山梨県甲府市で開催されし「凱風快晴」http://www.koisuruyamanashi.com/fujiyama/は、屋外での即売会という不安要素がありつつも、好天に恵まれた事もあり、結果的に良即売会として終える事が出来たと思う。
細かい反省点は多々あろうが、「凱風快晴」の成功は、同人世界にとっても極めて意義深い。

地域同人の活性化・東方ジャンルの活性化に寄与したというのも当然あろう。
だが、私はそれ以上に、以下の部分が重要と考える。

行政の主催事業でもある即売会「凱風快晴」は、県や地域社会との連携・協調の下成功に至れた。
これは、「同人誌即売会」という場が、「文化」として地域社会に認められる事にも繋がっていよう。
私は以前、同人世界に文化としてのステータスが付与される事は、(同人世界における)表現への規制に対する牽制効果にをもたらす、と申し上げた。
「同人世界に文化としてのステータスが付与される」とまで言うと大袈裟だが、世にその存在が好意的に認められる事、とも言い換えられると思う。
つまり、「凱風快晴」の成功は、同人世界を、世間が好意的に見て頂ける事にも繋がっている。同人世界にプラスの効果を生むものとして、意義深いものがある。

そしてその一端は、「凱風快晴」内のステージ企画「トークセッション」に現れている。
このトークイベントは、13時から野外特設ステージにて開催された。
即売会会場から階段下った先の、神社入り口近くにステージを設けた。
聴衆は約100人、そして虫さんトンボさん多数に、神社に住みつく白猫w

このトークイベント…出演者の組み合わせが、余りにカオス過ぎだったw
以下、出演者を六人の概要を記す。

1・地元山梨のコスプレイヤー
→霊夢コスでトークイベントに参加された剛の女性

2・「山梨コミックチャレンジ」主催・早矢氏
→山梨でオールジャンル同人誌即売会を定期開催

3・サークル「久幸繙文」http://www.akyu.info・久樹輝幸氏
→東方コミュニティを中心とした評論・考察サークル。緻密なデータ分析の評論は一部筋の評価も高い。「色付配置図の人」であり稗田阿求オンリー副主催でもある。

4・山梨県教育委員会社会教育課 青少年保護育成担当の方
→表現規制反対運動の世界では、東京都なんかじゃ敵認定される傾向のポジションの方。同人の世界でも、悪い意味以外でこの職務の方が登場するのは珍しいかも?

5・凱風快晴の主催氏(「凱風快晴」主催団体・地域活性化プロジェクト「やまなしの翼プロジェクト」http://wing.yyproject.jp/代表)
→ベンチャー企業の経営者、山梨県青少年題協議会委員としての顔も持つ

6・地域活性化支援を活動内容とするNPO法人の方
→司会役、千葉からお越しの方

…余りにも共通項の無い組み合わせの面子に、戸惑ったのは正直事実だったw

多分、上3人はヲタ代表、下3人は非オタ代表という位置付けなのだろう。
更に言えば、「ヲタ代表」の3人は地元コスプレイヤー代表、地元イベンター代表、参加サークル代表、と各階層からバランス良く揃えている。
もっとも、最後のサークル代表だけ「地元」が抜けている。地元サークルではなく、他地域から遠征してのサークルなのでこの表記なのだが…地元のサークルじゃないが、結果的にはこの人選は正解だったと思う。(その理由は後述する)

そしてテーマは、「東方から学ぼう(同人と著作権、青少年とサブカルチャー)」。

うーん、「凱風快晴」が山梨県教育委員会の事業たる事も原因なのだろうが、青少年育成行政と東方厨を強引に結び付けるテーマ設定に思えてくるw
但し、トーク全体を通しての感想としては、「七輪で焼け」http://j.mp/9rhPDBさんの所にも記されているが、実質「青少年とサブカルチャー」に関するテーマでのトークとなった。
「東方Project」からは少しずれたかも?
まあ、トークショーで話題が動くなんて当たり前の話だし、それなりに場も盛り上がったから良しとしようw

