12月20日、私は、九州を地盤に四半世紀にわたり活動を続ける主催団体「CM−EX九州」が主催となる同人誌即売会「Comic Sweet Pilgrimage」にサークル参加させていただいた。
「CM−EX九州」は古参の即売会主催。過去には貸切船内での同人誌即売会等を実施した事もあると聞くが、最近は、毎年12月・オールジャンル同人誌即売会「Comic Sweet〜」シリーズの開催で落ち着いている。(「Comic Sweet」の後の単語は開催回ごとに替わっている)

会場は、福岡市営地下鉄・藤崎駅そばの「ももちパレス」
昔は「コミックネットワーク系列」の「COMIC KIDS」等が定期開催されていたが、コミックネットワーク系列即売会は全て活動を停止。ももちで「COMIC KIDS」が開催される事も無くなった。
(ちなみに、佐賀や熊本のコミックネットワークも活動を停止したようで、九州即売会における一つの歴史が、その使命を終え幕を閉じたという事になると思う)

それ以外の即売会にとっても色々使いにくいようで、「ももちパレス」で即売会が開催されることは、非常に少なくなった。
ただ、コスプレが無ければ何とかなるらしく、コスプレ無の「Comic Sweet〜」なら開催できる模様だ。
余談だが、当サークルの活動は、この「ももちパレス」より始まっている。
当サークルの前身的存在として、サークル「うんちたべようぜ」という恥ずかしい名前で一度きり、サークルとして参加した事がある。
サークル「うんちたべようぜ」は、2003年秋開催・2ちゃんねるオンリー「ジサクジエン03」にサークル参加。この会場こそが、初めて自力で作品を作り、そして頒布した会場。
流石にサークル名は恥ずかしすぎるのでこれ1回きりで改めたがw、この会場「ももちパレス」こそが、当サークルの「原点」とも言えるスポットなのである。
実に12年ぶりの帰還、感慨深いものがある。

感慨に耽りながらも、指定された入り口より入場。サークル受付を行う。

DSC_0089


配置は決まっておらず、30spぐらい用意された机の空いている所に、【早い者勝ち】で場所を取るという展開。
こっちで空いてるところを好きに取る、という方式は珍しい。サークル数もそんな多くないから、こういう展開も可能なのだろう。

パンフレットを見る限り、サークル数は直接参加が15。
ただ、見た限り出席数は、開場時点で半分ぐらいか。その後遅刻で来られた方もいたので上積みはされたが、最終的には10前後ぐらいだと思う。

この即売会の特色としては、委託での参加サークルが充実しているところだ。
委託のサークル参加数は25と、異例の多さだ。
サークルカットを見ると、20年前にコミケに参加されていたサークルさんがいたり、カット内に連絡先として住所を入れていた方がいたりと、昔活動していたが今は一線を退いている…そんなサークルさんが多いとお見受けする。
CM−EX九州は、四半世紀にわたり活動してきた即売会主催団体。長年の活動の中で得られたサークルとの人間関係が、古参サークルの委託参加という形で活きているのではないか?とも思う。
昔のサークルさんの作品を漁りたい方に、この即売会は向いているのかもしれない。


とは言え、直接参加のサークルが僅少なのは事実である。
一般参加者も、会場全体数えて10人いるかいないかの世界である。
しかも内何人かは、会場内に設けられた休憩スペースにたむろってばかり。
「まったり」の域を通り越し、どうひいき目に見ても「閑散」と表現するしかない状況だ。
スタッフも、主催氏含め僅か2人の要員…だがそれでも十分回していけるレベル。
そんな感じで始まった即売会。私も「一冊売れれば御の字かなあ」と思いつつ、のんびり過ごすことにした。

DSC_0091


会場内は「聖地巡礼スイーツ・食べ放題!」という事で、多くのお菓子が並べられていた。
この内の一部は休憩スペースに置かれ、また主催氏がサークルスペースを回ってサークルに振舞ったりもしていた。

DSC_0090


最初に振舞われたのは南房総の里見氏をモチーフとしたご当地のお菓子、加えて竹原「たまゆら」関連のお菓子類。その後も、北海道を舞台とした「銀の匙」をモチーフとした「北海道チーズ」等が振舞われ続ける。
テーブルを見ると、「小公女セーラ小枝」(注・小公女セーラは1985年放映のアニメ)だとか、広島カープうまい棒(広島お好み焼きソース味)だとかが置かれ、聖地巡礼とか関係無く、脈絡も無く色々なお菓子が置かれカオスの様相w

DSC_0092


お昼近くになると、特注のケーキが届き、参加者に振舞われる。

DSC_0093


…体重を気にする方には向かないイベントな気がしてきたw
その反面、いろんなご当地の味覚を堪能できる点が、このイベントならではの特色に当たるとも思う。


会場を見て、もう一つ目につく特色としては、チラシ置き場のチラシ類の多様さである。
もちろん、九州島内他即売会のチラシも置かれてはいるが、それだけではない。
「たまゆら」劇場版のチラシや、「たまゆら」に彩られた竹原市内のバス時刻表。昔の「幽遊白書」同人誌、今年8月開催の山陰同人誌即売会「花鳥風月」パンフレット。更には、三次市や広尾町の観光ガイドマップなども並べられている。
…明らかに脈絡が無く、共通点が見当たらない。

