11月7日、この日の私は、金沢の男性向けオールジャンル同人誌即売会「OVERDRIVE」にサークル参加の予定であった。
しかしながら、午後から仕事の予定が入りサークル参加を断念。頒布物は、他サークルさんにお願いした。

しかしながら、「OVERDRIVE」は一定サークル数を集め、低調だった北陸男性向け同人の「復活」を果たした意義深い即売会である。
これに参加できなかった事は痛恨の極みであり、極めて残念な事である。

おまけに、前日夜の段階で所用が夕方にズレた事が判明。
…なんだよ、そうなりゃ2〜3時位まで暇じゃねえか?
流石に「OVERDRIVE」への参加は困難にせよ、午前中丸々暇だし、どこか即売会に行く時間は取れる。どうせ暇だし、「OVERDRIVE」行けない腹いせに他の即売会に行くか、という気分に。

この日の注目の即売会は、山梨「凱風快晴」・長野「さきすぺ」・名古屋「東方金鯱魂」と皆地方…夕方関東で仕事を抱える身には、遠出は抵抗ある。
検討の結果、都内に最も近くかつ所要時間も短く済む、山梨県甲府市の東方オンリー「凱風快晴」に足を運ぶ事にした。

先月の記事でも触れたが、「凱風快晴」は極めて独特の特徴を有しつつも、それ故に期待感も抱かせる即売会であった。
神社境内・屋外での即売会という点が目に付きやすいが、他にも独特な点は多い。

「凱風快晴」のチラシには、「協力・博麗神社社務所」と書いてある。言わずと知れた「博麗神社例大祭」の主催団体だ。
同団体が他東方オンリーに協力を打つケースは、極めて稀である。どういうご縁があったのだろうか。

また、このオンリーは、山梨地域活性化プロジェクト「やまなしの翼プロジェクト」http://wing.yyproject.jp/の手による主催だ。
主催が個人でも企業でもなく、地域団体が主催する、というのも同人世界では極めて稀な事例ではないか。
若者地域活性化プロジェクトの一端としての東方オンリー、という前例の無いコンセプトだ。
しかも、この即売会は、山梨県教育委員会の委託事業ともなっており、行政が地域活性化の名の下に開催する即売会、という性質も持つ。

とにかく、この「凱風快晴」は、様々な意味合いにおいて、同人界隈の「常識に囚われない」異例づくめの即売会であったと思う。

主催も同人に慣れていない方で、それ故に「常識に囚われない」発想が出来たのだろうが、一方でこの世界を余り知らないが故に、運営面での「穴」もちょくちょくお見かけした。
参加サークルからの不安の声も、私の耳に入ったし、主催側に直接メールで進言した事もある。
ただ、私自身に関して言えば、そんな滅茶苦茶不安がる事も無かった。いや、流石に全く不安が無かった訳じゃないがw

理由としては、博麗神社社務所がバックアップについていた事もある。
経験豊富な彼らがスタッフとして参加するだろうから、最後は何とかなるだろう、とは思った。
ただ、寧ろそれ以上に言えるのは、主催側の皆様と直接お話する機会に恵まれ(10/4・コミックファクトリー甲州遠足にて)、主催側の皆様の「人物」を見た事も大きかったかもしれない。
主催氏は、ご自身がベンチャー企業を経営してる事もあろうが、しっかりした方という印象。
また、初心者ながらも経験者の話に耳を傾けようとする姿勢が顕著であり、その勉強熱心さは、主催素人ながらも努力を重ね即売会を成功に導いた、広島「東方椰麟祭」の主催氏を彷彿させた。
この人なら何とかなるんじゃないか?という気にさせてくれた事も、過度に不安を抱かずに済んだ理由の一つとなろうか。

その一方、行政それも教育委員会の事業としての即売会が成功を収めれば、同人の世界に「文化」としてのステータスが付与される。
表現規制の動きに対する牽制効果も、期待できる。
同人世界の今後を見据えるならば、何としても成功してほしい、とも思った。

「凱風快晴」は、幾ばくかの期待と不安を抱かせる、「常識に囚われない」即売会であった。

屋外即売会たる「凱風快晴」の最大の心配は、風雨。
しかしながら当日は快晴、風も無し。
仮に風があっても、多少は護国神社の建物とその後ろの森林が防いでくれただろうが。
お陰様で即売会自体も致命的な展開とならずに済んだ事は、「凱風快晴」にとって極めて幸運であった。

