3/11発生の東日本大震災は、同人世界に与えしダメージも甚大である。
全国各地…主に東日本で開催される即売会が、次から次へと中止に追い込まれている。
津波・地震等直接的な要因もさることながら、これらが間接的な要因となり中止に追い込まれた即売会も決して少なくない、というのが特徴だ。

本来であれば、即売会の中止・延期・日程変更等はタブーであると思う。
だが、今回の東日本大震災は、未曽有の大震災だ。被害も大きく、また、多くの人がが被災し、被害を蒙っている。
交通機関の麻痺、相次ぐ余震、そして関東の電力事情…今もなおその影響が続いている事を考慮すると、今回の震災に起因する中止・延期・日程変更等を、平時のように「タブー」として捉えるわけには行かない。特例中の特例である。
多くの即売会の中止・延期等は、真剣に悩み考え抜いた末の選択であり、決して責められるものではない選択であると思う。即売会を楽しみにして期待し、中止を聞いて残念に思う方も多いだろうが、主催者達の苦渋の決断にも、是非ご理解をお願いしたいと考える。


例えば3月には、宮城県の気仙沼市や、岩手県の宮古市でも即売会が予定されていた。
だが、この即売会が開催されないからと言って、誰が不満に思うか…というか明らかにそれ以前の問題だ。ニュース見てればご理解いただけようが、私に言わせれば「主催生きてて良かったよ!」のレベルだ。
即売会の公式サイト上にて、中止のアナウンスが成されたが、これは、主催氏ご本人が生きていた事の証であり、無事だった事にホッとした位である。
復興への道のりは非常に厳しいものがあろうし、こんな事を語るには余りにも尚早に過ぎるだろうが…ある程度落ち着いたら、当地の同人者の心の支えになる同人誌即売会を開いて欲しい。
相当先だろうが、いつの日か、そういう日が来る事を願っている。

宮城県仙台市で開催される「仙台コミケ」の中止も、会場の「夢メッセみやぎ」の立地を考えて欲しい。
実際昨今の現地を拝見した訳ではないが、どういう状況になっているかは、立地場所を考えるに、想像に難くない。
残念ながら、当面の間は開催不能だろう。

計画停電による影響を受ける即売会も、決して少なくない。
即売会の開催期間中に計画停電の時間がかぶってしまうと、安全面を考慮し、会場が貸し出しを中止する。
東京都内の会場の過半は計画停電の範囲に含まれていないが、東京以外の地域で影響が大きい。
私が昔参加した千葉県東金市の「RING」も、計画停電の範囲に含まれる恐れありとの事で中止を決めた。

3月27日に神奈川県川崎市で開催される「男の娘☆10」も、計画停電の影響で中止も検討されたが、即売会会期中の停電が無い事が判明、何とか開催に漕ぎつけた。
ただ、開催時間を30分ずらす事とし、かつ夜に実施予定の第二部『ディナー&ショー』が計画停電の時間に当たる為、夜の部は中止を余儀なくされた。
また、埼玉県桶川市開催のコスプレイベントのように、高崎線の間引き運転による運行の不安定を考慮して中止したケースもある。


ガタケットの中止は、極めて特殊な事情ながら、これもやむを得ないケースである。
新潟は特に被災の影響も無く、通常通りの開催を予定していたものの、隣県・福島県の原発事故に伴う避難所として指定され、新潟県側の意向で会場が召し上げになってしまった…。
私もサークル参加を予定していたが、事情が事情だけに、誰を責める事も出来ない。

長野県松本市の良即売会「メガマニアック」も、代替日を5/1として延期となった。
メガマニアックは、パンフ原稿入稿後で開催に向け全力で突き進んでいる状態だったようだ。
中止か決行か、だいぶ迷ったという話も漏れ聞く。
だが、長野県内でも震度6の地震が起こっている。そしてその後の余震も多く、ガソリン不足に起因する交通事情の悪化もあった。また、余震が続き状況が悪化すれば、会場が「避難所」として召し上げられる可能性も…
そういうリスクの大きい状況であることから中止を決断し、代替日を定め延期とした。

