何という、展開であろうか。
3月11日に起こった「東日本大震災」により、3月13日開催の「博麗神社例大祭」が開催中止となった。
5000サークルも集う、日本有数の同人誌即売会が、会場の安全性が確保されないとの理由で、中止の憂き目を見た。

しかし「博麗神社例大祭」は、既にサークル案内を参加サークルに郵送している。
また、カタログも書店等で前売りを行っている。おそらく万単位で売っている事であろう。
開催に向け、全力で駆け抜けしイベントであった。

そして何より、例大祭は1年に1度のお祭りだ。
全国の東方ファンが一同に介し、本家「上海アリス幻楽団」も体験版とはいえ新作を出す。
東方ファンにとっては、1年に1度の貴重な楽しみの場である。
何とか代替日程を見つけ、「延期」という形で「博麗神社例大祭」を実施していただきたい…そう多くの東方ファンが願っていたことであろう。

…だが、新たに決まった日程が、非常に衝撃的であった。
詳しくは、博麗神社例大祭公式サイトならびに大9州東方祭の公式サイトをご覧いただきたいのだが、要は、【博麗神社例大祭の延期日程は5/8に決定】【これを受けて同日開催予定の大9州東方祭は日程延期】という前代未聞の衝撃展開である。

この展開に怒る皆様のお気持ちは、決して理解できない訳ではない。
私だって、大9州にサークル参加を決めている身だ。既に大9州行きに備え、飛行機のチケット等を手配していた。
これらもキャンセルせねばならないが、早割で取ったのでキャンセル料も数千円単位になる
正直、非常に痛い展開である。

だが、この展開は「非常に痛い」展開ではあるものの、「仕方ないもの」として甘受せねばいけないものである、とも私は考える。


「博麗神社例大祭」が3/13に中止となった。
ここで「博麗神社例大祭」が取るべき方法は2つある。
一つは、完全に「中止」を決める事。もう一つは、代替の開催日を見つけ、その日に順延する事。

前者「完全中止」の選択は、赤ブーブー通信社(HARUコミックシティ)やガタケット等、震災に伴う影響により、殆どの即売会が決断した方法である。
サークル参加費の返金等を強いられ、主催の負担も極めて厳しい。
一方、サークルからしても、この日の為に用意した作品を捌く当てが無くなり、在庫を抱え途方に暮れる展開だ。

ただ、「博麗神社例大祭」が「中止」の決断を下すには、極めて難しい事情がある。
サークルの立場を考慮すると、HARUコミが中止になっても、サークルは5月のスパコミ等にかけることができる。ガタケットだったら、年数回開催しているから、他日開催のガタケットにかける手もある。

だが、「博麗神社例大祭」においては、そうも行かない。
「博麗神社例大祭」は数万人の一般来場者が訪れる巨大イベントだ。
一般参加者の購買力も極めて高く、サークルによっては段ボール数十箱単位で宅配搬入を実施する。そしてそれを売り捌く。
サークルの大半は、「博麗神社例大祭」に照準を合わせ、甚大な量の頒布物を用意する。
「博麗神社例大祭」が中止・代替イベント無し、となった所で、サークルがその在庫を捌ける場所は、「博麗神社例大祭」以外で用意できるのか?という話になる。
サークルも多額の投資を図り、大量の在庫を抱えたままでは、出費ばかりで同人活動を営めなくなろう。
「博麗神社例大祭」の中止は、サークルの同人活動すら危うくする。
「博麗神社例大祭」がサークルの事を思いやる即売会であるならば、サークルの活動を危うくする「中止」という選択は下せまい。

となると、残るは日程を順延させ、何とか開催するという方法しか取れない。
ただ、私の予想では、正直それも非常に難航するだろうと思っていた。
少し古い資料だが、東京ビッグサイトの平成17年度の展示ホールの稼働率は、66.3%と記されている。(参照リンク
最近の資料は掲載が無いようだが、東京ビッグサイトの利用実績を見ると、平成17年度に近い数値と推測できる。
結構ビッグサイトは稼働率の良い会場であり、主催者側が希望の日を好きに選べる環境ではない。ビッグサイトで開催される殆ど全ての即売会が、「先方から提示された日で押さえるしかない」という状況であろう。

「博麗神社例大祭」も、代替日を選択できる余地が無かったようで、この日を選ぶ以外の方法が無かった模様だ。
以下、例大祭側の発表を抜粋。

>【第八回博麗神社例大祭の延期開催による影響について】
> 今回の代替日程について東京ビッグサイト様との間にて交渉を進めておりましたが、現状において5月8日(日)以外には代替となり得る会場規模を前提とした調整ができないとのご説明が先方よりございました。
> さらに、当社務所といたしましては、いたずらに延期開催を後送りにし過ぎても博麗神社例大祭参加者の皆さまへのご迷惑となるのでは、と言う判断もあり、同日での代替開催を決定させていただきました。

