東北地方の沿岸部、いわゆる三陸海岸沿いの地域は、県庁所在地と離れているという地理的条件もあるのだろうが、独自の同人文化が根付いている。
宮城県でも、気仙沼市が県都・仙台と離れているせいか、「EVENT JACK」という同人誌即売会が存在。東日本大震災の後に足を運び、サークル参加したことがある。

参考リンク:2013年03月18日『3/17 気仙沼「EVENT JACK」』

岩手県でも、久慈市で「さんてつまつり」という三陸鉄道・鉄道まつり内での開催という位置付けながら、鉄道むすめ「久慈ありす」のサークルを中心に集い、同人誌即売会が開催された。
宮古市でも、即売会とまではいかないものの、同人者を交えての交流会が開催されていたと聞く。
ただ、定例で開催されている同人誌即売会となると、大船渡市の『ポケットマニア』が挙げられよう。

私も、気仙沼『EVENT JACK』にて『ポケットマニア』の告知チラシを受け取ったことがある。以来、存在を気に留めてはいた。

◆◆目次◆◆
1.三陸地方の同人誌即売会
2.大船渡へのアクセス
3.『ポケットマニア』当日の様子
  • 1.三陸地方の同人誌即売会


三陸沿岸で独自の同人文化、とは申し上げたものの、大船渡市は人口5万。人口の絶対数も少なく、同人人口も多くない。
そんな中、『ポケットマニア』は、2004年から実に15年もの長期にわたり、年2回ペースで同人誌即売会を開催。同人の灯火をこの地に点し続けている。

初期は大船渡の南隣(宮城県気仙沼市の北隣でもあるが)・岩手県陸前高田市で開催。市のコミュニティ施設「陸前高田市ふれあいセンター」で開催されていた。
2009年以降、現在の大船渡市民文化会館「リアスホール」に場所を移し、当地で落ち着いている。
2011年の東日本大震災においては、「リアスホール」は幸い津波の被害こそ免れたものの、被災した市民の避難所として接収。同年6月の開催予定だった『ポケットマニア』も、中止に追い込まれた。

東日本大震災により中止せざるを得なくなった同人誌即売会は、関東以北を中心に数多く見られた。
震災中止を機に、フェイドアウトする即売会も出てきたぐらいだ。
だが、『ポケットマニア』は見事甦り、翌2012年6月に復活開催。以後は年2回ペースの開催で復調、現在に至る。

筆者も、「震災に負けず頑張る即売会は、可能な限り足を運んで応援したい」という気持ちを強く抱いており、気仙沼『EVENT JACK』には震災翌々年にサークルとして参加した。
『ポケットマニア』も、震災に負けず頑張る即売会ということで、何とか参加したいという気持ちだけはあったが、スケジュールの都合が中々付かず。ようやく2019年になって足を運ぶ機会に恵まれた。長年抱いた想いがやっと実現し、「感無量」の思いだ。


  • 2.大船渡へのアクセス


大船渡へは、盛岡・仙台から高速バスも出ているが、本数も少なく時間もかかる。
三陸鉄道やBRT大船渡線も運行されてはいるものの、接続が余り良くないので、これも時間が掛かる。面倒なので、行きは東京から大船渡・釜石行の夜行バスを利用した。

BRT大船渡駅前のシティホテルでバイキングの朝食にありつきながら、時間調整を兼ねて休憩。頃合いを見計らい、大船渡駅からBRTで隣の盛駅に向かう。

盛駅は、BRT大船渡線と三陸鉄道との乗換駅であると共に、大船渡市の中心街。津波で建物が流されずに済んだこともあり、震災以前からの街並みが残っている。
盛駅から1kmちょい歩くと、会場のリアスホールに到着。観客席を備えた大ホールと図書館も併設されている。同ホール内の多目的ホール「マルチスペース」が会場だ。
うーむ、関東から足を運ぶには、やっぱり覚悟が要るなあw

(ちなみに帰りは、気仙沼までBRT。気仙沼から電車に乗り換え一ノ関へ。一ノ関から新幹線で帰京したが、乗り換え時間が皆1時間待ち…乗り換え待ちばっかで時間食った感じ…)


  • 3.『ポケットマニア』当日の様子


サークル数は30サークルぐらいだろうか。一般参加者もそんなに多くはないが、コスプレ受付には人だかりができていた。私は開始1時間ぐらいしかいなかったが、もう少し時が経てば、コスプレイヤーで賑わうであろうことが察せられる。

頒布物としては、オフセット印刷ないしコピー本を出すサークルも一部いたが、小物類を頒布するサークルが大多数。小物類でも、缶バッジやアクリルキーホルダーのサークルも若干いたが、自作のアクセサリーを出すサークルが圧倒的に多い印象。
ジャンル分布で言えば、刀剣乱舞とアクセサリーが共に10サークル弱。他、FGO・ヒプノシスマイクも2〜3サークル程度といったところ。


参加者は、女性が圧倒的多数。男女比で言えば1:20ぐらいか。
(最近訪れる地場の同人誌即売会は、昔に比べ男性比率も高め。もちろん女性の方が多いのは言うまでもないが、それでも男女比は、2:8か3:7ぐらいのイベントが多い。)
年齢層もやや若め。20代前後の女性が多かったような…

うーん、久々にアウェイ感満載の展開だ(汗)
でも、これはこれで良いことだと思う。

ひと昔前の地方即売会は、「中高生の女の子ばかり」と言われていた時もあったが、この数年は、参加者が高齢化する地域も多い。この少子化の時代、「中高生ばかり」なんて話も「今は昔」だ。

参加者の高齢化は、「若い世代の新規流入が止まっている」ことの「裏返し」でもあるから、決して良い傾向とは言えない。そういう地域は、新規流入が無いまま常連が徐々に撤退するのみ、尻すぼみに陥る。地方即売会衰退の、一つの理由でもある。

翻るに、『ポケットマニア』は20代前後の女性が多い。
これは、若い世代の新規流入が今も続いていることの「裏返し」でもある。
最初はコスプレイヤーないし一般参加者としてのスタートでも、何回か足を運ぶうちに、「自分でもサークルやってみよう」という気になるかもしれない。若い世代の参加者が多いほど、同人誌即売会の「未来」に繋がる。

大船渡は人口5万弱。即売会を営むにも、市場規模は小さい。
それにも関わらず、『ポケットマニア』が10数年もの永きにわたり即売会を続けられるのは、若い世代の新規流入がうまく行っているからであろう。
若手参加者の多さに、この即売会の「未来」が感じ取れた。今後もこの流れをキープし、『ポケットマニア』という三陸随一の即売会が息長く続くことを願っている。