これらは、あくまで氷山の一角に過ぎない。
他にも、中止になった即売会は数多くある。
一部、中止の理由説明が意味不明だったり、あやふやだったり、首を傾げる理由だったりもするのだが…未曾有の大惨事を前に、主催も思考が止まり正常な判断ができないケースも考えられる。
疑問を抱く理由であっても、非常時ゆえそれを責め立てるのも、酷ではなかろうか。

但し、一つだけ、今回の「震災に伴う中止」に関して、青龍刀を振りかざす即売会が存在した。
それは、神戸の「KOBE COMIC ISLAND」である。
この即売会、3/19〜20の2日間開催で両日各1000sp募集と大きく出ておきながら、告知も弱く、果たしてサークルが集まるのか、いや即売会として成立するのかすらも疑問視されていた。
(関西の皆様にとっては、1000sp募集・7sp参加の伝説即売会「COMIC KINGDOM」を彷彿させる展開だ)

この即売会が「震災の為中止します」と言われても…おい待てよ、場所、神戸だろ?
停電もないし交通機関も平常運行。神戸の震度は2〜3程度だったはず。
…サークル数集まらず主催にやる気無さそうな部分も考えると、どうも「震災便乗」の色が濃いように映る。
震度2〜3で開催中止だ?開催したくても泣く泣く断念した即売会は世の中山ほどあるんだぞ?分かってんのか、おい。青龍刀振り回されてえか?

震災中止は、このように便乗臭溢れる一部を除き、基本的には、仕方のないものと考えている。
でも、いつかは復活し、日常に戻らないといけない。
自粛や中止を繰り返しても、前には進めない。

だからこそ、震災の中でも頑張って明るくイベントを開こうとする主催達が居れば、私はそれをガンガン応援したい。
中止しても仕方ない状況下、前向きに進もうとするパワーは、私も見習いたい所である。

今回も、震災翌々日の3/13には、山形で「おでかけライブin山形」が決行した。
交通インフラの復旧すらおぼつかない中、参加者数は少なかっただろうが、会場の安全性を確認した上で、「こういう時だからこそ元気に盛り上げたい」との思いからの開催だ。
地元被災地の仙台から参加した猛者もいらっしゃった。

私自身は、3/13に川崎のリトルバスターズ! 来ヶ谷唯湖オンリー同人誌即売会「ちょっぴりお茶目なゆいにゃー3」に参加した。
やはり震災後の混乱もあり、参加サークルさんは少なく、欠席率も高かったが、主催氏がリトバスドンジャラを持ち込んで皆で遊んだり、交流会的に楽しもうとする姿勢が見て取れた。
こういう時だからこそ、元気に頑張って開催していきたい、というお話も頂戴した。

震災により中止を検討せざる得ない状況において、敢えて開催への道を模索し、そして即売会の開催を通じ、少しでも盛り上げていこうとする主催達には、心からの敬意を表したい。


同人誌即売会の開催に当たっては、多大なエネルギーを必要とする。
告知の為にサイトを立ち上げ、チラシを刷り、チラシを撒き…相当の労力を費やして、開催に臨む。準備期間は数か月単位だ。
それだけ長々と、労力をかけて開催しようとする即売会を、中止なり延期なりする…参加者も残念だと思うが、主催だって同じ気持ちだ。
主催だって、できる事なら中止は回避したい。開催に持ち込みたい。皆がそう考えているのだ…一部の震災便乗で中止しようとする不心得者を除けば。

即売会の中止・延期等は確かに残念だ。
だが、参加者も残念だろうが、これまで準備等で頑張ってきた来た主催達は、きっとそれ以上に残念な思いを抱きつつ、中止・延期の断を下しているのではないか。
主催を責め立てる前に、どうか主催の胸の内を少しでも推し量っていただきたい。
私は、そう訴えたい。