2009年07月10日付「地方に波及する東方ジャンル」でも述べたが、現在の東方ジャンルの隆盛…特に地方都市での積極的な東方オンリーの展開が、ここ半年目立ってきている。

地方都市の同人事情は、サークル数・一般参加者数共に減少傾向、疲弊し元気が無い状況だ。
そんな中でも、東方は非常に元気。サークル募集をかけても軒並み満了、一般来場者も下手すれば当地最大規模のオールジャンル同人誌即売会に迫るものがある。

東方オンリーの地方展開は、元気の無い地方都市の同人を活性化し得る存在と位置づけ、私は大いに期待している。
もっとも、主催者の想定を余裕で凌駕する来場者数に、対応しきれるのか?という心配は残るのだが…。
地方都市の同人誌即売会における課題は、普通の即売会ならば「いかにサークルを集めるか」が主眼だが、こと東方に関しては「いかに多数の来場者に備えるか」といったところだろうか。


そんな中、私が期待している即売会として、2010年2月・広島開催の東方オンリー「東方椰麟祭(やりんさい)」を取り上げたい。
「椰麟祭」は当て字で、元の意味は広島弁で「やろうよ!」という意味の「やりんさい」か来ているとの事。(参照:@++様/「7/6 ミニ情報」のコメント欄より)


【主催氏から見出せる熱意とセンス】

中国地方では初めての東方オンリーとなるこの即売会、7月4日に公式サイトを公開、開催を発表した。
開催当初より、広島で初の試みという事で、注目させて頂き、勝手ながら主催氏がどんな経験をお持ちの方か調べさせて頂いた。
調べた結果、即売会主催の経験は、お世辞にも豊富とは言えない。というか、そもそも大都市圏以外の地域でオンリーイベントが開催される事など殆どないわけだし、当地にお住まいの方で主催経験が豊富な方が、いらっしゃるとも思えない訳だが…。主催経験が浅いとしても、無理も無い。
(2009年07月02日付「「東方四国祭」騒動雑感(後編)」にて、「愛媛という即売会開催件数自体が少ない土地柄で、経験豊富な人は稀有であろう。そういう人と巡り合えなくとも、仕方無い。」とも申し上げたが、これは広島及び中国地方全般でも当てはまる話に思う)


ただ、私が驚いたのは、「椰麟祭」開催が知れ渡った僅かに数日後の7月12日。この日、広島ではユウメディア主催のオールジャンル「広島コミケ」が開催された。
私はちょうどその時、福岡のtenjin.beでサークル参加しており、何故か福岡にお越しの@++・綾瀬さんと駄弁っていたのだが、そこに広島コミケ参加の某東方サークルさんから電話が入った。

今、目の前に「椰麟祭」の主催が挨拶回りに見えてる

即売会を営むに当っては、先ずは何よりサークル集め。1サークルでも多くのサークルを集める事が肝要だ
オンリーイベント開催に当たり、当該ジャンルのサークルに挨拶回りを行い営業をかける。サークル参加数を積み上げる為にも、それを行うのは当たり前の話。

だが、こと「椰麟祭」主催氏に関しては、未経験者に等しい。
未経験者が真っ先に実践した行動が、サークルへの挨拶回り。いや、確かに正しい行動なのだが、主催初心者が(誰に教えられる訳でもなく)この行動を取れるという当たり、イベント勘が鋭く、主催者としてのセンスに優れている方ではないか、という印象を持った。

また、立ち上げ僅か1週間後で、営業活動に臨めるという機動力の高さ、行動力の高さも特筆すべき点であろう。主催氏の意欲、ヤル気のほどが伺える。
私が同人誌即売会を論評するに当っては、サークル数と言った目に見える数字…すなわち結果を出した即売会に対して好意的な傾向がある。だが、それ以上に、足を使って汗をかく事を厭わない営業熱心な主催に対しても好意的な傾向を持つ。
「椰麟祭」は、少なくとも後者に値しよう。前者に値するかどうかは、サークル集めもこれからだし、まだ分からない。ただ、昨今の地方即売会における東方の隆盛や、サークルへの営業熱心さも考慮すると、きっと結果も伴うだろうと期待し、かつ確信している。


もっともこの時、広島の某東方サークルの話を伺うに、告知チラシ1000枚予定とか仰っていたようだ。その程度の分量、東方紅楼夢の全サークルに配るだけであっという間に終了だ。普通の即売会なら、10000枚単位でチラシを刷り、告知をかける。
貴様告知を舐めとんのか!今すぐ青龍刀こさえて広島行くから待ってろ!主催の頭を叩き割ってやるわ!」と電話口で吠えたのは内緒にしておこうw

