STRIKE HOLEは、コミックマーケット3日目・12月31日にサークル参加いたします。
2015年より研究を進めております、アニメ・マンガ町おこし事例研究の本「コンテンツーリズム取組事例集」最新刊となる「第4巻 新星録」を発刊いたします。

内容の子細については、当ブログ・2017年12月03日付『冬コミ新刊「コンテンツツーリズム取組事例集4 新星録」刊行のお知らせ』でも案内しておりますが、本記事では、著者自身が書いてみて思い入れが深くなった地域事例について、思う存分語ってみたいと思います。
宜しければ、皆様お付き合いをいただければ幸いです。
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【第1章】岐阜県飛騨市の取組
…同市舞台作品「君の名は。」を通じた観光振興の取組について、その概要を描きました。

・飛騨市の都竹市長切れ者ですね
高山市(アニメ「氷菓」舞台)へのヒヤリングも積極的に実施。同市から多くのことを学びつつ、この手の町おこしの本質が「細く長く」であることを看破されてます。
・本著執筆に当たっては、「コンテンツツーリズム学会」シンポジウムに参加しての知見も大いに役立ちました。直接市の担当者様に質問をぶつけたことも収獲となり、本著に活かすこともできました。
・あと某シンクタンクの経済効果算出についてですが、年間350億の経済効果とか無茶な数字をおっ立てた担当者は火あぶりなーw


【第2章】香川県観音寺市の取組

…同市舞台作品「結城友奈は勇者である」を通じた観光振興・誘客の取り組みについて、その概要を描きました。

・2017年2月のオンリーイベント「勇者部満開」合わせで刊行した「結城友奈は観音寺の看板娘」が初出。これを加筆修正の上本著に収録しております。
・観音寺市が、国の地方創生助成金を引っ張ってきて「結城友奈」町おこしに臨むという展開を聞きつけ、研究対象として当方もロックオンするという構図。研究成果を「勇者部満開」で発表しようという目論みでした。
・ところが、取りあえず作品に少し触れなきゃあかんよなーとアニメを見始めたのですが。気が付いたら関連作品にも手を出しはじめ、2017年1月10日に作品に触れて僅か10日後には、「友奈ちゃんのおふとんになりたい」「大天使乃木園子様万歳!」を繰り返すだけの廃人に転落いたしましたw
・想定外にのめり込んだお陰で原稿が進まず、「勇者部満開」での作品発表も危ぶまれる事態に(汗)
・あと、ファンの聖地と化した某旅館は、実は当方も、アニメ放映1年半前に宿泊していたという偶然も発覚。
・こういう諸々の理由により、非常に思い入れの深い作品/地域になりました。
・肝心の「町おこし」については、市の施策もさることながら、オンリーイベント「勇者部満開」の先駆的取組が下地となったことや、「リアル勇者部」などのファン草の根の取組についても触れております。(「道の駅とよはま」の取組が抜けていたのは失敗でした…)
・秋放映のアニメ第二期や関連作品の放映により、今後は観音寺市内ならば伊吹島・高屋神社・銭形砂絵。市外なら坂出市(瀬戸大橋記念公園など)や宇多津町(ゴールドタワーなど)も聖地として注目されることでしょう。



【第3章】岩手県軽米町の取組
…「ハイキュー!」原作者の出生地にして舞台でもある、軽米町の町おこし取組を描きました。

・「ハイキュー!」サークルがレポート本を発刊しようとしたら「レポート本は著作権侵害だ!」「無料配布にしろ!」などと言われ発刊に支障を来たしたという事例を聞く。よし!ならば「ハイキュー!」オンリーにサークル参加して聖地巡礼レポート本でも出して「著作権侵害だ!」のクレーム付けられに行くか! という極めてどうしよーもない動機に基づいての執筆。
・いざ実際現地を探訪すると、町中のお店がことごとく作品タペストリーを掲げ、「ハイキュー!」の町と呼ぶにふさわしい歓待ぶり。ここまで町の中心部が作品で埋め尽くされるのは、あの鷲宮やあの大洗にも匹敵するでしょう。「ハイキュー!」はおらが町の誇りだ!という無言のメッセージを感じました。
・色々背景を調べてみると、製麺業を継いだ原作者実兄が商工会の青年部長を務め尽力したことが大きいのかな、と。製麺屋の先代でもある原作者実父も町議を務めていたことも大きい気がします。てか原作者の家系って当地でも「名士」っぽいですね。
・町中にファンの交流拠点もあるし、コスプレ更衣室の需要に対応してレンタルスペースを開業するお店もあるし、中々面白い展開。
軽米へのアクセスが難易度高いため、来る人のボリュームはどうしても制約が掛かります。だからこそコアなファンに繰り返し来てもらい、町のファンを増やす「細く長く」の取組が重要だろうとも感じました。
・余力があれば、近隣の二戸市(金田一温泉)や岩泉町など、ファンの集まる聖地が他にもあるのでそっちにも触れたかったのですが断念。この当たり各地域についても、機会があれば実地調査に臨みたいところです。、


