前回記事にて触れた「ガタケット」の窮状。
4/29開催分のサークル数急減は、ガタケット支援に立ち上がった有志達の参戦もあり、サークル数も回復。何とか切り抜けられそうにはなった。
(但しサークルは集まったものの、一般参加者集めという課題も残る)

だが、決して現状で安心してはならない。
ガタケットの窮状は、今回のみに関して言えば「日程の悪さ」で説明が付く。
但し、中長期的に見れば、少子化等の事象によるサークル数の漸減傾向。これが根本的な原因だ。
サークル減少が進むこの流れを止める事はなかなか難しいかもしれないが、この現実に如何に向き合い、如何に付き合っていくか。
その手だてを考え、今後の即売会運営に生かさねば、今後も似たような窮状に陥るだろう。


【少子化と地方即売会衰退との関連】

少子化が地方即売会の苦戦の一因と繰り返しているが、その因果関係について簡単に触れたい。

そもそも地方の同人誌即売会は、中学生、高校生といった若い世代の参加が多い。
親御さんから貰うお小遣いを遣り繰りしながら同人活動を行う世代であり、経済力は極めて弱い。
コミケをはじめとする都会の大規模即売会への遠征は、資金的制約から極めて困難。
だからこそ、地元のイベントが活動の中心となる。
(余談だが、地方即売会で同人誌が少なく、ラミカやポスカが多いのも、これらが同人誌に比べ、少ない投下資金で頒布可能だからという側面もある。)

やがて彼(女)らが就職し都会に出る。
地元に就職先を見つけても、働いて経済力も付くから、都会に遠征する機会が増える。
自然に都会の即売会にウェイトを置くようになり、地元の即売会へは、足が遠のくようになる。
地方出身の同人者なら、殆どの方が通る道である。

地方即売会の担い手は、中学生〜大学生ぐらいまでの、若い世代が中心である。
少子化により若い世代の絶対数が減れば、その中の同人をたしなむ人口も、比例して減る。
少子化は、地方を支える同人者の人口の減少に繋がっているし、サークル数の減少という形で目に見える影響を及ぼしている。



【少子化以外の即売会衰退の要因】

以前私は、岡山の同人誌即売会「ぶちすげぇコミックバトル」について取り上げた。
(STRIKE HOLE2006年1月「地方イベントの課題 岡山「独自の」課題」http://blog.livedoor.jp/analstrike/archives/50293346.html参照)

正確には、2005年10月開催「ぶちすげぇ」イベントパンフ内コラム「GAKUYAOCHI」の文面について、である。
地方即売会が何故苦戦しているか。ぶちすげぇ主催氏が自ら分析しているが、当時その鋭さに感嘆し取り上げたものだった。
7年経ち2012年になった今でも尚通用する、的を得た指摘であると思う。
以下、氏の「地方即売会衰退」の理由についての分析文を抜粋する。


◎インターネットの発達により、自己主張の手段としてわざわざ苦労して同人誌を作らなくても満足出来る方法(ホームページや掲示板)が生まれた事。

◎地方で開催されるイベントにわざわざ直接参加しなくても、同人誌を扱う書店が全国に出来た事。

◎自分が直接地方のイベントに出向かずとも、地方の人との交流はインターネットを介してチャットででも出来る事。

◎〆切に悩まされながら苦労して同人誌を作らなくても、自分のホームページにイラストをアップしておけばそこを訪れる人の反応も判るから満足出来る事。

こう言う理由で、大抵の場合作るのに苦労と努力をしなければいけない同人誌を作らなくなったり特にイベントに参加しなくても不自由さを感じなくなったために、サークル参加をしなくなったのです。
ただ、コスプレに関しては直接イベントに参加して仲間と交流しないと面白くありませんから、ドンドン参加してくれているのです。

(引用ここまで)

ネット環境の発達により、作品発表の機会が広がった反面、発表の場としての同人誌即売会の価値は、サークルからすると、相対的に低下している。
但し、直に会う事にこそ価値のあるコスプレは別で、直に会える「場」たるイベントの価値は、コスプレイヤー的に見て、低下していない。
「地方はコスプレイヤーばかり」と言う感想はよく聞くが、もしかしたら、コスプレイヤーが増えているのではなく、サークルが減っているから、相対的にコスプレ率が高くなり、コスプレばかりが増えているかのよう「見える」だけなのかもしれない。(これはもう少し要検証か)

何れにせよ、サークルは「急減」、コスプレは「横ばい」ぐらいのイメージで考えたい所である。



【ガタケットは何故これまで持ち堪えてきたか】

前二項において、地方即売会をとりまく厳しい状況について、語らせていただいた。
しかしながら、その割には、ガタケットの健闘ぶりは異様(あ、一応ほめ言葉です)である。
2005年頃と今とを比較するに、他の地域だと規模が半減したり、或いはその地域から撤退してしまう所すら見受けられる。
ガタケットは、2005年時点で約1000sp前後。今回500spまで低落する危機に陥るも、普段なら800spは確保している。
減っているには減っているが、他の地域のように減りが激しくない。
ぶっちゃけ、地方即売会の中でも、異様に健闘していると言える。

その理由は、今回公式サイト上で4月1日に公表されたQ&A http://gataket.com/121/の中に隠されている。

>参加者の低年齢化を指摘される方もいますが、ここ数年で参加サークルの平均年齢は20歳から26歳に上昇しています。

私も初めて知った事実だが、ガタケットの参加サークルの平均年齢は、他の地方即売会に比べ、明らかに高い。
地方即売会は、平均年齢20歳代前半の所が多い。若い世代の多いと言われる東方オンリーも、その位の平均年齢だ。
これに比べ、ガタケットの平均年齢は明らかに高い。平均年齢20歳代後半と言う数字は、比較的年長者が多いと目される男性向けジャンルのオンリー等で見られる数字だ。

