1月10日は、愛・地球博跡地の「愛・地球博記念公園」にて開催された「ぽぷかる」に、サークル参加させていただいた。
この「ぽぷかる」は、愛知県主催・中日新聞社が共催という形式を取り、「愛知県を、誰もがポップカルチャーを自由に語り、表現し、触れ合える場所にすること(=聖地化)」との目的から、毎年一回開催されている。
ステージイベントやコスプレ・痛車・同人誌即売会等、オタク向けのコンテンツを色々集めた複合イベントで、愛・地球博記念公園へのアクセス路線である「リニモ」沿線の活性化と、ポップカルチャーの活性化とを志向しているようだ。

今年は、1月9日・10日の2日間開催で、公称1日当たり1万人前後の来場者との事だ。
9日は別用があったため、10日のみサークル参加させていただいた。
愛・地球博記念公園へのアクセスは、名古屋駅から地下鉄東山線で約30分。終点・藤ヶ丘駅でリニモに乗り換える。
リニモ藤ヶ丘駅では、こんな演出も。

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この「ぽぷかる」においては、オリジナルの萌えキャラをデザイン。
会場内やリニモを彩っている。
リニモは、鉄道美少女シリーズ「鉄道むすめ」ともコラボしており、鉄道むすめのラッピング列車も走っている等、この手の取組に積極的な印象だ。

藤ヶ丘駅からリニモに乗って10数分。名古屋駅からだと1時間弱で、「愛・地球博記念公園」に到着する。
公園駅から徒歩5分。地球市民交流センターと体育館、その周辺の通路や屋外広場一帯が会場だ。

屋外通路には無料のライブスペースが用意。インディーズバンド・アマチュアバンドがの発表の場となっており、こちらは無料で鑑賞可能。常時50人ぐらいの聴衆がタムロしていた。
(これとは別に【有料のライブ】も存在するが、詳細は後述する)

屋外広場には痛車の展示コーナーも。
アイマス・艦これ・ラブライブ!・なのは等ジャンルは多様で、20台ぐらいが展示されていた。
土地柄考えると当たり前の話だが、やはり名古屋ナンバーの車が多かった。
痛二輪も、少数だがお見掛けした。

体育館近くの芝生広場は、コスプレスペースとなっている。
天気も良く、絶好のコスプレ日和。コスプレ参加者が笑顔で歓談している様子が、あちこちで見かけられた。雰囲気は非常に良かったと思う。
コスプレアーカイブを見る限りでも、ランキングptも1月の上位に付けている位だ。コスプレ参加者は相当の多数を占めていた筈だ。更衣室も長蛇の列で、「盛況」と断ぜられよう。
コスプレイベントとして見るならば、このイベントは、掛け値無しに「素晴らしいコスプレイベント」であり、「成功」と言えるだろう。

コスプレスペースそばの屋台村も、全般的にクオリティ高く美味いものが多かった。
愛・地球博記念公園は、コンビニ・スーパーなど食料を調達できるスポットが、近隣に存在しない。不足しがちな供食機能を強化すると共に、グルメを堪能できるという楽しみが加わる。
即売会会場は体育館なので、飲食禁止(ペットボトル程度の持ち込みなら可)。我々サークル参加者はいったんスペースを離れ、屋台村で舌鼓を打つことになるので、ちょい面倒だが、これは仕方ないか。


…問題は、同人誌即売会の方である。
同人誌即売会の会場は、愛・地球博記念公園内の体育館を使用している。
体育館はパーティーションで分割され、右半分が同人誌即売会及び企業出展スペースとして充てられた。そして、左半分はライブスペース(1日券3800円)。この手の界隈でそこそこ知名度のあるアーティストを多数呼んでの、有料ライブである。
これが、全てをぶち壊した。


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サークルは、各日とも100サークル弱。上々の集まり具合だったと思う。
入場フリーでパンフレットが無く、配置図を配布したり入り口に掲示しているだの工夫は見られるが、せっかく書き上げたサークルカットが掲載されていないので、一般参加者には分かりづらかったと思う。
サークル的にも、【何のためにサークルカットを描いたのか】が良く分からないw(一応、web上にカタログカットは掲載されていたが…)

