過去に「コーマニズム宣言 夕張論」と題する紀行同人誌を刊行するなど、夕張市とのご縁が何故か深いこの私。年1回のペースで夕張に足を運ぶぐらいには、ご縁が深まっている。
そんな私が、夕張で同人誌即売会が開催されると聞けば「あ、何か楽しそうなお話があるな」とばかり馳せ参じるのは、極めて自然な流れである。
本来ならば、昨年の第1回開催時(2010年5月開催)にも参加させていただく予定であったが、所用が入り参加を断念。今回参加させていただいた次第である。

【参考リンク】
2010年06月23日付「5/8-9
夕張まんがまつり(前編)」http://blog.livedoor.jp/analstrike/archives/51655859.html
2010年06月24日付「5/8-9
夕張まんがまつり(後編)」http://blog.livedoor.jp/analstrike/archives/51655898.html


今年は、北海道のピークシーズンたる7月の開催。富良野ラベンダー畑等、花が見ごろのシーズンで、夕張の即売会参加ついでの観光にも絶好のシーズンだ。(その代わり飛行機代が高いという遠征参加上のハードルも…)

会場は、昨年同様夕張駅前のリゾートホテル「ホテルマウントレースイ」。
「夕張まんがまつり」は7月9〜10日の2日間開催。7月9日はコスプレ・痛車ミーティング中心、7月10日も即売会も開催というスケジュールで、即売会参加組の私は7月10日に参加すれば良い。
7月9日は日高地方を放浪の末、9日の夜遅くに夕張入り。「ホテルマウントレースイ」に投宿した。
夕張駅前は駅前屋台が盛況だし、1km離れた「ホテルシューパロ」では「夕張まんがまつり」参加組が宴会だのコスプレカラオケだの楽しんでいたようだが、私はそちらには顔出さず、「ホテルマウントレースイ」内の温泉大浴場でひと風呂浴び、ゆっくり体を休める。

翌日(即売会開催当日)はバイキングの朝食からスタート。イカの刺身を筆頭に、朝から海産物を制覇し、エネルギーも充電。
とは言え、即売会開催は12時からで、少し時間もある。
そこで今回私は、午前中の空いた時間に、「夕張まんがまつり」参加者向けのオプショナルバスツアー「夕張の鉄道遺産撮影ツアー」に参加した。

昨年の夕張まんがまつりでも開催したこのツアー、ツアーの中身は鉄道マニア向けに押さえるべき所をきっちり押さえた好企画なのだが(地元の観光関係者が絶賛していた)、昨年の参加者は僅かに一人…
理由は、昨年「夕張まんがまつり」に関する当ブログの記事を引用する。

>「集合日時:2010年5月8日 13時30分集合」…即売会開始時間じゃねえかよ!流石にその時間に参加は無茶だわw
>札幌・千歳〜夕張間を結ぶチャーターバスの空いた時間を利用して、という事でこの時間としたのだろうが…即売会の時間に被る見学ツアーじゃ、折角の好企画も参加者に恵まれまい。
>企画が良いだけに、実施時間は是非再考いただきたい所である

流石に今年は実施時間を再考されたようで、即売会開催前の午前中の時間を充てる事とした。うん、これなら俺も参加できる。
その甲斐あって今回は、参加者が10人ちょい。うん、そこそこ来て賑やかかな?
但し、参加者に【チルノ】や【小悪魔】や【ランカ・リー】がいたのは気にしない方向でw

コースは【夕張森林鉄道の三弦橋】や、【三菱大夕張鉄道の南大夕張駅跡に保存された鉄道車両】など、夕張全盛時代の鉄道の有様を伺えるコース。
特に三弦橋は、日本の鉄道の中でも珍しい建築様式、外観の美しさが評判ながらも、現在工事中の巨大ダム「夕張シューパロダム」完成の暁には、湖底に沈む運命。もう1〜2年後には、お目にかかることもできなくなろう。貴重な風景を堪能できて大満足であった。

