「結城友奈は勇者である」の舞台・香川県観音寺市で2/4に開催されたオンリーイベント「勇者部満開」にサークル参加させていただいた。
当サークルは、地方創生加速化交付金による国からの全額補助を得て、「結城友奈」を通じた地域活性化に取り組む観音寺市の取組に着目。同市の「町おこし」を研究した書誌「結城友奈は観音寺の看板娘」を発刊・頒布した。

「勇者部満開」の即売会レポートは別途稿を改めて述べるつもりだが、これに先立ち、香川県観音寺市に足を運んでの町の様子について語りたい。
拙著「コンテンツツーリズム取組事例集Extra 結城友奈は観音寺の看板娘」は、観音寺市の町おこしの取組を研究した本だが、現地に赴いての町の雰囲気には触れていない部分が「弱点」だ。
本記事は、現地に足を運んで見聞きした「生」の町の雰囲気について語り、「コンテンツツーリズム取組事例集Extra 結城友奈は観音寺の看板娘」の補完的役割も果たしていきたいと考える。
【観音寺市の誘客事業としての「結城友奈」】

一連の「結城友奈」を活用した町おこし事業は、観音寺市の企画課が中心となっている。企画課は、地方創生施策や、シティプロモーションに関わる部署。同課の尽力で、国の地方創生加速化交付金という財源を獲得、町おこし事業実施に漕ぎ着けた。
2016年春、交付金対象事業として認定。市でも補正予算が承認された。
その後、商店街関係者など地域関係者を交えてのプロジェクト会議が、月1回ペースで開催。最終的に、以下5つの企画を実施することに決定した。(参考リンク・観音寺市「結城友奈は勇者である』とのコラボ企画の詳細が決定!」

1.オフィシャルイベント「讃州中学文化祭in観音寺市」
…舞台・観音寺市立観音寺中学校にメインキャラ役の声優5人が出演、ライブなど。2月5日開催。(参考リンク:毎日新聞「声優5人がライブ 観音寺で、ファン1400人熱気 /香川」

2.市内名所コラボポスター
…主要キャラ6人が観音寺市の名所を訪れるという設定のポスターを制作、市内各所に掲示。観音寺市中心部の「銭形砂絵」「琴弾公園」「三架橋」「有明浜」に加え、離島「伊吹島」と旧大野原町の「豊稔池ダム」、旧豊浜町の「一の宮公園」の計7か所。 制作側による新規描き下ろし。

3.キャラ等身大パネル
…主要キャラ6人+大赦(顔出しパネル)。市内総合コミュニティセンター(道の駅ことひき)などに展示。これも制作側による新規描き下ろし。

4.スタンプラリー
…2月末まで実施。作品舞台となったカラオケ店「まねきねこ」やうどん店「つるや」の他、旧豊浜町の「ちょうさ会館」「道の駅とよはま」にも設置。豊浜は観音寺市街地からやや遠いため、観音寺市街地商店街の協力店でシールを集めての代用でも可。コンプリート者には缶バッジプレゼント。スタンプ・シール・缶バッジは漫画「結城友奈は勇者部所属」著者・娘太丸氏の描き下ろし。


5.舞台探訪マップ
…前述「讃州中学文化祭」の前日、2月4日より市内観光案内所「大正橋プラザ」などで配布。


これらの企画全体を俯瞰しての特徴は、以下の各点が挙げられよう。

一つは、「讃州中学文化祭in観音寺市」を核とし、このイベントに合わせたタイミングで、他の企画も投入していること。
集客力の高い声優イベントをメインとしつつも、これにスタンプラリー等を投入することで市内の回遊を促進。滞留時間を伸ばすことで、日帰り・通過型観光から、宿泊を伴う滞在型観光にシフトし、より大きな経済効果を狙っているものと考えられる。
同イベント前日の開催に設定された同人誌即売会「勇者部満開」の存在も、滞在型観光へのシフトをアシストしているだろう。

(余談だが、「讃州中学文化祭」は声優を招くイベントでありながらも、抽選制とは言え原則無料である。開催に伴うコストは、地方創生加速化交付金に基づく市の補正予算から出ているのだろう。開催コストを市と制作側で押し付けあったこともある某広島県の事例では、声優を招いてのイベントは6000円前後の入場料を取ってのコスト回収を図っており、その差は顕著である)


