9月30日、私は福岡市内で開催されし男性向けオールジャンル同人誌即売会「Comic Stream」にサークル参加させていただいた。
この即売会は、福岡を地盤に、男性向けオンリーの集合型イベント「都久志祭」(全体で100〜150sp規模、他まどか☆マギカオンリー「まどか☆Pia」も)を開催し実績を積み重ねていた「都久志祭実行委員会」が、新たな試みとして始めたオールジャンル同人誌即売会である。
私も、普段の活動ジャンルである「評論・情報」ジャンルにて、サークル参加を申し込んだ。

この即売会は、スタッフの多くが「大9州東方祭」でスタッフを務めていることもあり、大9州との縁深い即売会だ。
大9州と協力を図りつつ、都内から九州まで。様々な即売会で熱心に告知した。
その甲斐あってか、100sp規模までにサークルを集めることに成功したのである。

もっとも、彼らが真面目に告知している割には、100spは物足りない、という見方もできる。
しかしこれについては、九州の新規即売会において、警戒心を抱き「様子見」のサークルさんが多いという事情も加味せねばなるまい。
例えば、過去に福岡天神で開催された同人誌即売会「tenjin.be」は、男性陣サークル中心に、80〜100sp規模で定期開催されたが、初回は40sp規模と低調だった。
しかし、開催実績を積み重ねる中で、様子見だったサークルさんにも参加いただけるようになり、規模を拡大し得たのである。

彼らと縁深い「大9州東方祭」にせよ、最初から今の規模(600sp規模)ではなかった。
最初は「博多東方祭」という名で、100spからのスタートであった事を見逃してはならない。

つまり、九州の即売会においては、新規の即売会は警戒される傾向にある。
逆に言えば、回を重ねれば重ねる程に、軌道に乗りやすくなる、とも言えるが…

それを考えると、「Comic Stream」の100spは、あれだけ告知した割には物足りない数字にも映るが、九州の新規即売会に対する様子見の姿勢を考慮するならば、決して悪い数字ではない。
寧ろ、回を重ねるごとに、この数字は更に伸びる。
今後の頑張り次第だが、200sp〜300spも決して夢ではない、とすら感じる。

ただそのためには、「Comic Stream」自身の「強み」と「弱み」を正しく把握し、それに対応ができるかどうか。そこが肝要だ。

先述「tenjin.be」とこの「Comic Stream」は、共に男性向けジャンルのサークルを中心に集める即売会でありながら、参加サークルの面子が余りにも違いすぎる。
両方の即売会に参加したサークルは、STRIKE HOLE含め数サークル程度。
「住み分けができている」との見方も不可能ではないが、そもそも同じ地域、同じ男性陣サークル中心のオールジャンルで、住み分けができている事自体、おかしな話である。
ジャンル傾向で見ると、「tenjin.be」は「創作」「評論・情報」等が多く、これは「Comic Stream」においては殆ど見かけない。
一方、「Comic Stream」は、元々オンリー集合型イベント「都久志祭」がルーツであった事から、都久志祭内で開催されたジャンル…アニメ・ゲーム・ラノベ系のサークルが多かった。
これらは「tenjin.be」では余りお見かけしなかった印象だ。(また、大9州東方祭と親密な関係を築いている影響か、東方サークルも多かった。tenjin.beも東方は少なくないが、面子は異なる)

言い換えれば、「Comic Stream」は「tenjin.be」が開拓しきれなかったサークルを集められた事が「強み」であると共に、創作等「tenjin.be」で参加したサークル/ジャンルを取り込めなかった事が「弱み」となる。
「Comic Stream」が今後サークル数を増やす為には、継続開催を図ることは当然として、これに加え、強みを伸ばすと共に弱みをフォローする態勢が必要である。

「強み」を伸ばす方法だが、チラシ配布面での告知は相当頑張っている。
それを強化するのも一案だが、私は、都久志祭や大9州に参加したサークルさんを常連化・リピーター化させる方向からのアプローチをお勧めしたい。
これらのイベントに参加する1サークル1サークルに挨拶回りをし、サークルとの距離を縮めつつ、「Comic Stream」への参加を促したい。

また、前回「Comic Stream」参加のサークルさんにDMを送るという手もある。
郵送やメールでご案内をお送りするという方法が考えられるが、タイミングとしては、サークル申込締切少し手前がお勧めだ。締切が近いタイミングなら、「すぐに申し込まなきゃ」とサークルの重い腰も動かせ、サークル申込し忘れの防止にも繋がるからだ。(実際、大9州がそのやり方を取っている)

つまり、「都久志祭」や「大9州東方祭」参加サークルの更なる参加促進の取り組み、加えて「Comic Stream」参加サークルのリピーター化。この2つが、「強み」を伸ばす方向性である。

次に、「弱み」をフォローする方策について申し上げたい。
この即売会の「弱み」は、「tenjin.be」が得意とした「創作」(「評論・情報」も含む)のジャンルを、全くといって良いほど取り込めなかった点にある。
ここを強化したいものである。
「Comic Stream」は相当告知に努力しているはずだが、よくよく考えてみれば、「コミティア」「そうさく畑」等創作オンリーでの告知は、余り見られない。
創作オンリーでのチラシ撒きに弱さが見られるので、ここを強化すれば、創作サークルの参加も、もう少し促せるのではないか。
また他にも、「Comic Stream」内ないし「都久志祭」内にて【創作プチオンリー】を開催し、九州に眠る創作サークルの掘り起こしを図るという手もある。
そちらもご検討いただきたい。