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少し時間が余ったので、ツアーの係員の方にお願いし、大夕張の街に行けないかとお願いしてみる。
大夕張は、三弦橋のビューポイントから更に奥に入った先に存在した街。
かつては人口2万人を擁した一大都市ながらも、炭鉱の閉山等で人口が流出。三弦橋同様「夕張シューパロダム」の湖底に沈む運命となり、1998年に全住民が移転。現在では無人の街と化している。
【明石町】という駅の駅前まで立寄ったが、既に駅前広場・ 駅前商店街が原野に…草木が高く生い茂り、かつて街があったとはとても思えない光景であった。

こうして夕張の廃線等を思う存分堪能し、11時前にはホテルマウントレースイに戻る。
ホテルに戻ると、駅前に【犬走椛】が歩いてたり、ホテル前に母親が【メイド服】な親子連れが歩いていたり、コンビニで【魔理沙】(男装)が買い物していたり、挙げ句の果てには中国人観光客が痛車にカメラ向けて喜んでたり…色々と残念な賑わいを見せていたw

ホテルそばの広場では、11時から痛車ミーティングが開催。
痛車は「Re-write」「AngelBeat」「東方」「ボカロ」「まどか」「けいおん!」…20台ちょいのエントリーだったが、レパートリーの豊富さが印象的だった。
また、コスプレはホテル及び夕張市内オールフリー。レイヤー達は、ホテル周辺で撮影に勤しみ、痛車同様に賑わいを与えた。

札幌で同人誌即売会を営む「Chaos Festival」の主催氏よりお誘いを受けており、一緒に昼食をとることに。
夕張駅前のランチ食べ放題・イタリアンな喫茶店に顔を出すも、同店はまんがまつりの来場者で大盛況…!
しかたなく、ホテル内のバイキングレストランに。
レストランで、レイヤー達がコスプレのまま食事に勤しんでいたのも、夕張まんがまつりならではの光景。
食事代は少し高いが、夕張メロン収穫期という事で【夕張メロンも食べ放題】とか。
二人して夕張メロンにがっついたのは言うまでもないw

即売会開始は12時から。依頼のチラシを撒いたり、頒布物を並べたり、と準備を整え、来場者を待つ。
サークル数が20サークル台という事を考慮すると、初動50〜60人程度なのは結構多い方かも?
サークル的にも、最初の一時間は結構売れ行きが良かった。お買い求めいただいた皆さんありがとうございます。


参加者数は、約500人と聞く。
昨年に比べれば数を落としたものの、サークル数との比較で考えると、来場者数は多い部類に当たろう。
もちろん、痛車ブースに入り浸ってた方も居るので、この全てがサークルに買い物した訳ではない。
ただ、痛車組・コスプレ参加組の相当数が、即売会でも買い物しに来ていた。地方の即売会は、コスプレ参加者がサークルに足を運ばず空気が乖離しているイベントも少なくないが、夕張まんがまつりにはそれが無い。
コスプレイヤー・痛車と即売会とが上手くリンクしてるイベントだったのかもしれない。

何故、即売会で「本を買わない」とされているコスプレ組・痛車組が買い物に来てくれたか?
本来、地方即売会の買い手は、地元の中高生が中心。だが、夕張は、人口一万の小都市。しかも少子化が顕著、学生の絶対数が少ない。この手の世界に興味を持つ人は、夕張市内に10人居れば良い方だろう。
ましてや、当日は夕張高校で学園祭が開催されており、若い世代は皆そちらに流れる。
つまり、夕張市民の参加者は、このイベントに関しては殆どゼロに等しいと言える。
別の言い方をすれば、このイベントの参加者は、皆夕張市外からの遠征組だ。札幌など道内各地から、夕張に集っている。

遠征組な参加者は皆、半ば観光気分だ。せっかく来たのなら、夕張に用意されたコンテンツを、可能な限り堪能したい…そう思うのが人情だ。(私だって夕張鉄道ツアーに参加したし)
この「夕張まんがまつり」においては、即売会も、単なるコンテンツの一つに過ぎない。他にも、痛車・コスプレ・スタンプラリー・宴会・バスツアー・貸切列車…夕張まんがまつりには、数多のコンテンツが用意されている。
だからこそ、コスプレメイン・痛車メインであっても、観光気分でこのお祭りを存分に楽しもうとする気持ちが、即売会というコンテンツも一緒に楽しもう。そういう気持ちで、即売会も楽しもうと顔を出していただけたものと分析している。
(即売会開始一時間で皆去って元の持ち場に戻ってしまったが…それも即売会が「いちコンテンツ」として扱われている事の証左になるかも)