先にも述べたが、学生達が担い手の中核たる地方即売会においては、彼らが年を取るにつれ、即売会から足が遠のく。
だが、ガタケットにおいては、年を取っても尚サークル参加の戦列に残り続ける方が多いのだろう。サークル参加年齢が高い理由は、そこに求められる。
加えて、ガタケットの高名を聞きつけ、他地域から遠征するサークルも、参加年齢を押し上げていると言えよう。これらのサークルは、遠征するぐらいだから、それなりに経済力のある年長者が多い。

つまり、急激な少子化にも関わらず、ガタケットがこれまで大きくサークル数を減らさずに済んだ理由。
それは、年長になってもガタケットを「卒業」せず残ってくれたサークルの存在。そして遠征サークルの存在。
この2つは、他の地方即売会の多くに恵まれず、ガタケットに恵まれたものでもある。
この2者の存在が、ガタケットのサークル減少を食い止めているである。


余談だが、「年長者を取り込む」という方向性は、苦戦する地方即売会が今後も存続する上での、一つの「キーポイント」になり得る。
例えば、コミックマーケットやコミックシティは、年長者のが「卒業」することの少ない即売会だ。年長者が定着する即売会である。
コミティアを筆頭とした創作系オンリーイベントにも、同じ事が言えるだろう。
これらの即売会は、年長者が残留し、かつ若年層中心に新規参入組も少なくない。卒業するサークルが少なく、新規が入ってくるので、参加サークル数は今も尚増えている。
年長者が参加し、リピーター化する即売会こそ、生き残り易いのではないだろうか。


【ガタケットの方向性・その1〜規模の維持に足掻くべし〜】

ここまで、(一般的な)地方即売会ならびにガタケットの現状について、可能な限りの分析を行ってきた。
ならば、今後のガタケットはどう在るべきなのか。
そこに切り込んでいきたい。

先ず、4月1日掲載の問答集http://gataket.com/121/でも触れられていたし、ネット界隈でも触れられていたが…500サークルしか集まらない現状を素直に受け入れ、【会場の縮小・移転】をもって対応するという方向性について述べる。
この方法については、規模の縮小が続くようなら、将来的には検討せねばならぬ案件だろう。
だが、今時点で検討すべき案件ではない。

オールジャンルの同人誌即売会は、規模の大きさが求心力となる。
規模が大きければ、その分来場者も増える。
人が増えた分、自分の作品を手にとってくれるチャンスも増えるし、人と会う楽しみも増す。
その期待感が、サークル参加しようという意欲に繋がる。
サークル規模が大きいほど、正のスパイラルとなる。

オンリーイベントならば、好きなジャンルのみに絞ったイベントだから、たとえ規模が小さくとも、そのコンセプトが求心力となる。
だが、多ジャンル混合のオールジャンルには、それがない。
オールジャンルの求心力は、やはり「規模」しかないのである。

仮に規模を縮小し、より小さい箱を借りたとしよう。
しかしその行動は、イベント規模を小さくしましたよ、とのメッセージの発信でもある。
参加者も、会場を確認し、規模縮小と判断する。
規模が小さいなら参加しなくてもいいやとなり、求心力も急落する。
今以上のサークル数急落が想定され、今以上にジリ貧…それこそイベント終了にもなりかねない危険も孕む。

過去には、福岡のコミックネットワークが、福岡ヤフードームを撤退し、より小さい箱たる国際センターに会場を移した事もあった。
だが、その結果は散々なものだった。僅か一年で、サークル数4桁→2桁の凋落。最後は中止&撤退の寂しい末路だ。
この凋落の原因には、コミックネットワーク自身の運営の粗末さも当然含まれようが、それに加え、九州大規模即売会の象徴たる「福岡ヤフードーム」から撤退した事による「求心力の低下」も挙げられるだろう。

ちなみに、ヤフードームの日程が確保できず、コミックシティ福岡が長期にわたり開催を控えていた頃、私はコミックシティの関係者の方に「国際センター等他の会場での開催は考えないのですか?」と疑問をぶつけたことがある。
これに対しシティ側の答えは、小さい会場になるとその分サークルもガクッと減るので、会場移動は考えていないとの事であった。
コミックネットワークの凋落と、辛抱しヤフードームにこだわったコミックシティの繁栄が、対照的であり、小さい箱に移す事のリスクを示している。
つーかヤフードームが無ければ、国際センターでもマリンメッセでもいいじゃん…と仰る向きは、コミックネットワークの凋落から何を学んだのかしら?
国際センターやマリンメッセは、ヤフードームの代わりに成り得ない。

話がだいぶ逸れてしまったが、九州の事例に照らし考えるならば、ガタケットが会場を小さい箱に移そうものなら、それを機に凋落が加速するのでは?との懸念が湧く。
ガタケットの今後の存続や繁栄を考えるならば、会場を移すのは「最後の手段」と心得た方が良いだろう。
規模維持ないし拡大の為にありとあらゆる手段を駆使し(とは言え今回の泣き落とし戦術はもう使えないだろうが)、あらゆる手を使って万策尽きた時こそ、会場移転・縮小を考えるべきである。

では次に、いかにして規模の維持に臨むか。その具体策や方向性について論じたいが…
だいぶ長文になってしまったので、ここで一旦区切り、次回に回したい。