竹熊健太郎氏主宰の人気ブログ「たけくまメモ」にて取り上げられご存じの方も多いと思われるが、現在、文化庁・文化審議会著作権分科会法制問題小委員会にて「著作権侵害の非親告罪化」について審議されている。

武熊氏も過去数回に亘り、この件について記事を書かれている。
5月21日付「【著作権】とんでもない法案が審議されている
6月3日付「【著作権】「非親告罪化」今年度中に本案へ

また、同人誌生活文化総合研究所・三崎尚人氏も、6月8日付で文化審議会著作権分科会法制問題小委員会・第4回会議を傍聴し、審議内容をレポートされている。
(三崎氏のレポ中で、非親告罪化した所で著作権者の協力は欠かせず、現状とそんな捜査方法に変化は無いのでは?という指摘が審議中に上がっていた。このレポートも、大変興味深く拝見させて頂いた。興味のある方は是非ご一読頂きたい)

同人作品の大半は二次創作。ともすれば版権元の著作権を侵害する可能性もある。
同人は、版権元のお目こぼしをいただく事で初めて成立している
版権元がその気になったらアウト。同人世界は、非常に微妙なバランスの元で成り立っている。同人に携わる人間がこの「非親告化問題」に神経質になるのは理解できる。

だが、結論から申し上げると、「著作権侵害の非親告罪化」が成立したとしても、それが即同人創作への規制に繋がるとは全く考えられない。
以下、その理由を述べさせて頂く。
【大切なのは条文の改訂ではなく、法律の運用範囲】

確かに、今回の著作権法改正・非親告罪化は、(警察がその気になれば)同人に規制をかける事も可能である。その余地が残されている。
しかし、それは非親告罪化に限った話ではなく、既存の法律にも言える事である。
例えば、曖昧な定義の刑法175条(猥褻罪)然り、既存の法律の拡大解釈で、いくらでも同人に規制をかける事は可能である。
法律を解釈し運用するのは、警察である。ぶっちゃけて言えば、(良くも悪くも)摘発されるか否かは、警察の匙加減一つで決まる

私は、新しい条文が出来る出来ないよりも、警察がその気になるかならないかの方が、規制の有無に繋がると考える。
条文の有無に一喜一憂する事は、木を見ているだけ。「木を見て森を見ず」になるのでは無かろうか。警察による法律の適用・運用にも目を配る事こそ、「森」を見ることになると思う。

(参照:2006年9月10日付「二次創作のNO/OK そのボーダーラインとは?」においても、条文の改訂よりその運用が重要であると主張している。余談であるが、昔制定が検討された「青少年有害社会環境対策基本法案」に対しても、同様の理由から、同法が成立されても問題にはなり得ない、と私は主張していた。)

警察をその気にさせてはおしまいなので、(コミケットの方がされているように)説得や交渉等を通じて相手方に理解して頂く。
警察等の公権力に対しては、「対決」ではなく「対話」が必要である。
(※「対決」は、警察の態度の硬化→取締強化の流れに繋がるから好ましくない。心配なのは、反体制的・左翼的なイデオロギーが絡んで、警察との対決を煽るような動きが出る事。イデオロギーを絡めると余計に話がこじれ、表現の自由を守る上でマイナスになりかねず、好ましくない)

あとは、同人の長所−同人には【文化】という性質もある。
文化というプラス方向のアピールも続ける事で、世間的な印象をUPさせる事も大切だ。世間的に認知されれば、それを警察が規制する事も難しくなる
「よくわからん事」(に見える事)をやってるから、警察に規制される危険を孕むのではないか、という気がする。
同人は、得てしてアンダーグラウンドの世界、陽の当らない世界として位置付けがちだ。同人に携わる我々自身すら、そう位置付けがちかもしれない。しかし、世間的な認知や市民権を得るべくアピールする方法も考え、世間の同人に対する理解を深め浸透させることも必要ではなかろうか。



【黒幕(?)はアメリカ様】
今、大事なのは条文じゃなくて【警察がその気になるかならないか】という意の話をさせて頂いた。
それでは、警察に、同人を取り締まろうという気はあるのだろうか?
別の角度から、この事を掘り下げて考えてみたい。

