◆はじめに◆

「大九州合同祭」は、元々福岡で開催されている東方オンリー「大州東方祭」を母体とした、複数ジャンル合同開催型の同人誌即売会である。男性向けジャンルのサークルを対象とし、広範にサークルを募っている。
現在では、九州各県の同人者掘り起こしと同人文化の深耕を目的とし、福岡のみならず九州各地で開催。また、「中四国合同祭」名義にて、山口県・広島県での開催も試みている。


◆目次◆

1.「大九州合同祭」のあらまし
2.熊本県内の同人誌即売会開催事情
3.踏みとどまる「大九州合同祭」
4.巡回開催に伴う急速なマンネリ化
  • 「大九州合同祭」のあらまし


元々の母体が東方オンリー「大州東方祭」ということもあり、全体の7割程度が東方サークルとしての参加だ。他3割が、東方以外のジャンル(艦これオンリー「西海の暁」・オールジャンル「Comic Stream」等の別即売会枠での申込)で参加している。

福岡(北九州市小倉)開催は、旗艦イベントとして数百sp規模をキープ。小倉駅近くの、西日本総合展示場での開催だ。
ここ2〜3年は九州他都市での開催も積極的に進めており、2018年の宮崎開催をもって九州全県開催を達成。これら九州他都市では、おおむね100sp前後にて推移している。

各都市とも回を重ねる中で、どうしてもサークル数に減少傾向が見られる。
原因としては、初回開催時に発生するご祝儀効果の消滅・東方ジャンルの縮小傾向・他ジャンルの伸び悩み等様々な理由が考えられるだろうが、これをまだ克服し切れていない。この課題をいかに克服するかが、今後「大九州」が開催を継続する上での「鍵」となるだろう。


  • 熊本県内の同人誌即売会開催事情


熊本市は、人口70万。九州では、福岡・北九州に次いで政令指定都市に指定されている大都市の一つだ。
同人ショップも、アニメイトは無論、メロンショップも福岡・北九州以外では九州で唯一店舗を構えている。近年は「らしんばん」も開店している。人口に比例し、潜在的な同人需要の高さも伺える。

反面、同人誌即売会の世界は低調だ。2010年代前半までは、九州各地で開催し続けていた「COMIC NETWORK LAMBDAX 熊本」の存在も有力だったが、運営の拙さもありサークル参加数も低落傾向。最終的には、九州全土から撤退した。
後を継ぐ即売会もこれと言って見られず、個人主催のイベントが散発的に開催されるぐらいだ。他、県南の八代市にて、地元書店が年1回ペースで即売会を開く程度に留まっている。

但し、過去には東方オンリー「幻想肥後ノ祭典」が東方全盛期の開催とは言え200spを達成したこともある(2012年開催)。

参考リンク:2012年03月30日『3/25 熊本市開催・東方オンリー「幻想肥後之祭典」』

2017年には、「COMIC CITY」が熊本に進出して開催。(開催地は熊本市ではなく、熊本市郊外の益城町)
震災後の熊本復興という大義名分を掲げての追い風もあるが、500sp規模でサークルを集めた。

参考リンク:2017年11月14日『11/12 熊本県益城町グランメッセ開催「コミックシティ熊本」』

運営がしっかりできている即売会が存在するのならば、サークルも付いてくる。
それだけの潜在的需要が、熊本に存在する。そのことも押さえておきたい。


  • 踏みとどまる「大九州合同祭」


昨今規模縮小傾向が続く「大九州合同祭」だが、熊本に関しては少し様相が異なる。
低落傾向には変わりはないが、これは、会場を前年の市内中心部・下通地域の会場から、駅前の「森都心プラザ」に場を移したことも大きいだろう。
前年よりサークル数は約2割減の筈が、当日足を運んでみるとメイン会場内はサークルで充満。スタッフ系のサークルを会場外のロビーに移す苦肉の策で凌いでいる位だ。

サークル数でみると、メインの東方は前年とほぼ同数で踏みとどまっており、低落傾向は続くものの下げ幅は微減にとどまっている。
一方、艦これジャンルは前年の16サークルから7サークルに縮小。他ジャンルのプチオンリーも0〜2サークルと低調で、聖地効果でやや多めのガルパンジャンルも、前年7サークルから2サークルに激減している。
同じ減少とは言え、これまでの減少が東方ジャンルの規模縮小が影響しているのに対し、今回の減少は、東方以外のジャンル縮小が影響している。

