2014年最初の同人誌即売会参加。私は、金沢の同人誌即売会「金コミ」に足を運んだ。
金コミは、金沢を地盤に定期開催を続ける、歴史ある同人誌即売会。
今回は、昨年金沢で開催され人気を博した「金沢東方祭」を、プチオンリー形式にて迎え入れての合同開催だ。

金沢東方祭を迎え入れての開催は、昨年5月に次いで二度目だが、昨年との違いは、「東方サークルの多さ」そしてそれに伴う「人出の多さ」であろう。

昨年5月は、金沢東方祭が本祭を前にしての「プレ開催」という位置付けでの開催という事もあり、東方サークルは160sp中28sp。
東方なら、普通のオールジャンル同人誌即売会でも、このぐらいの比率になる事は、決して珍しくない。
「金沢東方祭」としてのカラーも薄く、金コミ内に配置を固め、間借りしただけの印象。
イベントの雰囲気としては、普段の「金コミ」の延長線上。普通のオールジャンル同人誌即売会の様相だった。

ところが今回は、金沢東方祭参加サークルが、160sp中56spを占めた。
金沢東方祭として参加しなかった、東方以外のジャンルで(例・艦これとか)参加のサークルも15spぐらいは居たので、これも含めると実質、160sp中70sp位が、東方で作品を出したサークルだったと言えよう。

今回ここまで東方サークルが増えた要因は、昨年5月のプチオンリーと今回のプチオンリーとの間に、単独開催の「金沢東方祭」本祭が開催された(昨年6月)事が、大きく作用していると考えられる。
昨年6月の本祭は、「同人サークル生ライブ」「チルノダンス」等の動員力高い企画を投入。これらは、同じ主催による別イベント「大9州東方祭」を、今日の盛況に導いた原動力となる企画だ。
大9州成功のノウハウを金沢に持ち込み、サークルも150sp規模を集め、大盛況に終わったという構図だ。
その評判があるからこそ、今回プチオンリーという形態ながらも、これだけのサークル数が集まったのだろう。

一般来場者も極めて多く、初動は300人近くに達した。
以前お邪魔した時は、初動200人ぐらいだから、5割増しぐらいだろうか。
入場時、パケット送りで段階的に入場させるなど、工夫を図っていた。

会場内も阿鼻叫喚、人で溢れかえっていた。
特に金沢東方祭スペースの混雑は相当で、東方祭主催・チャンコ増田氏自らが列整理に乗り出す一幕も…
最終的には、一千数百人が来場したとの事。近年においては異例の賑わいだ。

別室開催のオークションも、以前は空席が目立っていたが、今回はほぼ満席。
賑わいの中、多くの景品が競り落とされていた。
特に、艦これ関係の景品に、参加者が色めき立っていた印象だw

男女比にも、異変が起きていた。
地方の同人誌即売会は、地元の女子学生が主力参加層となっている。
金コミも、例外ではない。以前お邪魔した時は、男女比2:8ぐらいだった筈だ。
だが今回は、男女比半々ぐらいだ。明らかに男性比率が上がっている。

普段の金コミは、女子学生中心に、そこそこ来場する。
そこに、金沢東方祭を迎え入れての効果により、東方クラスタも訪問し、参加者数が嵩上げされた。
これは男女比にも影響し、普段は女性中心の参加者だが、男性陣の多い東方オンリー参加者の流入により、男女比半々となるまで女性率が薄まったあ、という事だ。
「金沢東方祭」という動員力の計算できるイベントを引き入れた事が、「金コミ」の賑わいと成功をもたらす事に繋がった。
規模は違うが、昨夏、愛知県岡崎市の「コミックステイト」が、余所のブランド力のあるプチオンリー(ひぐらしオンリー「雛見沢村民集会」)を迎え活性化を図った事例に、似通った部分を感じた。

しかし、「金沢東方祭」ほどのイベントなら、単独で開催する事も、決して不可能な話ではない。
実際、昨年6月の単独開催時には、150sp規模で大盛況だった。
にもかかわらず、何故金沢東方祭は、金コミ内のプチオンリー形式での開催という道を選んだのか?

