(はじめに)
大学の学生団体の事は、一般的に「大学サークル」ないし単に「サークル」と称するが…
同人活動におけるサークルとの混同を避けるため、STRIKE HOLEでは「学生団体」という呼称を用いる事とする。


大学の学生団体による同人活動は、大学漫研のコミックマーケットへの参加が散見されるも、正直、余り目立つ存在とは言い難かった。
しかしながら、最近になり学生団体の同人活動が目に留まるようになり、自分の中では、少しずつだが、気になる存在になりつつあった。

一つは、学生団体が、サークルとして同人誌即売会に関わるケースが、増えている点。
悪の組織UPFGの「邪神」として有名な久樹輝幸氏(サークル「久幸繙文」)の名著「東方コミュニティ白書2013」において、ゲスト・ひてん氏寄稿文によると、東方専門の学生団体が増えているとのこと。
そういえば、最近の東方オンリーを見ると、「●●大学東方研究会」名義での参加サークルが目に付き出している。
氏の指摘が、大学の学生団体による同人活動に、私が注目し始めるきっかけの一つとなった。

加えて、最近、学生団体による【同人誌即売会主催】という活動も、地味に増えてきているように映った。

学生団体主催の同人誌即売会は、奈良女子大漫研が主催する「COMIC☆PARTY」が知られる存在だ。
奈良女子大学園祭「恋都祭」内の開催で、学園祭内の出し物として、「同人誌即売会」を出店・開催という構図だ。
私も過去参加経験はあるが、女子学生の参加が多いのと、小物グッズ系の頒布が多いのとが、印象的であった。

奈良女子大のような学生団体の即売会企画は、「珍しい形態」という認識だった。奈良女子大以外に、この手の動きはお見かけしなかった。
だが近年、この手の動きが、いささか増えてきた。
近畿では京都精華大で「キノフェア」が開催、山口県でも徳山大学が「ComicCollege」を開催。「ComicCollege」は、昨年徳山の同人誌即売会に参加した際、街中でチラシを配っていたのを覚えている。
関東でも、高田馬場の専門学校開催の「BABAコミ」が知られている他、東大や上智大等でも即売会開催の動きが見られる。
徐々にではあるが、学生団体による同人活動のムーブメントが、形成されつつあるようにも思える。私としても、気になる存在になりつつある。

今回早稲田大学の「ワセケット」にお邪魔したのは、スケジュールが空いていた事もあるが、学生団体による同人活動というものに、興味を抱いたからでもある。
学園祭内の即売会開催…過去奈良女子大には行ったが、他大にも顔を出し、何かしら学べる事があれば…との思いもあった。

「ワセケット」は、11月2日と3日、早稲田大学学園祭「早稲田祭」内で開催された同人誌即売会だ。
キャンパス内の教室を利用しての開催であり、早速会場となる教室に向かった…が、昼休み休憩中とのことで会場に入れず…!
正直戸惑ったが、この即売会、12:30〜13:30の間は、「昼休み」としている。一般参加者も一旦追い出されてしまう。
サークルにも、学園祭を楽しんでもらおう、屋台で昼食でも調達して来たら?という事なのだろうか。
少し変わったやり方なので戸惑ったが、参加サークルにとっても、昼休み中に学祭を回れるから、メリットはあると思う。

取り敢えず、13時30分再開場とのことなので、再開場の待機列に並ぶ。
20〜30人ぐらいが、列を成した。
スタッフが、待機列にパンフを配ってくれる。入場無料とのことで、特にお金は取られない。

そしていよいよ、13時30分の再開場。
今回は、305・306、2つの教室をサークル配置に充てている。

まず全員、305教室に入場。
サークル島を壁にくっつけ、通路を一方通行にしている点が特徴的。博物館や水族館よろしく、順路を決めて順路途中のサークルを見てもらう、という方法だ。
隣の306教室にも来場者を流さないといけないからこうしたのだろうが、後ろがつかえているので、追い立てられる印象だったw
サークル前で立ち止まってゆっくり見て回る、という雰囲気になれなかったのは残念だった。
東方サークルが多く、同人CDや「僕は友達が少ない」のサークルも目に付いた。

