愛知県三河の山奥、設楽町に、一軒の小さな旅館がある。屋号は、「中野屋旅館」。
創業は明治時代とか聞く。昔ながらの和風旅館である。

この旅館のご主人は、【東方クラスタ】であるw
そして、その趣味が高じてか、ある日旅館を改装。副屋号を「萃夢荘」とした。
メニューも、東方に縁の深いもの多く取り入れ、東方クラスタ大歓迎の姿勢を取り始めたw

「萃夢荘」は、旅館のパンフレットを作成した。
そのパンフレットには、【伊吹萃香】のイラストが彩る。伊吹萃香で活動しているサークル「ENJOY MIX」の手による。
そしてそのパンフレットは、各地の東方オンリーで配布された…(旅館パンフという商業性の高いもの故、東方オンリーでの配布限定で許可を得たらしい)

(なお、ENJOY MIXさんには、当サークル同人誌の表紙イラストにて、ご協力ご提供をいただいております。いつもありがとうございます。)

東方クラスタ大歓迎。
幻想郷に、最も近い宿。
それが「萃夢荘」である。

以前より気にはなっていた旅館だったが、上手く旅程の都合が付き、3/30名古屋開催の東方オンリー「東方名華祭」「幻想郷フォーラム」等への参加に合わせ、「萃夢荘」を前泊地とした。

とは言え、「萃夢荘」への道のりは遠い。
豊橋から、JR飯田線で山に入ること1時間、本長篠駅の下車。
そして本長篠から、豊橋鉄道の路線バスにて、鳳来寺・田口方向へ約40分。終点・田口下車。
田口は、設楽町の中心地。町とは言え、商店や住宅もそこそこ集まっている、この地域の中心的な集落。
田口のバス停から徒歩で5分弱で、「萃夢荘」到着だ。

…うーん、公共交通機関オンリーでも、決して行けない場所では無いのだが、やっぱり遠いなあw
可能ならば、車でのアクセスが良いだろう。
車なら、東京から第二東名の浜松いなさJCTで三遠道路に入り、鳳来峡ICまで行けば、比較的近い。
名古屋からだと、東海環状道・豊田松平ICから足助町/香嵐渓経由約80分。山道ばかりでしんどいかもしれないが、これが一番近いルートだ。

田口バス停を降りると、ご主人がお迎えに来てくださった。
この町で地酒を造る「ほうらい泉」さんにご案内いただけるとの事。旅館からも、徒歩圏内の酒蔵だ。
…だが、私の来訪が夕方6時手前…もう閉まっていたw
もう少し早めに到着していれば、立ち寄れたと思う。

次に、近くに温泉があるとの事で、そこにご案内いただく事に。
もっとも、「近く」とは言っても車で30分かけた隣町、旧・稲武町(現在は豊田市に編入)のお風呂だがw
この稲武町の「どんぐりの湯」は、天然温泉のスーパー銭湯。近年改装された新しめの建物で、浴場面積も大拡張。
広々と温泉を楽しめた、良いお湯であった。
素晴らしいお湯をご案内いただけたと感謝しているが、実は、旅館自体のお風呂が狭く(事実上1人用のお風呂らしい)、それをフォローする意図があるようだ。
初夏に再改装を行う方針のようで、その時に浴場も拡張される見込みだ。

お風呂が終わったら、旅館に戻る。
旅館での食事も、旅の楽しみの一つだ。
とは言え、設楽町には、これと言った名物料理が無い。
敢えて言えば、猪鍋が名物料理となるが、時期的に難しいらしい。

しかし、この旅館の良いところは、和洋中マルチにメニューを揃えている所だ。
ご主人は、この旅館を継ぐ前、居酒屋で店長の経験をお持ちだった。
だからだとは思うが、大抵の居酒屋メニューはカバーしてくださる。
一品料理、刺身、揚げ物、ご飯もの、定食…何でも揃っている。
加えて、洋食屋での調理経験もお持ちゆえ、ピザやパスタまでカバーしてくださる。
ここまで守備範囲の広い旅館も、なかなか無いだろう。確たる名物は無いが、その代わり、好きなものを色々注文できる守備範囲の広さが、この旅館の魅力であろう。
居酒屋感覚で、色々注文するのが、「萃夢荘」の楽しみ方と言えるだろう。

というか「萃夢荘」は、宿泊施設というよりは、町の人向けの「居酒屋」としての要素が強い。
宿泊施設として見るなら、部屋数5部屋程度。規模が小さすぎる。宿泊提供のみでビジネスを営むのも、厳しそうな予感漂う。
昼間は仕出し弁当提供などの業務もされており、夜は居酒屋。
宿泊の提供よりも寧ろ、町の人々向けに、地域に根ざした「食」の提供を通じたビジネスを営んでいらっしゃるかのように映った。

という訳で、「萃夢荘」は、居酒屋的に色々注文しつつ、お酒も嗜むのが適切な楽しみ方だと私は思っているが…
コースメニューを楽しみたい、という向きにも【会席風御膳】を用意し、対応している。(ただし事前予約要)
「萃夢」2500円、「緋想」3000円、「蓬莱」3500円 の3コースだ。

