熊本という地域は、同人の盛んな土地なのか、盛んじゃない土地なのか、いまいち量り切れない。
同人誌即売会は、「COMIC NETWORK LAMBDAX」他幾つかの即売会が定期・継続開催されるものの、サークル数は多くて100程度。福岡は元より、鹿児島に比べても規模が小さい。
ただ、同人ショップは「メロンブックス」「らしんばん」が市内一等地に設けられている。潜在的な同人需要ならあるのかもしれない。
同人が盛んなのか盛んじゃないのか、いまいち分かりにくい熊本県。ここでも東方オンリーが立ち上がった。それが今回ご紹介させていただく「幻想肥後之祭典」である。

第一回目の開催は昨年1月。
主催氏は熊本在住ながらも、全国各地の東方オンリーに遠征しサークル参加し続けている、サークル者である。
自身の遠征先の東方オンリー、加えて地元の即売会でも、積極的にチラシを撒き告知に臨んだ。
東方オンリー・地元即売会両方に告知という、地方の東方オンリーが取るべき告知策を、抜かりなく実践した。
その甲斐あって、約100spのサークル参加。大雪に見舞われながらも、来場者は数百人。原作者・ZUN氏が立ち寄るという嬉しいサプライズもあった。
第一回目の幻想肥後は、これまで熊本で開かれた即売会実績を大きく上回る参加者数であり、超のつく快挙と言える。

今回3/25に開催された、第二回目の幻想肥後は、募集spを200spとして、昨年夏より募集が始まった。
今回のサークル集めは、前回の比ではない貪欲さだった。
地元全国各地の東方オンリーを中心に積極的にチラシを配布。前回に比べ、九州島外での告知が、大幅に強化された。
締め切りは今年の1月下旬であったが、締め切り前には「入金?サークルカット?そんなの後でいいからとりあえず申し込め!」と露骨にサークル参加を煽るイラストを掲載。
更に締め切り後も【ロスタイム】と称しサークル参加を募集し続けた。
その「ロスタイム」は、2月下旬にまで及んだ。

STRIKE HOLEは、即売会というもの、数を多く集めた即売会ほど、高く評価する傾向にある。(もちろん数が全てとも思わないので、数が集まらなくとも評価の高い即売会も数多いが)
だから、主催がサークルを集めようとする努力は、当然評価したいと思っている。
主催氏のサークル集めにかける飽くなき努力や執念に対して、深い敬意を抱きたい。
…とは言えども、ここまで露骨さを見せるサークル集めは、流石にお目にかかった事が無い。
一体、主催氏に何があったのだろうか?

先月、東方椰麟祭に参加した折、私は主催氏とお話させていただく機会に恵まれた。
今回の会場である【興南会館】は、今年限りで閉鎖となり、次年度以降の利用は不可能。
次回開催するのであらば、代替会場の候補はある。だが、会場が広く(会場費用が高く)、一定数(確か三桁の数だったと聞いた)のサークル参加が無ければ赤字が過大になる。幻想肥後も店仕舞いせねばならない。
だからこそ、今回は可能な限り多くのサークルを呼び込み盛り上げた上で、その勢いを次回に繋げたい。
主催氏より、そういうお話をいただいた。
主催氏のサークル集めにおける執念と必死さは、次年度以降を見据えての事である。気持ちは理解できる。

ならば、参加サークルは200sp超を「目指す」のではなく「死守する」べきだ。最低200spは必達すべき。私はそう申し上げた。
参加サークル規模が、100sp台と200sp台とでは、与えるイメージが大きく違うからだ。
200sp台の方が、盛り上がっているという印象も強く、勢いも次回に持ち込みやすくなる。
最悪知り合いの1sp参加サークルに拝み込んで、sp増やして参加してもらうようお願いしてでも、200spの大台を必達すべきだ。そんな無茶な事まで申し上げたw
幸いにも、主催氏の努力の甲斐あり、そんな無茶せずとも200spの大台を達成した。

サークルは集まった。ならば一般参加者はどうだろうか?
主催氏は、とあるインターネット上の番組に出演し、一般参加者にできる限りサークル作品を購入して欲しいと呼び掛けたほどだ。
今回の幻想肥後は、九州島外も含め遠征参加者が多い。せっかく交通費かけて熊本に遠征しても、買い手に恵まれなければ、次回開催しても、熊本に遠征してくれないだろう。
地元のサークルは残ってくれるかもしれないが、数は決して多くない。新しい会場を賄いきれず、幻想肥後は終わらざるを得ない。
主催氏は元来、各地の東方オンリーに遠征参加するサークル者だ。その経験から編み出された、サークルの心理に迫った、現実的な分析だ。そう私は思った。
言葉を変えれば、現実を直視し、先を見据えた上での強い危機意識の表れ、と言えよう。

では、実際はどうだったか。
10時前の段階では一般待機列約100人と少なめ、一般入場開始直前には、300〜400程度か。
初動は、期待するほど多くはなかった。
ただ、時間が経過しても人出が弱まることは無かったので、後続の参加者もそれなりにはいた。
サークル参加者も含め、少なくとも1000人の大台は達成しただろう。1200〜1500程度に達した可能性もある。

通路が広めに取ってあるせいか、人出はそれなりにあるものの、通路移動に不便は来さない。
殺伐としておらず、買い手も焦る事無く、じっくりサークルを回れた。
買い手の購買意欲も高めだったと思う。
結果、サークルの個差はあろうが、それなりの手応えを感じたサークルさんも多かったのではなかろうか。
何とか、サークルさんの次回参加に、繋がりそうだろうか…?
運営側から、サークルさんに記念品としてクリアファイルも配布されたが、そういう気遣いも実る事を願いたい。

