6月14日、私はオールジャンル同人誌即売会「コミックSDF」に一般参加させていただいた。

艦これオンリー「砲雷撃戦!よーい!」の成功等で話題を集め、今同人界隈で最も勢いのある主催とも言える、イベント主催団体「SDF」。
これまではオンリーイベントの開催ばかりだったが、突如オールジャンル同人誌即売会に進出、という構図だ。

ただ、オールジャンル同人誌即売会は、地方・東京を問わず、或いは男性向け・女性向けの別を問わず、何処もサークル数を減衰させ、苦戦している
上手くいっている即売会は、一握りに過ぎない。
そんな中、オールジャンルに挑戦するという行動は、頭がおかし…ゲフンゲフン非常に挑戦的・意欲的と言えるのではないか。
しかもこの日は、男性向けオールジャンル同人誌即売会「サンシャインクリエイション」とも日程が被っており、サークルの取り合いが予想される。そんな日程のぶつけ方をして、果たして大丈夫なのか。勝算はあるのか。
(もっとも、日程に関しては、会場を借りているイベント主催団体「高天原」から、空いたスペースが回ってきたものと思われ、意図的にぶつけた訳ではないだろうが)

正直、いくら「おかしな即売会を開く事定評のあるSDF」と言えども、正気の沙汰とは思えぬ決断に思える。
私は、会場の都産業貿易センター浜松町館に急行した。
サークル数に関しては、案外善戦しており、240サークルが参加。
都産貿の1フロアを埋める、上々の展開だ。
都内他所のオールジャンルに比べると少ない数字だが、サンクリと同日バッティング。また、開催発表も春に入ってからと比較的遅く、告知・宣伝に充分な期間を割けなかった事を考えると、健闘している部類に入ると思う。
「新しい即売会」である事の期待感に加え、同人ショップとの提携でサークル参加費無料優待のキャンペーン施策を打った事。また、主催氏のサークルを引き付ける個性や、これまで培ってきたサークルとの人間関係も作用し、一定サークル数を集める事に成功したのだろう。

というか、この状況を許したサンクリの不甲斐無さを取り上げるべきかもしれない。
昔のサンクリならば、たとえSDFがバッティングしたとしても、多くのサークルはサンクリを選ぶ。圧倒的大差でサンクリが勝利していた筈だ。
240ものサークルがSDFを選んでしまう結果を、サンクリは恥じるべきだと思う。


ジャンル分布としては、艦これ1強の様相。
艦これが109サークルと全体の4割、圧倒的多数を占めている。元々の艦これ人気に加え、艦これオンリー「砲雷撃戦!よーい!」の開催を通じ、懇意なサークルさんが増えた賜物だろう。
アイマス(12sp)や魔法少女まどか☆マギカ(14sp)も、同様の文脈で捉えられよう。

その一方、創作・東方の健闘も目立った。
東方22sp、創作28sp。両ジャンルとも、SDFとのご縁はこれまで希薄だったが、それを跳ね除けてサークルを集められた。
何故健闘したかの原因は不明だが、「コミックSDF」の予想外な傾向、という事で押さえておきたい。


残念ながら、サークルには恵まれたものの、一般参加者には恵まれなかった。
これは「サンクリ」に加え、都内だけを見ても、この日はTokyo 7th シスターズオンリー「777 FESTIVAL」や百合等の少女恋愛要素オンリー「GirlsLoveFestival」も開催されている。
一般参加者が相当分散されており、その影響をモロに受けた形だ。
仕方ない状況なのかもしれないが、一般参加者が作品を手に取ってくれなければサークルは面白くないから、サークル参加の意欲も減退する。
サークルをリピーター化する為には、一般参加者の増加促進こそが、鍵になってくると思う。

また、SDF「ならでは」の個性が出し切れなかった点も残念だった。
普段のSDFは、「構造なき聖域改革」とか称して、「サンライズクリエイション・略してサンクリ!」とか言い出したり、プールサイドに机椅子を並べて即売会やったり、或いは住宅街の路地裏を即売会会場への導線にして「会場到着を競い合うエクストリームスポーツ!」みたいな事を始めたり。

…とにかく、奇行には事欠かないw

逆に言うと、そういうおかしな事始めるから、参加者も気になって足を運ぼうとするのだ。
それがSDFの短所なのかもしれないが、それを補って余りある長所ともなる。

今回の「コミックSDF」を見ると、SDFイベントにしては、「大人しい」というか普通の、マトモなイベントと評さざるを得ない。
いや、SDFもその気になればマトモなイベントができるのは百も承知しているが、我々としては、SDFならではの「頭おかしい」「ぶっ飛んだ」運営を見てみたいw
オールジャンルという事で、どうしても各ジャンルの「最大公約数」となるような運営にならざるを得ないのだろうが、それゆえに、普段のオンリーイベントに比べ、SDFらしい個性が出しづらくなっているのかもしれない。

どうやって、SDFならではの、人を引き付ける個性を表出していくか。今後も開催を続けるのならば、それこそが、「コミックSDF」の隆盛を占うカギになると思う。