夏コミ新刊として刊行が決定している「解説!全国同人誌即売会開催事情」
これは、全国各地の即売会開催状況を、47都道府県ごとに解説する、というコンセプトの同人誌即売会評論本だ。
この手のコンセプトの本は、過去にも2012年に、「同人誌即売会全国制覇!」という本で著している。そこで今回は、2012年〜2017年までの「最近の状況変化」を重点的に語ることで、昨今の即売会事情の可視化に努めている。

執筆に際し、昨今の即売会情勢を洗いなおしてみたが、状況の変化は、確かに著しい。
2013年の「艦隊これくしょん」大ヒットに伴い、全国各地で艦これオンリー多発。さらに「聖地」での開催も続出。これまで即売会が開催されたこともなかった地域で、即売会が開催されるという事例が、数多く生まれている。
オールジャンル同人誌即売会を見ても、北海道紋別市・長崎県五島列島・沖縄県宮古島など、これまで同人誌即売会が開催されることの無かった地域で、新たに即売会が生まれている。サークルも、即売会として成立し得るほどには集っている。

その一方、休止する即売会も少なからず見受けられる。
後継イベントも立ち上がらず、そのまま即売会空白地域と化すケースも見られる。
調べてみて、特に私が驚いたのは、スタジオYOU「おでかけライブ」の広範囲にわたる即売会休止・撤退だ。それも、2016〜2017年に集中している。
以下の表は、21世紀に入ってからの、スタジオYOU主催・オールジャンル同人誌即売会開催状況である。
(若干の抜けがある可能性は否定できないので、その点予めご了承下さい)

youevent



この表を見ると、2002年のピーク時には42都市に展開し、同人誌即売会を開催している。
ただ、21世紀に入ってから顕著に表れている傾向…オールジャンル同人誌即売会の縮小・停滞傾向は、殆ど全ての即売会に当てはまる。スタジオYOU主催の同人誌即売会も、年月を経るごとにサークル規模が小さくなる傾向。規模が小さくなり過ぎれば、採算も取れないから撤退を決める。
撤退する地域が、次第に増えていった。

撤退は、特定の時期に数地域まとめて、というパターンが多い。
2002年が、大量撤退の第1波だろう。この年に、大宮・横浜・明石・松江・京都などが撤退し、展開地域は35都市前後に後退した。
ただ、撤退当時において、既存の即売会が同じ地域ないし近隣の地域に残っていたことを鑑みると、即売会間の競争に敗れての撤退という側面が強そうだ。

大量撤退の第2波は、2006〜2007年にかけて。水戸・米原・和歌山・米子・福山など、当時その町で唯一の「オンリーワン」としての地位を占めていた即売会も、容赦なく撤退しているところがポイントか。米子・和歌山はその後個人主催が即売会を展開したが、水戸・米原・福山は即売会空白地域となってしまった。
地域オンリーワン即売会の撤退という観点から、競争云々の話ではなく、純粋に採算性の問題と見なすべきだろう。これで展開地域は、25都市に縮小した。

大量撤退の第3波は、2011年頃。岐阜・岡山・長岡等、サークル数が低迷しての撤退が目立つ。これも、不採算地域のリストラ的性質が強い。
ただ、近隣地域でも即売会が開催されている都市での撤退も多く、地域集約的な性質もある。例えば、高崎の撤退は前橋という受け皿があるし、岐阜も名古屋という受け皿がある。神戸も、大阪のオンリー等が受け皿となろう。
これで展開地域は、20地域に縮小している。

そして今押し寄せている(と思われる)第4波。
現在進行形なので、断定は禁物だ。今、何の動きがなくとも、半年後ぐらいにひょっこり復活している可能性も無くはない(むしろそうであって欲しい…)。
2016年末から2017年初頭を最後に、今後の即売会開催予定が一切立っていない地域は、北から順に釧路・前橋・宇都宮・沼津・福井・高松・松山・小倉。これらの地域で、「撤退」の可能性が疑われる。(いや、疑いで終わることを期待してますよ、自分は。)
謎なのは、これらの地域の中に採算が疑わしい地域も存在するが、100〜200sp規模を集め採算が見込まれそうな地域も撤退対象に含まれている点だ。私が訪問した時には300sp規模で盛り上がっていた地域すら、撤退対象なのだ。採算以外の、別の理由がありそうな気もする。

もしこれらの地域が全て「撤退」とすると、残る地域は13地域にまで落ち込む。
更に言えば、その13地域においても、開催回数が半減するなど、体制を見直している地域も少なくないのだ。ここにも、何かしらの事情がありそうだ。

いずれにせよ、13都市となれば、もはや「全国展開」だの「即売会回数全国最多」だの、これまでスタジオYOUが自らの売りとして主張してきたポイントは、羊頭狗肉、看板に偽りあり、と言わざるを得ない。
というか、もはや「全国展開」の看板を「捨てた」と言っても過言ではないだろう。

そもそもスタジオYOUという同人イベント主催の強みは、果たしてどこにあるのか。
私は、―椒献礇鵐襪紡个垢覽”劼淵侫奪肇錙璽 即売会の全国展開ネットワーク この2つがスタジオYOUの「強み」と考えている。
この2つの強みが、例えば、スタジオYOU主催の刀剣乱舞オンリー「百刀繚乱」においては、オンリー乱立の中勝利をおさめ4000sp規模の即売会として成立させた原動力となっている。そういう趣旨の下過去に論じたこともある。(参考リンク:2015年05月28日付「5/5 東京ビッグサイト・刀剣乱舞オンリー「百刀繚乱」」

ただ,龍みに関しては、他主催も同様に磨いている。男性向けなら、ケットコム・SDF・ぷにけっと準備会等の機動力は我々もよく存じ上げている。女性向けなら、赤ブーブー通信社だって負けてはいないだろう。この分野がスタジオYOUの強みなのは間違いないが、模倣されやすい強みでもある。
一方△亡悗靴討蓮スタジオYOU以外に成しえる主催は存在しない。模倣されにくい「強み」である。刀剣乱舞オンリーだって、既存の即売会全国展開のノウハウに乗せることで、刀剣乱舞オンリーも全国展開させ、同オンリーの盟主的地位を築けたのだ。

しかしこれが13都市にまで縮小。残るは東北地方各県と、東海地方、そして西日本にちょびちょびといった程度となると、「全国展開」というには程遠い。このスタジオYOUならでは「強み」を、自ら捨てることに他ならない。
サークルの委託作品を全国展開先の即売会で販売する、というこれまでのビジネスモデルも、今後展開は難しくなるだろう。
スタジオYOUのこの撤退戦略は、果たして正しいと言えるのか?自分には、疑問に思えてならない。