今回特筆すべき企画としては、地元酒造を巻き込んで販売した「東方焼酎」。
地元熊本の特産品・球磨焼酎を用い、パッケージには東方シリーズの登場人物・伊吹萃香をあしらった萌え酒である。
一本2500円とやや高めだが、熊本土産代わりに購入したサークルさんも多かった。
勿論一般参加者にも好評で、会場後しばらくは、お酒が最大手、長蛇の列であった。

東方オンリー会場内でのお酒の販売は、過去幾つかの即売会で実施された。
酒販免許、東方二次創作のガイドライン双方の問題をクリアする必要があるが、酒業者に著作権者たるZUN氏の承諾を得た上で、企業出店として販売させるのが、一番分かりやすいと思う。
(東方と酒販の件については、暇があれば別途論じたい)

全般的に見て、この「幻想肥後之祭典」は、過去の熊本の即売会では前例の無い多くの参加者を呼び込み、大成功を収めた即売会であった。
熊本同人界において金字塔を建て、熊本同人の歴史の1ページに名を残す即売会とも言えよう。
この成果は、この主催氏だからこそ成し得た成功であり、他の主催だったらこれほどの成果を挙げられたか?
サークルを集めた背景には、主催氏が遠征先の即売会で告知に励んだ事や、サークル経験を生かしサークル心理に立てたからこその分析と危機意識とがある。
つまり、主催氏がサークル者であり、サークル者としての経験の賜物として、今回の成功が存在するのである。


しかしながら一方、主催氏がサークル者だからこその「マイナス面」もあった。
次回以降の継続開催を目指すに当たっては、このマイナス面も指摘した上で、改善を図っていただきたいと私は考える。

最大のマイナス面は、主催氏のイベント運営経験やスタッフ経験が、ほぼ皆無に等しい事である。
主催氏は他の東方オンリーにも顔を出しているが、あくまで、サークル活動の一環としての参加だ。スタッフとして参加している訳ではない。
他の東方オンリーの主催は、自身が「運営初心者」たる事を自覚し、他のイベントで積極的にスタッフとして参加し、経験を積もうと心がけている方が少なくない。
同じ初心者主催でも、そういう方々に比べると、幻想肥後主催氏の運営経験は、極めて乏しいと談じざるを得ない。

運営経験が無くても、周りの皆さんの力を借りてイベントを回すことはできるだろう。
実際、前回は大9州東方祭スタッフが全面バックアップした。
今回も、大9州・例大祭・紅楼夢各関係者の連合軍が、当日の運営に入り切り盛りした。
彼らの助力で、即売会自体は円滑に回していけただろう。
ただ、経験が皆無である以上、彼ら助っ人軍団に運営を丸投せざるを得ず、彼らへの依存度もその分高くなる。
逆に言えば、依存度が高いが故に、彼らが何らかの理由で手伝えなくなったその時に、イベントは回らず空中分解するリスクも抱えている、とも言えよう。
遠方からの遠征者にいつも頼れる訳じゃない。その可能性は、決して低くない。

今回、宅配業者が遅延し、宅配搬出の受付が14時開始予定の所、1時間以上も開始の遅れるトラブルがあった。
遠征参加者の多いこのオンリー、交通機関の都合上早めの撤収を予定されるサークルさんの存在も想定される。サークルに迷惑が掛かり、余り宜しくない。

これは、宅配業者の遅刻であり、主たる非は宅配業者側にある。
ただ、そうであっても、宅配伝票を朝搬入の際ヤマトから受け取る、本部で宅配受付を行う。この2つの段取りをくむだけでも、サークルを待たせずに済んだのではないか。
主催氏の段取りもまた、反省すべき部分である。
正直、スタッフなり主催なりの経験がもう少し備わっていれば、経験から来る「気付き」もある。段取りの甘さも、もう少しは改善されたのではないか。
これ以外にも何点か指摘すべき点はあるが、余り挙げ連ねるのも粗探しっぽいので割愛。
ただ、これらは皆、主催氏の経験がもう少しあれば、防げた案件である。

という訳で主催氏には、次回以降を見据え、他イベントでスタッフとしてお手伝いをしつつ、経験を積まれる事をお勧めしたい。
主催氏は、サークル者だ。これまでは、他イベントに行ってもサークルとして参加していた。
その活動を犠牲にしてまでスタッフをしろとまでは申さないが、ならば設営撤収・アフターイベントなど、サークル頒布を阻害しない時間帯を中心にスタッフ活動に従事しても良いだろう。

主催氏がスタッフとして活動する事は、経験値を増やしスキルを磨くだけに止まらない。
今回主催氏は、大9州・紅楼夢・例大祭等様々な東方オンリーの経験者から、助力を得た。
これらのオンリーにてお手伝いをする事により、今回手伝って貰った事のご恩返しとなるし、彼らとキブアンドテイクの関係を築ける。
人間関係が強化されれば、次回も手伝って貰えるかもしれない。
…というか、自分のイベント手伝って貰いました。でも相手方のイベントはサークル参加しますから手伝えません…それはちょっと虫が良すぎるのでは?
汗を流し助けて貰ったら、自分も汗を流す。その方が清々しいし、理解も得られるだろう。


大9州・紅楼夢・例大祭等、他のオンリーでお手伝いする事は、手伝って貰った事へのご恩返しとなる。
また、主催氏が不足しがちなスタッフ経験を積める機会でもあり、運営スキルも向上できる。
今からでも遅くない。これらのイベントに、スタッフとしてお手伝いする事を、お勧め申し上げたい。