二つ目は、市の名所とキャラの特性とを結びつけ、ストーリー性を持たせている点だ。
コラボポスターだと、煮干し好きの三好夏凛は、煮干しの原材料であるイリコの産地である伊吹島との組み合わせ。主人公の結城友奈は、観音寺における観光の主人公的存在「銭形砂絵」との組み合わせだ。

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スタンプラリーも同様だ。うどん屋「つるや」のスタンプは、「女子力向上」と称してうどんを何杯をおかわりする犬吠埼風を起用。カラオケ屋「まねきねこ」のスタンプは、歌が得意な犬吠埼樹を起用している。
スタンプ代用となるシールにしても、和菓子店ならぼた餅との縁深い東郷美森が起用されるし、「満久屋 豊浦商店」ならば同店の銘菓「あいむす焼」との縁ある乃木園子が起用されている。

全てが全てそういうケースばかりとは限らない(番頭が犬吠埼風推しという理由から、風のシールが起用された旅館「ワカマツヤ」のようなケースも存在するw)が、可能な限りお店と関連性の高そうなキャラを起用している節が見受けられる。

三つ目は、市全体のバランスを考慮しているところである。
現在の観音寺市は、市中心部・市街地を含む旧観音寺市に、旧豊浜町・旧大野原町が合併して形成されている。確かに「結城友奈」の舞台は旧観音寺市の市街地だろうが、そこに集中しすぎるのも、市全体に公平に接する必要のある行政の立場からは齟齬が生じるかもしれない。
コラボポスターでも、旧豊浜町・旧大野原町に加え、離島の伊吹島をも起用することで、市全体としてのバランスを取っている印象を受けた。
スタンプラリーも、旧大野原町からは起用されなかったが(適切なスポットがなかったのかも)、その代わり旧豊浜町から2箇所を設定。観音寺市中心部に集中しすぎないよう配慮が見られた。(もっとも、旧豊浜町の2か所は遠いので、参加者から怨嗟の声も聞こえたが…w)

このような特徴は、プロジェクト会議で様々な立場の方々からの意見を取り入れたからこそ生まれたものなのだろう。可能な限り多くの人々の顔を立てる、行政ならではの「バランス感覚」がにじみ出ているようにお見受けする。
このバランスの取り方は、地域民の拒否感を減らし、取組の輪を広げる上で、プラスの効果がありそうだ。



【旅館「ワカマツヤ」】

ワカマツヤは、市内の名所「三架橋」にほど近い旅館。10部屋・定員50人程度の比較的小規模なお宿で、家庭的な雰囲気。お遍路さん巡礼者からの需要もあるようだ。
この旅館と、「結城友奈は勇者である」との出会いは、昨年(2016年)2月に開催された同人誌即売会「勇者部満開」である。この時、地元民ファンの求めに応じ、観音寺入りした多くの参加者を受入。また、イベント終了後に、ファン有志が開いた打ち上げの会場ともなった、
これ以後、ファンのリピーターも増加。ワカマツヤでオフ会が開催されるなど、ファンのワカマツヤ推しが強まった。ワカマツヤも、ファン向けに「勇者プラン」と称する宿泊プランを設定しこれに応え、同時にファン一人一人との「人間関係」を、丁寧に構築していった。
こうしてワカマツヤは、「結城友奈」との出会いから僅か1年足らずで、ファンの定宿として、そしてファン同士の「交流拠点」として認知されるに至った。

実は、自分のこの旅館への訪問、初めてではなかった。
「結城友奈」放映前年の2013年1月、変な組織が大型バスを借りてひたすらうどん店を巡り続けるという「うどんツアー」に参加したのだが、この時、「ワカマツヤ」を全館貸切にして遊びまくった覚えがあるw
ワカマツヤも、「結城友奈」以前よりこういう変なオタク団体の相手をしていたわけだから、そりゃオタク相手の免疫も付こうというものだw