これは恐らく、主催氏「コレクション」の披露的な要素が強いのではないか?と考えられる。
思えば色々と振舞われたお菓子攻勢にしても、「聖地巡礼スイーツ」という割には聖地に留まらぬラインナップが多く、結構脈絡が無い。
「脈絡が無い」という点では両者が共通。主催氏がこの一年全国を回って入手したものをこの場で披露・お振舞、という構図で考えると、この展開もしっくり来る。

つまりこの「Comic Sweet〜」シリーズの即売会は、主催氏による各種コレクションの「お披露目会」的な要素の強いイベントじゃないか、という事だ。
明らかに世間一般の即売会と一線を画しているとは思うが、主催氏が自腹で色々とスイーツ類を用意している以上、特に咎める必要もない。(どうやら、主催氏の冬のボーナスが、即売会開催や上記各種お振舞の原資に充てられている模様だ)
まあ、変わってはいるが、こういう即売会も世の中に一つぐらいはあっても良いのかな?という感想だ。

主催のコレクションお披露目イベントという特性上、ノリは相当独特。好みが分かれる事は間違いない。
こういう特性を踏まえ承知した上で、それも面白そうという事であれば、参加してみても良いのではないかと思う。


ここまでこのイベントの雰囲気や感じを申し上げたが、同時に課題も存在するので、そこも申し上げたい。
一つは、パンフレットやチラシの編集に関する部分だ。

パンフレットの後書きを見ると、愛用のワープロ「書院」が壊れ、一部パンフレット内の原稿が手書き対応になった、との旨が書いてある。
この即売会のパンフやチラシについて、周囲より「昭和の香り漂う」という感想を聞く事も少なくないが、これは編集環境が、昔ながらの環境たる事に起因しているのだろう。
まあそれで今までは何とかやって来れた訳だが、今は「Photoshop」「Word」等が主流で、ワープロは旧時代のもの。ワープロを修理してくれる業者もだんだん少なくなっている。製品サポートを止める所も、今後益々増えてくると思う。
正直申し上げて、どこかでワープロを諦める必要に迫られると思う。個人的には、今回の故障が、「Photoshop」「Word」に切り替える転機じゃないかとも思う。

(ぶっちゃけそっちに切り替えた方が、編集作業とか印刷所へのデータのやり取りとか、長い目で見れば楽になると思いますよ…)


それよりも重大かつ喫緊の課題としては、この即売会に、web環境が一切存在しない点である。

今の同人者は、イベント情報を皆インターネットで検索し、情報収集する。
webが無ければ、せっかく立ち上げるイベントを、世間に知らしめる事は相当に困難だ。多くの同人者が情報収集に活用する同人誌即売会開催情報検索サイト「ケットコム」にも掲載されないから、その段階で告知力は相当落ちる。
いくらイベントでチラシを撒いても、それだけでは不十分。インターネットの高い告知能力には及ばない。

私は、秋の「第二回博麗神社秋季例大祭」でチラシが置かれており、たまたま知ったが、それが無ければ存在自体覚知せずに終わっていたと思う。
私の周囲を見回してみても、この即売会の存在を知らない人ばかりであった。

そもそも九州の過去を紐解いてみると、かつて九州最大規模と謳われていた「コミックネットワーク」が、21世紀に入り何故急速に衰退し消滅するに至ったのか
運営の不手際等も聞くが、やはり一番のネックは、webが存在しなかった事にある。

webが無ければ、そのイベントの存在を覚知できない。何らかの事情で、たまたま運よくチラシを入手できた同人者じゃないと、申し込むことすらできない。
webは無論、オンライン申込も完備している「COMIC CITY IN 福岡」「大(9)州東方祭」等が、21世紀に入って堅実に伸長しているのとは対照的である。
「Comic Sweet〜」も、webが存在しないことが告知上の枷となり、それがサークル参加数の伸び悩みに繋がっていると考えられよう。

一応、「Comic Sweet〜」も、webサイト代わりに告知ブログはあるみたいだが、2013年から約2年間更新が為されておらず、機能していない。
先ずは、ブログでも良いから、web上での告知をしっかり行うべきだろう。
そして、ブログ上に申込用紙のpdfをアップロードする。
オンライン申込まで完備するのが理想だが、いきなりそこまで求めるのはハードルが高すぎる。先ずは、web上で告知を行い、申込書のpdfを用意する。そこから始めたい。

web展開は、今現在の同人界における告知の「柱」である。
チラシは、どちらかというと副次的な要素となる。
もっと言えば、チラシを撒かずにサークルを集める即売会はあるが(最近では艦これオンリー「砲雷撃戦!よーい!」やケットコム主催のイベント等)、webを用意せずサークルを集めるイベントは存在しない。
(もちろん、web・チラシ両方で告知するのが一番理想的だし、殆どの即売会がそうして告知活動を行っているが)
「Comic Sweet〜」にも、web展開の充実を強くお勧めしたい。そのように思う次第である。