GIGAZINE様「著作権の非親告罪化やP2Pによる共有の違法化は誰が言い始めたのか?」によると、この非親告罪化はアメリカ様のご要望によるもの。

アメリカ様は、毎年毎年、我が国の政治に関する数々の要望を、我が国に提出なさいます。所謂「年次改革要望書」という奴。
年1回アメリカ様から日本政府に提出されるこの要望書、要望書に掲載された内容は何故か優先的に実行される傾向があるようだ。流石アメリカ様の属国w
ご存じの方はご存じだろうが、小泉前総理の打ち出した郵政民営化も、「年次改革要望書」によるアメリカ様のご要望。小泉総理の在任3〜4年目当たりより急速に進んでいった郵政民営化は、小泉前総理の強力な政治的信念も大きく作用しているが、この要望書に盛り込まれた事も急進化した一因と思われる。

しかしこの「年次改革要望書」、日本語版もあるので是非一度お目を通していただきたい所だが、200項目弱・総計55頁にも及ぶ分量、要望も電気通信から流通に至るまで多岐にわたっている。
我々が気になるのは知的財産に関する部分だが、この分野だけでも、アメリカ様の要望は多岐にわたっている。「損害賠償制度」「著作権保護期間の延長」「偽作・海賊版の取り締まり」「デジタルコンテンツの保護」「特許手続きの簡素化」「商標権」…様々な、そして細やかなご要望を、アメリカ様は提示されている。

…細かい所まで内政干渉まがいにグチグチと
貴 様 ら 何 処 の 小 姑 だ

私が日本政府の関係者なら、上記の通り怒りをぶちまけ、アメリカ様の関係者を青竜刀で叩き斬り、はらわたを雛見沢の川に流し即興の「綿流し」を始める事は間違い無いw …今年ももう6月、綿流しのシーズンですしねえ。
よく日本政府の関係者も、こんな小姑チックな要望に我慢強くお付き合いできるよなあ…その点は関心する。


しかし、こういう考え方もできる。
アメリカ様のご意向に沿った「非親告罪化」である以上、その罪の適用範疇も、アメリカ様のご意向に沿ったものになると考えられる。

同人を取締った所で、アメリカ様のご機嫌は取れるのか、アメリカ様はお喜びになるのか。
同人なんてアメリカ様はご存知ではない、というか眼中に無い。
アメリカ様のご意向を考えると、同人に取締が及ぶという事は非常に考えにくいのではないか、と考える。
(注:ミッキーマウス等、アメリカ国内に版権があるような物については、話が別になる)

たけくま日記様では、あたかも同人に危害が及ぶかのような書き方をされている。
しかし、その論には「何故警察が同人を取締るのか」という警察側の動機が示されておらず、説得力を持たない
私は、「同人を取締る事でアメリカ様はお喜びにならない」という論拠を挙げ、警察側に同人を積極的に取締る動機が無い事を示している
もし「警察が同人を取締る」事を主張されたいのなら、警察側が同人を積極的に取締る「理由」を、警察側の立場に立って論じて欲しいとは思うが、残念ながらそこまで踏み込んで論じた方はお見掛けしないため、この論は説得力を持てないと考える。


【蛇足】
個人的には、この件よりも寧ろ「JASRACがマンガの著作権管理に乗り出そうとする動き」や「児童ポルノの禁止範囲に単純所持も含める動き」の方が心配な部分も。


【蛇足その2/電波的暴論】
じゃあもし同人が摘発されたらどーすんの?摘発されてからじゃ遅いだろ?というご意見もあろうが、心配ご無用。
そういう状況になった時、我々が警察に対抗できる最強の革命的方法(電波的方法とも言う)を考案したので、この機にご紹介申し上げたい。

コミックマーケットへの参加者は1日15万人。これだけの人数が一度に自首したら、警察がどういう対応を取るのか非常に見物である。
15万人全員とは言わなくても、1つの警察署に200人〜300人が自首したらどうなる事であろうw
買い手や主催は、自分の買った同人誌を「証拠品」として持参して自首。サークルは自分の頒布物を証拠品として持参して自首する。200〜300人集まっても、集会の開催・示威行為・団体行動ではない。単にてめーの罪を認めて「自首」するだけである。

恐らく、これだけ多くの人間が関わる以上同人は市民権を得ている筈だ、などと勝手に解釈してお咎めなしで終わる筈だ。警察も調書取ったり何だりで手間掛かるだけだろうし、良い事無いはずw
後に残るのは、数百人が同人誌で自首したけど、逮捕も摘発もされずに終わった、という実績だけである。
警察内で「同人誌は摘発に及ばず」みたいな通達が出るかもしれない。

という訳で、(たぶんありえないと思うが)同人が摘発されたら、同人関係者はサークル・一般・スタッフの別を問わず、全員即刻最寄警察署に「自首」する事をお勧めしたい!