2016年の「勇者部満開」では、即売会合わせで同人作家によって描かれた、同人等身大パネルが会場に登場。
即売会終了後しばらくの間、道の駅ことひきにパネルは置かれていたが、市発注の公式等身大パネル登場に伴い撤収。ファンとの交流豊かな実績を買われたらしいとも聞くが、このパネルはワカマツヤに置かれることになった。

私が「ワカマツヤ」に再訪したのは、2月4日の朝8時30分。観光案内所で自転車を借りて、番頭さんにアポ取って、朝一番での訪問だ。
件の等身大パネルは、フロント前に鎮座。なんか色々お供え物があるんですが…気のせいかしら…?とりあえずカメラに収め、巡礼ノートに落書きする。
なお、現在はこれに精霊「義輝」のコス衣装まで一緒に展示されているようだw

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フロントで番頭さんと雑談していると、何故か続々宿泊者がチェックインしていく。
ええと、今、朝9時前ですよねw なんだこの展開はwww
そして、宿帳もファンに合わせた独特の仕様…

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(大広間の相部屋)
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この日の「勇者部満開」合わせで朝観音寺入りしたサークルさんが、イベント参加の前にチェックインしとくか!ってノリなのだろうか。皆さんサークル参加の方々が多い。皆でだべって、一種社交場の様相だ。
これはこれで面白かったのだが、流石に今日はいろいろ回るところがあるので、朝9時になったところで中座させていただいた。



【まちなかスタンプラリーに挑戦!】

市街地商店街を中心として、数多くの店舗・事業者に協力を仰いだ今回のスタンプラリー。
スタンプラリーは、メインキャラ6人のスタンプを集めるのがノルマだが、6人の内三好夏凛のスタンプは、観光案内所で自転車を借りる際に回収。残り5人がノルマとなる。
難関は旧豊浜町の2か所、東郷美森・乃木園子のスタンプ。豊浜まで行くのは時間的にしんどいので、商店街でスタンプ代わりとなるシールを集めることに。

まずは、市街地中心部にある革製品のお店「みとよ」へ。
ここではコラボグッズとして「うどん手ぬぐい」を販売。白・ピンクの2種類販売していたので、私も購入。ただここは結城友奈のシールなので、ノルマにはならずw
サークルさんの中には、この手ぬぐいをサークルディスプレイとして活用する一幕も…。

次に訪れたのは、銘菓「あいむす焼」を販売する「満久屋 豊浦商店」
高級菓子で、小さい袋でも1袋数百円以上はするが、観音寺の海の幸をふんだんに用いたお菓子で美味。ここは乃木園子ゆかりの品ということで、園子のシールが配布されていた。
店頭に、園子のコラボポスターも貼ってあり、ポスター掲示のキャラシールを配っていることを示している。他のお店も店頭にポスターが貼ってあるので、これでどのキャラのシールを配っているかが一目瞭然だ。


園子のシールを集めたので、次は東郷さんのシールだ。
街中を徘徊すると、東郷さんのポスターが。早速ポスターのお店に飛び込む。
そのお店は、和菓子屋「大黒屋」。最初はネットで話題のぼた餅のお店かと思いきやちょい違った模様。ただここで試食した、寛永通宝を象った白餡のまんじゅう「砂銭」が大当たり。お土産用に箱詰めをお願いしたぐらいだ(親に持っていったら好評でしたw)
もちろん、東郷さんのシールもここで入手。


街中を回ると、協力店至る所に、コラボポスターと共に「聖地巡礼の皆様へ WC使えます」との張り紙が。

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お遍路さんをおもてなしするノリに近い、との評も聞いたが、確かにこの町自体、四国八十八箇所霊場の巡礼寺社が幾つかある。お遍路さんで培われた「おもてなし」の姿勢が、「結城友奈」ファンへのおもてなしに活かされているのだろう。
町内放送でオープニング曲「ホシトハナ」が起用されたとの話も聞く。1年前の2016年に「勇者部満開」が開催された頃と比べても、町中への浸透が進んでいる様子が窺える。

その後は、商店街を離れ、スタンプラリーポイントのカラオケ店「まねきねこ」へ。
ここも作中で舞台となったが、声優が訪問した時の映像が半永久的に流れる展開。私も、映像を眺めながら犬吠埼樹のスタンプを回収。
なお、この週末は、オフィシャル聖地巡礼ツアーがバス5台で訪問したとの話も聞いたw