会場の山梨縣護国神社は、甲府駅から北に2km。意外に距離がある。
バスも走ってるが土日は一時間に一本なので注意。まあ、甲府からバスで40分、1日7本しかバスの無い、アイメッセ山梨よりはマシだが…。

護国神社への途上、沿道の「武田通り」には、通りのお店に「凱風快晴」のポスターが多数貼られており、この即売会が、地域との協調の下開催されし即売会である事を伺わせた。

サークル入場は9時30分から。
階段の上が即売会会場となっていた事もあり、サークルが余裕持てるように早めに設定したとか。
カート/台車組を考慮して、スロープでの導線も組み、理論上はカートを引いてサークルスペースまで辿り着けるように設定しているが、現実には砂利でカートを引けない罠。
まあ、階段通らずに行けるだけまだマシだろうが、できれば板とか敷いてくれるとより良かっただろうか。

サークルスペースは拝殿のすぐ横。
テントが設置され、ビニールシートも敷かれ、多少の雨なら耐えられる。
ただ、一部サークルスペースがテントからはみ出てたのはいただけない。有事の際は大事になりかねないからだ。

また、境内だから仕方ないだろうが、虫が多すぎたw
スタッフが殺虫剤で対応する一幕も…サークルさんにとってはちょい過ごしにくかったかも。

気になったのはサークル等に配られていたチラシ。
幾つかの東方オンリーのチラシがあり、捌けが極めて良かったのが印象的だったが…。
問題は、地元の即売会たる「山梨コミックチャレンジ」のチラシが無かった事。
折角の地元の即売会なんだから、ここで配らずしてどこで配るというのか。
ファクトリー甲州遠足の時と言い、告知に消極的な姿勢が、正直気がかりである。
但し、コミックチャレンジの主催元である「甲府アニメ倶楽部」が出店。画材や東方グッズを販売しつつ、チラシも配っていた事は付け加えておきたい。
ただ、やはり告知というもの、サークルスペース机上に撒き、チラシ置き場に置いてこそ「告知」だとは思うのだが…。

即売会自体は、博麗神社例大祭でも活躍する有力スタッフが援軍に駆けつけ、要所を締めた事もあり、無難に盛り上がった、普通の良即売会だったと思う。
即売会開場前の待機列120人、それ以外にたむろしてる方約40人。最終的には、200-300人ぐらい集まった模様だ。

但し、一般即売会との大きな違いは、本部横の出店者。
山梨赤十字社、若者サポートステーション、フルーツ農園が出店していた。
同人誌即売会の立場から見ると違和感はあろうが、この即売会が、若者地域活性化プロジェクトの一環として始まったという経緯を見ると、分からなくもない。

サークル数は50サークル弱。東方オンリーにしては、他地域からの遠征組が多かったような。
サークルスペースには雨天対策でテントが設置されたこともあり、人の出入りも絶えず。縁日っぽい雰囲気で楽しめた。
神社参拝者に支障の無いよう配慮してか、入場は無料のフリー入場。但し即売会スペースは11時まで一般立ち入り禁止にして対応した。
カタログは任意購入制。フリー入場ゆえ、カタログを入場チケット代わりに出来ないための措置。但し、来場者の過半が購入していた模様。

コスプレは、コスプレイベント「幻想郷びらき」が出張開催の形式。「凱風快晴」本部で受付を行い、神社建物内に設けられた更衣室を利用する形。

神社入り口には屋台も登場。
クレープ屋、山梨県昭和町のメイドカフェ「ショコラ」、たこ焼き屋の3店舗。参加者の食糧事情に貢献すると共に、お祭りムードを盛り上げた。
人気は、たこ焼きと「ショコラ」のメイドバーガー。クレープ屋はちょっと気の毒だった。
街中の即売会じゃ考える必要すら無いが、アイメッセ山梨や豊郷もそうだが、周りに食事できるお店の無い会場は、こういう食糧事情の改善策も大切だと思う。

総じて見て、屋外ゆえの不安はあったが、蓋を空けて見れば天気にも恵まれ杞憂に終わった良即売会だった。
神社の境内というシチュエーションや屋台やテントの存在が、お祭り感を演出。先の豊郷同様に、参加者の満足度は相応だったと思う。

13時からは、トークセッションが野外特設ステージにて開催された。
同人世界において意義深い内容であったとは思うが、これは別稿にてレポートさせて頂きたい。