あくまで上記は私の仮説。これが正しいとは限らない。
ただ、一つ言える事としては、レイヤー・痛車組が即売会にも足を運んでくれて、サークルにとっては大変ありがたかった、という事だ。
即売会はメインたるべきかもしれないが、この「夕張まんがまつり」は、コスプレイヤーや痛車の存在も非常に重要。
サークル集めも大切だが、いかにレイヤー・痛車を集められるかも、祭りの盛り上がりを占うキーポイントではなかろうか。

では、「夕張まんがまつり」が痛車・コスプレを呼び込めた原動力は何か?
前回「夕張まんがまつり」レポートでは触れていなかったが、私は、イベント協力サークル「LayerComp」http://www.layercomp.net/の働きに注目したい。
「LayerComp」は、洞爺湖・旭川等他地域でも、地域の関係者と協力を図りつつ、同人誌即売会やコスプレイベント等を成功させている団体。
昨年の「夕張まんがまつり」において、早い段階で痛車・コスプレイヤー等一定数を集められる目処が付いていたようだが、それも、「LayerComp」の功績。
今年は道内他地域でのコスプレイベントのバッティングもあり、昨年ほど集まらなかったとは言え、それでも「夕張まんがまつり」全体で500人を集めた。そして、その大半に当たるコスプレ・痛車組の来場は「LayerComp」の力量による。
今まで触れてこなかったのは私の不明だが、「LayerComp」の果たした役割が大きい事に気付き、その点ご指摘申し上げる次第である。


「夕張まんがまつり」は、コスプレ・痛車の来場が賑わいをもたらし、その賑わいが即売会/サークル側にも波及。即売会側も盛り上がるという構図のイベントである。
そしてその中で、「LayerComp」の果たす役割は極めて大きい。
同団体には、その力量を今以上に発揮いただき、更なる来場者増に励んでいただきたい。

一方、サークル数はそれほど多くはないので、これを如何にして増やすかが鍵となろう。
「夕張まんがまつり」の協力者でもある「Chaos festival」の協力を仰ぎ北海道内での告知を強化する。或いは同団体以外の道内イベント団体とも提携するなど、協力の幅を広げ、北海道内からのサークル参加を促したい。
勿論、知己のサークルを「一本釣り」するなどの地道な作戦も必要だろう。

また、来年の「夕張まんがまつり」は7/7〜8の開催。これは夕張市内「合宿の宿ひまわり」で開催される「日本SF大会Varicon2012」と同一日程だ。
今回の夕張まんがまつりカタログの中にて、主催氏は「(SF大会の開催があり)私は殆ど運営に関われません」と述べられている。
運営面での戦力ダウン、「夕張まんがまつり」にとって痛手だが、一方でこれは「SF大会」「夕張まんがまつり」両者の相乗効果をもたらす大きなチャンスでもある。
参加費用が万単位に高いSF大会参加者へのサービスも兼ね、SF大会参加者は「まんがまつり」を無料入場可とする(「まんがまつり」パンフはSF大会参加者に無料配布する)。SF大会の無料入場ゾーンを「まんがまつり」参加者に開放する。夕張駅(ホテルマウントレースイ/まんがまつり会場)と「合宿の宿ひまわり」(SF大会会場)とをピストンバスで常時結ぶ。
他にも様々な方法があろうが、せっかく同じ日に同じ町で開催されるイベントだ。相乗効果を高める方法を模索したい所である。

今回「夕張まんがまつり」に来場され、来賓として挨拶された鈴木直道市長は、「まんがまつりも、夕張国際映画祭のように町を代表するイベントに育って欲しい」と激励された。
夕張の「町おこし」が「夕張まんがまつり」の目標である。その目標を達成するには、市長の願うように、更なる「成長」が求められる。
SF大会を起爆剤にしつつ、相乗効果で更なる盛り上がりを目指していただきたいものである。