【第4章】茨城県大子町の取組
…母の実家がこの町ということもあり、筆者としても幼少の頃より馴染みの深い町。町内の旧上岡小学校がNHK朝ドラの舞台となり脚光を浴びましたが、まさか「ガールズ&パンツァー 劇場版」で舞台に起用され、コンテンツツーリズムの研究対象になるとは…

・2015年冬コミで刊行した聖地巡礼ガイド本「茨城県大子町・上岡小学校観光案内」(この冊子は今も上岡小学校に飾られてます!ありがとうございます!)に次ぐ、大子本第二弾としての位置付けでもあります。
・大子町町おこしの先行研究をベースとしつつも、今回はその「背景」を成す大子町の風土・空気についても触れてます。同人者向けに言えば「言い出しっぺのお前が即売会開け/本を出せ」とする同人界隈の風土に近いものがありそうですw
・もちろん袋田の某駐車場さん、下野宮の某コンビニ店さんも触れてます。てかこの両事業者様は、この町のガルパン絡みを語る上で不可欠です。最近はそこ以外にも某文具店さんや某りんご園さんなど、ガルパンがらみの取組が少し広がっているような気もします。
・新作「最終章」でも(舞台ではないですが)「大子町大学」なんて名前も出てきており、制作側も大子を気にして下さってる様子。また大子が舞台にならないかしら。
・この町のアニメ町おこしの特色としては、ガルパン舞台・大洗町への依存度が極めて高いということ。これは良い方向にも悪い方向にも捉えることはできるでしょうが、まずはこの構図を現実のものとして認識。これを踏まえた上での提言も盛り込んでみました。
・茨城県北を舞台としたNHK朝ドラ「ひよっこ」についても語ろうと思ったのですが、どうも「ひよっこ」の誘客効果がイマイチなんで割愛しましたw


【第5章】鳥取県倉吉市の取組
…コナミデジタルエンタテインメント主導のメディアミックス企画「ひなビタ♪」を通じた町おこしの取組を描きました。作中の舞台都市は「倉野川市」ですが、倉吉市が「倉野川市」との姉妹都市提携を結んだことが契機となり、当方も研究対象としてロックオンしたという経緯があります。

・しかしこの作品「アニメ聖地88」に選ばれてるのですが、実はアニメ化してませんw(「アニメ聖地88」って、どういう選定基準なのよ?)
・逆に言えば、アニメ化せずとも相当人が来てるのですから、これでアニメ化に入ったら大変なことになりそうな気もします。
・「ひなビタ♪」絡みの町おこし取組を描くに先立ち、その「前史」的存在でもある「まんが王国とっとり」関連事業・「国際まんが博」についても触れました。悪名高い「まんが王国」についても一度何らかの分析・研究を加えたいとも考えておりましたが、この市の取組を語る上で良い機会と考え、丸々1ページを「まんが王国とっとり」論評に充てました。その評価については、本著をご覧になってお確かめください。
・いや、しかし「まんが王国とっとり」を語る上で、当方が参加した東方オンリー「東方因幡祭」の経験も役立つとは思いませんでしたw
・倉吉市の観光誘客における方向性としては「クール&レトロ」を打ち出しております。昔ながらの町並みを大切にしつつも、萌え系の誘客とも両立させる。この方針が固まったのは、「まんが王国とっとり」時代よりもう少し後。グッドスマイルカンパニー工場誘致以降のことと思われます。そして、その路線が「ひなビタ♪」でより加速した。そう考えられましょう。



【コラム】町おこしに動いてないのに「失敗事例」にされた件

福井県鯖江市舞台のアニメ「メガネブ!」を通じた「アニメ町おこし」に関する論評です。
2017年6月、メガネ系オンリー「眼鏡時空」合わせで刊行した「コンテツーリズム取組事例集Extra4 徹底解剖!福井県鯖江市のアニメ「町おこし」 〜「メガネブ!」町おこしは、本当に聖地商法なのか」が初出。これを加筆修正の上収録しております。
ネット上では「聖地商法の失敗」などと揶揄されましたが、色々調べてみると「そもそも聖地商法自体やった形跡がない」という事実に至ります。市が観光振興を町おこしの本流に据えていないことも、その傍証となるでしょう。
では、何故ネット上で「聖地商法」などと揶揄されたのか…先行研究も踏まえながら、その「真相」に迫ります!


