2016年9月に立ち上がった「一般社団法人アニメツーリズム協会」は、いわゆる「舞台探訪」「聖地巡礼」の人気の高まりに呼応して立ち上がった組織。
「アニメ聖地88ケ所を選出する」という構想をひっさげたこと、また理事長に富野由悠季監督を擁したことが、オタク界隈でも話題になった。

訪日外国人観光客を強く意識している点も、この協会の特色として押さえておきたい。
立ち上げ時の声明における「設立の背景」として、真っ先に訪日外国人の急増を挙げ、これに対応する必要性を説いている。
設立時の理事会メンバーも、主導的役割を果たすKADOKAWAに加え、JTB・日本航空・成田空港から人を出しており、訪日外国人対応としての性質を裏付けている。
また、同年12月には、内閣府の「クールジャパン拠点連携実証プロジェクト」に同協会の事業が採用。国のお墨付きを得ると共に、訪日外国人対象のモニターツアーを実施している。

その一方、アニメ聖地88ケ所選出事業の前段階として、アニメ聖地投票を受け付けた。
国内ファンのみならず、中国語圏など海外ファンからの投票を広く受け付けた点が特徴だ。ここでも、同協会の訪日外国人に対する意識の強さが伺える。
この投票は、2016年10月・11月の2回「中間発表」を実施。翌2017年3月には、ファン投票の結果をベースとしつつも、協会側でアニメ関連施設を選定し加え、『訪れてみたい日本のアニメ聖地150』という題目にて発表された。
ちなみに、「聖地150」発表の時は、それほどの反発は確認できなかった。
自分も、まあ妥当なところが、ほぼ漏れなく選出されている、という認識だった。

これが「88ケ所」に絞られ発表されたのは、(元々7月発表の予定が1か月ずれ込んだが)つい先日、2017年8月26日のことだ。
選定された地域/作品を眺め、流石に私も違和感を覚えた。この地域・作品が「88ケ所」から漏れているのは、正直おかしいのではないか?という疑問だ。
主な選外地域/作品を以下列挙する。

「けいおん!」(滋賀県豊郷町、聖地投票第3回中間発表・総合6位)
「花咲くいろは」(石川県金沢市、同総合13位)
「響け!ユーフォニアム」(京都府宇治市、同総合14位)

これらの選外地域は、当サークルも「アニメ町おこし」の「先進事例」として注目している地域。もちろん過去の著作「コンテンツツーリズム取組事例集」にも、これらの地域の取組を研究・分析の上掲載している。

この他、「Free!」(鳥取県岩美町、同総合9位)や「ハイキュー!」(岩手県軽米町、同総合26位)、「涼宮ハルヒシリーズ」(兵庫県西宮市、同総合12位)なども注目すべき地域/作品として取材・調査を進めているが、「聖地88ケ所」からは盛れてしまった。
(なお、これらの地域/作品は、今後「コンテンツツーリズム取組事例集」への掲載を予定している)

中間発表とは言えベスト30に入る人気作品の選外が、そして自分が注目し続けている作品/地域の選外が、余りにも多い。
豊郷に行って、九州に戻る帰りに大洗に寄る、などの奇行でも知られる聖地巡礼系サークル「かんたんのゆめ」NT/fiv氏の分析によると、第3回中間発表における人気30傑の内半数が今回選外とのこと。





なお、巷では京アニ作品の選外が多いという声をよく聞く。
選外15作品の内5作品が京アニ。言われているほどに多くはないかもしれないが、6位・9位・12位・14位と最上位クラスがごっそり削られており、「京アニ外し」という印象を持たれるのもやむを得ないだろうか?

いずれにせよ、どういう基準で「88ケ所」を選出したのか?
選出基準が非公開ということもあり、「88ケ所」の選出基準に、強い疑問を抱かざるを得ない。


さて、88ケ所選定後の展望について、アニメツーリズム協会は以下のように語っている。

>【1】『アニメ聖地 88』へのアニメスポットの設置
>アニメツーリズム協会が『アニメ聖地 88』であることを認定する「アニメ聖地認定プレート」やファンの方に『アニメ聖地 88』を巡った記念となるご朱印(スタンプ)に加え、作品や地域特性に応じた展示物を設置し、合わせて訪れたファンの方に地域の観光案内なども行う「アニメ聖地スポット」を、今後、個々作品のコンテンツホルダーと、設置する具体的な内容を含め協議を行い、地域の各種団体と連携しながら設置していく予定です。

事業遂行にあたり、88ケ所に選定された作品と、そして地域団体との連携を志向している。
これは裏を返せば、作品制作側(権利元)・舞台となる地域双方の理解を得なければ、事業として成立し得ないということでもある。
つまり、作品側・地域側双方の同意が、事業遂行に求められると共に、作品側ないし地域側の同意が得られないことが選外の理由となる可能性を意味している。

実際、「アニメ聖地88」公式サイトには、作品のキャプチャー画像が掲載されている。これも、作品側の同意・理解無くしてはあり得ない。
聖地巡礼ジャーナリスト・河嶌太郎氏の記事「アニメ聖地88ヶ所が決定!「君の名は。」は順当。ジブリ作品は漏れる」においても、ジブリ作品が全作品選外となった理由として、ジブリ側が聖地を一切公認していない態度たることを指摘している。

選外の理由を、作品側の同意・理解、あるいは地域側の同意・理解が(もしくはその両方が)得られなかったことに求めることもできるだろう。
それで説明の付く選外作品も、確かに存在する。


…ただ、その理由付けで納得できない作品/地域も、間違いなく存在する。
先述した選外人気作品においても、公式が豊郷を舞台として認めていない「けいおん!」ならば、その理由付けも成立するだろう。

しかし、「花咲くいろは」「響け!ユーフォニアム」等の選外に、この理由は当てられない。
これらの作品/地域は、制作側と地域とが随時連携して事に当たり、町おこしとしての実績もある程度は挙げている。
こういう地域なら、作品側・地域側から同意を得られやすいことは明らかだ。
しかも、ファンの支持も30傑の中でも相当上位だ。ファンからの人気も、作品側からの同意理解も、地域側からの同意理解も得られている。
こういう作品/地域が、「聖地88ケ所」に選ばれないわけがない
…はずなのだが、選外なのが事実だ。
ここに、何らかの「大人の事情」が隠されていそうな気もする。


とは言え、その大人の事情なんぞ我々ファンとしては、知った事ではない。
人気でも上位・取組も先進的。実績も充分。
にもかかわらず謎の「大人の事情」で選外に追いやられてしまう事態こそが問題なのだ。

正直、こういう状況では、「88ケ所」に対する信頼感もブランドも、大きく損なわれてしまうことだろう。
「大人の事情」の中身。すなわち選外の理由を。お茶を濁すことなく、可能な限り説明せねばならない。そうせねば、「88ケ所」に対する信頼性は築けない。


(正直88ケ所に絞って不満や不信を呼び込むぐらいなら、反発の少なかった「聖地150」で終わらせておいた方がマシだったと思う。何か事業を興したいのなら、その150の中から乗り気な地域を募るという方向性もあったはずだ。)