一つには、イベント運営の手間軽減、という狙いがある、と考えられる。
本当ならば年2回ペースで開催したいが、他にも「大9州東方祭」や「新潟東方祭」の主催業務もある。全てこなすとなると負担も大きい。
そこで、年2回開催するとしても、内1回はプチオンリー形式とし、運営業務の大半を金コミ側に丸投げする事で、手間の軽減を図りつつ年2回ペースの開催を実現させる。そういう考え方があると思う。

もう一つは、金コミ側との連携を深めたいという狙いだろう。
プチオンリー形式での開催は、親イベント・金コミと、子イベント・金沢東方祭との共同作業、とも言える。
共同作業を通じ両者の連携を強化する事で、両即売会の共存共栄や相乗効果を生み出そうと企図している。

金沢東方祭は、地元の老舗即売会・金コミは無論のこと、金コミ以外の即売会関係者にも、相当気を遣っている。
昨夏は、「北陸本専」「OVERDRIVE!」やアイマスオンリー「ゴールドホイッスル」等、北陸の即売会関係者と好誼を結び、協力を仰いでいる。
主催氏はTwitterにて、「北陸オールスターで開催する」とも仰っており、皆の力を借りて「金沢東方祭」を成功に導こうと意図していた。

主催氏は、金沢在住の経験をお持ちのようだが、現在は北陸外の在住。北陸に住んでおらず、北陸に出張っての開催。
余所者が乗り込んで来る、という事で、既存即売会から反感を受けやすいシチュエーションたる事は否めない。
だからこそ、既存即売会関係者と好誼を結び、連携を深める事は、非常に大切な事と言える。
金沢…というか北陸で長くイベントを続けたいのなら、この方針は妥当な選択であろう。

ここまで既存即売会関係者に気を遣う背景として、私は、大9州東方祭開催に際して、既存即売会関係者との提携が上手く行かなかった事が挙げられよう。
元々主催氏は、地元のイベント主催団体と好誼を深め、連携しての東方オンリー開催を模索していたが、相性が合わなかったのか、協力関係を上手く結べなかった。
それどころか、当該即売会の某幹部スタッフは、自身サークルの著作物にて、主催氏をボロカスに叩き続けている。
毎回コミケの度にdisり続け、もう5年ぐらい経っている(苦笑)
その事例の反省もあり、金沢ではここまで気を遣っているのだろうと思う。

(あ、余談ですが私もそのサークルには、現在進行形にて、相当ボロカス書かれ続けてます。相当腹に据えかねてるので、その内このサークル著作物への批判・反論を大々的に展開する可能性があります…)

金沢東方祭のこのスタンスは、今後の安定・継続開催を果たす上で大切な方向性である。
今後も今の調子で、金コミをはじめとした各即売会関係者との協調関係を維持し、金沢東方祭の安定に繋げていただきたいと願っている。


最後に、一つ苦言…というか今後の課題を申し上げたい。

今回、金コミ内でのプチオンリー開催に当たり、160sp満了の盛況だった。
だが、金コミは、普段のイベントでも130sp前後で推移している。そこに、金沢東方祭約60spが加わるとどうなるか?
…明らかなキャパシティオーバーである。

実際、今回の金コミにおいては、一部落選サークルを出している。
金沢東方祭を入れたが為に、地元の既存サークルを押し出してしまった、とも捉えられてしまう。
せっかく地元で活動するサークルさんを押しのけてしまうのは、地域即売会の活性化という観点からも、決して宜しい事とは言えない。
ここが、今後の反省点になり課題にもなると思う。

1月開催は、冬コミ直後。冬コミの在庫を抱えたサークルが頒布の場を求めるから、普段以上にサークルが集まりやすい時期設定だ。
そこに金沢東方祭を入れると、東方側からも在庫を抱えるサークルが殺到する。今回のように、落選サークルを出してしまう。
金コミも、金沢東方祭を迎え入れるのなら、サークルが来なさそうな月を選ぶべきではないだろうか?と思った。
ここは、金沢東方祭と金コミとで協議すべき案件になろうが、「参加者の集まりにくい日程での開催」の時に、カンフル剤的に金沢東方祭を投入するよう調整すべきと考える。
その方が、即売会活性化の効果も、より大きくなるし、落選サークルを抑えられる。
そこが、金コミ・金沢東方祭合同開催に当たっての、今後の課題となるだろう。