◆◆はじめに◆◆

「東方久遠境」は、2010年よりスタートした東方Projectオンリーイベント。
「Around the Kyushu」と銘打ち、九州各地を巡回しての開催を旨としている。
一時休止していた時期もあるが、昨今では年1〜2回ペースでの開催が続いている。福岡県久留米市での開催が多いものの、過去には大分県別府市、長崎県長崎市・佐世保市、福岡県大野城市などで開催実績を持つ。
これとは別に、「みんなの読書クラブ」と銘打っての持ち寄り読書会も企画している。

★参考リンク:
2013年03月25日付『九州の東方オンリー「東方久遠境」その軌跡について語る九州の東方オンリー「東方久遠境」その軌跡について語る』
2013年03月26日付『3/20 福岡県久留米市 河城にとり中心・東方Projectオンリー「ちかっぱかっぱ!」』
2015年03月15日付『2/28 大分県別府市・東方Projectオンリー「東方久遠境 別府」』

◆◆目次◆◆
1.極めて珍しい、筑豊での同人誌即売会
2.「東方久遠境」ならではの特色〜開催地域への「思い入れ」「掘り下げ」〜
3.「東方久遠境 Sugar Road 直方」当日レポート
  • 極めて珍しい、筑豊での同人誌即売会


福岡県での同人誌即売会開催は、福岡市・北九州市という2大政令指定都市を会場としたものが多い。
県内他都市では、南部の久留米市や、福岡市近郊・大野城市での開催も挙げられるだろう。
だが、今回のように内陸部・筑豊地方での開催は中々ない。
「ケットコム」で調べてみても、2001年頃に個人主催の即売会が単発的に開催したものと、山口県地盤のオールジャンル同人誌即売会「ComicSite」が直方に進出開催(2003〜04年)した程度だ。

確認し得る最後の開催が、「ComicSite直方」の2004年3月。筑豊での同人誌即売会は、実に14年ぶりと言えるだろうか。
大きいイベントが福岡市や北九州市で開催されるし、両市の中間部に位置する直方なら、両市に足を伸ばすのも決して難しくもない。「遠征」とも言えないレベルだ。
わざわざ直方で開催せずとも、福岡市・北九州市の大規模即売会が受け皿となってくれるだろうから、直方開催の必要性も薄い。(さいたま市・千葉市など、首都圏近郊の100万都市で即売会が開催されないのと似た理由だろう)

そこで敢えて、直方で開催しようと意欲的な試みを見せた。それが直方の「東方久遠境」…「東方久遠境 Suger Road 直方」である。


  • 「東方久遠境」ならではの特色〜開催地域への「思い入れ」「掘り下げ」〜


そもそも「久遠境」という東方オンリーは、九州各地を巡回する即売会としても、極めて異質の特徴を持つ東方オンリーだと思う。
これは、同じ九州巡回の即売会「大州東方祭/大九州合同祭」と比べてみるとより分かりやすいだろうか。

「大州東方祭/大九州合同祭」は、福岡県のみ例外的に北九州市での開催だが、他九州各県では県都での開催だ。(福岡県を除く)各県県庁所在地は、一通り制覇している。
同人誌即売会「空白県」の存在を気にし、当地に同人の光を賑わいをとの思いから、即売会空白県でもある佐賀県や山口県にも進出している。(注:山口県は「中四国東方祭/中四国合同祭」名義)

これに対し「久遠境」は、久留米市・別府市に大野城市、そして直方市。開催都市は、ことごとく県庁所在地を外している。(注:来年2019年1月は熊本市内で開催)
そして「久遠境」は、開催する地域に対するものすごい「こだわり」、言葉を変えれば「思い入れ」「愛着」。それが主催側から感じ取れる。
アニメ聖地巡礼で通う内に、通う地域に愛着が湧くって構図はよくあるが、それにも負けないぐらいの「愛着」を感じさせる。

例えば、過去久留米で開催した時は、久留米が河童伝承の多い地であることにも因んで、あえて「久遠境」の看板を外し、河童キャラ・河城にとりオンリー「ちかっぱかっぱ」として開催したこともある。
イベントパンフでは、河童伝承の紹介や久留米特産品の紹介を充実させ、「久留米が河童の町ということを知って貰いたい」「久留米の町を知って、楽しんで貰いたい」という主催側の意を感じ取れた。

別府開催時も、別府の「地獄」が観光地として有名なこともあり、地獄を舞台とした「東方地霊殿」プチオンリーを併催した。
カタログでも、別府の観光スポットや名物料理の紹介に力を入れていた。(…当時の運営側の明らかな「趣味」なのだろうが、そこに何故か大分地盤のファミレス「ジョイフル」が紛れ込んでまして…「ジョイフル」は名物料理なの…?

