7月3日、私は宮城県仙台市で開催されし同人誌即売会「杜の奇跡」に、サークルとして参加させていただいた。

「杜の奇跡」には過去何回か参加させていただいた事があるが、きめ細やかにして丁寧、そしてサークル等参加者の目線に立った運営が光り、参加者の好評を博している即売会である。
それゆえにリピーターも多く、サークル参加数も、近年は常時200サークルを突破。抽選で落選を出さざるを得ないほどの人気である。
「男性向けのオールジャンル同人誌即売会」というカテゴリーにおいては、相当に規模の大きな部類であり、これ以上の規模となると、あとは東京や大阪の即売会ぐらいだろうか。

地元からの参加サークルも多く、東北地方を地盤に定着し続ける「杜の奇跡」であったが、3月11日の「東日本大震災」の影響を、このイベントも大きく受けてしまった。
普段会場としていた仙台駅前「AER」が被災。会場の貸出ができなくなってしまったとの事。
そこで急きょ市内の他会場を探し、結果、市繁華街に立地する「TICビル」を選定。日程も、当初予定の5月29日から、7月3日に移す事となったが、とりあえず開催の目処は付けた。
かの震災後、仙台では全ての同人誌即売会が、中止となった。
ユウメディア主催のオールジャンル「仙台コミケ」も、会場の「夢メッセみやぎ」が津波冠水のため会場が利用できず、長期の「中止」を強いられていた。
私は以前より、「こういう状況でも同人活動が可能な人は普段通りの活動を続けるべき」との考えを持っていたが、仙台に関して申せば、イベントが軒並み中止になり、普段通りの同人活動も続けられない状況だった。

だが、「仙台コミケ」も、代替会場として「アズテックミュージアム」を用意。7月中旬の復活開催を決め、以後も同会場で定期開催を行う方向だ。
震災以後4か月は、「同人誌即売会の空白期間」となってしまったが、ようやく仙台の同人界も「復活」の方向に進み始めた

その仙台同人界復活の先頭を切るのが、この「杜の奇跡」。
私も、東北復興支援の思いを胸に抱き、少しでも盛り上がりの足しになればと思いつつ、関東在住の身ながらも「杜の奇跡」にサークル参加させていただいた。


参加しての感想としては、会場こそ変わったものの普段通りの「杜の奇跡」、といったところか。
運営的に見ると、会場がビルの4階なので搬入が大変そうだったり。立地が商店街で、一歩間違うと他のお店の迷惑にもなりかねず、待機列が作りにくそうだったり。…初めての慣れぬ会場ということもあり、苦心が感じられるも、何とか乗り切れたのではないかと思う。

もはや杜の奇跡の名物と化した、サークルへの(怪しげな)ドリンクのサービスも、健在だった。
私は「飲む玄米」と称した「よもぎげんまい」という変なドリンクを賞味。
玄米がお粥状で「飲む」事はできるが…味については触れない。
取り敢えず主催氏を青龍刀で折檻調教したくなるぐらいの感情が湧いた、とだけ申し上げておきたいw

>海洋深層水100%「球美の塩」使用
>素材へのこだわり→国産玄米100%使用 島産のよもぎ、黒糖、まーす(塩)、名護の水
>南国沖縄の母と自然が育んだなつかしい味


…よくこんなの見つけてくるよなあw
他に「納豆モナカ」とか「青汁サイダー」とか変なのが色々あって、「杜の奇跡」が平常運行に戻った事を実感させていただいたw


しかしながら、来場者数などのデータを見ると、まだ完全に「通常運行」に戻ったとは言い難い。
数えた限り初動列は150人弱だし、一般参加者数も800人行ったかどうか(たぶん割っていると思う)。サークル参加して思ったこととしては、明らかに過去の「杜の奇跡」に比べ一般参加者が少ない、という事。
節電シフトで土日出勤の社会人が増えた事、そして東北の交通インフラがまだ完全に復旧しておらず(仙石線・常磐線等は未だ不通区間有り)一部地域からの参加が困難であった事などが、一般参加者数にも響いているのだろう。

「杜の奇跡」カタログの39〜40ページには、申込サークルの参加動向を統計としてまとめたデータが掲載されているが、これもまた、震災の影響の大きさを伺わせた。
東北地方からのサークル数は、前回74.5%に対し、今回63.2%。実に11%も減少している。一方、関東勢は前回23.2%に対し、今回32.7%と9.5%の上昇。
最終的には前回「杜の奇跡」とほぼ同数のサークル参加だったが、震災の影響で、東北一部地域からの参加が困難になりサークル数を減らす一方、東京からの「東北応援」目的での参加者が増え、東北からの参加減を穴埋めした、という構図と見て良いだろう。

サークル年齢層グラフを見ると、10代ならびに20代前半のサークル参加数が激減している。特に、18〜20歳は前回36→今回17、21〜23歳は前回43→今回28と顕著だ。
一方、40歳以上は前回5→今回17、30歳代も前回からサークル数を伸ばしている。また、24〜26歳も前回38→今回49と数を伸ばしている。
20代前半を下回る若い世代の参加が激減した一方、30〜40代と24〜26歳の世代が穴埋めしたという構図である。震災の影響で、若い世代の参加が難しくなったということだろうか?

震災の影響で、若い世代の参加が減った。
サークル数ベースでは、東京からの遠征組が加勢し、前回並のサークル数を維持する事に成功した。
だが、一般参加者(買い手)は地元の若い世代が中心。それを埋める事は難しく、結果として一般参加者の客足の少なさに繋がったのだろう。

「杜の奇跡」の開催は、仙台同人界・復興の狼煙を上げる即売会として、その意義は極めて大きいと捉えている。
ただ、客足の弱さを見るに、復興への道は半ば。震災から完全復活するには、まだまだ時間がかかるだろうと実感した。
今後も普段通り、平常運行で同人誌即売会を開催し続けながら、震災で同人から離れていった人々が戻ってくるのを待ち続ける。少し時間はかかるかもしれないが、「普段通り」を続ける事により、震災前の活況を、少しずつだが取り戻す事ができるのではないかと考える。

「杜の奇跡」も、秋の開催は会場手配の兼ね合いもあり未定(困難っぽい?)との事だが、今後も可能な限り「普段通り」の開催を続ける事を通じ、仙台同人界・復興への道を歩み続けていただきたいと願っている。