一般的な即売会では、カタログを作成し、それを入場者に頒布する。サークルカットも掲載し、どこにどんなサークルがいるかを分かりやすく示す。
翻るに「ぽぷかる」は、一般的な即売会のセオリーに則っていないやり方なので、分かりづらく不親切だ。やはりサークル紹介用に、サークルカットと配置図を掲載したイベントパンフレットが欲しい所だ。
(予算的に厳しいのなら、webパンフレットでも良いと思う)

まあ、ここまでは許容範囲だ。
問題は、音響である。

開場前から、リハーサル名目で大音響が体育館に響く。
パーティーションで仕切ってあるだけだから音がダダ漏れだし、しかも体育館の構造上、館全体にその音が響く。
正直申し上げて、「会話する事すら困難なレベル」である。
スタッフに質問しても、スタッフにその質問が聞こえないぐらいなのだ。

12時頃に音響が幾分控えめにはなるが(何とか会話可能なレベル)、13時過ぎからまた大爆音のオンパレード。
即売会は17時までだが、たまらず14時には撤収させていただいた。

過去この手の「即売会会場中でライブ」という事例は多々あり、軒並みサークルの不評を博している。
(初期の「大(9)州東方祭」なんかも相当ひどく(今ではだいぶ改善されたが)、私も相当厳しく批判させていただいた)

同人誌即売会というものは、買い手とサークルとの交流が大きな楽しみである。
にもかかわらず、お隣の大音響で、その楽しみが奪われてしまう。
こんな即売会になるのなら、サークル的には「苦行」でしかない。
「即売会なんか、やらない方がマシ」だとすら思えてくる。

(実際、コスプレ参加者の多さもあるから、コスプレイベントと有料ライブで、充分興行的には成立し得る。サークルの不評を買いながら、無理無理同人誌即売会を詰め込む必要性は感じられないと思う)


【運営ノウハウの不足】

この「ぽぷかる」というイベント、今回で5回目の開催だ。
にも関わらず、運営面での不足が目立った(特に即売会部門)。

例えば、サークル島の島札や、本部・受付等のPOP類が、全量手書きである。
普通は、この手のものは事前に活字で作成し、プリントアウトして準備するものだ。
これがオール手書きというのは不審だ。誰かに指摘され、当日慌ててつくった様子が伺える。

サークルスペース机上には通常、スペース番号やらサークルカットを記した紙が貼られている。我々サークル者は、それを見て自分のサークルスペースがここで良いか、確認する。
しかし今回、机にそれが用意されておらず、確認に手間取る。
幸いにも、サークルの多くは遠征サークル。すなわち経験値の高い手練れだ。ゆえに大きな混乱は起きなかったが、初心者サークル率の高いイベントだと、間違いなく混乱しただろう。

宅配搬入・搬出が不可というのも、普通は「あり得ない」話である。この「ぽぷかる」以外の殆ど全ての同人誌即売会で、宅配搬出入を受け付けている。
サークルにより個体差はあるが、荷物の多いサークルならば、宅配は不可欠だ。
宅配での搬出入は、「やって当たり前」の常識的なオペレーション。それができない、という事はまずありえない。ヤマト運輸等宅配便業者と打ち合わせをすれば、誰でも出来る事だ。
「出来ない」のではなく、「宅配搬出入に思いが至らなかった」という事なのだろう。
つまり、同人誌即売会を営む上で欠かせない「常識」が、備わっていなかったという事か。

この体たらくも、主催素人が初めて主催を務めている同人誌即売会ならば、分からない話でも無い。
だが、このイベントは既に5回目である。何度も経験してこの体たらくは、どういう事なのだろうか。

