※参考
1月23日「参加者への啓蒙活動、誰がする?
3月2日「COMIC1に激しく期待!

昨年警察庁は、「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」と題した諮問会議を行なった。その中で、18禁同人作品についても触れられ、最終答申でも、今後の同人作品に対する対応方について、比較的深い所まで突っ込んでの方向性が纏められた。
詳しくは上記2記事をご覧頂きたいが、私なりに警察側の意図、及び今後の方向性について解説しつつ、かつこの答申に対する即売会主催側の動きとして、「COMIC1」のトークイベントについて取り上げさせていただいた。

先日3月18日、「HARUコミックシティ」に参加した。
これに参加する中で、この答申に対する主催・赤ブーブー通信社に、非常に果断で素早い動きが見られた。
今回の答申を受けての一連の問題に対する取組としては、「COMIC1」に次いで素早い動きを見せており、赤ブーブー通信社側の意識の高さが伺える。
今回は赤ブーブー通信社の動き、及び周辺の取り組みについて取り上げたい。
件の警察側の諮問に対する最終答申の中に、「同人誌等の即売会等についても、イベントの主催者に対し、子どもを性行為等の対象とするコミック等を18歳未満の者に売らないための対策の強化を求めていくべきである」という文面がある。
私が思うに、今回の答申の趣旨は「18歳未満にエロ売るな」という一点に集約されると思う。そしてこれは、警察が今後、同人世界全体に求めていくものともなろう。


赤ブーブー通信社の取組は、この答申の内容に呼応した取組である。
HARUコミカタログp487〜488「事務局から一言二言!!」によると、現時点での課題となるべき現状が語られている。その内容は…

・18禁同人誌はその旨表示するのが本来のルールだが、18禁表示を行っていないサークルが急速に増えている
・18禁どころか「猥褻物」になりかねない過激描写の同人誌も増えている。(即売会では猥褻物を売れないから修正を施し、辛うじて売れるレベルの「18禁」に「落とし込む必要があるが)猥褻チェックの際、修正要求をするケースは女性向けの方が顕著である。
(作者編注:18禁と猥褻物の違いについては後述。女性が多いと言うのは、サークル数が多いから当たり前と言えば当たり前だが)
・印刷屋も、仮に猥褻物になる同人誌を印刷すれば、幇助罪で摘発される。当然入稿時にチェックはするものの、入稿ラッシュの折には見落とすケースも。
 →印刷屋通った=猥褻物にならない、という訳ではない(※1)


という部分。無論、その辺りの意識付けがしっかりしているサークルさんが大多数なのは、今更言うまでもないが、一部意識の甘いサークルさんもいらっしゃる。

赤ブーブー通信社は、HARUコミ参加全サークルに、猥褻と18禁の違いをまとめ、注意を促す文面を発送した。
これは、意識の甘いサークルさんは無論、心あるサークルさんにも啓蒙を図り事の重要性を再認識させ、気を引き締めていただく効果がある。主催側からの啓蒙活動の一環として、充分評価に値する取組であり、他イベント主催の皆さんにも見習って頂きたい取組とも思う。

HARUコミカタログp506に、サークルさんに送付した文面が記載されているが、これによると、猥褻・18禁の定義をこのように纏めている。非常に分かりやすく明確なまとめ方である。
(もしカタログをお持ちの方は、同ページをご一読頂く事をお勧めしたい)

18禁 → 18歳未満に売買、閲覧させてはいけないもの。

猥褻物 → 18歳以上だろうが売買不可


「18禁」は、18歳未満は閲覧も不可である所がミソ。従って、サークルは同人誌の表紙に18禁である旨印刷し、18歳未満が閲覧できないよう配慮する必要がある。
「猥褻物」の定義は、ぶっちゃけ一言で言えば「性器モロ出し」。
即売会で猥褻チェックが行われるのは、猥褻物に修正を加えさせる事で「猥褻物」の流通を阻止する目的にある。
適度な修正が加えられない猥褻物認定の同人誌が頒布されれば、それを見逃した即売会側も幇助罪に問われ、主催が検挙される、或いは今後の即売会開催が不可になる危険がある事も押さえておきたい。
場の維持の為、スタッフによる猥褻チェックは必要不可欠。
しかし、猥褻物認定されそうな物には修正を施すなど、サークル側にもしっかりとした対応が求められる

