6月6日、私は台湾で開催された東方Projectオンリーイベント「博麗神社例大祭 in 台湾」に一般参加させていただいた。

日本全国、各地の同人誌即売会を行脚し続けてきたSTRIKE HOLEの花羅だが、これまで、海外の同人誌即売会に参加した事は無かった。
周囲の皆さんからも、そろそろ海外即売会に行ってみてはと勧められる事も多々あり、いつかは顔を出してみたいと思ってはいた。
そんな中、東方オンリー「博麗神社例大祭」が、台湾に進出して開催するとの事。日本から海外に進出する構図も、滅多にない。興味を抱き、一念発起して足を運ぶことにした。

日本からの進出という事で、当日は、日本人スタッフも数多くいると予想。
日本人多数という事で、他の海外即売会に比べ言葉の心配も要らないという安心感も、この即売会への参加意欲を後押しした。
会場は、台北近郊・新北市の「三重綜合体育館」。
台湾に進出したスタジオYOU主催のオンリーをはじめ、同人誌即売会の開催実績も豊富な会場でもある。

地下鉄MRT・中和新蘆線【菜寮駅】から徒歩5分とアクセス便利。
ただ、台北駅からだと地下鉄利用は若干遠回りの為、タクシーの方が早い。
私は、台北駅でタクシーを捕まえ、そこから会場に直行した。(所要10分弱、130元程度)

当日朝のLCC・バニラエアで出国。現地時間10時30分には到着するも、入国審査・両替や、台湾国内でのFREE WiFi利用登録に手間取った事もあり、桃園空港を出られたのは11時30分過ぎ。
そこからバス・新幹線を乗り継いで台北到着は12時30分頃。タクシーに乗り換えて、会場到着は13時を過ぎていた。


会場到着時点で、既にカタログは完売orz
10時30分開場で、そこから2時間以上経過していれば、それも仕方ないのだろうが…
入場料を払って(100元か200元かどっちかだったと思う)、手に「GJ」というスタンプが押され会場入り。
このスタンプ「DJ」は、今回例大祭の台湾開催に尽力された協力団体「GJ部」の事を指すのだろう。このスタンプを見せれば、会場への再入場も可能となる。
ゲートのスタッフは現地の方だが、片言ながらも日本語で案内してくれたので、分かりやすく助かった。

中に入ると、会場内は阿鼻叫喚の宴。相当の混雑で、特に島と島の間の通路は人で満ち溢れ、往来に苦労するほど
しかし、スタッフ関係者(日本人)に言わせると、これでもまだマシになった方との事。開場直後は、一方通行の規制を掛けていたとか…

サークル数に対し一般参加者の数は明らかに多く、その分、各サークルとも売り上げは好調。
特にグッズ系サークルや音楽系のサークルは、言葉のハードルが低いせいか、現地の方にも軒並み好評だった模様。
私が足を運んだ頃には、全て完売し「焼け野原」と化したサークルも少なくなかった。


来場者は、推計2500人以上との話も聞く。
老若男女問わずだが、男女比は9:1で、男性陣が圧倒的に多い。年齢的には、20代前半の若手の方が多いように映る。
コスプレイヤーさんは、台湾は女装コスが余り見られず、皆女性ばかり。その分、日本のオンリーに比べ、コスプレイヤーの数は少なかった。

日本人は、来場者全体の中で1割程度の模様。
サークルは遠征者の比率が多いが、一般参加者は遠征者よりも地元人が多い…という話は日本国内何処の地方の東方オンリーでも当てはまる事象だが、台湾でもそれは変わらないようだ。

とは言え、元々の来場者が2000人以上と相当だ。
内1割が日本人となると、日本からの来訪者は200人以上。
これだけの人数が日本から移動して押し寄せるのは、過去に類を見ない模様だが(台湾最大の同人誌即売会「Fancy Frontier」でもこれほど日本人は多くないらしい)、やはりこれは、「博麗神社例大祭」がこれまで日本国内で培ってきたブランドや信頼性の賜物と言えるだろう。


一方、サークル参加となると、日本人の比率はぐんと高まる。
日本からのサークルが72サークル、台湾サークルが73サークル。日台ほぼ同数という展開だ。(スペース数ベースでは180sp規模)
台湾開催の筈が、ここまで日本人が多いのは何故か。東方ジャンルに遠征好きが多く、どうしても遠征サークルの比率が高まるという傾向はあるのだろうが、それだけではない。
「博麗神社例大祭」のブランド・信頼性も当然あろうし、加えて、もう一つ別の理由もあるが、そこは後述したい。


代表氏がそこら辺を巡回されていたので、忙しいのを承知の上でお話をお伺いした。

「何でわざわざ台湾での開催を」と動機をお聞きする。
もっとも、カタログ(売り切れていたので本部で見せて貰った)に「台湾への旅行もいいよねー」みたいな事を書いてあったので、「あ、こりゃスタッフ慰安旅行を兼ねての開催だなw」と察してはいたがw
これに加え、最近台湾で東方オンリーの動きが少なかった事を気にしており、何とか場を設けたい、というお話もいただいた。
(確かに少し前までは、「東方絢桜祭」や「東方楓華宴」といったオンリーが、台湾で定期開催されていたが、最近は開催が止まっている)

