広島の同人誌即売会は、スタジオYOU主催のオールジャンル同人誌即売会「広島コミケ」、東方オンリー「東方椰麟祭」ぐらいしか即売会が無く、人口の割には即売会が少ない、という印象だった。
昔は三原市でもオールジャンルの同人誌即売会があったり、広島市内で小規模とは言えオンリーイベントがあったりしたが、正直長続きはしなかった。

ただ最近になり、竹原市で「たまゆら」のオンリーが開かれ、また呉市で艦これオンリーが開かれるなど、少し動きが出てきたように思う。
当地の同人界も、賑わいと活気が増してきているようで、良い傾向だと思う。

そしてこの11月、東方・艦これ等4イベントの合同開催形式という事で、新たにオンリーイベントが立ち上がった。
場所も「東方椰麟祭」と同じ「広島産業会館」西展示場の使用。何度か椰麟祭でお世話になった会場なので分かるが、あそこは300〜400spぐらいのキャパシティで、結構大きめの会場だ。
そこでやる以上、サークル数も相応に集めねばならない。「椰麟祭」ならそれなりにサークルを集められるだろうが、あれは「出来過ぎ」の部類。普通のイベンターさんが新規で立ち上がっても、相当厳しいのではないか?と感じた。
この主催、勝負に出ている。明らかに、腹くくっている。

という訳で、新しい試みを応援したいとの思いもあり、サークルとして参加させていただく事とした。
今回参加した即売会では、以下4オンリーが開催された。

艦これオンリー「瀬戸内海域進攻作戦! 特別遠征」が、普段呉市で開催されているところ、広島市に出張開催という構図で、こちらは114サークルを集めた。
また、東方オンリー「幻想郷番外地」も併催。私はこのイベントにサークル参加を申し込んだ。こちらは、艦これオンリーに喰われたか、少し参加サークルが少なめで57サークル。
この他、アイドルマスターオンリー「READY for m@ster!!!」が10サークル、10年ぶりに開催されたというTYPE-MOONオンリー「りあるげっちゃ2」が10サークル。
なお、余り知られていないが、この4イベントの総称として「コミックユートピア」という呼称が名付けられている。

「コミックユートピア」全体では、計190サークルと中々の陣容。スペース数ベースにして、240spベースだ。
これはあの「東方椰麟祭」に匹敵する規模であり、たとえ4オンリーイベントの集合体形式とは言え、間違いなく「快挙」であると言えよう。
「椰麟祭」同様、中四国同人誌即売会の歴史に名を刻めるだけの、価値ある実績を築けたのでは無かろうか。


2010年早春に「東方椰麟祭」が初めて開催された時の事だが、椰麟祭主催氏は、カタログの中にこう書いている。
(参考・2010年03月18日付記事「2/14 「東方椰麟祭」成功の要因を改めて分析する」

>今回東方椰麟祭を立ち上げた一番の理由として、「地方の同人文化の再興」と言う理念がります。

>今回の東方椰麟祭がきっかけとなり広島をはじめ中国地方、ひいては地方での同人熱が高まって頂ければそれに勝る喜びはございません。

元々「東方椰麟祭」が立ち上がった動機には、地域の同人熱をより高めるため、という部分があった。
その割には後に続く動きが無く、中々世の中上手く行かないものだなあ、とは思っていたが、昨今になり広島も少しオンリーイベントが増え、ようやく「椰麟祭」が撒いた種が芽を出し始めたと言える。
そしてその芽が育ち、「コミックユートピア」という大輪の花を咲かせた。そう捉えられるだろう。


当日の熱気も相当だった。
私が来場したのは、開場30分前の10時30分頃だったが、その時点で既に数百人が並ぶ長蛇の列。
広島も、これだけの規模の即売会が、年に複数回も開催されるところまで来たかと思うと、胸が熱い。

ただ、サークル受付の時にカタログを受け取るはずが、手渡されたのは、A4サイズ1枚のリーフレット。
あれ?「今回はチケット制になります」との事。そういうシステムなのかな、と思いその時は不思議には思わなかったが…ここは後述したい。