「久遠境」は、開催地域に愛着を持ちつつ、その土地の良さを掘り下げて紹介する。
せっかく開催する地域。その地域の、見えにくい「良さ」を知ってもらいたい。そういうスタンスを、一貫して感じさせる。

今回の「東方久遠境 Sugar Road 直方」でも、その趣向は変わらない。
直方市を含む「筑豊地方」は、古来長崎から輸入され国内に伝播した「砂糖」の通り道とのこと。「長崎街道」として知られるこの道は、直方もルートに入っている。直方の隣市・飯塚市には宿場町も置かれた。
そのお陰で、筑豊では砂糖を用いたお菓子の製造が活発だ。直方市には、筑豊炭田時代からの名物菓子「成金饅頭」がある。田川市は、あの「チロルチョコ」発祥の地だ。
イベントパンフでは、これら筑豊銘菓や筑豊発祥の菓子を熱心に紹介し、当地の魅力を紹介。当地の歴史を掘り下げて解説する寄稿もあった。
筑豊地方の英彦山は、天狗伝説で知られている。これに因み、天狗キャラ・プチオンリーも同時開催。直方のフードテーマパーク「直方がんだびっくり市」を元ネタとし、天狗プチオンリー「のおがた天狗こっそり市」として併催させた。

「場」を提供する同人誌即売会の世界で、開催地の魅力を掘り下げピックアップするという試みは、確かに珍しい。
ただこれは、自分が研究を深めている「コンテンツーリズム」「アニメ聖地町おこし」の世界とも相通ずるものがある。アニメ聖地での町おこしも、その地域の隠れた魅力を掘り起こし、観光資源としてピックアップさせているのだから。


  • 「東方久遠境 Sugar Road 直方」当日レポート


会場の「ユメニティ直方」は、JR直方駅から徒歩5分。市の図書館も併設されている公共施設だ。過去直方で開催された同人誌即売会も、ここを会場としていた。
施設内には、地元の英雄とも言える、大相撲・魁皇関の等身大銅像も。

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会場の小ホールは、円形の建物なので、少し配置に工夫が要りそう。
ただ「久遠境」は、過去に久留米で【八角形】の箱を会場としていたこともあるぐらい。そこは慣れているだろうかw
全体で62sp、うち天狗プチオンリーは14spという陣容だ。参加サークルの規模的には、他の地域での「久遠境」と、余り変わらなさそうだ。

その一方で、一般参加者はやや弱かったと思う。
12時のスタートだが、初動が30人ぐらいなので、福岡の東方オンリーにしては少し物足りないかも…?
(直方は人口6万の町。地元の東方クラスタがそんな多くないだろうというのは分かるが、北九州市・福岡市双方から遠征に来てくれるとは思ったので、ちょっと当てが外れたかもw 直方は、微妙に遠く感じられた…?)
その後も断続的に来場者が訪れ、多分200〜300人以上は来ていたとは思うが、自分の事前予想に比べると参加者数は低かったような。

コスプレイヤーも、少なめだったという印象。
他の東方オンリー等と比べても少なかったと思うが、コスプレイヤーでの集合写真撮影時に集ったレイヤーさんは10〜20人程度。東方オンリーにしては物寂しい。
ちなみに会場の位置は、JR直方車掌区のすぐそばのロケーション。車掌区設置駅なので、大量の車両が留置されている。会場の窓や外壁ははガラス張りで覆われているので、外の車掌区の様子もダイレクトに見える。留置列車をバックに撮影、というなかなか無いシチュエーションも楽しめたようだ。

14時過ぎになると、特別企画として、印刷業者・マツモトコミックサービスの営業担当をお招きしての感謝状贈呈式が、ステージ上で開かれた。
これまでの「東方久遠境」では、パンフレットの印刷を同社が請け負っていた。
しかし、会社の事情により、同社は急きょ同人印刷事業から撤退。公式サイト上では、9月の納品をもって業務終了と記されている。
「東方久遠境」サイドとしては、精度の高い印刷への評価が高かったようで「わざわざ試すように微細な文字を仕込んだりもしたのですが、その度に再現度の凄さに驚きの声を上げておりました」とのこと。相当頼りにしていただろうから、「久遠境」主催陣としてもショックは大きかったと察する。
残念な気持ちは大きいにせよ、同時に感謝の気持ちも強い。そこで急きょ、久遠境サイドでも感謝の意を表明する場を設けた、ということだろう。

そして15時にイベント終了。
イベント終了後、夜のフェリー出航(この日は小倉から松山までフェリーで渡る予定)まで時間があったので、直方市内を回る。といっても、直方駅近辺の商店街程度だが、お菓子屋さんを物色。
直方をはじめとした筑豊地方は、砂糖の道ということでお菓子が特産。「久遠境」に参加したからこそ得られた知見だが、せっかく筑豊に来て、筑豊の良い所を見つけて帰ることも、「久遠境」に参加することの一環と言えよう(と勝手に解釈)。
まあ、実はいただきもののお菓子(写真)をほおばって、直方のお菓子美味い!なんかお代わりねえか?と食い意地が張ってたってのはありますがw

(写真は直径10cm超えの巨大どら焼き。市内「博多屋」さんの製造販売。手に取るとずっしりと重たいw でも甘さ控えめで食べやすい)

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