少し間を空け、また間に他の記事も入れてしまったが、3月1日、北海道札幌市開催の【同人誌オンリー】の即売会「Elysian」に参加させて頂いた。

以前より、「Elysian」参加経験のある友人サークルより「Elysianはお勧め」と聞かされており気にはしていた。
だが、今回自分の活動ジャンルたる「評論・情報」ジャンルをテーマとしたプチオンリー予定は未定で無限大!」が開催されると聞き、自分が参加し易い環境では?との期待を抱いた。
更に、人気ジャンルでもある東方Projectのプチオンリー「東方道出抄」も開催されると聞き、当地の東方ジャンルの活況もこの目で確かめてみたくなった。
この2つのプチオンリーが気になり、一念発起して参加を決めた次第である。

「Elysian」には、他の即売会には無い特徴が一つある。
(2009年03月15日付記事「3/1 札幌市「Elysian」 アフターイベント「座談会」議事録」でも少し申し上げたが)それは、当初はサークル数も参加者数も泣かず飛ばずの閑散即売会であったが、回を重ねるごとに参加者数を増やし続けていったという事実。

全ての即売会が、開催回数を重ねるごとに参加者数が増えるとも限りない。寧ろ、回を重ねるごとに参加者数も漸減する即売会の方が多い。
ましてや、この「Elysian」は、開催初期は10だの20だの、その程度しかサークルも集まらずに終わったこともある。数字的には「失敗」と評するしかない。このまま自然消滅しても不思議では無かった…そういう不遇の時代を送った事もある。
それが今では、直接参加168sp・委託33サークルサークル数ベースならば200の大台を超え、地域最大規模の即売会の1/3を超えるまでに成長した。(北海道最大の即売会「おでかけライブ」は500sp前後で推移)
消滅してもおかしくはない閑散・不遇の時代を乗り超えての躍進。これが他の即売会に無い、「Elysian」の大きな特徴だ。
今回は、「Elysian」躍進の秘密について迫りつつ、サークル参加してのレポートを記させて頂きたい。
2009年03月15日付記事「3/1 札幌市「Elysian」 アフターイベント「座談会」議事録」でも触れた「Elysian」の成長。その秘密は何処にあるのか。
「Elysian」は、過去の即売会の開催履歴を、「ヒストリー」というページに記している。その内容を、以下図表化して纏めさせていただいた。
この図表を眺めると、見えてくる事が幾つか出てくる。

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【現会場「アスティホール」への変更は成長への転機】

先ず、テレビ塔時代(1〜3回目)低迷していたサークル数が、会場を現在の「アスティ」に変えた途端に倍増している事が挙げられる。

テレビ塔は地下鉄大通駅から徒歩圏内、「とらのあな」「アニメイト」等その手の店舗の固まる地域へも徒歩圏内、アクセス的に大変優れた場所と心得る。
ただ、同人誌即売会の会場として利用される頻度は、年間2〜3回程度で余り多くなく、札幌界隈の同人者にとってなじみのある会場では無い。また、テレビ塔は札幌の観光名所の中で、最も有名な箇所の一つ。道外からの観光客中心に、一般人の往来も多い場所での開催に、抵抗を感じる方もいらっしゃったようにと思う。

アスティホールも、「Elysian」以前では余り使用された形跡も無い(テレビ塔以下の利用頻度かも)が、大きな違いは「アクセスが格段に良い事」「一般人の往来がテレビ塔程ではない事」の二点。
JR/地下鉄札幌駅と地下道で直結、テレビ塔以上のアクセスを誇るし、アスティ自体は観光地ではないので、テレビ塔ほど一般人の往来を気にせずに済む。
そういう流れを考慮すると、やはり「アスティ」効果で参加サークル数が倍増した、と考えられるのだが、如何であろうか。

テレビ塔時代は、正直申してサークル数も少なく、即売会としての体を成さないレベルのサークル数であった。サークルを多く集めてナンボのオールジャンルで、10サークル台は厳しい。そんな程度しか集まらないオールジャンルには、サークル的にも魅力に乏しい。
しかし、「アスティ」に移り、サークルも30サークル台。即売会としてギリギリ成立し得るサークル数に伸びた。30〜40集まれば、サークル的にも「まあ参加してみようか…」という気になる。
その状態で安定して継続開催を続け、後述するが運営面での細やかな気配りもあり、サークルからの信頼や実績を積み上げた。それがサークル数の着実な伸びに繋がっていると思う。
(テレビ塔の10サークル台で回数を重ねても、サークル的には魅力に映らず、サークル数も低迷したままであったと推察する)
「Elysian」にとって、会場を「アスティ」に移した事は、飛躍への「転機」であったと言えよう。



【確固たる理念に基づいた、明確な方向性の企画】

もう一つ特徴を挙げるとすれば、回を重ねるごとに企画が充実している事。
初回の企画は全く無し、アフターイベントも何も無く、単に即売会を開いたに過ぎない。
だが、2回目より「表紙コンテスト」「ブロックノート」等の企画が登場、3回目より「お品書き」登場、4回目より「ドリンクサービス」「抽選会」(抽選会は9回目よりビンゴに発展的解消)、7回目より「イラストコンテスト」実施。8回目より「合同打ち上げ」、9回目には「落書きコーナー」復活と「お茶会」の登場(お茶会は10回目より「座談会」に変更)。
…矢継ぎ早に新しい企画を次から次へと取り入れている。その企画力、実行力、エネルギーは他に類を見ない。

