇所は別の所な気がする)、氏が皆勤賞で通うガタケットから、多少なりとも影響を受けているのは間違いないとは思う。
よくよく考えるに、氏は、ガタケットのみならず全国各地の即売会に遠征参加している。
この2〜3年をピックアップしても、ガタケ以外でも、仙台「杜の奇跡」、大阪コミコミ、名古屋「東方名月祭」、金沢「るなフェス」、福岡「tenjin.be」、岡山「ぶちすげぇコミックバトル」、高知のコミックライブ…その活動は「全国区」である。
勿論東京でも活動するが、正直、東京よりも地方でその面を拝む機会が多い。

だからこそ、私がここで思った事が一つ。
いかに首都圏に居を構えようとも、東京よりも地方での活動が多い人物を捕まえて「東京流」は、少しピント外れなのではないか?

勿論東京の即売会からも影響を受け、良い所を取り入れているだろうから、そこの部分だけを捉えて「東京流」と見なすこともできると思う。
だが、氏は、それ以上に地方での活動が盛んだ。全国各地のイベントの影響を受け、良い所を吸収している。
氏を「東京流」と見なすのは、氏の居住地という形式的なものに囚われ、「地方での同人活動」という氏の活動の実質的な部分に目が行っていない、近視眼的な発想と言えるのではなかろうか?


次に、「大(9)州東方祭」自体が、果たして「東京流」なのかどうか。
確かに、サークル参加者・一般参加者の多さは「東京級」であるとは思う。東京のそこいらへんの東方オンリーよりも、数は多いかも。
だが、来場者を見ると、勿論遠征参加者もいようが、一般参加者の8割以上は九州人だ。地元の学生中心、若い子が多い。
スタッフだって、各所から幅広くあつめたものの、やはり主力過半数は九州勢である。
更に言えば、大(9)州のコスプレ参加者は1000人近くに達する多さ。九州はコスプレの盛んな土地柄であり、この異常なコスプレ参加者数も頷けるが、一方で、この事情こそが、大(9)州が九州同人事情に添ったイベントたることを如実に示していると思う。
この参加層を見て、「東京流」なんて言われても、九州の参加者の皆さんも、頭に?マークが浮かぶのみだろう。


「大(9)州」の特色は、多種多様な企画にある。企画面を見てみよう。

例えば痛車展示会。そもそも痛車ミーティング、痛車オフ会なんてのは、東京の文化にあらず。地方の文化である。
地方はモータリゼーションが進行、車は生活必需品同然で車との馴染みも深い一方、東京は土地が少なく痛車が集える所も無いからだ。

カードゲームコーナーにしても、元々「美柑たると」や「東方椰麟祭」といった中四国の即売会で実施。好評だったので大(9)州でも取り入れている。
九州起源ではないが、他地方の良さげな所を取り入れているだけに過ぎないし、少なくとも「東京」は全く介在しない。

一番、大(9)州が「東京らしくない」のは、即売会アフターのステージライブであろう。
そもそもステージライブなんて企画は、東京などでは先ず見かけない。
東京は、会場も土地も余裕が無い反面、人口規模が多いから、サークルも一般も多く押し寄せる。列を捌く事で目一杯、ライブに割くスペースの余裕なんぞ無い。
大(9)州の名物と課したチルノダンス企画も、同様の論理だ。

もっとも、これらの企画は、東京でも実施されたことが一度はある。
9月19日開催「博麗神社例大祭SP」がそれである。
但し、これは普段できないことをやってみたい、との思いの下、例大祭SPが大(9)州を参考にしつつ取り入れたもの。
つまり、地方即売会の良い所を東京が取り入れた図式と言える。

つーか、大(9)州が東京流なら、アフターイベントはライブじゃなく、じゃんけん大会になるのでは?

大(9)州東方祭は、「東京流」ではなく、寧ろ九州東方同人者というクラスタを対象に、局所最適化した即売会ではないかと思う。
遊び心溢れた企画が、お祭り好きな九州東方勢のハートを掴んだとは思うが、それは主観的な感覚かもしれないので置いておく。

九州事情に沿った即売会か否か。客観的な指標となるのは、来場者数等の「数字」であろう。
九州事情に沿わないやり方であるならば、九州人の反感を買い、参加者を減らす筈だから。
そして大(9)州はサークル数で500sp、一般参加4700人。東方というパワーの無茶苦茶なジャンルたる事を差し引いても尚、「驚異的」「革命的」な実績である。
他地域の東方オンリーよりも遥かに大規模だし、九州島内見ても、(「別格」な福岡ドームのコミックシティを除き)他のあらゆる即売会とは比にならぬ規模である。
大(9)州東方祭は、九州の実情に即した即売会と見るのが妥当である。決して、東京流を押し付けた即売会などではない。つーか大(9)州が「東京」を押し付けた即売会ならば、こんな人は来ない。

とここまで、大(9)州を東京流とする向きへの異議を述べた。
だが、よくよく考えて見れば、大(9)州が東京流だろうが博多流だろうが名古屋流だろうが我那覇流だろうが、それは大した問題とも言えないかも知れない。

同人誌即売会にとって大切な事は、サークル参加者や一般参加者に思いを馳せ、気遣う事。
「主催(及びスタッフ)」「サークル」「一般」三者揃って初めて即売会は成立するのだから、主催か独り善がりに陥らず、サークルや一般の事もちゃんと考える。
それは、東京だろうがトカラ列島だろうが硫黄島だろうが、開催地を問わず言える、当たり前の「真理」だと思う。
東京流でも博多流でも構わないというのは、参加者の目線に立った運営か否かこそが真に大事な事だから…という意味合いである。

「東京流」なんて言い方は、私からすれば、無意味なレッテル貼りでしかない。
参加者目線に立てる即売会か否か。
そして、その取り組みが実り、サークル数・一般参加者数に反映されるかどうか。
それこそが真に大切な事である、と私は考える。