5ホール丸々押さえられる日なんて、そう滅多にある訳ではない。
寧ろ、よく押さえられたな!と私は感じた。
上記の事情より、「博麗神社例大祭」の5月8日開催は、「必然」の選択として私は捉える。
「この日しかなかった」という止む無き選択と考える。


だが、この選択で迷惑を蒙る即売会も、決して少なくは無い。
近接日程の即売会にも言えることかもしれないが、近接日でも東方オンリーならば、まだ主催の奮闘次第で影響を最小限に抑えることも可能だと思う。
実際、過去にも1週前・1週後に開催したオンリーが、多数のサークルを集め盛況だったと言う事例は少なくない。
例大祭が近い日と言うのは、極めて厳しく、そして困った展開だが、前向きに頑張れば道は開けると思う。

…道が開けないのは、同日にバッティングした即売会である。
その不幸な即売会「大9州東方祭」は、これも止むに止まれぬ選択として、開催日程の延期を決断せざるを得なかった。

「博麗神社例大祭」がバッティングした時点で、「大9州東方祭」が取りえる選択は、3つあった。
一つは、強行開催。もう一つは、中止。そして日程順延。この3つである。

だが、強行開催は極めて難しい。そもそも「大9州東方祭」は500サークルを集める大規模な東方オンリーだが、遠征クラスタも多い。全体の約半数が九州島外からの遠征だ。彼らの殆どは、例大祭にもサークル申し込みをしているだろう。
九州在住のサークルならば、距離的な問題から例大祭に参加しないサークルも少なくないだろうが、彼らの中にも、例大祭とバッティングするならば、例大祭を優先させる向きも少なくない。
私は、九州島外からの遠征組の9割、九州島内のサークルの5割が、例大祭を優先させるだろうと見込んでいる。全体で言えば、約7割が例大祭を選ぶであろうと推測している。
欠席率が過半数以上を占める即売会、サークルも一般も、どうして素直に楽しめようか?
(この他、大9州内の有力スタッフも例大祭スタッフに借り出されるであろうから、運営力も極めて弱体化する。ライブ参加サークルの殆ど全てが例大祭に参加し、ライブも全滅に近くなる…といった問題もある)

中止も、極めて難しい。
九州在住で、東京遠征の難しいサークルも、決して少なくない。彼(女)らからすれば、貴重な年二回の楽しみだ。九州において、大9州に代わる場は現在存在しない。
もし仮に、福岡ヤフードームのコミックシティが開催されなかったとしたら、九州に代わりとなるイベントは存在しない。
大9州も、シティ同様、九州人にとっては「代えの利かない」イベントなのだ。
そして何より、九州開催では異例の500サークル600スペースが参加を待望している。
サークル目線に立って考えるのならば、サークルの期待を裏切っての「中止」は有り得ない。

となると、選択としては「順延」以外は考えられないだろう。
これも、せっかく5/8に照準を合わせて楽しみにしているサークルさんにとっては残念な話。
私のような遠征組も、飛行機のキャンセル料負担が痛かったりする…。

だが、これも元を辿れば「東日本大震災」に起因する事態だ。
例大祭も大9州も、悩みに悩んだ上での苦渋の決断であり、誰も責められない…。
キャンセル料は確かに痛いが、被災した皆さんの苦痛や負担に比べれば、屁でもない。
皆で分かち合うべき大震災の負担が、キャンセル料として私にも降りかかってきただけの話。寧ろ、この程度で済んだ事に感謝しても良いぐらいだ。

それに、大9州は「中止」した訳ではない。
例大祭同様に、あくまで「順延」である。
今後、「大9州東方祭」には、早急に代替日程をご提示いただく事が求められる。
例大祭と同様に、内外との調整で手間は掛かるだろうが、何とか早めに日程をご提示いただきたい。小倉の西日本総合展示場が無理ならば、博多・久留米等近隣地域での開催も検討すべきである。
また、被災地域から参加するサークルさんの欠席、日程変更に伴うサークルさんの不参加に対しては、サークル参加費を返金する等の柔軟な対応をお願いしたい。

せっかく過去最大・500サークルが集い、ライブも7サークルが出演。これまでにない盛り上がりを見せる予感の「大9州」…日程順延の断を下さるを得ない主催氏ならびに関係者の心中はいかばかりか…?
また、大9州にぶつける選択を強いられた「博麗神社例大祭」側の心中もいかばかりか…?
今回の決定に動揺し、また怒りを見せる方の気持ちも、決して分からない訳ではない。
だが、同時に、この重い決断を選んだ彼らの心中にも思いを馳せて欲しい。私はそう訴えたい。