ただ、この件に関しても、その後主催氏は周囲からアドバイスを受け、方向性を修正した模様だ。
9月6日の「こみっく★トレジャー」では、主催氏自らが大阪に足を運び、サークルスペースへのチラシ配布や営業活動に臨んだ。チラシを配布中の主催氏にお声を掛け、直接お話を伺ったが「経験は無いが、様々な方からいただいたアドバイスを活かしている」との事。チラシ数も大幅に上方修正した模様だ。
トレジャーでチラシ配布するぐらいだから、きっとこの後「東方紅楼夢」「大(9)州東方祭」といった西日本界隈の有力東方オンリーでも、サークルスペースに配布する事だろう。
充分なチラシ数を用意し、押さえるべき告知先はきっちり押さえ、サークル集めに臨んでいただきたいものである。


【経験の浅さは他で補える】

主催者自身の主催経験は、確かに浅い。それ自体は、地方都市はイベント数も少ないし、仕方ない事と思う。
寧ろ私は、主催氏が自らの経験の浅さを自覚し、それを補おうと努力を重ねている姿勢を高く評価したい
例えば、8月30日・愛媛開催の「東方四国祭」。主催氏は瀬戸内の海を渡り、四国祭にスタッフ参加した。
私も以前、主催氏の経験の浅さを心配し、主催氏本人に対し(人づてながら)「どこかで即売会のスタッフ経験を積んでみては?」とアドバイスした事がある。それを受けてかどうかは知らないが、見知らぬ地でスタッフとして飛び込み、経験を積もうとする姿勢は、評価に値する。

経験の無い事、それ自体は仕方ない。誰でも最初は、初心者からのスタートだ。
寧ろ大事なのはその後。経験を積み、自らの糧として吸収しようとする姿勢が備わっているか。そっちの方が遥かに大切だ。
「椰麟祭」主催氏には、自らの足りない点を自覚し、それを補おうと努力する姿勢が備わっている。また、先述したが、周囲からのアドバイスを活かし吸収しようという姿勢もある。


そもそも、即売会主催/スタッフの経験と、即売会の出来は、必ずしも比例するものではない
例えば10年以上の主催キャリアを持ちながら、青龍刀で主催を問い詰めたくなる酷い即売会を量産する主催も居る。誰とは敢えて言わないが。
その一方で、主催初心者ながらも、極めて高レベルの運営能力を見せた「北陸本専」のような例もある。
経験の有無よりも、主催自身のセンスや努力、ヤル気の方が物を言うのかもしれない。



【参加者が殺到した時の対応方が課題】

唯一の懸念点は、サークルが集まり過ぎた場合。
現在60サークル募集。初回と言う事でどれだけ集まるか見当も付かない以上、募集60は決して少なくない。
いや、寧ろ初回にしては強気の数字だと思う。

しかし、それでも相手は東方だ。主催側の予想を遥かに上回る申込数・来場者数が、当たり前の世界である。サークル営業に熱心な姿勢も相まって、参加数は募集数を軽く超えると推測する。
サークルが集まり過ぎた場合、会場の拡大も視野に入れているようで、多少の対策はお考えなのだろうと察せるが、その時はより多くのスタッフの確保が課題となろう。スタッフ志願者が出てくれば良いのだが、それだけでは足りない場合に備え、他即売会のスタッフ経験者にも知り合いを増やし、いざと言う時に頼れるような人脈づくりを心がけたい

また、誘導経路や待機列など、動線の組み立てが必要となるケースも出てくるかもしれない。
本来ならば、スタッフ経験豊富な方…それも館内の混雑対応、館外の誘導に長けた方が周囲に居れば良いのだが、大都市圏の殺伐即売会ならともかく、広島ではそんな経験積む機会も無かろう。
出来れば、大都市圏の殺伐即売会で経験を積まれた方と、互いに相談し合えるような人間関係を築ければ良いのだが…そこまでは中々難しいか。

人脈なんてものは、作りたいと思って作れる物でもないが、「人と人とのご縁を大切にしよう」と心がけるだけでも随分違うと思う。
私も、積極的に人脈作りに励んだ事は一度もないが、「折角のご縁を大切にしよう」との心掛けを続けた結果、気が付いたら多くの皆様と仲良くさせて頂いている、という感じだ。

話がずれたが、人脈作りとまで行かなくても良いから、スタッフ参加してくれそうな友人や協力者を、少しでも多く増やせるよう心がけるべきではないか、と考える。人が多く集まり過ぎた時の為に備えて。


【まとめ】

「椰麟祭」主催氏は、確かに主催者としての経験は浅い。
だが、それを補うだけの物が備わっているのも、また事実である。

サークルへの営業活動に熱心な事は、主催者としてのセンスに優れているし、熱意やヤル気、行動力の高さも示している。
また、周囲のアドバイスに対し聞く「耳」を備えている。他即売会へのスタッフ参加を通じ経験を積もうと努めている。吸収できる物は可能な限り吸収し自らの糧にせんとする、貪欲なまでの成長の意欲を感じる。

今後の努力次第だが、主催として大きく成長する事が期待できる。
気が早いが、氏の成長、そして2月の「椰麟祭」、今から楽しみである。