最初の1〜2時間は来場者も多く、相当の混雑ぶり。
サークルとしての頒布活動に専念する。
12時30分を超えるとだいぶ落ち付いて来たので、会場内を巡回する。

会場を入って右手側には、各種企画展示コーナー。
巨大スクリーンを用意し、そこでアイマスの映像を流したり、TYPE−MOON格闘ゲームの様子を投影したり。色々とマルチに活用していた。
ギャラリーも多数で、見るだけでも楽しい。
艦これ・東方に比べアイマス・TYPE−MOONはサークル数が少なく、雰囲気的に「食われて」しまう心配はあったが、スクリーンがアイマス要素やTYPE−MOON要素を出す事で、オンリーの雰囲気の演出にも、一役買ったと思う。

近くの企業ブースは、広島市内のマンガ専門学校や、松山のアニメ系ショップ「ショコラ」が出店。
だが圧巻は、やはり自衛隊関連。自衛官御用達の洋品店が出展する、艦これ臭溢れる展開だが、一番の驚きは、自衛隊広島地方協力本部自らの出店。

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自衛隊は、生の車両をそのまま展示。大勢の参加者が足を止め、カメラを向けていた。

ユニークな試みとしては、艦これにまつわる部分だが、陸軍艦と広島との関り等の調査・展示
「まるゆ」や「あきつ丸」にまつわるエピソードの研究展示が、艦これサークル近くの壁に貼られていた。
関係者が、まるゆ萌え・あきつ丸萌えである事が伺えるw


こうして、広島の新たなる試み「コミックユートピア」は、盛況に終える事が出来た。埼玉から足を運んだ甲斐のある、楽しく、かつ意義深い即売会であったと思う。
ただ、反省点は幾つかある。今回どうしても目についてしまったので、最後に取り上げさせていただきたい。

一つは、パンフレットの未着である。
これは印刷会社による、配送の手違いとの事。

前述の通り、簡易リーフレットを用意して「チケット制」を取り、当日は対応した。
後日対応としては、印刷会社から後日謝罪文も掲載してもらう(注・但し、開催2週間を経た12月12日時点においてまだ謝罪文が上がっていない)と共に、参加サークルにはカタログを別送。一般参加者向けには次回イベントで無料配布する、という対応を行った。
この対応自体は、起こった後の対応としては、考えられる限り最善の対応であったと思う。

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ただ、第一義的に印刷会社のミスであったとしても、主催側でもできる事があったと思う。
納品先・納品期日等を直前に電話等で確認すれば、そこで手違いに気づけ、対応が取れたかもしれない。
私なら、確実性を期すべく、発送側に発送予定日・利用運送会社・伝票番号まで提示して貰う。そこまでせねば、いざ約束の期日に荷物が届いていない時、確認が取れないからだ。
(2007年の記事だが「10/8 books.tenjin.beについて思う事」も類似の事例について論評しているので、併せてご参照いただきたい)

ぶっちゃけ、主催の非だろうが印刷会社の非だろうが、そんなのはどうでも良い。一番肝心なのは、この手のトラブルをどう防ぐか、だと思う。
今後は、より慎重に確認を励行する必要があると思う。


もう一つは、スタッフと主催との、意思疎通に齟齬を来している可能性がある点だ。
例えば、今回のカタログの件について、いつカタログは受け取れるのかを、当日本部スタッフ問い合わせたところ、スタッフより受けた回答は、

(1)カタログ到着が遅延している
(2)その日の昼に主催の自宅に届くような形になっている

との事であった。
実際には、(1)の説明のような「遅延」ではなく「不着」であったし、主催側の後日の説明によると、「発送の手違い」との事だ。(カタログ同封のお手紙にもそう書いてある)
(2)に至っては、Twitter上で問い合わせたところ、そんな事実はない、とまで言われてしまったw

予期せぬハプニングとは言え、人によって説明が違っているのは問題だ。
情報共有や意思疎通が、できていない恐れがある。
このイベントがどういう指揮系統なのか等、内情を詳しく知らないので具体論は述べにくいのだが、体制の見直し・指揮系統の見直しが必要なように思えてならない。
大きいイベントなんだし、その当たりの組織構築は、しっかり行った方が良い。

他にも色々気になる点はあるが、論点がぼやけるのも良くないので割愛する。
先ずは、以下の二点を今後の課題として強調したい。すなわち、

(1)カタログ不着の再発防止策について、主催側で出来る事を考える
(2)情報共有・意思疎通の齟齬を無くすための組織体制の見直し


という事になろうか。

「コミックユートピア」は、多くの参加者の支持を受け、200近いサークルを集める、当地最大級規模の同人誌即売会である。
今後もこの規模で開催を継続しようとするのならば、この辺りの課題はクリアさせておいた方が、後々の為になると思う。