…ちょっと待てご主人…とりあえず表出ようかw

内容は普通のコース料理だが、名前が…名前が…


さて、「萃夢荘」のもう一つの特色は、全国各地から名酒を仕入れ、提供している所にある。
この特色こそが、「居酒屋感覚」という前述の特色をより色濃くしている、とも思う。

日本酒レパートリーの一例を挙げよう。

「雲山」(長野)
「天狗舞」(石川)
「聖」(和歌山)
「ほうらい泉」(愛知…というか地酒)

次に、焼酎のレパートリーについても列挙したい。

「紫」(鹿児島)
「杜の妖精」(鹿児島)
「伊吹瓢」(熊本)
「閻魔」(大分)

…ご理解いただけたであろうか。こういうお店、こういう旅館なのであるw

私は、最初にタコさわびやキノコのバター炒めを、前菜的に注文。
お酒は地酒でもある「ほうらい泉」、次いで映姫様にちなみ「閻魔」を嗜む。

日本酒に合う料理はやっぱお鍋だよね…という事で、寄せ鍋も注文。
名古屋の八丁味噌と信州味噌とのブレンドは、味わい深いと共に、愛知でありながらも信州も隣合わせのこの町ならでは地域性も感じる。
…そんなまどろっこしい話はどうでもいい。とにかくこの鍋が旨いんだ分かったなチ●ンコめ!

…なんか話が色々おかしな方向に行ってしまったが、お鍋がすげぇ旨かったのだけは間違いない。
今回は普通の寄せ鍋に過ぎなかったが、うまくタイミングが合えば、猪鍋も攻略したいものである。

ご主人とも会話。明日の東方オンリーのこととか色々と語りながら、酒を飲み、鍋をつつく。
鍋を一通りつつき終えたら、うどんをぶち込み締める。
この頃には、「雲山」など他の日本酒にも手を出し、前後不覚になる寸前…
という事で、最後にはデザートのアイスを注文。宿泊のこの日は3月29日、【のつく日はアイスを100円でサービスする】とか…チルノの恩恵を受け、バニラアイスを賞味。
こうして夜は更けていったのである…


こうして、ご主人の計らいもあり、私は楽しい一夜を過ごした。

翌朝は6時30分には起床。ご主人に叩き起こされる。
ポートメッセ名古屋開催・東方オンリーのサークル入場時間に間に合わせるには、今起きないと駄目だ…ということだそうな。
まあ確かに、同じ愛知県とはいえ距離もあるからなあ。

今回は、ご主人も東方オンリーに参加されるので、車に乗せていただけるとのこと。ありがとうございます。
勿論、いつも車に乗せていただける訳ではない。あくまでご主人が「趣味」で東方オンリーに行くから、「好意」でご一緒しますか?とお誘いくださっただけの話だ。
但し、東方オンリーの前日に泊まるのならば、ご主人との利害が一致する可能性は、間違いなく高い。
今回は、私とご主人と、共通の目的地だったから、この恩恵に与れたのだ。

出発前に清算。
元の宿泊費が安めということもあろうが、【東方割】とかいう意味不明な割引も適用され、「いいのかな」感溢れるお値段で済む。ありがとうございます。

ご主人の車で宿を出発。途中コンビニで買い出し&休憩も挟みつつ、豊田松平ICまで約80分。
インターに入れば後は楽。高速経由で、30分足らずでポートメッセに到着だ。
7時に宿を出発し、9時前には会場に到着。2時間弱のドライブであった。

泊まってみて感じたこととしては、やはりレパートリーの幅広さである。お酒のレパートリーも幅広ければ、食べ物のレパートリーも幅広い。
個人経営・家族経営の旅館で、ここまで多岐にわたるメニューを用意できるところは、そう滅多にお見かけしない。
これは、これといった名物が少ないという弱点を補って余りあるだろう。

その一方で、三河の山奥という立地の大変さや、周辺にこれといった観光名所がない、という弱点もあるが…これは設楽に宿を構える以上、避けられない宿命か?
ポートメッセまで2時間弱だとか、秋の香嵐渓に向かう渋滞も設楽側からなら巻き込まれずに済むだとか、多治見の「東方多宴祭」に行くには案外近いよだとか、違った切り口からアピールするしかないだろう。

また、この旅館は部屋数の少ない小規模な旅館だ。
UPFGが大型バスを貸し切ってうどんを食べに行ったり、コミケスタッフがホテルからピストンバスで会場に輸送されるような多人数の団体には、物理的に対応不可能だ。
私は、1〜2名の個人客が受け入れに適すると考える。多くても5〜10名程度までだろう。
逆に言えば、マンツーマンないしそれに近い状態で、おもてなしをいただける、ということ。
今回も、事実上マンツーマンでのおもてなしをいただき、温かみや人情味も感じた。
こういう顔の見える温かいおもてなしも、この旅館の特色だと思う。

場所が場所なので、そうしょっちょう通える所ではないが、機会あればまたお邪魔したいと思う。
そして、東方好きの諸兄に、是非ご宿泊をお勧めしたいとも思う。