前回は、ガルパンオンリー「セーラー服と戦車道」開催までのあらましを中心に語らせていただいたが、今回は当日の「惨状」を中心に、レポートさせていただきたい。

特急「スーパーひたち」を水戸で降り、鹿島臨海鉄道に乗り換える。
鹿島臨海鉄道は普通のローカル線。鹿島サッカースタジアムを沿線に抱えているだけに、鹿島アントラーズのポスターが車内に貼られているのが地元らしいが…そこに異変発生。
車内に堂々、アントラーズのポスターて並べる形で、ガルパンのポスターが…
途中の常澄駅では、何人もが車窓にカメラを向けていた。後で知ったが、これは畑を活用したガルパンアートとか…気付けずに後で後悔したw

なお、この鹿島臨海鉄道には、【ガルパンラッピング列車】なるものも存在している。
車内外にガルパンのラッピングが施されており、帰りはこれに乗車。
冷泉殿に見つめられるお席に座り、帰途に着いたw

そして変わり果てた大洗の駅。
先ず駅には「祝・優勝 第六十三回戦車道全国高校生大会 大洗女子学園」の垂れ幕。
…架空の大会の優勝を祝う、という二次元と三次元の境界が視えなくなりそうな展開だw

駅構内には臨時売り場が設けられ、ガルパン関連のグッズを駅員が一生懸命売っている。
寄せ書きコーナーや、旅ノートも設置され、聖地巡礼者の書き込みで渦巻いている。
駅のインフォメーションセンターは、ファンから寄贈されたガルパングッズで埋め尽くされ、一種の【ガルパン資料館】と化していた。
そして、オンリーイベントからの帰途に着く参加者で埋め尽くされ、異常な人大杉状態…普段の閑散としたローカル駅の面影は、もはや幻想入りしてしまったようだw

問題は、会場への交通手段だ。
大洗には、レンタサイクルもあると聞く。駅前にはタクシー乗り場もあるし、レンタサイクルかタクシーで会場入りしようと呑気に構えていた。
だが、それは甘い算段だった。
レンタサイクルは、既に全台出払っていた。勿論、今では「大洗名物」と化したガルパン痛チャリも含めて、である。
タクシー乗り場も、以前大洗港からフェリーに乗る時のアクセスに使った時は、客待ちのタクシーが何台も停まっていたが、今日はもぬけの空だ。
…私は、駅で10分近く途方に暮れたw

歩いて10〜15分の距離らしく、大半の参加者は歩いて向かったようで、私もそうしようと思った矢先…
オンリー帰りの参加者を乗せたタクシーが、駅ロータリーに降臨…!
即私はタクシーに駆け込み、ガルパン会場に向かう。

タクシーの運ちゃんも、今日一日で相当訓練されてしまったようで、第一会場「大洗マリーナ」も、第二会場「まいわい市場」も、参加者の並ぶ場所含め完全に把握していた。
タクシーの運転手曰わく、「今日はずっとこの町を動いてばっかりで休む暇なし」とのこと。不休でオンリー参加者を乗せ続けた模様だ。
Twitterからの情報で、第二会場の「まいわい市場」が相当込み合っているとの話を聞いていたので、まだ空いている方と思われる、大洗マリーナに向かって貰った。
流石訓練された運転手、大洗マリーナの会場入り口前に、ピンポイントで停まってくれたw

大洗マリーナは、元々はレストランとして活用されていた建物。
大洗港も近く、係留されている苫小牧行のフェリーさんふらわぁ号を眺める事の出来る、言わば【学園艦ビュー】の立地だw
流石に東日本大震災以後、建物全体が津波をモロに被ってしまった為、レストランとしての営業は休止している模様だ。
トイレも未復旧、アウトレットのトイレを使って、との立て札もあった。
手すりも破損しているようで、「触れるべからず」の意を示すテープも貼ってあった。
東日本大震災の影響の大きさを、ここ大洗の地でも噛み締めた次第である。

会場は、元々がレストランだけに、レストラン用の椅子・テーブルが設置されていたが、これを全て外にかき出して、即売会用の机椅子を入れるという強引な運用。
レストランを即売会会場として運用する方法は、夕張のホテルマウントレースイで開催された「夕張まんがまつり」を思い出すが、夕張は、椅子テーブルをそのままサークル机等に転用していた。
それをせず、敢えて机椅子を即売会用に入れ替えたのは、椅子テーブルのサイズの大きさが、ネックになってのことだろう。
それだけこの会場に「余裕」が無かった、と言う事でもある。

最終的に、この会場だけで120サークルの半分を収容した。
しかしながらそれは、大部屋2つに加え、玄関ロビースペースまでをもサークル配置用として充当する無茶な運用の結果である。
これも、この会場で配置を組むに、余裕が無かった事の裏付けとなろう。