尤も、猥褻物については過去騒がれた経緯もあり、各即売会や印刷所によるチェックが比較的しっかりしている。サークルの意識も比較的高い。修正が施されていない物を出さないよう注意を払えば、摘発される事は無いだろう。

今回の答申で問題になるのは、「18禁」に対する扱いである。
警察庁の答申の骨子は「18歳未満に18禁売るな見せるな」、この1点に集約されよう。
赤ブーブー通信社がサークルに出したアピールは、率直言ってとりわけ新しい事が書いてあるわけでもない。

要は、「18禁ならちゃんと18禁と書いておけ」「18禁は18歳未満に売るな」
この点を訴えただけに過ぎない。
正直、今更感の漂うアピールではあるが、こんな当たり前のアピールを出す背景には、18禁表示をせず(or18歳未満に18禁を売る)サークルが居る事の証左でもある。そして、今後警察から各主催へ「18禁を18歳未満に売るな、それを徹底させろ」と働きかけが強まるであろう事も、背景の一つとなろう。

(余程の事が無い限り考えられないが)考えられうる最悪のシナリオとしては、主催が猥褻・18禁対応に一切無関心、サークルも野放し、即売会場には18禁・猥褻物が氾濫…業を煮やして警察が即売会主催やサークルをパクる。めでたく即売会お取り潰しでいっちょ上がり。
こんなケースは流石に可能性は限りなく低いだろうが、主催やサークルが無関心で放置を決め込めば、そうなる可能性も高まるであろう。

いずれにしても、主催者側が諸々のチェックを行なうのは当然の事としても、実際に本を作るのはサークルさんである。
サークルさんには、極めて当たり前の事ではあるが、猥褻物認定されないよう修正をしっかりする、18禁は18歳未満には売らない。既にしっかり対応されているサークルさんも含め、全てのサークルさんがこれを再度認識し、徹底して頂きたい。そのように願う次第である。

今回の警察庁答申に関連した赤ブーブー通信社の取組は、極めて平凡かつ当たり前の事かもしれないが、赤ブーブー通信社の意識の高さを示している。赤ブーブーは、今後開催する全ての即売会参加サークルに、今回のような注意文を送る、という事。
他にも、事務局日誌によると、「サークルに注意を促す為に”18禁”を示すPOPを制作してサークル宛の発送物に送る」ともある。小さい試みかもしれないが、これで気を払ってくれるサークルが少しでも増えれば良いだろう。実際、決して馬鹿には出来ない効果があるようだ。

他、今回の赤ブーのアピール文で述べられていた項目としては…

・女性向けだろうが小説本だろうが、内容次第で18禁認定されるぞ
・同人誌がアマチュアだろうが、社会的責任は変わらんぞ


と言った部分。当たり前の事だが、非常に重要な事でもある。

赤ブーブー通信社の試みはこんな感じだが、赤ブー以外でも今回の答申に対し動きを見せた団体がある。
全国の同人誌即売会主催同士の緩やかなネットワークとして数年前に発足した、「全国同人誌即売会連絡会」である。
印刷業者や、先行して取組を見せているCOMIC1とも協同しつつ、「同人誌と表現を考える会」主催の元、5月19日、池袋にて「同人誌と表現を考えるシンポジウム」を開催する事になった。
次回は、この取組についても、そして、今後の同人誌即売会の方向性についても、少し語って参りたい。


(※1)印刷業者さんの苦労については、「はたPのマニアネタ日記」さん3月19日付「【連載シリーズ1】同人印刷の中3」が詳しい。今日のエントリーとの関連性も高いので、ご一読をお勧めしたい。