2年がかりで仕込みをして、現地サイドの協力者も多くつくり、ようやく日の目を見た、との事。
そう言われてみれば、代表氏本人も、年数回ペースで渡台。「Fancy Frontier」等他即売会に足を運んだり、或いは打ち合わせを重ねたり。台湾開催を実現させるべく、並々ならぬ努力を惜しまなかった。
その努力の積み重ねが、台湾例大祭の盛況に繋がっているのだろう。


今回、例大祭主催・博麗神社社務所は、台湾開催に際し、2つの団体に協力を仰いでいる。
一つは、「和同會」さん。ここは、台北にて艦これオンリー「福爾摩沙鎮守府(フォルモサ鎮守府)」の開催実績を持つ。
そしてもう一つの団体は、「GJ部」さん。こちらはもう少し動きが幅広く、台中市・オールジャンル「GJ 動漫創作嘉年華」の開催を中心に、コスプレイベント「Cosplay Field」や各種オンリーイベントの開催も手掛けている。
どちらも、台湾内において一定の実績を有するイベンターだ。

やはり日本の団体が、海外で即売会を開こうとするのならば、現地団体の協力は欠かせない。
会場の手配、現地の言葉を話せる現地人スタッフの確保、現地での告知・宣伝…
現地をある程度任せられるパートナーがいないと、開催は難しい。

スタジオYOUだって現地法人を設け、そこを足掛かりに台湾でオンリーを開いている。
今秋、台湾・高雄市開催「砲雷撃戦!よーい!」(艦これオンリー)だって、現地にパートナーを抱えている。
現地の信頼できるパートナーを如何につくれるかが、海外開催の成否を占うカギとなるだろう。

もっとも、日台間の文化の違い、もっと言えば即売会の運営の仕方も異なる。
イベント運営に当たり、細かいすり合わせに苦労された、というお話も、伺っている。
考えてみれば、日本国内だってイベントが異なれば、地域が異なれば、やり方は全然異なる。ましてや喋る言葉も違う海外、国内以上の苦労は想像に難くない。


この辺りで相当苦心されたな、と感じるのは、サークル集めのレギュレーションである。

今回、日本・台湾双方でサークルを募集するという形式を取った。
日本のサークルは社務所が集め、台湾のサークルはDJ部等現地パートナーが集めた。
窓口を日台双方に用意する事で、言葉の壁も気にせず申し込める点が大きい。特に、海外の即売会の場合、現地に代理人が居ないと申し込めないケースが多く、それがサークル参加に当たっての高いハードルとなる。
台湾の即売会でありながら、日本のサークルの申込が多かったのは、日本に窓口を置く事により、その垣根を取り払う事が出来たからだと思う。

面白いのは、サークル参加の条件。これが、日台間で異なる点に工夫を感じた。
日本サイドからの申込は、1スペース参加費2000円。サークル通行証が3枚セットで付いてくる。イベントにより、サークル通行証が1スペース2枚になる事もあるが、このやり方が、スタンダードだと思う。
(なお、カタログは、1サークルに付き1冊進呈するが、原則全員購入制となっている)

一方、台湾サイドからの申込は、1スペース400元で、サークル通行証1枚が付いてくる。サークル通行証を1枚追加するごとに、150元の追加料金が発生する、という形式だ。
日本でも一部の即売会でこのような形式を取る事もあるが、少し珍しい形式だ。
実は、台湾最大の即売会「Fancy Frontier」でも似たような形式を取っているようで、恐らくこれが、台湾のスタンダードなやり方なのだろう。

つまり、日台それぞれのスタンダードな条件に合わせた形で、日本サイドの申込・台湾サイドの申込それぞれの条件を微妙に変えている
(これはサークル参加費を決済する、通貨単位にも言える事だろうが)
日本人・台湾人、それぞれの国・地域のサークルが取っつき易いような条件を設定する事で、サークルの参加を上手く促しているのではないか、と考えられる。


会場内が長時間過ごすには耐えきれない暑さだったことや、折角台湾に足を運んだことだし色々観光したい!という思いもあったので、今回会場には、1時間弱しか滞在しなかった。
あっという間の滞在で、決して「例大祭in台湾」の全てを見られた訳ではない。

だが、短い滞在ながらも、実際この目で会場の様子を見て、現地の熱気に触れた事は、貴重な体験であったと思う。
そして多方面からお話を伺い、「例大祭in台湾」を成功させる為に、多くの方々が苦労と努力を重ねた事も、感じ取ることができた。
今後も機会あらば、海外の即売会にも積極的に足を運び、海外ならではの熱気に触れつつ、その様子をレポートしていきたいと思う。