熊本県内、特に熊本市内及びその近郊は、同人誌即売会の世界においては、目立った即売会が見当たらない。事実上、限りなく「即売会空白地域」に近い状況と化している。

1990年代〜2000年代半ばにかけて九州全土に地盤を築いていた「コミックネットワーク」は、「COMIC NETWORK LAMBDAX」名義にて、熊本でもオールジャンル同人誌即売会を開催し続けていた。
福岡での「コミックネットワーク」凋落後も、熊本での「COMIC NETWORK LAMBDAX」は継続.佐賀・長崎と共に、2010年代初頭までは開催が確認できたものの、2015年頃までに熊本での開催も終了した。

以後、熊本市及びその周辺地域においては、定期・継続開催を果たしつつその地域で「柱」となる即売会が存在し得ない
オールジャンル同人誌即売会「NASU COMIC KUMAMOTO」が散発的に開催。加えて、東方・艦これ等中心の「大九州合同祭」が年1回ペースで開催される程度にとどまっている。

(なお、県南部の八代市では、年1回ペースでオールジャンル同人誌即売会が開催されている)

その一方、熊本市自体が人口70万超の政令指定都市であることも忘れてはならない。市場規模も、決して馬鹿にはできない。
実際、繁華街の下通を中心に、「アニメイト」は無論「らしんばん」「メロンブックス」等のショップも進出している。これらのショップが共存し、維持できるだけの潜在的なニーズを、この地域は充分有している。この点を押さえておきたい。
2016年、熊本を大規模な地震が2回立て続けに襲来。
特に熊本市近隣の益城町では、震度7の激震を複数回観測。その被害は甚大なものとなった。
福岡ヤフオクドームにて「コミックシティ」を開催する赤ブーブー通信社は、この事態を受け、『「事後の熊本が少しでも活性化する支援を計画しよう」の方針をまとめ、熊本の被害回復に目処がつき次第、熊本でイベントを開催』」することを決定した。
会場は、この益城町の大規模見本市会場「グランメッセ熊本」に選定。同会場の復旧完了後となる2017年秋の開催を、今から1年前に当たる2016年秋に発表した

「コミックシティ」は、かつて全国に展開いていた時期こそあれ、21世紀に入ってからは東京・大阪・福岡3都市に絞っていたイベントだ。(神戸「そうさく畑」という例外はあったが…)
それが熊本で開催とは、極めて異例の展開だ。
恐らく狙いとしては、「復興支援」の趣旨に加え、即売会の潜在的需要がありながらも事実上の「空白地域」でもある熊本ならば進出し成功し得る勝算も充分、と見出したのだろう。

自分も、この即売会は間違いなくサークルが集まると予測した。
熊本は同人誌即売会の潜在需要があるし、その割には即売会が少なく、地元民は即売会に「飢えている」と考えられる。
大都市・福岡からも近く、熊本に遠征する福岡の同人者も少なくないはず。
これに「コミックシティ」のネームバリューもある。
そして、「震災復興」という我々のモチベーションを掻き立てるパワーワードも存在する。

というわけで、今年2月時点で、早々「コミックシティ熊本」にサークルとして急ぎ申し込む。

案の定、その予測は当たった。
サークル申込殺到により、早期に満了。受付も前倒しして終了させ、一部で抽選を掛けたとの話も聞く。
…うわ、早めに申し込んで良かった(汗)

当日はカタログの配置図を見ると、総計542sp。
(なお、そのうち刀剣乱舞プチオンリー「閃華ノ刻」が116sp、弱虫ペダルプチオンリー「全開ケイデンス」が79sp、ユーリ!オンリー「氷奏ストラースチ」が24sp、とそれなりの勢力を占めている)
かつての「COMIC NETWORK LAMBDAX」でも、この集まりは達成できなかった数字だと思う。
熊本で、かつてない規模の同人誌即売会が突如登場した、といっても過言ではない。