305教室を出たら、306教室へ移動。
こちらは、普通の島と壁の配置だ。
ジャンル的には、アイマスや艦これ、評論系が目立った。

東方と艦これで全体の半数近くに達し、また他のサークルも、全般的に男性向けのジャンルが多い。
ジャンルの顔ぶれとしては、男性向けオールジャンル同人誌即売会「サンシャインクリエイション」に似た雰囲気だ。
ここまで男性向けが強い理由としては、早稲田の男女比(7:3位らしい)が影響しているのではないか、と考えられる。
この手の学生団体が企画する即売会だと、参加者の大半が、その大学の学生だ。
ちなみに、男子学生の多い東大も、男子向け色が強かったと聞いたし、一方奈良女子大学祭内の即売会に私が顔出した時は、女性向けジャンルでラミカ等の小物グッズが多かった。
その学校の学生が中心となって参加する即売会である以上、学生の男女構成等で、即売会のカラーも自然に決まってくるものと思われる。

大学生主体の同人誌即売会は随所で勃興しており、今回は他の学校からも主催がサークル参加していた。
高田馬場の専門学校で開催の「BABAコミ」や、幾つかの学生団体が連合して主催する「UNIKET」等が、サークル出店していた。
なお、学生主体の即売会ではあるが、大学生以外でも、一般は勿論、サークルとしての参加もOKの所も少なくない。興味をお持ちの方は、サークル参加しては如何だろうか?

大学など学生団体企画の即売会は、最近増えているが、これは同人界の今後を考える上でも、期待の持てる存在である。
これまでは、若い世代の受け皿としての役割を、地場の同人誌即売会が担ってきた。
地場の即売会が、同人経験の浅い若手を受け入れ、育ててきたとも言える。
しかしながら、地方のオールジャンル即売会の衰退は、その若手育成の機能を弱めている。
学生団体による即売会は、地場の即売会が担う若手の登龍門・育成の役割を補強する。そういう効果も期待できると思う。

更に申せば、都内は大規模な即売会が多く、小さい規模のオールジャンルは存続し辛い。
地方のように、同人経験の浅い人たちが、気軽に参加できる場が無い。(大きいイベントにいきなり参加するのも勇気が要る)
一方、大学というものは、都市部に集中している。都市部大学の学生団体が活動を活発化させ、小規模でも即売会開催が増えれば、都市部の若手が気軽に同人に入り込める受け皿を創出する事にもなり得る。
私は、学生団体のそうした可能性に、期待を持ちたい。

学生団体による即売会の開催には、他にもメリットがある。
一つは、団体であるが故に、場の継続がし易い事。
個人主催のイベントだと、主催個人が続けられなくなれば終了だが、学生団体なら、新歓で新入生の人材を確保する限り、下の世代に引き継がせて半永久的に継続できる。
主催一人に負担がかからず、学生団体のメンバー皆で業務を分担できる点も、継続開催を図りやすく、メリットとなる。
会場も、学内の施設を利用できれば、開催費用も低廉に抑えられ、負担も少ない。
(但し、4年で卒業するから、運営ノウハウの蓄積を、下級生に伝えきれるか?という課題もある。長期スパンでのノウハウの蓄積は、強制的に代替わりする学生団体の性質上、なかなか難しい)
「ワセケット」をはじめとして、学生団体による即売会開催の動きは、私としては、同人界活性化の可能性を秘めた存在として、期待したいし、今後も注視しつつ応援したいとも考えている。

最後に、これは完全な余談となるが…
今回は、早大の学園祭「早稲田祭」内の開催だ。
「早稲田祭」には、このワセケット以外にも、同人誌に類する系統のもの(ミニコミ誌含む)を出している所が多く、時間があれば、そちらも回ると面白い。
ミニコミ誌「早稲田乞食」は、同人誌即売会にサークル参加こそしてないが(学内で出店を出して頒布している)、ユニークな…というか私好みの残念さ溢れる誌面だ。
ミニコミ誌「早稲田魂」もなかなかの面白さだった。
また、鉄道研究会は、自前で企画出店を行い、巨大なNゲージやプラレールの走行会を実施。同人誌も頒布しており、黒板には「祝・冬コミ当選」とか書かれていたw
早稲田は学生数も多い分、学生団体も多く、その分、同人誌の系統(ミニコミ誌含む)に当たる本が、随所で頒布されている。
ワセケットのみならず、他のサークルの企画に立ち寄り、同人誌系統の本を探し求めるのもまた、同人者らしい楽しみ方なのかもしれないw