トークショーは、先ず各パネラーの自己紹介。次いで、サークル代表・久樹輝樹氏による、東方界隈の概要説明、地元イベンター代表・山梨コミックチャレンジ主催氏による山梨同人の概要説明と続く。
この流れは、司会者側が組み立てたものだが、結果的に大正解の流れだった。

トップバッター久樹氏は、この即売会が同人世界を知らぬ一般人も多く参加されている事を踏まえてか、東方の前に、「同人」とは何かから語っていた。
「同人」のルーツたる明治時代の話から始まり、コミックマーケット等同人世界の概要(同人世界は男性より女性の方が多いとか)を簡潔に、しかし初心者にも分かり易いよう意識して説明していた。
そして、その後に「東方」とは何ぞや、という概要の説明が。ここから先が、東方界隈コミュニティ評論を専門とする氏の得意分野だ。

著作権がテーマに含まれていることを意識し、東方を用いた二次創作を作る際の「ガイドライン」が公開されているなんて話にも触れる。
博麗神社例大祭の開催規模の巨大さ、全国各地に波及し盛り上がる東方オンリーの活発さにも触れた。

そして、東方における設定の曖昧さにも触れ、様々な解釈が可能な事も解説する。
「創作が次の創作を作る」という言葉を用い、皆が共有した非公式設定の解釈(例:チルノ=バカ)をベースに三次創作ができる事。
音楽、アレンジ曲、二次創作、グッズ…様々な楽しみ方がある、という事も解説する。

久樹氏の解説は、短い時間ゆえ不完全な部分もあろうが、要所要所を押さえた解説となり、同人や東方に疎い方にも、理解し易い解説だった。

失礼ながら、久樹氏の知名度は、知る人ぞ知るの世界。
知名度で申せば、東方界隈だけでも、サークル・主催等彼より有名な方は山ほどいる。
知名度は低く、地味な人選かもしれない。
しかしながら、この真面目なトークのテーマ、青少年育成行政関係者等同人に疎い方の臨席たる事を鑑みるに、私は、この人選こそが正解と感じた。
氏以上に、ここまで簡潔的確、そして初心者にも優しい解説のできる人はなかなかない。余人に代え難たい存在だからだ。

そしてその次に、山梨コミックチャレンジ主催・早矢氏による山梨同人の概況説明。
サークルの減少傾向の反面、コスプレイヤーの増加傾向。
ジャンルを一本化せず「よろず」で行くサークル、ラミカ頒布サークルが多い。同人誌=「本」を頒布するサークルが少ない。
私が山梨で見聞きした上での私なりの認識と大差なく、極めて妥当な説明に思えた。
他地域の地方即売会とほぼ変わらぬ、典型的な傾向である。
ただ、早矢氏は、本が少ないのは山梨に印刷所や安いカラーコピーを扱うコンビニが無いから、とおっしゃってたが、そこには違和感。同人の担い手が、中高生中心で、彼(女)らの財力でも手軽に作れるからこそのラミカ・便箋の頒布だと思うが…

と内心思っていたら、凱風快晴主催氏が、良い突っ込みを入れる。
「参加者の年齢層はどうですか?」と。
これに対し、早矢氏も、確かにサークル参加者は低年齢化しているとの回答。

話は低年齢たる部分から、「有害図書」についての管理をいかに行っているかに移る。
これは、県教育委員会の青少年育成行政担当さんからの疑問。仕事柄聞きたくなるのは当然だろうが、直球な質問だ。
これに対して、久樹氏は、18禁ものは対面販売で18歳未満に売らないようにしている事を解説。参加者自らが自主的に管理している事を強調する。
地元イベンターの早矢氏も、これに同調した。

その後、参加者はネットで情報を得る時代になってきた、という話から、低年齢層の有害サイトアクセスの話に話題は移ってしまったが…
ただ、同人界として主張すべきは、行政担当側にきっちり主張できたのではないかと思う。