会場の「グランメッセ熊本」は、熊本市中心部から熊本空港に抜けるルートの途中に立地する。
市内から熊本空港へのリムジンバスは、ほぼ全量グランメッセ熊本に停車する。
(ちなみに、福岡からの高速バス組は、益城インター口バス停で下車するとそこから徒歩圏内なので便利とのこと)
ただ、既存のリムジンバスのみでは輸送量が追い付かないと判断したようで、熊本駅発・熊本交通センター経由グランメッセ熊本行の臨時便を多数運行し対応した。

私もこの臨時バスに、熊本交通センターから乗車したが…バス乗り場は既に数十m単位の長蛇の列。
到着したバスに乗り込もうとするも、熊本駅から多数乗っており既に満員に近い状態。
無理やり頑張って車内に入り込み、辛くも乗車できたという案配だった。

バス車内を見ると、カートを持った若い女性陣が多数。全体の9割ぐらいが女性だろう。この男女比は、そのまま「コミックシティ熊本」の参加者男女比に繋がっていく。
そしてこのぎゅう詰めを見るにつけ、この即売会が多くの参加者に恵まれるであろうことを予感させた。

実際、到着は開場1時間前の朝10時だったが、その時点で初動待機列は既に250人に達する盛況。開場直前には、概算だがその倍ぐらいに膨れ上がっていた。
最終的には、少なく見積もっても1000人以上は足を運んでいることだろう。

果たして会場は常時人の往来で賑わう盛況ぶり。
当サークルも、大勢の方が足を止めてみて下さった。地場のオールジャンル同人誌即売会では五指に入る売れ行きで、手ごたえも充分。参加して充実を感じた即売会であった。
(ぶっちゃけ、大阪の「こみっく☆トレジャー」よりも売れ行きが良かったwどうしてこうなったw)
九州、そして熊本の、埋もれた同人需要が掘り起こされたかのような感覚だった。

同人の潜在的需要がある地域で、「コミックシティ」というブランド力を持ち、かつしっかりとした運営のできる即売会が立ったからこそ、この盛況ぶりに結び付いたということか。

普段の大都市即売会に比べれば比較的規模が小さく、その分小回りも利きやすいという側面もあったのだろう。「コミックシティ」にしては珍しく、色々と企画が充実していたのも特徴だ。
熊本特産品をふんだんに景品として取り揃えての「じゃんけん大会」や特製クリアファイルの贈呈。他イベントでのサークル参加費が無料になる「抽選会」も実施された。
企業出店でも「通潤酒造」さんとのコラボで、「コミックシティ熊本」オリジナルラベルのお酒も販売された。

こうして熊本初開催の「コミックシティ」は、無事に終了。
次回開催は未定ながらも、今回のイベント名が「COMIC CITY 熊本1」となっている点に注目したい。わざわざイベント名に「1」を付けるということは、次回も開催を予定していることの示唆でもある。
年1回ぐらいのペースになるのだろうが、今後も定期的に開催を続け、熊本同人界の「柱」として。また、熊本県内の同人者を掘り起こす存在として、「コミックシティ熊本」の存在に期待を寄せていきたい。そのように考えている。


【11/14 14:00追記】
1.スペース数の数え方に誤りがあったため訂正しました。

2.赤ブーブー通信社さんから開催御礼のメールが届きました。
興味深い内容が多々ありますので、ざっくり箇条書きで語ります。

・今年1月に会場下見を行った際は、震災被害からの改修工事真っただ中
・稼働率の高い会場なので1ホール(募集500sp相当)が限界だった
・東京・埼玉・神奈川・千葉1都3県からの参加者は90件(18%)
・赤ブーブー通信社の主催イベント初参加が116件(24.9%)


首都圏からの参加者が100サークルぐらい積み上げたという構図。「復興支援」という言葉が入ると、遠征のモチベーションは上がりますね、どうしても。
もっと興味深いのは、全体の2割以上が、赤ブーブー通信社イベント初参加(つまり福岡ヤフオクドームの「コミックシティ福岡」にも参加していない)人々をサークルとして開拓したという事実です。これは赤ブーさんにとって、九州での即売会を今後続ける上で、大きな財産になるのではないでしょうか。