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うどん屋「つるや」も、作中舞台であると共にチェックポイント。ここで犬吠埼風のスタンプを回収しつつ、讃岐うどんを注文。
数多くのメニューがあるにもかかわらず、来る人来る人皆、肉ぶっかけうどんしか注文しない展開。これは新手のファシズムであろうかw いや、主人公の好物が肉ぶっかけだから仕方ないのだが…
私が訪問した時は開店直後だったので普通に注文できたが(それでも来客数の多さゆえ相当時間お待ちしたが)、後半は肉・出汁・麺全てが尽きる展開になったとも聞く。この週末の来場者が、類を見ない規模であった事が伺える。

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【「道の駅ことひき」でゴール】

スタンプラリーとは直接関係ないが、「つるや」近くに「讃岐うどんで包んだ餃子」をうたう「餃子の大英」に向かう。
いや、「讃岐うどんで包んだ餃子」という触れ込みが気になって…
お持ち帰り専門店とのことだが、その場で焼いて賞味することも可能。焼きあがるまでに10分程度お待ちする必要はあるが、皮がもちもち・餡はジューシーと食べごたえある餃子だ。
スタンプラリーからの巡礼ルートからは若干離れてはいるものの、つるやから車で2分(自転車だと5〜6分ぐらい?)で立ち寄れるので、ここもおすすめだ。
ツイッターや「ワカマツヤ」でのビラ配布などで宣伝した効果もあり、そこそこ立ち寄った方もいらっしゃったようだ。

「つるや」と「餃子の大英」で腹いっぱいになったところで、ゴールとなる「道の駅ことひき」に向かう。
観音寺市総合コミュニティセンター・世界のコイン館に最近では「大平正芳記念館」まで併設されて最早何が何だかの世界だが、ここが琴弾公園の拠点施設と言えるだろうか。「三架橋」を渡り、「道の駅ことひき」に到着。

市営駐車場には、「結城友奈」の痛車が何台が駐車。この週末が「祭り」であることを伺わせる。
痛車を少し眺めてから、総合コミュニティセンターの建物に入る。ここで、主人公・友奈のスタンプを回収し、6人全員コンプリート。
ここが景品の引換所でもあるので、参加記念品の缶バッジを入手した。

同コミュニティセンター内では物販コーナーも開設されていた。
先に購入した「うどん手ぬぐい」の他、えびせんべい・地酒・うどん・煮干し・ステッカーなどのコラボグッズが並べられていた。他にも、ファンイベント「満開祭り」での限定グッズやDVDなども陳列されていた。
等身大パネルも設置され、多くのファンがカメラに収めていた。私が訪問したのは2月4日だが、翌5日には声優キャストらのサインが等身大パネルに書かれる展開。
巡礼ノートには、監督以下制作陣に加え、キャラデザ・BUNBUN氏や「勇者部所属」の娘太丸氏までも書き込みが入り、公式関係者総動員で巡礼ノートが彩られる展開になったとも聞いた。

こうして見ると、一連の「町おこし」事業は、地域内での取組の輪が以前に比べ大きく広がったことに加え、公式・制作陣も協力的…というノリ良く観音寺の町を楽しんでいる、という雰囲気を感じさせる。
制作側と地域側の関係は決して悪くない(というか相当協力的な部類では?)と思うので、あとは地域側とファンとの関係性構築がポイントだろう。

地域それぞれのお店と、ファンとの間でコミュニケーションが深まり、人間関係が出来上がれば、ファンの方も、仲良くなったお店の人に会いに観音寺詣でをするようになる。リピーター化にも繋がる。
そうなれば「作品目当て」で観音寺を訪れるのではなく、「地域のファン」としての観音寺詣でになるだろう。「細く」かもしれないが「長く」ファンが訪れ続けている「聖地」は、そういう「地域のファン」が増えたからこそ、一過性に陥らず、今もなおファンが訪れ続けているのである。
この当たり「継続性」という課題については、拙著「コンテンツツーリズム取組事例集Extra 結城友奈は観音寺の看板娘」において、今後の展望として詳しく論じさせていただいた次第である。