私は、会場内で、前回以前も参加されているサークルさんより、「前回までのノウハウが今回断絶されているのでは?」との指摘を受けた。

このイベントは愛知県の主催だが、この手の自治体主催のイベントは、専門のイベント業者等に運営を委託するケースが多い。
自治体自身に、催事を営むスキルは無い。「餅は餅屋」というが、専門の人にお願いするのが常道だ。
過去、東方オンリーでも自治体主催のイベントが存在したが、この時も民間の地域団体なり、即売会主催団体なり、即売会主催経験者に運営を委託していた。
今回の「ぽぷかる」も、名古屋市内のイベント業者に運営を委託している。
もしかしたら、運営委託先のイベント業者が変わったのでは?とも思った。

だが、いろいろ聞いたり調べたりしてみた結果、前回と運営委託先業者が変わっている訳でも無さそうだ。毎回、同じイベント業者が、「ぽぷかる」の運営業務を受託している。
そんな中、「ぽぷかる」運営より御礼メールが届いた。そこには、このようなことが書いてある。

「第五期ぽぷかる制作委員会は、緊急雇用スタッフ3人で、JPAをはじめ新しい試みにも挑戦させて頂きました。スタッフ全員がはじめてのイベント企画・運営で、不手際が多く、参加された方には混乱を招いたことも多々、大変ご迷惑をおかけ致しましたこと、深くお詫び申し上げます。」
「第五期スタッフは1月20日をもって卒業となります」


多少言い訳めいてはいるものの、もしこれが本当ならば、毎回同じ業者が運営に携わっているにも関わらず、スタッフも毎回人が入れ替わる、という事なのだろうか。
普通に考えるならば「組織としては有り得ない」体制なのだが、「前回までのノウハウが今回断絶」という理由の一端になるとも思う。


【有料ライブ+同人誌即売会 体育館併催の弊害】

有料ライブと即売会とを、同じ建物で開催した事の弊害は、他にもある。
これは他の参加者の方の指摘で気づいたが、体育館の音響機器は、全てライブ側が使用している。ライブやるのだから当然なのだろうが、その分、即売会側が一切の音響を使用できなくなる
従って、運営から即売会側への一斉案内もできないし、どこの即売会でもあるはずの、開始や終了のアナウンスも無かった。

会場への入場が全量階段だったため、車椅子での入場や、台車を使っての搬入にも支障を来たした
一応バリアフリー対応の出入口は、確認する限り2つあったが、片方は有料ライブ側で使用。もう1つは有料ライブ出演者の通用門としての運用だった。
事前にメール等で申請した方に限り、この通用門経由で入場できるようには図っているようだが、当日来場者等事前申請の無い人々への対応は見られなかった。台車搬入ができず困った、とのお声も拾っている。

音響以外でも、この両者を同じ建物で開催したことの弊害は出てきている。

私は、「ぽぷかる」においては、有料ライブとコスプレの参加者が多く、同人誌即売会は「オマケ」的な位置づけ。即売会を入れる必要性を全く感じていない。
どうしても即売会を入れたいのなら、有料ライブを無くすか、即売会を体育館以外の会場に充てるか。どちらかの手法を取るべきだろう。

前者は興行的観点から現実味に欠けるが、後者なら、コスプレイヤーのクロークや休憩所として活用した小部屋「多目的室」を、即売会用に充てれば良い。
この多目的室なら、多少の音漏れはあれ、会話は十分可能だ。
コスプレイヤー用のクロークは、即売会を出して生みだされた、体育館内の余剰スペースを利用すれば良いのではないか。



以上、今回「ぽぷかる」に参加して、目についた点が多かったので整理して書き連ねてみた。
纏めると、ポイントとしてはこんな所だろうか。

・有料ライブと同人誌即売会を同じ会場で行う事で、音響は無論、それ以外にも問題点が目立つ
・この点で改善が果たせないならば、無理に同人誌即売会を開催する必要もない
・毎回同じ業者が運営に携わっているにも関わらず、スタッフが入れ替わり組織としての継続性を維持できない


もし次があるのならば、これらの各点に改善が加えられているかどうかを見極めたうえで、参加を検討したい。(即売会会場以外の雰囲気は悪くなかったですし)