会場は、福岡ファッションビル。最寄り駅は地下鉄祇園駅だが、博多駅からも徒歩10分程度で来場可能。アクセスは良好だ。
少し会場代は高めだが、広めの会場を持つため、100sp以上が想定され「都久志会館」等の会場では収まり切らない規模になりそうな場合に利用される。
ここを利用した即売会への参加は初めてだが、綺麗で落ち着いた雰囲気の良い会場だと思う。今後も、末長く使い続けたいものである。

運営自体は、都久志祭や大9州で鍛えられたのだろうが、安心感あり危なげの無い運営。安心感を持って参加できた。
ただ残念だったのは、一般参加者が少なめだった事。初動も50人程度だったが、100sp規模にしては極めて少ない。
台風が福岡直撃との予想で外出を控えた方が少なくなかったのかもしれないが、台風は東にそれ東海地方直撃。当日の博多は雨すら降らなかった状況だから、台風「だけ」のせいとも思えない。
開催直前1か月間に照準を当て、同人店舗でのチラシやポスターの露出を増やす。或いは、カタログ前売りを強化する。
こういった、開催直前の、買い手へ訴求力を高めた施策で、一般参加者増を狙いたい。

総じて見て、初回で100spは告知を頑張った結果であり、主催側からすれば物足りなさはあるかもしれないが、充分誇るべき成果である。
主催側が望む成果は、定期的に継続開催する事で、自然と付いて来るだろう。
但しその為には、弱点である創作ジャンルサークルへの参加誘致を強化すると共に、少なかった一般参加者を呼び込む施策の強化も必要…こんなところだろうか。
次回は2013年秋開催との事。今回の開催実績をステップとし、更なる飛躍を遂げることに期待を寄せたい。

最後に、併設プチオンリー「VOCALOID Concherto」について若干の苦言を申し上げたい。
このオンリーは、昨年二回開催された「都久志祭」の中で開催されたプチオンリー。今回は「Comic Stream」内にて、三回目の開催となるが、このオンリーに関しては、残念ながら「継続は力なり」という言葉が当てはまらない。
平均20sp弱で伸び悩み、地方即売会においてボカロ勢力が安定的に伸び続けている事を考えると、物足りなさを感じずにはいられない。
この数字は、福岡開催の他ボカロオンリーに比べ弱く、突発的に開催された熊本のボカロオンリーと同規模である。

このプチオンリーも、全般的に見てしっかり告知を行っている方だ。運営も安定感が高い。
努力を図り、マイナスポイントが殆ど見られないにも関わらず、結果が伴わない。その理由はどこにあるのだろう。

ヒントとなるのは、昨今のボカロジャンルの傾向だ。
2012年1月、私は【コミックシティ】内で開催された鏡音プチオンリー「かがぺろ!」の紹介記事を通じ、ボカロが既に女性向け文脈のジャンルと化し、男性向けオンリーの目線による運営は死亡フラグだ、と警告した。
これは、女性陣中心の地方即売会でボカロサークルが定着していることや、1月の(女性向け中心オールジャンルの)コミックシティに、170近くものボカロサークルが集っている事からも裏付けられよう。
元々が男性向けの世界で沸き起こったボカロジャンルだが、今は女性向け系統が主流だ。(正確には音楽系も、もう一つのメインストリームだが)

「VOCALOID Concerto」について申せば、過去二回は「都久志祭」内の開催。オンリーイベントの集合体だが、他のオンリーは、なのは・ラノベ・アイマス・けいおん!・ストライクウィッチーズ…皆男性向け系統で語られるジャンルである。
また今回にしても、男性向けオールジャンル「Comic Stream」内での開催だ。
つまり「VOCALOID Concerto」は、ボカロという女性向けのジャンルであるにも関わらず、男性向け系統に囲まれての開催という構図だ。
これでは、いくらボカロとは言え、女性陣に敷居は高い。参加数が伸び悩む一つの要因を成していることに間違いは無かろう。

私が思うに、もし福岡でボカロオンリーを継続したいのならば、「都久志祭」「Comic Stream」とボカロとは空気が合わないから、この両イベントに併催する形態を改めるべき、と考える。
小さい箱での単独開催でも良いだろう。
どうしても他のイベントに併催するのならば、女子中高生が参加主力層のオールジャンル即売会に間借りしての開催が、ベターである。
ボカロが女性向けジャンルであることを念頭に置き、女性陣が参加しやすい環境を模索するべきである。

一度「VOCALOID Concerto」主催氏には、他のボカロオンリー、或いはコミックシティ内で開催されしボカロのプチオンリーでも良い。
そこに何とか顔を出して、今のボカロジャンルの「空気」に触れていただきたい。
そして今後の「VOCALOID Concerto」の在り方を見つめ直していただけるのならば、それはきっと今後に繋がる事であろう。