8月28日、私は、 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」オンリー同人誌即売会「8月の秘密基地」に一般参加させていただいた。
この即売会は、「あの花」の舞台である埼玉県秩父市の開催。
最近増加傾向にある、作品舞台の町…すなわち「聖地」で開催される同人誌即売会である。滋賀県豊郷町で開催される「けいおん!」オンリー等と同じ構図である。

しかしながら、この即売会を語るに当たっては、舞台となる秩父市の、友好的・協力的な姿勢。これを抜きにしては語れない、とも考えた。
そこで、この記事をお読みになる前に、先ずは前回記事2011年10月01日付「「あの花」に積極的な埼玉県秩父市」をご一読いただきたい。
その中身を踏まえた上で、このオンリーイベントについても語りたい。
●地元での積極的な告知姿勢

この「8月の秘密基地」は、あの花放映終了のあたりに立ちあがった即売会である。人気アニメの聖地開催という事で話題性も高く、立ち上げ当初から注目を集めた即売会であった。

告知先は、東京都内の男性向けオンリーイベント、オールジャンルイベント中心。ケットコム主催のあの花オンリー「あの日見た本の名前を僕達はまだ知らない。」など。
押さえるべき告知先は一通り押さえている。
主催氏自身も、他の即売会でのイベント経験も豊富な方なので、そこら辺は抜かりがない。

注目すべきは、秩父市内のお店にも、「8月の秘密基地」のイベントポスターを貼付している事。ポスターが難しければ、チラシをラミネート加工して貼ってもらう等の工夫も行ったようだ。
秩父まつり会館にも確か貼ってあったし、秩父老舗の菓子処/喫茶店「八幡屋本店」にも貼ってあった。地元の主要なお店を一軒一軒回り、地元での告知にも力を入れていた。
地元の皆さんが、地元が舞台のアニメに興味を持つのは当然の事。地元人は「潜在的な一般参加者」であり、地元への告知は、地元の一般参加者を開拓する効果が見込める。
だが、それ以外にも、地元で告知する事の意義は色々とある。

聖地開催の即売会は、主催が地元人であるケースもたまにあるが、大抵は、余所者がその土地に乗り込んできて開催というパターンだ。
以前、他の即売会でも申し上げたが、余所者が勝手に彼らの土地に上がり込んでの開催である以上、地元への気配りは必要だ。一軒一軒地元のお店を回ることで、義理立ての挨拶にもなっただろう。



●地元人とスタッフと、協力者に恵まれたイベント

「8月の秘密基地」は、地元人の協力者の多い即売会であった。
これは、主催が地元で告知した事の副次効果の一つでもあったとは思うが、秩父市をはじめとした地元の皆さんの「あの花」にかける思い入れの強さ故、とも言えるだろう。

いずれにせよ、地元の協力を得られた事は、この即売会にとっても大きなプラスであった。
特に、秩父のお祭りに女装した「ゆきあつ」コスプレイヤーが乱入する「ゆきあつ祭り」の主催者をはじめとした秩父人が、地元関係者との潤滑油になってくれたとの事。
秩父で同人誌即売会が開催されたことは、記録に残る限り恐らく初めての事であろうが、そういう初めての場所ながらイベント運営が円滑に進んだのは、地元の人の働きも一因にあろう。

イベント会場の1階はお土産物屋だったが、即売会来場者を意識して、聖地巡礼マップを積極的に配布されていた。(ちなみに、この聖地巡礼マップも、秩父アニメツーリズム実行委員会…すなわち秩父市の刊行である)
市内のショップのメッセージボードにも、あの花オンリーの情報が掲示されていた。
TS3R00060001


市内の菓子処/喫茶店「八幡屋本店」は、このイベント合わせで「あの花カフェ」に早変わり!店員さんがあの花キャラのコスプレウェイターに扮して接客されていた。
但し、あの花オンリーから流れたであろう訪問者の多さゆえ、人手不足でてんてこ舞いだったがw
あの花オンリーと連携しての地元の皆様からの歓待は、秩父の町をちょっとした「あの花テーマパーク」に仕立て上げ、間接的ながら、我々が「あの花オンリー」を楽しむに彩りを添えてくれたと思う。

流石にイベントスタッフに秩父人はいなかったようだが、主催氏は他イベントでの経験が豊富なお方だ。他イベントでの繋がり等も生かし、多くのスタッフの協力を得られた。
サークル参加数(約40)に匹敵するスタッフ参加数だったとか。
主催氏も、イベント終了後、「今回は協力者に恵まれた」と、スタッフや秩父の協力者への感謝の意を述べられていた。


●会場内の様子

会場は、秩父鉄道秩父駅と一体化してる「秩父地場産センター」。
4階のホールを即売会会場とし、2階の空きスペースを待機列形成場所に。そこが埋まったら屋外に待機、という導線だ。
12時開場だが、2階・屋外あわせ推定350〜400人。カタログも速攻完売の大盛況で、最終的には、少なく見積もっても、500〜600人は来場したものと推測される。

初動で幾つかの著名なサークルに集中するも(もちろん著名サークルの頒布物は軒並み完売)、それが終われば急に人波は引けていく。
開場1時間後には、相当のまったりモードになったが、これは聖地巡礼開催即売会の、ある意味宿命かもしれない。参加者は遠征者・観光客でもある。早めに買い物を済ませ、聖地巡礼に流れるのは仕方無い、というか自然な流れだろう。

会場が落ち着いた所で、会場内を一通り巡回。
注目は、当日企画の一つでもある、ステージ上の「秘密基地」。あの花の「秘密基地」を再現し、そこでコスプレ撮影も可能という構図だ。
その横では、主催氏が必至こいて集めた「あの花グッズコレクション」の展示も。食玩系から埼玉新聞に掲載された「ゆきあつ祭り」の記事まで、見てるだけでも飽きないぐらいに豊富なラインナップだった。

3時に即売会自体は終了。その後はアフターイベント。
買い物を終わらせて聖地巡礼に出かけた皆さんも戻ってきた模様だ。
アフターイベントも相応に盛り上がり、あの花オンリーは、無事に終了。成功を収めた。



●「あの花」聖地開催 成功の要因

こうして聖地・秩父開催のあの花オンリーは、見事に成功を修めた。
成功の理由は色々あげられる。「あの花」人気や、聖地開催の話題性も、もちろんその中に入っている。
普段の告知活動が実ったというのも、当然あるだろう。

だが、私は、もっと別の要因を取り上げたい。

これは、聖地開催即売会の成功例でもある、豊郷のけいおん!オンリーや諏訪の東方オンリーにも言えることだが…この3つが挙げられると思う。

・地元の、作品ファン受け入れの風土
・地元への告知の積極性
・地元との連携の成功


地元の協力を得られた即売会は、会場のみが「楽しみ」ではない。
会場の外にも、楽しみが多く含まれており、それが来訪者の満足度や充実感を更に高めていく。
少し暴論気味だが、聖地開催型オンリーの成功のカギは、「地元の協力の成否」が握っているのかもしれない。

地元を味方につけるのには、なかなかに難しい地域もあるかもしれないが、それができる即売会は、成功への道を歩みやすくなるのではないか?とも感じた次第である。