私が訪れた14時には、午前中の阿鼻叫喚を通り過ぎた後。
入場制限は掛からなかったものの、既に半分近いサークルが完売…
会場内も、参加者の往来が耐えなかった。終了間際の午後2時でこの状況は、極めて異例である。

なお、この「大洗マリーナ」には、元々レストランなだけに、テラスも備わっていた。
太平洋、そして学園艦(というかフェリーさんふらわぁ)を眺められる、見晴らしの良い風景が広がる。
何故かそこでカツ弁当が広げられ、一般参加者の休息を取っており、金管楽器を鳴らしている方もいる。
状況がいまいち分からないので聞いてみた所、このテラスは休憩所としての運用とか。
カツ弁当の物販は、イベントの物版企画。楽器は、アフター企画にビッグバンドの演奏があり、そのリハーサル…というかチューニング、音合わせの模様だ。
今回はカタログも無く(開場前に完売)、また館内のアナウンスも不十分だった為、情報不足になりがち。こうして人づてで情報を得た局面が多かった。

第一会場の大洗マリーナを辞し、第二会場の「まいわい市場」に移動する。
まいわい市場は、ショッピングモール・大洗リゾートアウトレットの端に位置。大洗マリーナから移動するには、このリゾートアウトレットを縦断せねばならず、アウトレットモールはガルパンオンリーの参加者が加わり人大杉状態…!
そう言えば、先のタクシーの運転手も、「会場が分かれアウトレットを移動する人が増え、賑わいが増した」とおっしゃっていた。会場分割は苦しい選択だったにせよ、地元振興という部分では貢献度が上がったはずだ。

また、アウトレットモールの駐車場には、ガルパン痛車が多数!
ガルパン以外のジャンルの痛車(けいおん!やボカロ等)も参戦し、街の賑わいに彩りを添えた。

さて、その「まいわい市場」は、1階が土産物等の物産店。2階の物置き場や空きテナントを会場に充当する、相変わらずの強引な展開w
私が来場した時には普通に入れたが(それでも相当込み合っていたが)、こちらの方が混雑は深刻で、入れ替え制を敷かざるを得ず、それを3回こなしたとか。
物販企画のカツ弁当も、ここで販売されていた模様だ。

そして1階…芝生の公園は、何故か展示されていた1/2スケール戦車を中心に、コスプレイヤーが撮影会。
隣では戦車に視線を遣りつつ、子供が遊具に興じ、奇妙な共存関係が出来上がっていたw

更に、何故か物産店の方にも長蛇の列…しかも【最後尾札】か用意される、妙に訓練された展開。
これは、大洗新名物と化したガルパン和菓子「あんこう焼き」の待機列。
この訓練された待機列…オンリーイベント参加者によるものであることは、想像に難くない。

こうして混沌の中ながらも「セーラー服と戦車道」は終了し、アフターイベントへ。
しかし、まいわい広場にアフターイベントの案内が行き届かず。急な会場変更で充分な運営体制が整わなかったという事情もあろうが、ここは反省点だろう。
「2つの会場で、等しく案内する」事の意識が必要だったし、その意識が充分でなかったのは人手不足による余裕の無さもあった筈。
2会場分割運営に備え、もう少し人手を確保できれば良かったと思う。
また、会場間の移動でアウトレットモールを通った人も多かったから、アウトレットモール全体への館内放送を実施しても良かっただろう。
この当たりは、そこに至るまでの事情は斟酌できるにしても、反省点の一つになるだろう。

アフターは、ビッグバンドの生ライブ。トロンボーン/テューバ/トランペット/バイオリン/パーカッションでの構成。
管弦楽だと、例え生ライブであっても、大音響にはならずに済む点がメリットでは?とも感じた。

総じて見て、ガルパンオンリー「セーラー服と戦車道」は、突然の会場変更により、ノウハウある主催団体であってもリカバリーが上手くいかず、当日案内の問題等反省点を残した。
しかしながら、同時に、地元の好意に助けを受ける事で、何とか成功したイベントとも言える。
大洗文化センターを追い出された所に、会場を提供してくれたのは、「まいわい市場」等地元の方々だ。
また、このイベントに合わせ、鹿島臨海鉄道・大洗駅も人員を増員するなどして対応した。

「聖地巡礼」をテーマとした観光振興について、山村高淑氏「アニメ・マンガで地域振興」(東京法令出版/2011)の中で、(1)製作者(2)地域(3)ファン(=旅行者)の3者による「トライアングル=モデル」の重要性が説かれている。
このモデルは、ガルパンを通じた観光振興で結果を出した大洗にも、当てはまる。
製作者の理解の下、ファンの来訪、それを歓待する地元。こと大洗に関しては、地元の方々がガルパンの熱烈なファンとなってくれた点が、特徴的だ。
3者の相互理解を下地に、観光振興を成し得た構図である。
そして、その構図が成立しているからこそ、地元の理解に助けられ、ガルパンオンリーも成功したのである。
我々ファンは、製作者や地元への感謝の念を忘れぬよう、務めて参りたいものである。