全体で見れば66サークル(約100sp)。過去開催に比べれば規模は縮んだものの、この会場ならこのsp数が精一杯。会場変更が影響しての規模縮小であると共に、メインの東方が規模横ばいということから考えると、低落傾向の中でも「踏みとどまった」と言えるだろう。
そもそも、100sp超の即売会なんぞ、ここ10年は「幻想肥後ノ祭典」(200sp)と「COMIC CITY 熊本」(500sp)ぐらいしか見受けられない。数を減らしたとはいえ、熊本では滅多に見られないサークル数の集まりたる事に変わりはない。

「大九州」も、開催実績は豊富な即売会。特に小倉で数百spと顕著な事績を挙げている。
「COMIC CITY」が進出した時の規模にこそ及ばないものの(これは、パイの大きな女性向けも受け入れる「COMIC CITY」に対し、男性向けに絞る「大九州」という特性の差もあるから仕方ないが)、即売会不毛の地・熊本にて100spを集めた実績は重い
前段の「運営がしっかりできている即売会が存在するのならば、サークルも付いてくる」という熊本ならではの特徴は、「大九州」にも当てはまると言えるだろう。


  • 巡回開催に伴う急速なマンネリ化


「大九州」に参加して感じた課題としては、サークル数の減少と言うよりは、むしろ「マンネリ化」であろう。特にこれは、九州各都市での巡回開催を続ける中で強まってきていると思う。

これまでの「大九州」の強みは、同人誌即売会の枠に囚われない、お祭り色の強い多彩な企画の数々である。
今回も、書道講座・お絵描き・サイレントオークション・福引・フリープレーコーナー・アフターライブ等、数多くの企画を打ち出している。当日はおしなべて各企画とも盛況で、一定の成果をおさめている。
だが、よくよく考えてみると、これは旗艦イベントの小倉と、いったい何が違うのだろうか。大分や鹿児島など、他の都市で開催される「大九州」と、いったい何が違うのだろうか。
旗艦の小倉も、他都市での巡回開催も、どれも同じような企画になり、代わり映えがしない。

年1回のイベントで同じような企画をするだけでも、マンネリ化は不可避だが、これが九州全土で毎月開催されるとなると、回数を重ねた分だけ、マンネリ化も急速に進行する。
「強み」の筈の多彩な企画も、マンネリ化により「弱み」に転じかねない。

即売会の中身にしても同様だ。
九州の「合同祭」を見ると、メインの東方・艦これとオールジャンル「ComicStream」に、ガルパン・FGO・けもの・アズレン・アイドル物の各プチオンリーで構成されている。
熊本でも宮崎でも長崎でも、その面子は代わり映えしない。同じ面子が、開催地を変えるだけで月イチペースなら、そりゃマンネリ化は急速に進行する。
サークル数の集まる東方・艦これと、全ジャンルを受け入れられる「ComicStream」があるのは良いとしても、他の5ジャンルは、旗艦の小倉以外では1〜2サークル程度しか集まらない。この5ジャンルが存在しても、全体サークル数の底上げに繋がらない。メリットが薄い割には、デメリットが目立つ印象を受ける。

我々サークルの立場からすると、イベントは月イチ開催でも、どのイベントに参加してもやってることは変わらない…となると、そのイベントに参加するモチベーションが失われる。
今回回避しても、別のイベントに行けばそれで事足りるであろうことが、容易に想像できるからだ。

企画にしても即売会にしても、その地域「ならでは」のラインナップを用意できないものか。
鹿児島なら芋焼酎限定ラベルの物販、宮崎ならチキン南蛮食べ放題の前夜祭とか。
1〜2サークルしか集まらないプチオンリーは、旗艦の小倉以外では全量思い切って廃止。小倉でそのジャンルに合わせた企画を用意しつつ、開催する。そういう形でメリハリを利かせても良いのではないか。

冒頭で「サークル数の減少傾向」を課題として提示したが、正確には「急速に進むマンネリ化の打破」こそが課題なのかもしれない。
サークル数減少の原因は色々考えられるが、企画や即売会の中身などに見られる「マンネリ化」。これが大きな要因だろう。であれば、マンネリ化を打破すれば、サークル数の減少傾向も解決方向に持っていけるのではないか。

あと、開催回数を減らすのも一つかもしれない。
主催氏は、これまで全国の即売会にサークル参加しつつ、その土地土地のイベントの良い所を吸収してきた。それが、大九州に活かされ、人気を博し「現在」に繋がっている。
しかし今はどうか。開催回数の多さのに忙殺され、他所のイベントにサークル参加することも難しくなってきている。
主催氏の長所は、他所のイベントに参加し、そのイベントの「良い所」を盗み自分のイベントに上手く活かそうとする能力だ。今の開催回数は、その行動ができない以上、主催氏の長所を損なう結果になりかねない、とも感じている。