実際、(表現規制側にカテゴライズされがちな)「青少年育成協議会」の委員も務める凱風快晴主催氏も、こうコメントした。
我々は何かあればついつい規制しようという発想に陥るが、同人の世界のように参加者の自主性に委ねる方法も有りなのでは、とおっしゃっていた。
また、県教育委員会の青少年育成行政の担当氏も、この熱気は素晴らしいものだ。表現規制は考えるべきかもしれないが、こうして若い人達が集まっている場を一概に否定する訳にも行かない、との旨をコメントされた。
青少年育成行政の関係者より、同人世界の取り組みを、肯定的に見ていただけた事は、同人世界に生きる見としては大変ありがたい。
私個人としても、極めて好意的にご理解いただけた事に、心からの感謝の気持ちを申し上げたい。

最後は、久樹氏が東風谷早苗のセリフ「常識に囚われない」という言葉を持ち出して締めた。
そもそもこの即売会自体が「常識に囚われない」即売会だ。
青少年育成行政だって、有害情報規制ありきという立場が常識ならば、その常識に囚われない選択を取っても良い。
表現規制運動の中では、青少年育成行政部署は表現の敵、という考え方が主流。その常識に囚われず、彼らと話し合いを深め、共存する道を模索しても良いだろう。東京都の教育委員会だって、規制関連の議事録読むに、決して行政関係者が否定的とは映らない(強硬な規制推進派から強い圧力受けてそうだが…板挟みになってると思う)。少なくとも、今回山梨の教育委関係者は極めて好意的であった。
様々な意味に当てはまる言葉で、トークの最後が、無事に纏まったようだ。


今回の「凱風快晴」トークショーは、同人世界において、貴重な「成果」をもたらした、意義深いものであった、と個人的には思う。
青少年育成行政の関係者が主催という事もあろうが、青少年育成行政側と同人世界の人間とが…すなわち規制する側と規制される側とが、率直に意見交流を行う事はなかなか無い。そういう場が設けられ、互いの考え方を出し合った事は、両者の共存に道を開くのではないか。

そして、青少年育成行政の担当者に、同人世界の自主的な取り組みに対し、一定の理解をいただけた事は大きな成果である。
規制する(と目される)側だって、話せば解ってくれる方もいらっしゃる、という事実も示していよう。(もっとも、今回は久樹さんが理路整然と語ったからこそ、先方の理解も得られたと思う。こちら側も、理解を得られるような話し方、論理展開が必要だろうが)
こういう好意的な声が増えれば増えるほど、それが規制への牽制になる。
しかも今回は、規制担当部署ともなり得る教育委員会の青少年育成分野の方からの、公の場での発言だけに、尚更だ。

規制をかける側と規制をかけられる側は、決して対立関係ではない。
話し合いの上相互理解を図る道も当然残されている。この即売会のように、互いに協調し合うという選択肢もあろう。
「凱風快晴」トークショーは、規制する側の立場の方からも、同人誌即売会の存在に理解と好意のコメントを引き出せた。同人世界にとって、一歩は前進したような感触を得られた、意義深いイベントだったと思う。

最後に、今回会場となった「山梨縣護国神社」について簡単に申し上げたい。
この神社は、先の大戦等で戦死された山梨県人約25000柱が祀られている。
また、即売会ブースを少し離れると、樺太や満州開拓等に出た山梨県出身者の慰霊碑も建立され、そこで命を落とした方の名も刻まれている。
余り政治性の強い話は申し上げるつもりは無いが、この神社は、そういう悲しい歴史の上に成り立っている神社である事に間違いはない。
確かに「凱風快晴」は楽しかった。即売会を楽しむのはOKだ。
ただ、楽しみつつも、会場となった神社がどういう神社なのか…という部分は、頭の片隅に入れておいても良いのではないか、と感じた次第である。
その神社の境内をお借りして、楽しませて頂いた。それに対する感謝の気持ちを最後に申し上げ、「凱風快晴」評論の結びの言葉としたい。