筆者は、2015年より、アニメ等の作品を通じた町おこし、いわゆる「コンテンツツーリズム」を研究し続けている。
聖地「町おこし」の動きには、全国各地、地域を問わず可能な限りアンテナを張り巡らせているが、熊本県人吉市の取組については、以前より注目ならびに研究を続けてきた。

その成果は、本年5月、熊本県湯前町開催の同人誌即売会合わせで刊行した『球磨これくしょん−球磨これ−』で形にすることができた。
この研究の過程で、筆者は熊本県人吉市を舞台とした美少女ゲーム『まいてつ』の存在を深く知った。
ぶっちゃけ、その世界観に惹かれるものがあり、だいぶ興味を強くした、というのが正直なところだ。

筆者が先月参加した湯前のイベントでも、何故か主催が陣取る本部席に『まいてつ』主人公・ハチロクのぬいぐるみ(以下「ぬいハチ」と表記)が置かれていた。

参考リンク:2019年05月27日付『2019/5/26 熊本県湯前町・艦隊これくしょん球磨型オンリー『球磨!出撃するクマ!』参加レポート』

ぬいハチにも興味を持った自分。Twitterで「ぬいハチ」を漁ってみると、だいぶファンの間で愛好されているようで、物販可能なファンイベントも開催されるとの由。
『物販可能なぬいハチ会』と題し、内容を拝見する限り、同人誌即売会的な要素を強く持ったファンイベントといったところだろうか?
私は、綿商会館に急行した。(注:前日に続き2日連続の綿商入りですw)

◆◆目次
1.『まいてつ』とは
2.『まいてつ』シナリオライター:進行豹氏による独自の取組
3.『物販可能なぬいハチ会』当日の様子
  • 1.『まいてつ』とは


鉄道機関車を「擬人化」といえばいいのだろうか?
『まいてつ』は、「機関車」を美少女化した「レイルロオド」という設定の美少女キャラ「ハチロク」を主人公に、熊本県人吉市をモデルとした(作中は「御一夜市≪おひとよし≫」と設定)美少女ゲームである。

2016年に「Lose」よりアダルトゲームとして発売。。
その後、2018年にコンシューマ化。PlayStation 4移植版の『まいてつ -pure station-』が発売された。
現在は、続編にあたる「まいてつ-Last Run-」の企画が進行している。

最近では、「国宝・青井阿蘇神社を中心としてにぎわいのある街づくり」を目的として人吉市内で結成された町おこし団体「青井の杜外苑まちづくり協会」の下、『人吉まいてつ祭』も開催され、地域と作品との協働体制が深耕している印象だ。



  • 2.『まいてつ』シナリオライター:進行豹氏による独自の取組


この作品のシナリオライターを務める進行豹氏による、ファンを交えての独自の取組が特徴的だ。

発売前の2015年、四国・琴平電鉄で「ハチロク」ヘッドマークを付けた貸切電車を運行。翌2016年2月には上毛電鉄で同様の貸切電車を。また、同年7月には、「聖地」人吉市を走る「くま川鉄道」での貸切電車を運行した。

参考リンク:Lose様ご公認 進行豹自腹企画 〜まいてつ列車「ハチロク号」を走らせよう!〜

また、2017年以降は春・秋の年2回、都内で『物販可能なぬいハチ会』を開催。
権利元「Lose」から一日版権の許可を得て、サークルも自由に『まいてつ』(正確には進行豹氏の前作『ものべの』も含むが)の自作グッズを展示・販売できるという形態に。もちろん、同人誌の頒布もOKだ。

なおこの即売会は、『まいてつ』作品展開とは別個の、あくまで進行豹氏「個人」としての取組であることには留意したい。
あくまで「Lose」の厚意により、進行豹氏主催の個人イベント『物販可能なぬいハチ会』に「Lose」から一日版権の許可が下りることで成立している。
この催事に、版権元が直接的に関与しているわけではない。進行豹氏は、シナリオライターとして作品に深くかかわる立場だが、あくまで「個人」としての取組である。



  • 3.『物販可能なぬいハチ会』当日の様子


11時の開場時に入場。開場直後ということもありなかなかの賑わい。
参加費は無料だが、主催・進行豹氏の「持ち出し」も多い企画なので、カンパも募っている。運営費の足しになればとの思いから、少額ながら募金袋にお金を投じる。

参加者は、美少女ゲームだけにほとんどが30代以上の男性陣。余り数は多くないが、ハチロクに扮した女性コスプレイヤーもいらっしゃった。
参加サークルは約15サークル。カタログは用意されてないが、ホワイトボードに手書きで配置図も記されている。(サークルカットはweb上で掲示)

サークルは、自作のぬいハチや関連グッズが多い。
鉄道を基としたゲームなので、鉄道ファンがこの作品に「刺さる」ケースも多い。鉄道関連本も決して少なくはない。(艦これオンリーで、戦艦の研究本出すのに近いノリだろうか)
主催・進行豹氏も、個人サークル「不機嫌亭(鉄道部)」名義にて同人誌を刊行されていた。

しかしこのイベントの圧巻といえば、やはり「ぬいハチ」の展示だろう。
参加者から持ち寄られたぬいハチが、これだけ…

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『物販可能なぬいハチ会』という催事名にふさわしい、「ぬいハチ」ぶりである。

また、併設された鉄道模型走行会も、プラレール・Nゲージ等となかなかの充実。
大量の「ハチロク」が一堂に会した転車台が中々の見どころだが、他の機関車群も中々の出来栄え。
流石に鉄道をモチーフとした作品だけに、ガチの鉄道ファンが数多くいらっしゃる。ファンの圧倒的な熱量を感じ取れた。

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今回は物販(サークル)参加締切後なので、サークルとしての参加はならなかったが、筆者も一応は『まいてつ』関連を取り上げた町おこし研究本を刊行している。
次の機会があり、スケジュールが合うようならば、一度サークルとして馳せ参じてみたい。そう思わせる、熱気あふれる販売会であった。