その理由は、「Elysian」イベント概要のページの、「Elysianの位置付け」という所に示されている。「Elysian」の即売会としての理念を記したものであり、以下抜粋させていただく。

>字義通りの「同人誌即売会」を地方都市において開催する
>継続開催を志向し、「常に進化する」即売会を目指す
>参加者全員が「創り上げ」、「楽しめる」即売会を目指す


2行目の【「常に進化する」即売会を目指す】、3行目の【参加者全員が「創り上げ」、「楽しめる」即売会を目指す】という部分が、「Elysian」が様々な企画を打ち立てる理由となっている。
進化を目指すからこそ、様々な新企画を打ち立てる事で、たゆまぬ「変化」をつくり上げようと志向する。
そして、参加者全員が「創り上げ」「楽しめる」即売会を目指すからこそ、企画を打ち立てて場の演出に努める。アンケートや座談会等の場を通じ、企画に対する参加者の意見を吸い上げようとする。

「Elysian」の企画は、「Elysian」の理念に忠実に沿った、ベクトルの明確な企画である。


【魅力的な「Elysian」の企画】

「Elysian」の企画そのものを見ても、非常に魅力的かつ独創的な企画が多い。

「表紙コンテスト」は、同人誌の表紙を各サークルがエントリー、投票を行うという趣旨だ。「同人誌」をメインとする「本オンリー」らしい企画だ。
同人誌から得られる第一印象は、買い手に同人誌を手に取って貰えるか否かを占うに当たって、案外大きなファクターだ。
表紙を競わせる事は、サークルの表紙に対する意識を高める。意識が高まれば、表紙の質も高まり、本を手に取る買い手も増える。巡り巡って、サークルの頒布物購入者の増加にも繋がる。
「表紙コンテスト」は、サークルの同人誌の質を高め、サークルの売り上げを向上させる効果をもたらす企画、とも言えよう。

「イラストコンテスト」は、様々な即売会で実施されている企画だが、「Elysian」の企画は一工夫を図っている。
イラストコンテスト入賞作品は、次回以降のチラシ絵・カタログ表紙絵に抜擢」と予め明言してのコンテスト実施だ。イラコンの開催が「場の盛り上がり」に繋がると共に、チラシ絵・カタログ表紙絵を誰かしらに依頼する手間も省け、一石二鳥の効果。

他にも、これは他の即売会でも実施している企画だが、「落書きコーナー」「ブロックノート」「ドリンクサービス」等。「落書きコーナー」「ブロックノート」はサークル中心に気軽に参加出来る企画だし、「ドリンクサービス」は心遣いが嬉しい。

そして、これは非常に大事な部分だが…どの企画も「即売会」の本義たる「同人誌の頒布」を妨げる事は無い。
即売会の持ち味を潰さずに、地味かもしれないが場の盛り上げに寄与している。(何処かの即売会のように、サークルスペース目の前で主催がステージイベントやら独演会やらを延々始めて、頒布の邪魔になる事も無い)



【参加者の声に忠実に耳を傾ける主催】

「Elysian」は、運営の在り方、企画の在り方など、アンケートや座談会等の場を通じ、参加者の意見を吸い上げる。そしてそれを、次の運営・企画にフィードバックする。
これは、「Elysian」の即売会としての理念【参加者全員が「創り上げ」「楽しめる」即売会を目指す】の「創り上げ」に該当するのだが…

「Elysian」は、参加者の意見に耳を傾けるのみならず、それを生かそうとしている。
サークルの意見や要望を可能な限り実現させようとする「意欲」や「誠意」が感じ取れ、好感を持つ。
「Elysian」のその姿勢が、サークルの支持を集めているのではないか、と考える。

「Elysian」は、アスティホール移転以降、年々着々とサークル数を伸ばしている。
サークル数を伸ばすには、サークルのリピーターとしての定着・新規サークルの開拓、両方の要素が欠かせない。
「サークルのリピーターとしての定着」は、言うまでもなく「Elysian」主催の誠意ある姿勢あってこそだ。
「新規サークルの開拓」は、道内外を問わず多数居る協力サークルが担う。コミケ他、主催が足を伸ばせないような(札幌から見て)遠方の即売会で「Elysian」が告知を図れるのは、協力サークルのお陰だ。
別の見方をすれば、「Elysian」主催の誠意ある姿勢の賜物ゆえ、サークルも主催を応援したくなり、協力を申し出るサークルが増えた、とも言える。
主催の誠意ある姿勢こそが、サークル増加・順調な成長の原動力と言えよう。


言葉を変えれば、「サークル目線」を徹底させている事で、サークルの支持を受け、サークル参加者数が増え続けている、と言える。
そしてその姿勢を長年堅持し続け、継続開催を図る事で、信頼や実績を積み重ねて行く。
「Elysian」の現在の繁栄は、参加者の事を思いやる姿勢あってこそ、と言えよう。


次回は、「Elysian」に実際参加してのレポートを少々記す予定。