【コラム/「聖地」の類型】

…元々は2017年5月に刊行した【東方Project×コンテンツツーリズム】の研究本が初出。これを加筆修正する形でコラム化しました。
東方Project「聖地」に関する類型化理論を著したえむてーさん(しずおか静葉)の発表をベースとしつつ、自分なりにもう1類型追加しつつ実例を加え、「アニメ町おこし」でも語れるよう「聖地」類型化を試みました。
もし宜しければ、ご一読いただければ幸いです。


【コラム/東方Projectにおける「町おこし」の難しさ】
【第6章】長野県白馬村の取組
【第7章】愛知県設楽町の取組
【第8章】長野県諏訪地域の取組


…これらは、2017年5月に刊行した【東方Project×コンテンツツーリズム】の研究本が初出。これを加筆修正の上収録しました。
東方Projectを通じた「町おこし」に関しては、この作品が持つ独特の事情により、多大なる困難が伴います。個人事業者単位ならば、事業者のヤル気一つで多少は戦えますが、これが「町ぐるみ」の取組となると極めて難しい。何故難しいかを解説しつつ、数少ない「聖地町おこし」事案の実例も取り上げつつ解説します。


【第9章】京都府京都市の取組

…2017年6月に刊行した『コンテンツツーリズム取組事例集Extra3 「たまこーけっと」舞台・京都に学ぶ 人情味あふれる古都の取組』が初出。これを加筆修正の上収録しました。

・前半は、京都市全体でのマクロな「アニメ町おこし」の取組を語ります。代表例として今年アニメ第二期が放映された「有頂天家族」を取り上げました。
・後半は、京都の出町桝形商店街というミクロ視点からの研究。同地を舞台としたアニメ「たまこまーけっと」を通じた取組を取り上げました。前史として、出町商店街の萌えキャラだった「加茂川マコト」について取り上げ、その後に「たまこまーけっと」を語ります。
・京都市舞台の作品は山ほどありますので、一つひとつ取り上げるときりがありませんw代表例として上記2作品に焦点を当てました。
・出町桝形の取組としては「いつも通り」の接客で、特に取り立てて特別なことはしなかったようですが、それがこの町の気質ともうまくマッチングしたんじゃないかと思います。
・元々は2017年6月のたまこまーけっとオンリー「うさぎ山大バザール」で発刊した研究成果ですが、このオンリーで出町桝形に足を運んでみての体感を基に加筆修正を加えております。


【第10章】埼玉県宮代町の取組
【第11章】千葉県千葉市の取組
【第12章】その他の動物園の取組

…2017年秋に刊行した『けものつーりずむ』が初出。これを加筆修正の上収録しました。アニメ「けものフレンズ」に伴う全国各地の動物園における誘客効果や誘客施策についてまとめました。

・んまーしかし…たつき監督降板が今後どこまで影響を及ぼすか。これまでの「貯金」を活かせられるとは思うので比較的楽観視はしてますが、第二期の出来次第だとも思います。果たしてどうなることやら。
・いたる地域の動物園で、「これまで見なかった客層」が新規開拓されているという話を聞きます。一定の効果はあったと思います。
・ただ気になることとしては、誘客施策が既に「パターン化」「マンネリ化」してるあたりです。飽きが来るのも早くなりそうなので、各動物園とも知恵を絞って考えないと、一過性のもので終わるのではないでしょうか。
・グレープ君という人気者(今秋天に召されましたが…)も登場した東武動物公園は、「パターン化」「マンネリ化」の罠から逃れられるかもしれません。今後にも要注目です。
・あ、千葉市は「俺妹」にも少し触れてます。


【付録】アニメ・マンガで町おこし成功法則を語る〜町おこしセミナー発表資料〜
…普段の「取組事例集」で著している「理論編」に代えてのもの。町おこし成功法則解説セミナーでのレジュメを再録しております。レジュメ形式なので、今までの御託並べた文章よりも、頭に入りやすいかも?


【最後に】

アニメ町おこしと言えば、大洗だの鷲宮だのが有名ですが、大洗や鷲宮だけが「町おこし」ではありません。
それ以外の地域でも、全国至る所でこの手の取組が試みられ、成果を出しているところも少なくありません。
皆さんの知らない地域、皆さんの知らない作品でも、「アニメ町おこし」の取組で成果を上げた地域も少なからずです。でなきゃ、私も「コンテンツツーリズム取組事例集」の4巻目に突入したりなんぞしませんw

今回は、まだ見ぬユニークな事例を多く知っていただきたく。私も「新しめの作品」「話題の作品」を中心に地域・事例を取り上げてみたつもりです。